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Netflixで配信された新ドキュメンタリー『テイク・ザット ~30年の軌跡~』ともう一つの物語

ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されているDJスヌーピーこと、今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第107回。
今回は2026年1月末にNETFLIXでドキュメンタリー『テイク・ザット ~30年の軌跡~』が配信されたテイク・ザット(Take That)について、このドキュメンタリーと実際の想い出とともに寄稿いただきました。
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テイク・ザットの3本目のドキュメンタリー『テイク・ザット ~30年の軌跡~』が、Netflixで公開になっています。2024年には、ロビー・ウィリアムズの映画『BETTER MAN/ベター・マン』によって、あらためてテイク・ザットの光と影がクローズアップされました。『BETTER MAN/ベター・マン』では、ロビーが自身をモンキーに例え、エンタメ要素になってはいるものの、5人のメンバーの今後の関係性に不安を感じるほど、ストレートな表現となっていて、楽しみながらもファンにとってはドキドキの作品でした。
確かに、テイク・ザットのキャリアは、山あり谷ありで、アーティストとしての最高の瞬間と、どん底に突き落とされる瞬間が、シーソーのように襲ってきたことは周知の事実です。この最新ドキュメンタリーでは、さらにそのどん底部分が明らかになり、胸が痛くなるほどのシーンに触れることもあります。3エピソードに分かれたドキュメンタリーを見ながら、この30年間、彼らを追い続けたメディアの一人としての感情も入り混じり、とても切ない時間を過ごしたのですが、影の部分だけでなく、光を受けて輝いている彼らの姿を再び見ることができたのは救いでした。
今回のコラムでは、ドキュメンタリーに沿って、私が見てきたテイク・ザットのもうひとつのドキュメンタリーを綴ろうかと思います。
5人最後のヨーロッパ・ツアーと楽屋の真実
ドキュメンタリーの冒頭は、5人の最後のヨーロッパ・ツアーから始まります。ロビーはもう上の空、マークは3人の顔色を伺いながらロビーの行いをフォロー。ゲイリーやジェイソンには怒りの感情が芽生え、最年長者のハワードは、グループの行末を案じるばかり。そんなオープニング。私はこのツアーをドイツで見ました。お気楽なまでに、頂点に達したテイク・ザットの姿に嬉しさいっぱいだったことを記憶しています。
楽屋での取材には、5人が揃いましたが、ロビーはいっさい話しません。容赦無くロビーにも質問を振る私でしたが、マークが答えたり、ゲイリーが答えたり、とバンド内でのフォローが入っていたのは、後になって気づきました。そんな状況の中で、ゲイリーが気を使い、「ジェイソンがギターを練習しているんだよ。”Back For Good”を特別にここで披露するよ」とスペシャルを用意してくれました。
ロビーがチュッパチャプスを舐めながら、ちょっとお行儀が悪くても、マークも一緒に舐めることで可愛らしい姿に見え、仲が良いなと思ったり。不穏な空気というよりも、異常なまでの人気でナーバスになっているだけなのかも、と受け止めていました。
ソングライター、ゲイリーを中心として作られたグループ。ロビー、マーク人気はあってもハワード、ジェイソンは人数合わせ、という言葉がドキュメンタリーにありましたが、自然にアーティストとしての個性が生まれ、5人それぞれの役割でグループが成長していることを感じていたのは私だけではなかったはずです。
若くしてソングライターとして栄誉あるIvor Novello賞を受賞したゲイリーが、あれほど曲を書く重圧を抱いていたという事実。その重圧が、自分が書かねばという使命感にとって変わり、仲間のクリエイティヴな世界観まで受け止められなかったこと。ロビー、マークのメインヴォーカル曲を作る指令を受けたことなど、本来はグループではなく、ソロとしてデビューしたかったゲイリーにとっては、受け入れ難い事実が多くあったのだということが描かれたエピソード1でした。


ソングライターの重圧と突然の解散
1995年、3枚目のアルバム『Nobody Else』をリリースし、「Back For Good」がワールドワイドな成功を収め、テイク・ザット人気は最高潮に達します。そしてゲイリーにとって、この曲の大ヒットが、ソングライターとしての大きな自信に繋がったことは確かです。ロビー脱退から解散に至るまでの決断が短かったのは、ソロになりたいという思いが強くなっていったからなのでしょう。ロビーが脱退を決め、バンドは続けるという発言の後、程なく解散を発表しました。ちょうどベスト盤『Greatest Hits』のライナーを書いていた私は、入稿直前にこのニュースを聞き、全てを書き直したのを覚えています。
ドキュメンタリーにもありましたが、最後の日はオランダのアムステルダムで迎えました。いくつかの取材後、海外メディア向けのラウンドテーブルによる取材が行われました。私もその場にいて、ヨーロッパ各国のメディアの中に入り、いくつか質問しました。そして最後に、出席したメディア一人一人と記念写真を撮ったのです。その写真を見ると、メンバーの晴々とした表情に安堵するのですが、ハワードが寂しそうなのは、ドキュメンタリーでも語られていた将来への不安からくるものなのでしょうか?

