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アンとナンシーのウィルソン姉妹、ハートの想い出。Japan Jam ’79やインタビューを通して

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Photo: Michael Ochs Archives/Getty Images

ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されている今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第56回。今回は、「入手困難盤復活!! HR/HM 1000キャンペーン北米編」で5枚のアルバムが再発となるハート(HEART)について。これまでの連載一覧はこちらから

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Japan Jam ’79

いきなりですが、私のフェス・デビューは、江ノ島で行われた「Japan Jam ’79」でした。

この仕事を始めてから、まだ1年しか経っていない頃です。レコード会社の方から、たくさんの注意事項をいただき、まるで戦闘体制のような準備をして、妹と江ノ島に向かいました。前日が雨だったのか、会場がぬかるんでいたことを覚えています。TKO、ファイアーフォール、ハート、サザンオールスターズ、ビーチ・ボーイズといったラインナップのフェスでした。

私の目的は、初来日のハート。「Magic Man」「Barracuda」のギター・イントロを生で聴きたい、アン・ウィルソンの歌声を感じたい、そんな思いがフェス初体験に勇気を与えました。今のように、整備された会場ではなかったのですが、未知なる海外のフェスに足を運んだような、そんな興奮がありました。(編註:下記Facebookの写真はJapan Jam ’79にてハートのライヴで演奏するギタリストのロジャー・フィッシャー)

 

ハートの変遷

初めてハートに出会ったのは、1978年リリースのアルバム『Little Queen』でした。「Barracuda」のイントロで鳥肌が立ち、アン・ウィルソンの迫力あるヴォーカル、そしてバラードでも情感溢れる歌声を聞かせてくれる彼女のヴォーカリストとしての魅力にハマりました。

それからは、遡って1975年のデビュー・アルバム『Dreamboat Annie』に収録された「Magic Man」に夢中になり、タイトル曲「Dreamboat Annie」のアコースティックサウンドに乗せ、語るような歌声とナンシー・ウィルソンのギターが美しく、うっとりと聴き惚れたものです。

Dreamboat Annie

すっかりハートのファンになった私は、1978年にリリースされたバンドにとってとても重要な作品『Magazine』(3rdアルバム)が、『Little Queen』(2ndアルバム)の前にレコーディングされていたことを知るのです。

実は1977年にリリースされた『Magazine』は、Mushroom Recordsが、バンドの許可なく未完成のままリリースしたアルバム。デビュー・アルバムのプロモーションを巡って、レーベルとバンドとの間に溝ができ、レコーディングをストップしたにもかかわらず、2枚契約だった、いや契約書にサインしていない、といった攻防が続き、ハートは弁護士をたて、ようやくPortrait Recordsに移籍。

その後『Magazine』を再録音、リミックスし直して、1978年に改めてリリースしました。デビューしたばかりのバンドが、このようなトラブルに巻き込まれるというのは、今後の音楽活動に影響を与えるのではという不安を抱かせ、精神的なダメージも大きかったと思います。

そんな曰く付きのアルバムではありますが、『Magazine』からは、「Heartless」という名曲が生まれ、ライヴでもたびたび披露しているバッド・フィンガーのカバー「Without You」が収録され、ハート史には欠かせない作品となりました。

Heartless

ハートは『Dreamboat Annie』『Little Queen』『Magazine』に続いて、1978年『Dog & Butterfly』をリリースします。オープニングの「Cook With Fire」は、「JAPAN JAM ’79」でのオープニング曲でもありました。アルバムからは「Straight On」の大ヒットが生まれています。

そして1980年『Bebe Le Strange』をリリースし、タイトル曲がヒット。1982年は『Private Audition』、1983年『Passionworks』をリリースしますが、この2枚は大きなヒットに至らず、この時期はハートにとっての暗黒の時代と言っていいかもしれません。

『Private Audition』収録の「Perfect Stranger」は、さまざまな構成で迫力あるヴォーカルを聴かせてくれる大作だと思っていますが、なぜヒットしなかったのかが不思議です。しかし、その後のハートの快進撃はご存知の通りです。Capitol Recordsに移籍し、1985年『HEART』をリリースし、初の全米アルバム・ナンバー・ワンに輝いたのです。シングルとしても「What About Love」「Never」「These Dreams」の大ヒットを生みました。

