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今泉圭姫子連載第19回:クイーンのメンバーに直接尋ねたバンド解散説

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ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されている今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第19回。今回もクイーンを描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』の熱気は一向に収まらないクイーンについて。映画公開以降に今泉さんがよく聴かれる「本当にライヴ・エイド前は解散寸前だったのですか?」という質問。今泉さんは1984年、85年の来日時にクイーンのメンバー本人に“解散説”について尋ねていました。そう聞かれた彼らは何と答えたのか?(これまでのコラム一覧はこちらから)


映画「ボヘミアン・ラプソディ」は、いまやブームと呼んでいいかもしれません。当初は、70年代からクイーンを愛するロイヤルなファン、世界の音楽ファンに向けた作品だったのが、映画が公開になり、時間が経つにつれ、誰もが一度は聴いたことがある名曲に秘められたエピソードや、フレディ・マーキュリーの孤独な生涯、歌うことを愛した男の生き様が、音楽ファンだけでなく、クイーンのリアルタイムを知らない10代、20代の若者の琴線に触れる作品となっていきました。

映画をきっかけにクイーンの音楽を聴くようになった人たちは、きっとさまざまなクイーン・ストーリーを読みあさり、さらに彼らの魅力を知りたいという衝動にかられていると思います。ザ・ビートルズがリアル・タイムではない私にとって、彼らの音楽に魅了された高校生の時、遡って音楽を聴き始め、彼らが紹介されている記事を探し、“知りたい、知りたい病”に冒されました。そして一気にザ・ビートルズの音楽を聴き、ついに『ホワイト・アルバム』が自分の一番のお気に入りとなったのです。映画からファンになった若者たちは、クイーンのどのオリジナル・アルバムに感動し、生涯のベスト・アルバムになるのでしょうか?とても興味深いです。

最近「本当にライヴ・エイド前は解散寸前だったのですか?」とよく聞かれます。そこにこだわるんだ〜、と新鮮な気持ちで受け止めていますが、10年以上のキャリアを重ねたバンドにとって、一度や二度は訪れる危機のひとつであると私は思っていたので、映画を見て、多くの人が真相を知りたくなるポイントにあらためて自分も向き合ってみるのです。1984年、ロジャーとジョンが『The Works』のプロモーションで来日しました。その年は8月にヨーロッパ、UKツアー、10月に南アフリカのツアーが入っていただけなので、プロモーションでの来日だったかと思います。当時「全英トップ20」を放送していたラジオ日本に二人はやってきました。連れてきてくれた宇都宮カズさんは(クイーンの初期から裏で支えてきた音楽プロデューサーであり、彼らの友人)「ラジオ局に出向くのは珍しかったよ」とあとで話をしてくれましたが、当然自分の番組のために足を運んでくれたロジャーとジョンを前に、嬉しさを隠しきれない自分がいたことは間違いありません。

その時のインタビューを聞き返すと、やはり解散説についてズバリ聞いていました。舞い上がってるわりには、ズケズケと聞いている自分にびっくりです。声は今では考えられないほどのブリブリ振りで、「解散説がありますが、もし一人が抜けるようなことがあったら、クイーンは解散してください。クイーンはこの4人であって欲しいのです」と。いや〜、こんなことを業界5年目の女の子が質問しているのを横で今の私が聞いてたら、即退場を通告しています。ロジャーは「僕たちもそういう考えでいたい。クイーンは今の4人がクイーンだから。誰かが抜けたらクイーンじゃないから」と。

まず1984年から解散説はあったんだ、という事実を思い出しました。でもその後そういった状況にあっても、『The Works』から「Radio Ga Ga」や「Hammer To Fall」が大ヒットしたことは、それによって彼らのモチベーションが再びアップしたと言えます。そして1985年ライヴ・エイドの年。クイーンは3月にジャパン・ツアーを行っています。そしてフレディはソロ・アルバムのリリースもありました。来日時、インタビュー嫌いなフレディは、ソロのために何本かのインタビューを受け、その中のひとつを私がやらせていただきました。その時も解散の噂を直撃しています。憧れの人に会えたという喜びを抑え、よくぞ聞いたな、とここでは自分を褒めたいと思います。その時フレディは「クイーンの解散はありえない。僕がソロ・アルバムを発表したことで、グループの絆はますます強くなったと思う。僕たちはこれからもクイーンとして活動していくつもり。今のところはね。でもいつ何が起こるかわからないし、突然お互いの顔を見るのも嫌になるかもしれない。そうなったら解散もありうるけれど、今は4人で活動していくのが楽しいからね。クイーンはクイーンとして今後もやっていくよ」と話しています。