ソロ活動の明暗:ゲイリーの挫折とロビーの覚醒
意気揚々とソロになったゲイリーは、ロビーとのソロ対決に勝ち、順調にキャリアを重ねます。ゲイリーがプロモーションで来日した時は、明るい表情で、これが僕の本来の姿であると言わんばかりに、堂々と楽しく活動していました。その後、ロンドンでもインタビューしましたが、ゲイリーが大好きなお寿司がカジュアルに食べる事ができるヒルトンホテルのHIROKOで待ち合わせをして、お寿司を食べながら取材したことが懐かしいです。
彼には、テイク・ザット時代から見守っていたレーベル・マネージャーがいたのですが、ソロになってからその人がマネージメントをするようになりました。お寿司取材の時に、彼女が少し離れた席に座りました。どうぞ自由に話してね、と言って。まるで遠慮するかのような態度が気になっていたのですが、しばらくして彼女はやめてしまいました。どうやらゲイリーとうまくいかなくなってしまった、と。ドキュメンタリーでゲイリーが言っていましたが、この頃が一番調子に乗っていた、という彼の言葉通り、周りが見えなくなっていた時期だったのかな、と思いましたが、私の目には、そうは映っていませんでした。

ロビーもソロで来日しました。テイク・ザット時代はあまり多くを話した記憶がなかったのですが、ソロとなってからは、東京、ロサンゼルス、パリ、と取材を重ねました。Fm yokohamaのスタジオに来た時のことです。まだ「Angels」はシングルとしてリリースされていませんでした。でも明らかに誰が聞いても「Angels」がダントツでアルバムの中でいい曲だったわけです。ロビーがアコースティクで生演奏できるというので、じゃあ「Angels」をやってほしいとお願いすると、その時のロビーはいいよ!とすぐに練習を始めたのですが、そこにマネージャーがすっ飛んできて、「Angels」はダメ、次のクリスマスシーズンの曲になるから、今はダメ、とすごい剣幕でクレームをつけてきました。「アルバムの曲だし、ロビーがいいって言ったけど」と言ってもダメでした。
その後ロビーに「ああいうマネージャーダメだから」と八つ当たりしたのですが、ドキュメンタリーを見ると、「Angels」のプロジェクトはすでに始まっていたのですね。ちなみにクレームを入れた私にロビーは「ごめんね」と素直に謝ってくれました。そしてその後「Angels」のヒットで、ロビー人気に火がつくことになったわけです。
どん底の時期とそれぞれの苦悩
ロビーがソロ・アーティストとして頂点に登り詰めると、ゲイリー、マークの人気は、コマーシャル的にうまくいっていないことが露見されました。

メディアからの容赦ないバッシングが多かったのには驚きました。マークもソロとして来日し、マーク人気が高い日本では、赤坂ブリッツでのライヴも成功し、着実にステップアップしていると思っていました。
ドキュメンタリーで初めて知ったのはハワードのこと。テームズ川に飛び込もうと思っていたという話は切なさを超えて、胸が苦しくなりました。ナイジェル・マーティン・スミスの後押しで、ソロ曲を制作し、MVも撮ったのに、オフィシャルにはならなかったという話。実際、私の手元には、カセットでソロ曲が送られてきました。あとはリリースを待つだけだったのですが、結局、いつまでたってもその話は届きませんでした。「なぜ?もう出来ているのに?」と当時不思議に思っていました。ハワードにとって、これじゃない、という思いがあったという理由に切なさを感じました。
ゲイリーがレーベルから契約解除を伝えられたということは、彼の自伝の冒頭に書かれていますが、ゲイリーが表舞台から姿を消してからは、会うことはありませんでした。もちろん、ジェイソン、ハワードにも…。このドキュメンタリーでは、引きこもり状態で、スタジオに行っても、心ここに在らずのゲイリーが、太ってしまい、家族の良きパパではあるけれど、引退状態のアーティストになってしまったという姿も紹介しています。
色々な人たちに楽曲提供はしていましたが、彼自身、再び表舞台に立つことは考えていなかったのでしょう。そこに、ドキュメンタリー制作、TVでの放映という話が来るわけです。久しぶりに揃った4人の姿、まだまだ長い休養が明けたばかりで、一時期のスターの顔は忘れてしまっているかのような姿もさらけ出しています。

