Columns
ボン・ジョヴィ新作アルバム『Forever (Legendary Edition)』とツアーの発表

ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されているDJスヌーピーこと、今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第103回。
今回は2025年10月24日に新作『Forever (Legendary Edition)』が発売になり、ヴォーカリストのジョンの声帯手術を乗り越えてのツアーを発表したボン・ジョヴィについて。
<関連記事>
・ボン・ジョヴィ、ジョンの声帯手術を乗り越えてツアー復帰を発表
・ボン・ジョヴィ新作『FOREVER (Legendary Edition)』解説
・【デビュー40周年】ボン・ジョヴィ(Bon Jovi)のキャリアを改めて振り返る
発売前の発表
10月22日深夜1時、ちょっとしたドキドキ感と不安を抱きながら、ボン・ジョヴィからのメッセージ発信を待つためにYouTubeをスタンバイ!不安の原因は、数日前に噂された、今回がフェアウェル・ツアーになる、というニュースのためでした。
2022年、ジョンは声帯手術を受けました。ヴォーカリストとして声を出すことが困難となり、手術を決意した経緯は、2024年に公開された結成40周年ドキュメンタリー『ボン・ジョヴィ:Thank You, Goodnight』(ディズニープラス)で、赤裸々に語られていました。そんな苦悩の日々を乗り越えて、ツアーを行うというニュースが伝わってきたわけです。そして、それが最後のツアーになるという、耳を疑う情報も合わせてついてきました。
昨今、70年代、80年代に活躍してきたアーティスト達のフェアウェル・ツアーがあまりにも多く、本当にこれが最後なの?と思わせるほど、その舞台に立つ人たちの素晴らしいパフォーマンスとエネルギーに驚かされてきた1年。悲しさよりも、最後である事実を信じられない気持ちで見ている自分がいました。
しかし、ボン・ジョヴィもフェアウェル!という噂が流れた時は、なぜか違う感情が生まれてきたのです。とにかく悲しくて、ただただ切なくて、といったセンチな気持ちでした。伊藤政則先生の「My Friends, Bon Jovi」という掛け声と共に、西武球場のステージに登場したデビューしたばかりの彼らを41年前に見て以来、日本のファンとボン・ジョヴィの絆は、他の国の繋がりとは違う特別なものがあると信じてきました。そんな彼らがライヴから幕を引くとなると、その思いは格別です。YouTubeでの配信が始まる前は、何も正式発表されていないにも関わらず、インターネットであらゆる情報をチェックしていた自分がいました。
YouTube生配信で語られたこと
深夜1時、いよいよスタート。ジョンも、ティコもデヴィッドも、3人を支えてきたメンバーも笑顔でした。久しぶりにバンドとして歌うことを、誰よりも楽しみにしていたのはジョンでしょう。自分の声を試しながらも、音を外すことなく、しっかりと歌い切ることに集中していた3曲。「Legendary」、新曲の「Red, White and Jersey」、そして「It’s My Life」。
曲間には、2026年夏のツアーの日程が発表されましたが、その画面には、フェアウェルの文字はありませんでした。NYのマディソン・スクエア・ガーデン4days、スコットランド、アイルランド、そしてロンドンはウェンブリー・スタジアム。当然ファンの書き込みには、LAは?ドイツは?日本は?と。
まずはフェアウェルと銘打ってなかったことに安堵感を覚えながらも、ライヴ配信のパフォーマンスを見ながら、ジョンが現在発表されている日程以外をプラスしてくれるのかどうか、少し心配になったことは否めません。声を出して歌うことには成功したものの、必死に歌う姿に、まだまだリハビリは続けられていることを感じました。この段階で日本にも絶対に来てほしい、と言っていいのだろうか!? いや、でも今は、そんなことを考えても仕方ないこと。再出発するという決意で臨んでいるジョンを100%信じるしかありません。
新作アルバムとあの噂
10月24日には、『Forever (Legendary Edition)』が発売になりました。昨年リリースになった『Forever』に、スペシャル・ゲストを迎える形で、再レコーディングしたアルバム。発売日の前には、ロビー・ウィリアムズとの共演「We Made It Look Easy」が公開になりました。2人とも100%のアグレッシヴなヴォーカルスタイルを封印し、さわやかに歌っているのが印象的でした。
アルバムには、ジェイムス・ベイ、ライアン・テダー、ジョー・エリオット、アヴリル・ラヴィーンなど意外なアーティストたちが参加し、魅力的なコラボレーション作品に仕上げられました。すでに公開されていたブルース・スプリングスティーンとは、ニュージャージーを代表する先輩後輩の共演が素晴らしく、女性アーティスト、レイニー・ウィルソン、アヴリル・ラヴィーンとの共演は、楽曲に新たな息吹を吹き込んだようでした。
また、ジョンの長年の友人であるビリー・ファルコンも参加しています。ビリーのデビューにあたり、ジョンが尽力していたことは知られていますが、1991年、ニューヨーク取材に行った際、ジョンのニュージャージーの自宅でビリーのデビューショーケースが開催され、そこに招かれました。そのアットホームなアコースティック・ライヴは、もちろん記憶に残る素敵な時間でしたが、ジョンの自宅にいるという自分が浮き足立っていたことも忘れません。
最後に、やはり噂は出てきました。このツアーにリッチー・サンボラが参加するという……。噂に左右されるのはもうやめたいですが、実現するかしないかということではなく、楽しみの一つとして、今は心に留めておくことにします。まずは、デヴィッド、ティコが支え続けたジョンの再出発をみんなでお祝いです。そして来日公演がありますように!