Heart – These Dreams (Official Music Video)

 

アンとのインタビュー

私が憧れのアン・ウィルソンにインタビューできたのは、1982年6月のロンドンでした。クイーンのミルトンキーンズのライヴを観に行く予定だった私は、その日のサポート・バンドのうちの1組がハートであることがわかり、日本のレーベルに掛け合い、インタビューのセッティングをお願いしました。

アメリカのバンドがコンサートのために渡英する場合、イギリスのメディア中心にプロモーションが組まれるので、アジア地域のメディアが入り込むのは難しいのですが、あの当時はまだ緩かったからなのか、イギリスのレーベルの方ともよく仕事をしていたということもあり、ミルトンキーンズの次の日、ハートがハマースミス・オデオンでコンサートを行う当日にインタビューは実現しました。

風格がある、ルックスも迫力ある、といったイメージが強かったアン・ウィルソンですが、目の前に座った彼女は、とても可愛らしい人だったという記憶があります。裏話として、クイーンのサポートとして演奏を終えてから、バックステージのホスピタリティ・エリアで憧れのロバート・プラントに会えた、という体験を興奮気味に話すアンは、まるでロック少女のようでした。

彼女にとってレッド・ツェッペリンは憧れのバンド。ハートのライヴでも必ずといっていいほどラストには、レッド・ツェッペリンの「Rock And Roll」を演奏しています。バックステージで憧れの人と遭遇するなんて機会は、そうあるものではありません。実は私もその時にロバート・プラントにバッタリ。そして「日本のメディアですが、お話を伺ってもいいですか?」とマイクを突き出すといった大胆不敵な行動に出ました。そんな勇気は今はありませんが、日本人の小さい女の子(当時はそう見られていました。笑)のリクエストを、ロバート・プラントは快く引き受けてくれました。いい時代でした! そのインタビュー音源が今は手元にないのが残念です(かなり図々しいこと聞いたんじゃないかとヒヤヒヤですが)。なので、アンと私はロバート・プラントに出会えた喜びで盛り上がったのです。

前述したように、私がインタビューした後にハートは混迷の時期に入るので、1985年のブレイクは、何よりも嬉しい出来事でした。全米のトップ・バンドになったハートは快進撃を続けますが、私にとっては、70年代に創り上げたハート・サウンドは、変わらず大切な作品たちです。

そんな作品の1枚、曰く付きの『Magazine』が、「入手困難盤復活!! HR/HM 1000キャンペーン北米編」としてリリースされるということで、ぜひこの機会に手にしていただければと思います。

Written By 今泉圭姫子


ハート『Magazine』
1977年4月19日発売
国内盤CD1000円盤iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music


今泉圭姫子のThrow Back to the Future』 バックナンバー


今泉圭姫子(いまいずみ・けいこ)

ラジオDJ、音楽評論家、音楽プロデューサー
1978年4月、湯川れい子氏のラジオ番組「全米Top40」のアシスタントDJのオーディションに合格し、この世界に入る。翌年大貫憲章氏とのコンビでラジオ番組「全英Top20」をスタート。以来現在までにラジオDJ以外他にも、テレビやイベント、ライナー執筆など幅広く活動。また、氷室京介のソロ・デビューに際し、チャーリー・セクストンのコーディネーションを行い、「Angel」のLAレコーディングに参加。1988年7月、ジャーナリスト・ビザを取得し、1年間渡英。BBCのDJマーク・グッドイヤーと組み、ロンドン制作による番組DJを担当。
1997年、ラジオ番組制作、企画プロデュースなど活動の場を広げるため、株式会社リフレックスを設立。デュラン・デュランのジョン・テイラーのソロとしてのアジア地域のマネージメントを担当し2枚のアルバムをリリース。日本、台湾ツアーも行う。
現在は、Fm yokohama「Radio HITS Radio」に出演中。

HP:http://keikoimaizumi.com
Twitter:https://twitter.com/radiodjsnoopy
Radio:Fm yokohama「Radio HITS Radio」



 

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