その頃マークは、「Celebrity」というリアリティ番組で、再び注目を集めていました。私がロビーの取材でパリへ行く時に、ロンドンに立ち寄りましたが、マークが一般誌の表紙を飾っていて、それを買ってユーロスターに乗りました。皮肉にもロビーに会うために。
その後、テイク・ザットのドキュメンタリーは大きな話題になります。そしてソロとして、マークがプロモーションで来日するのですが、レコード店で行われたリリースイベントの司会を頼まれ、久しぶりに会いました。この時には、ドキュメンタリーが制作、放映後だったと思います。マークとのインタビューで1回だけのアリーナ・ツアーをするという話を聞きました。まだ発表はされていませんでしたが、それはもう行くしかない、と思い、新作があるわけではないので、レーベルに頼ることができず、マークにチケットを用意してもらい、ロンドンへと飛んだのです。

ウェンブリーでの再会:復活への第一歩
私が観たのは、ロンドン・ウェンブリー・スタジアムのショウ。パスも用意していただいていたので、メンバーに会えるチャンスも狙い、ロンドン在住の通訳新堀さんと早々に会場に向かいました。なんとかメンバーの声を収録しようと試みましたが、放映されたドキュメンタリーを見るとわかる通り、その時の彼らは、とてもナーバスで、多くの人たちの前で歌うこと、踊ることに自信がない時。メディアに会うといった余裕がなかったことを知り、申し訳なかったと反省するのです。
でもその時の私は、とにかく会おう!と。海外取材で待つことは、慣れっこになっていましたが、待ちすぎて、時間だけが過ぎ、結局空振りに終わることも何度かありました。その経験を踏まえ、ホスピタリティエリアに行くと、なんとジェイソンがソファに座り、ギターを弾いていました。もちろんゲストに囲まれていて、ちょっと余裕さえ見えました。
まずはジェイソンに挨拶をして、他のメンバーの様子を聞くと、ゲイリーはコンサート前の発声練習でここには来ない、と。これは無理かな〜と思い、マークのマネージャーがバンドの責任を任されていたので、彼に連絡するも、会える可能性はないような返事。そこを粘ると、可能性は薄いけど、楽屋と舞台を結ぶ廊下で待っていて、とのことでした。
そこで、どのぐらい待っていたかわかりませんが、ついに開演10分ぐらい前に、舞台の真後ろまで来て、という伝言が届きました。舞台の後ろって、そこからステージに上がる本当に直前の場所。そこには、ゲイリーをドロップアウトした元レーベルの人たちも待っていました。真っ暗なこの場所で挨拶は無理かも、と思っているとメンバーがゾロゾロやってきたのです。
そしてゲイリーが我々を見つけると、本番5分前にも関わらず、メンバー4人が揃って挨拶に来てくれたのです。本当にわずかな時間でしたが、来てくれてありがとうという温かい言葉をいただき、彼らをステージに見送りました。ちなみに元レーベルへの挨拶はスルーしていました。

劇的カムバックと5人での『Progress』
急いで席に付き、ショーがスタートすると、ファンの歌声で彼らの生声が聞こえないほどの熱狂シャワーを浴び、これだけの人たちが4人を待っていたことを実感することができました。当時の彼らも、ファンの気持ちと同じように、自分たちの新たな一歩が現実味を持ってイメージすることができたのだと思います。
その後、シングル「Patience」で、劇的なカムバックを果たすのですが、彼らにとっては、当時は永続的なものであるとはまだ考えていなかったようです。ただ、ジェイソンは強い覚悟で持って、クレジットを4人にする、つまり印税部分の変更を求めたことは、以前のバランスとは違う、新しいテイク・ザットのあり方を示したと感じました。
そしてゲイリーも重圧から逃れられる、という思いの中で、グループにとって大切なのは、バランスであることを理解したシーンは感動的でした。そして、ジェイソンの思いはそれだけではなかったというのも意外でした。カムバックの成功後も、5人で始め、4人で再出発したことにより、やはり確執のあったロビーとのことを整理するための動きを誰よりも考えていたのがジェイソンだったと知ったのです。