Written by 今泉圭姫子

2025年10月24日発売
CD&LP / iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music
- ボン・ジョヴィ アーティスト・ページ
- ボン・ジョヴィ「It’s My Life」がSpotifyで10億回再生を突破
- デビュー40周年のボン・ジョヴィ:日本のファンとバンドからの日本への愛
- ボン・ジョヴィ、YouTubeにて過去の名曲ミュージック・ビデオをHD化
- ボン・ジョヴィ40周年を記念するドキュメンタリーの予告編が初公開
- ボン・ジョヴィ『Keep The Faith』:グランジの時代にサウンドを進化させた1枚
- ボン・ジョヴィ『Cross Road』解説:日本で初の1位、人生が交差したベスト
- 初の全米シングル1位「You Give Love A Bad Name」
今泉圭姫子のThrow Back to the Future』 バックナンバー
- 第1回 :U2『The Joshua Tree』
- 第2回 :バグルス『ラジオ・スターの悲劇』
- 第3回 :ジャパン『Tin Drum』(邦題:錻力の太鼓)
- 第4回 :クイーンとの出会い…
- 第5回:クイーン『世界に捧ぐ』
- 第6回:フレディ・マーキュリーの命日に…
- 第7回:”18 til I Die” ブライアン・アダムスとの想い出
- 第8回:ロキシー・ミュージックとブライアン・フェリー
- 第9回:ヴァレンシアとマイケル・モンロー
- 第10回:ディスコのミュージシャン達
- 第11回:「レディ・プレイヤー1」出演俳優、森崎ウィンさんインタビュー
- 第12回:ガンズ、伝説のマーキーとモンスターズ・オブ・ロックでのライブ
- 第13回:デフ・レパード、当時のロンドン音楽事情やガールとの想い出
- 第14回:ショーン・メンデス、音楽に純粋なトップスターのこれまで
- 第15回:カルチャー・クラブとボーイ・ジョージの時を超えた人気
- 第16回:映画「ボヘミアン・ラプソディ」公開前に…
- 第17回:映画「ボヘミアン・ラプソディ」サントラ解説
- 第18回:映画「ボヘミアン・ラプソディ」解説
- 第19回:クイーンのメンバーに直接尋ねたバンド解散説
- 第20回:映画とは違ったクイーン4人のソロ活動
- 第21回:モトリー・クルーの伝記映画『The Dirt』
- 第22回:7月に来日が決定したコリー・ハートとの思い出
- 第23回:スティング新作『My Songs』と初来日時のインタビュー
- 第24回:再結成10年ぶりの新作を発売するジョナス・ブラザーズとの想い出
- 第25回:テイラー・スウィフトの今までとこれから:過去発言と新作『Lover』
- 第26回:“クイーンの再来”と称されるザ・ストラッツとのインタビュー
- 第27回:新作を控えたMIKA(ミーカ)とのインタビューを振り返って
- 第28回:新曲「Stack It Up」を発売したリアム・ペインとのインタビューを振り返って
- 第29回:オーストラリアから世界へ羽ばたいたINXS(インエクセス)の軌跡
- 第30回:デビュー20周年の復活作『Spectrum』を発売したウエストライフの軌跡を辿る
- 第31回:「The Gift」が結婚式場で流れる曲2年連続2位を記録したBlueとの思い出
- 第32回:アダム・ランバートの歌声がクイーンの音楽を新しい世代に伝えていく
- 第33回:ジャスティン・ビーバーの新作『Changes』発売と初来日時の想い出
- 第34回:ナイル・ホーランが過去のインタビューで語ったことと新作について
- 第35回:ボン・ジョヴィのジョンとリッチー、二人が同じステージに立つことを夢見て
- 第36回:テイク・ザット&ロビー・ウィリアムズによるリモートコンサート
- 第37回:ポール・ウェラー、初来日や英国でのインタビューなどを振り返って
- 第38回:ザ・ヴァンプスが過去のインタビューで語ったことと新作について
- 第39回:セレーナ・ゴメス、BLACKPINKとの新曲と過去に語ったこと
- 第40回:シン・リジィの想い出:フィル、ゲイリーらとのインタビューを振り返って
- 第41回:クイーン+アダム・ランバート『Live Around The World』
- 第42回:【インタビュー】ゲイリー・バーロウ、7年ぶりのソロ作品
- 第43回:コロナ禍にステイホームで聴きたい新旧クリスマス・ソング
- 第44回:ジャスティン・ビーバー、成長が垣間見えた約3年ぶりのライヴ
- 第45回:アルバムが控えるポール・スタンレーとKISSの想い出を振り返って
- 第46回:コナン・グレイ、孤独の世界に閉じこもって生まれた音楽と希望の新曲
- 第47回:グレタ・ヴァン・フリート、“ツェッペリンらしい”と言われることを語る
- 第48回:クイーンの隠れた名曲:映画で彼らを知った人に聴いて欲しい楽曲
- 第49回:ブルー(Blue)「The Gift」の魅力:今も日本で愛される名曲の想い出
- 第50回:「ハイスクール・ミュージカル」シリーズとは?