フレディー

つまり、「グループが大きくなればなるほど周りに存在するスタッフの数も増え、昔とは違う環境の中でさまざまな方向性が見えてきてストレスになる」というバンドであれば必ず経験する時期が、クイーンにとっては1984、85年だったのでしょう。解散は考えていなかったとしても、どうやって昔のようなモチヴェーションを4人がともに上げていくことができるか、というのはバンドを続けていく上でとても重要なことです。そういった時代が彼らにもあり、ライヴ・エイドは4人の結束をさらに強め、活動を続けていく大きな勇気となったのだと解釈できるかと思います。

最後に、1984年のジョンとロジャーのインタビューを少し紹介しましょう。まずロジャーが3人の性格について話しています。「ジョンはとても静かだけど、突然クレイジーになる。ディスコが好き。ブライアンはいつもシリアス。フレディは気が強くて、外交的で完璧主義者だけど、ユーモアのセンスがあるんだ」と。また1984年の時点で二人の好きなクイーンの楽曲をピックアップしてもらっています。ジョンは「Dragon Attack」。ロジャーは「The March Of The Black Queen」。意外な答えです。「最近ではシンプル・マインズ、U2、ビッグ・カントリーがいいね。僕たちのこれからの方向性を今から語るのは難しいけれど、いつも何かモダンなものを取り入れてトライしていく精神は失いたくない」とロジャー。そしてジョンは「未来のことを話すのは難しいよね。今後を予測することはできない。でもソロをやったとしても、バンドは続けていきたい」と。とても前向きな二人でした。

Queen – The March of The Black Queen (Official Lyric Video)

 

私はその後ロジャーに血液型を聞いています。まったく今聞くことじゃないだろう〜とついに自分にレッド・カードですが、ロジャーは素直に「普通のO型」と即答でした。海外のアーティストはいつも「赤」と笑いを誘い、「知らない」と答える人が多かったので、血液型を知っているロジャーに当時はびっくりしました。

Written By 今泉圭姫子


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映画『ボヘミアン・ラプソディ』
2018年11月9日日本全国ロードショー
配給:20世紀フォックス映画
© 2018 Twentieth Century Fox
映画公式サイト


連載『今泉圭姫子のThrow Back to the Future』 バックナンバー


今泉圭姫子(いまいずみ・けいこ)

ラジオDJ、音楽評論家、音楽プロデューサー
1978年4月、湯川れい子氏のラジオ番組「全米Top40」のアシスタントDJのオーディションに合格し、この世界に入る。翌年大貫憲章氏とのコンビでラジオ番組「全英Top20」をスタート。以来現在までにラジオDJ以外他にも、テレビやイベント、ライナー執筆など幅広く活動。また、氷室京介のソロ・デビューに際し、チャーリー・セクストンのコーディネーションを行い、「Angel」のLAレコーディングに参加。1988年7月、ジャーナリスト・ビザを取得し、1年間渡英。BBCのDJマーク・グッドイヤーと組み、ロンドン制作による番組DJを担当。
1997年、ラジオ番組制作、企画プロデュースなど活動の場を広げるため、株式会社リフレックスを設立。デュラン・デュランのジョン・テイラーのソロとしてのアジア地域のマネージメントを担当し2枚のアルバムをリリース。日本、台湾ツアーも行う。
現在は、Fm yokohama「Radio HITS Radio」に出演中。

HP:http://keikoimaizumi.com
Twitter:https://twitter.com/radiodjsnoopy
Radio:Fm yokohama「Radio HITS Radio」

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