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豪華ゲストが参加したボン・ジョヴィ新作『FOREVER (Legendary Edition)』解説

2024年に発売したボン・ジョヴィ(Bon Jovi)のスタジオ・アルバム『FOREVER』に豪華ゲストが追加参加したアルバム『FOREVER (Legendary Edition)』が2025年10月24日に発売される。日本盤は7インチ紙ジャケット仕様の2CD<デラックス>と通常盤1CDの2形態で発売となった。
このアルバムのレビューを音楽評論家の増田勇一さんに寄稿いただきました。
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声帯手術を乗り越えての新ツアー
日本時間の10月22日深夜、ボン・ジョヴィの新たなツアー開催決定が発表された。『FOREVER TOUR』と銘打ちながら、2026年7月にニューヨークのマディソンスクエアガーデンにて4公演を行ない、さらに8月下旬から9月上旬にかけてイギリスとアイルランドを廻るというもので、9月4日にはロンドンのウェンブリー・スタジアム(コンサート開催時の最大キャパシティは10万人超)での公演が組まれている。
ご存知の読者も多いはずだが、ジョン・ボン・ジョヴィは2022年に声帯の手術を受けており、単発的なライヴはともかくツアー実施も同年以来となる。前日の段階で、ボン・ジョヴィのオフィシャルXアカウントなどでは翌日に重大発表があることが仄めかされており、ファンの間ではさまざまな憶測や願望が飛び交い始めていたが、このニュースに多くの人たちが歓喜の声をあげることになったはずだ。
この発表に伴い、彼らはYouTubeを通じて、スタジオでのライヴ・パフォーマンス映像を公開している。そこでは2024年6月に世に出た現時点の最新アルバム『Forever』に収録の「Legendary」に加え、「Red, White And Jersey」と題された新曲と、お馴染みの「It’s My Life」の全3曲が披露されているが、それを見た誰もがジョンの復調ぶりに安堵をおぼえたことだろう。
もちろんこの沈黙期間中、メンバー・チェンジなどは起きていない。実際問題、このツアーが現時点で発表されている全7公演のみに限定されたものなのか、これからさらなる公演について発表されることになるのかは定かではない。しかし彼らの視線がここ日本を捉えていないとは考えにくいし、近いうちに朗報が届くものと信じていたいところだ。
魅力が何倍にも拡張された『Forever』
前述の「Red, White And Jersey」は8月29日に配信リリースされているが、この楽曲は10月24日に発売を迎える『Forever (Legendary Edition)』にも収められている。このアルバムは、すでにあちこちで報じられているように、豪華絢爛なゲストとのコラボレーションにより『Forever』の全曲が再構築された画期的なものだ。「Red, White And Jersey」はその幕開けを飾る形で追加収録されており、さらに日本盤CDには「Fight Somebody」と題されたもうひとつの新曲も収められている。世界的にはボン・ジョヴィ公式ストア限定のアナログ盤にのみ収録となっているこの曲をCDで聴くことができるのは、今のところ日本だけだったりもする。
この『Forever (Legendary Edition)』には、いわば1年半前に発表されたオリジナル盤に対してさまざまな足し算が施されているわけで、『Forever』自体に愛着や思い入れを抱いてきたリスナーにとっては、まさに同作の魅力が何倍にも拡張されたものということになるだろう。楽曲に他のアーティストをフィーチュアするという手法は、もはや斬新とはいえないし、そうした楽曲の豊富さがヒット作品を生むための常識のようになっているところもある。ただ、この作品は単純にそうしたフォーマットに則ったものではないように思えてならない。ちなみにジョン自身はこの作品のリリースに際して、次のようにコメントしている。
「このアルバムは単なるコラボレーション曲集ではなく、必然から生まれた作品だ。僕が受けた声帯手術とその後のリハビリは、2024年6月に『Forever』をリリースする過程でのドキュメンタリー的な旅路だった。スタジオでのレコーディングでは充分に歌うことができたが、過酷なツアーで求められる歌唱にはまだ届かなかった。誇りに思っているアルバム『Forever』をツアーやプロモーションで届けられない状況下において、僕はこの窮地を脱するため友人たちに協力を求めた。その誰もが素晴らしいシンガーであり、アーティストであり、そしてなにより素晴らしい人間だ。こうして生まれたのは、新たな視点と精神を宿したアルバムであり“友の助けがあってこそ、この世を生き抜ける”ということの証になっている。この作品をリリースする喜びと感謝には計り知れないものがあるし、アルバムにもそれが表れていると思う。僕にはこう断言できる。常に“僕(me)”よりも大きな存在がある――それは“僕たち(we)”なんだ」
この発言中にある“友の助けがあってこそ”という言葉が、ザ・ビートルズの名曲のタイトルである「With A Little Help From My Friends」に重ねたものであろうことは想像に難くない。しかもその“少しばかり力を貸してくれた友人たち”のなかに、ジョンにとって地元ニュージャージーの大先輩にあたるブルース・スプリングスティーンなどが含まれていたりするのだからたまらない。
ゲスト参加の人選と意義
他にも、大胆な作風による自伝映画『BETTER MAN/ベター・マン』が話題を集めたロビー・ウィリアムス、同じ時代を生きてきたデフ・レパードのジョー・エリオット、さらにはアヴリル・ラヴィーンといったさまざまなアーティストが参加しているが、そうした顔ぶれのゴージャスさ以上に注目すべきは、ジェイソン・イズベル、ビリー・ファルコン、ライアン・テダー(ワン・リパブリック)といった、実際に作曲に関与していたアーティストたちとの共演がこの場で実現していることだろう。なにしろ彼らが思い描くボン・ジョヴィの理想像といったものが、ジョン自身とヴォーカル・パートをシェアする形で体現されているのだから。
そして何よりも重要なのは、純粋な意味での楽曲の素晴らしさだろう。こうした企画色の強い作品の場合、下手をすれば物真似ショウ的なテレビ番組での“ご本人登場”の場面のようなことになりかねないところがある。本作がそこに陥っていないのは、各々の楽曲自体に充分すぎるほど力があり、どのコラボ相手も過度にジョンに寄せようとしたり、逆に自らの癖を強調しようとしたりしていないからだろう。
そこにはジョン自身と各アーティストとの間のリスペクトに満ちた関係性の美しさを感じることができる。また、「どんな曲でもジョンが歌えばボン・ジョヴィに聞こえる」のと同時に「ボン・ジョヴィの曲は、それを歌うことを望む人にはたいがい似合っている」ということが証明されているようにも思う。そして彼らの楽曲や歌詞が、基本的にはジョン個人の視点によるものではあっても、あらかじめ多くの人たちと共有することを前提に作られているのだということを改めて感じさせられる。
しかもこうして2026年のツアーが発表されたとなれば「もしかすると、このアルバムに参加したゲストたちとステージ上で……」といった妄想も広がってくる。しかも前述の「Red, White And Jersey」は、まさに今現在のボン・ジョヴィにとっての新たな名刺代わりになり得る曲だと思えるし、この曲もきっとライヴの場において重要な役割を担うことになるに違いない。もちろん何よりも気になるのは、彼らのライヴをここ日本で観られるのかどうかという点だが、今はそれが現実となることを信じつつ、この画期的アルバムに浸りながら、彼らのツアー復帰決定に拍手をおくりたいと思う。
Written By 増田勇一

2025年10月24日発売
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