- 第51回:ブライアン・メイ初のソロアルバムを振り返る
- 第52回:離婚を歌ったケイシー・マスグレイヴスが3年前に語っていたこと
- 第53回:ロジャー・テイラーのヴォーカルと楽曲
- 第54回:ABBAの新作と、“第2のビートルズ”と言われていた40年前
- 第55回:ザ・ウォンテッドの復活:休止前の想い出と最新インタビュー
- 第56回:アンとナンシーのウィルソン姉妹、ハートの想い出
- 第57回:80年代後半に活躍したグラス・タイガーを振り返る
- 第58回:ブライアン・メイのソロ2作目『Another World』を振り返る
- 第59回:ブライアン・メイ復刻盤『Another World』の聴き所
- 第60回:ポリスのドキュメンタリー『Around The World』とインタビュー
- 第61回:フィル・ライノットの生涯と音楽を振り返るドキュメンタリー映画
- 第62回:10代のジャネット・ジャクソンとのインタビューを思い返して
- 第63回:ブロンディのデボラ・ハリーとUK音楽シーンの女性達を振り返る
- 第64回:セバスチャン・イザンバールが語る新作や、故カルロス・マリンへの想い
- 第65回:クイーン『The Miracle』当時の想い出と未発表の新曲「Face It Alone」
- 第66回:『ビー・ジーズ 栄光の軌跡』で描かれる3兄弟と『小さな恋のメロディ』
- 第67回:アリアナ・グランデとのインタビューを振り返って
- 第68回:サム・スミスの最新アルバム『Gloria』と初来日の時に語ったこと
- 第69回:ブライアン・アダムス、6年ぶりの来日公演前に最近の活動を語る
- 第70回:洋楽アーティストが歌う“桜ソングス”のおすすめ
- 第71回:The 1975、過去のインタビューからの発言集
- 第72回:『ガーディアンズ』新作とザ・ザのマット・ジョンソンとのエピソード
- 第73回:来日直前サブリナ・カーペンター、今までの来日インタビューを振り返る
- 第74回:50周年のエアロスミス、1988年の来日インタビューを振り返って
- 第75回:オリアンティとのインタビューを振り返る
- 第76回:クランベリーズのドロレス・オリオーダンとのインタビューを振り返る
- 第77回:オリヴィア・ロドリゴ、2ndアルバムへのプレッシャーを語る
- 第78回:ロビー・ウィリアムスのインタビューとテイク・ザットとの関係性
- 第79回:今年クイーンが出場するNHK紅白歌合戦
- 第80回:ボン・ジョヴィを後押しした日本のファンとバンドからの愛
- 第81回:クイーン+アダム・ランバート来日公演
- 第82回:『ロッキー』と『プリティ・イン・ピンク』のサントラを振り返る
- 第83回:ボン・ジョヴィのドキュメンタリーは私たちに贈られたアナザー・ストーリー
- 第84回:テイラー・スウィフト、来日公演と報道の仕方、そしてそばにいてくれる音楽
- 第85回:ボン・ジョヴィデビュー40周年のバンドによる新たなチャプター
- 第86回:29年振りの来日公演が迫るテイク・ザット
- 第87回:カントリーは再度音楽と向き合えるチャンスを与えてくれる
- 第88回:7年振りの来日公演が控えるバステッド
- 第89回:29年振りの来日公演を行うテイク・ザット
- 第90回:ABBA最新のベスト盤『The Singles』
- 第91回:29年ぶりのテイク・ザット来日公演レポートとメンバーとの会話
- 第92回:『エルトン・ジョン:Never Too Late』:リアルな人生と最後に選んだ道
- 第93回:韓国を代表するテノール・シンガー、イム・ヒョン
- 第94回:ロッド・スチュワートの想い出と来日時のインタビュー
- 第95回:映画『BETTER MAN/ベター・マン』とロビー・ウィリアムス
- 第96回:ロビー・ウィリアムスの代表的MV
- 第97回:エルトン・ジョンの最新アルバム
- 第98回:モーガン・ウォーレン最新アルバム
- 第99回:行けなかったエアロスミス初来日公演と2枚あった『Rocks』
- 第100回:連載100回記念インタビュー
- 第101回:4年振りとなる新作を発売したスティックスを振り返る
- 第102回:2026年1月に来日を控えたブライアン・アダムス


