そして4人は、久しぶりに来日プロモーションも果たし、本格的な活動を始めました、徐々に、テイク・ザットの光を取り戻していったのです。


マークは、兄弟のようなロビーとの関係性を続けていました。それをニュースなどで知ると、嬉しい気持ちになったものです。最初のドキュメンタリーでロビーからのメッセージを見るマーク以外のメンバーの複雑な表情はリアルでしたが、ジェイソンは修復ではなく、整理するという意味で、ロビーとの関わりを再度持つことが、テイク・ザットが次に進む道であると考えたのでしょう。でもそれは、ジェイソンがグループに残る、という意味ではなかったのは切ない決断ではありました。
最大のヒット「Shine」が生まれ、ソングライターとしてのハワード、マークが認められ、初のスタジアム・ツアーとなるThe Circus Tourの成功で、テイク・ザットは第1期よりも大きな成功を収めます。この頃からロビーへのアプローチは始まりました。
ロビーといえば、今度はLAに居を移し、引きこもり状態。成功と不安が紙一重となる現実をそのまま生きているようなロビーでした。その後のことはドキュメンタリーにあるので省きますが、いかに5人で活動することが現実となるかが、とても興味深かったです。
そして迎えるアルバム『Progress』リリース、そしてスタジアム・ツアーです。このツアーがロビーを立ち直させる意味合いが大きいと語るメンバーは、ここで家族のような絆が生まれたのかもしれません。もちろん観に行きました。カムバック後のテイク・ザット、ロビーのソロ、そして5人のテイク・ザットという構成は、とてもゴージャスで、見応えがあるものでした。
ドキュメンタリーでは、ロビーが楽しそうで、メンバーも確執を乗り越え5人のテイク・ザットを新たに構築できたことを喜んでいるかのようでした。コンサート後、本当に嬉しくて、ホテルに戻った私は、ツアー後にジェイソンがグループを辞めるという発言をしていたなんて、夢にも思いませんでした。ジェイソンにとって、ここまでがテイク・ザットとしての使命だったのかもしれません。大きな使命を持って動いてくれたのでしょう。

3人での成熟、そして続く伝説
そしてゲイリー、ハワード、マークは、3人になってまだ続けるのか、という悩みを乗り越え、3人のテイク・ザットも成功へと導きます。2015年のアルバム『III』は、私のお気に入りでもあります。3人になって13年、彼らの歩みは止まりません。ようやく、一つのグループとしての形が出来上がってきたように見えます。
今後、ロビーがなんらかの形で活動することは彼自身否定していません。なぜなら、テイク・ザットは彼にとって、帰るべき場所の一つであり、メンバーでいることを心地よく思えることができている場所であるからです。ジェイソンは、わかりません。本当に彼は使命を果たし、燃え尽きてしまったのかもしれません。
ドキュメンタリーのエンドクレジットには、今年発売予定のアルバムに入るかもしれない新曲「Superstar」が流れました。そして今年はThe Circus Tourの再現スタジアム・ツアーが開催されます。これほどの大きな規模で、長年活動しているグループが歴史上にいたでしょうか?
最新の情報としては、ロビーは、新作『Brit Pop』で、ビートルズを抜いて、16作1位という記録を打ち立てました。収録曲「Morrissey」はゲイリーとの共作になっています。二人の創作作業は、これからも続いていくでしょう。まだまだ物語は続いていきます。次のドキュメンタリーが出来上がるほどのサプライズがきっと待っているでしょう。ただ今は、イギリス、ヨーロッパ音楽史上最大のポップ・グループとなったテイク・ザットの歴史をドキュメンタリーで再確認できることが何よりも嬉しいのです。

Written by 今泉圭姫子
今泉圭姫子のThrow Back to the Future』 バックナンバー
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- 第2回 :バグルス『ラジオ・スターの悲劇』
- 第3回 :ジャパン『Tin Drum』(邦題:錻力の太鼓)
- 第4回 :クイーンとの出会い…
- 第5回:クイーン『世界に捧ぐ』
- 第6回:フレディ・マーキュリーの命日に…
- 第7回:”18 til I Die” ブライアン・アダムスとの想い出
- 第8回:ロキシー・ミュージックとブライアン・フェリー
- 第9回:ヴァレンシアとマイケル・モンロー
- 第10回:ディスコのミュージシャン達
- 第11回:「レディ・プレイヤー1」出演俳優、森崎ウィンさんインタビュー
- 第12回:ガンズ、伝説のマーキーとモンスターズ・オブ・ロックでのライブ
- 第13回:デフ・レパード、当時のロンドン音楽事情やガールとの想い出
- 第14回:ショーン・メンデス、音楽に純粋なトップスターのこれまで
- 第15回:カルチャー・クラブとボーイ・ジョージの時を超えた人気
- 第16回:映画「ボヘミアン・ラプソディ」公開前に…
- 第17回:映画「ボヘミアン・ラプソディ」サントラ解説
- 第18回:映画「ボヘミアン・ラプソディ」解説
- 第19回:クイーンのメンバーに直接尋ねたバンド解散説
- 第20回:映画とは違ったクイーン4人のソロ活動
- 第21回:モトリー・クルーの伝記映画『The Dirt』
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