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4年振りとなる新作『Circling From Above』を発売したスティックスを振り返る
ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されているDJスヌーピーこと、今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第101回。
今回は、今年7月に最新アルバム『Circling From Above』をリリースしたスティックス(STYX)ついて寄稿いただきました。
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新作を発売したスティックス
スティックスが4年振りとなる新作『Circling From Above』をリリースしました。近年コンスタントにアルバムをリリースし、昨年はフォリナーとのジョイント・ツアーも成功させているスティックス。70年代、アメリカのプログレッシブ・バンドとしてデビューし、80年代に入るとアメリカン・ロック・シーンを代表するバンドとなり、数々のヒット曲を生んでいます。
現在のメンバーは、トミー・ショウ、ジェイムズ・ヤング、チャック・パノッツォといった黄金期のメンバーを中心に、新加入のミュージシャンを迎えてのバンド編成となっています。そう、デニス・デ・ヤングはいません。彼の独特の高音ヴォーカルがスティックスの特徴の一つではありましたが、1999年のアルバム『Brave New World』を最後にソロ活動に入っています。
とは言え、スティックスとして作り上げてきたコンセプチャルな楽曲作りは、新作からも感じることができ、ドラマティックな作品は、今でもスティックスの名刺代わりとなっていると言っていいでしょう。シンセのイントロから、荘厳なギターの音色が加わりコーラスへ。オープニング曲「Circling From Above」は、まさにスティックス。そして2曲目の「Build And Destroy」で、懐かしさいっぱいになります。ちょっとリック・ウェイクマンっぽいキーボードですが…。
バンドの黄金期
私は、1976年、デニス、ジェイムズ、トミー、チャック、そして亡くなってしまったジョン・パノッツォの編成となってからのスティックスが大好きでした。当時は、クイーン好きで、ブリティッシュ・ロックに夢中だった私ですが、同じ時代に、コンセプト・アルバムを作り、大仰なサウンド作りのスティックスは、アメリカに耳が向かなかった私に、アメリカも面白いよ、と教えてくれたバンドでもありました。ちなみに、クイーンは『A Day at the Races』『News of The World』をリリースしていた時代です。
1977年の『The Grand Illusion』から「Come Sail Away」、1978年『Pieces of Eight』から「Blue Collar Man」で夢中になった私は、イギリスのバンドのアルバムを買うために貯めていたお小遣いを、スティックスにも使うことになったのです。今でも『Pieces of Eight』はよく聴くアルバムの中の1枚です。
振り返ると、スティックスは数多くのヒットを持つバンドではありますが、全米1位作品が少ないことに気づきます。アルバムは、1981年の『Paradise Theater』と、1983年「Mr. Roboto」が収録された『Kilroy Was Here』が、キャッシュボックス・チャートでのみで1位となっています(ビルボードチャートでは3位です)。そしてシングルは、1979年の「Babe」のみ。これは意外ですね。
世界中で、“ドモアリガト”と日本語の歌詞が入って大ヒットした「Mr. Roboto」でさえも3位でした。しかし、1位にならずとも、「Mr. Roboto」は、強いインパクトを音楽シーンに残し、そのフレーズは音楽を超え、日本語を印象付けた大ヒット曲だと言えるでしょう。
そういえば、1982年の来日公演時、日本武道館のステージ上で、デニス・デ・ヤングが、自慢の髭を剃り落とすといったイベントがありました。なぜかそれの光景が強烈に記憶に残っています。ちなみに1982年は、「Mr. Roboto」のヒット以前の『Paradise Theater』のヒットにより叶った初来日公演でした。結局、黄金期でのメンバーによる来日公演は、1982年のみでした。
来日時、トミー・ショウにインタビューしました。内容は、残念ながら全く覚えていないのですが、初来日とあって、来日記念パーティーが開催されるほど、日本が彼らを大歓迎したことは覚えています。
Written By 今泉圭姫子
スティクス『Circling From Above』
2025年7月18日発売
CD&LP / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
今泉圭姫子のThrow Back to the Future』 バックナンバー
- 第1回 :U2『The Joshua Tree』
- 第2回 :バグルス『ラジオ・スターの悲劇』
- 第3回 :ジャパン『Tin Drum』(邦題:錻力の太鼓)
- 第4回 :クイーンとの出会い…
- 第5回:クイーン『世界に捧ぐ』
- 第6回:フレディ・マーキュリーの命日に…
- 第7回:”18 til I Die” ブライアン・アダムスとの想い出
- 第8回:ロキシー・ミュージックとブライアン・フェリー
- 第9回:ヴァレンシアとマイケル・モンロー
- 第10回:ディスコのミュージシャン達
- 第11回:「レディ・プレイヤー1」出演俳優、森崎ウィンさんインタビュー
- 第12回:ガンズ、伝説のマーキーとモンスターズ・オブ・ロックでのライブ
- 第13回:デフ・レパード、当時のロンドン音楽事情やガールとの想い出
- 第14回:ショーン・メンデス、音楽に純粋なトップスターのこれまで
- 第15回:カルチャー・クラブとボーイ・ジョージの時を超えた人気
- 第16回:映画「ボヘミアン・ラプソディ」公開前に…
- 第17回:映画「ボヘミアン・ラプソディ」サントラ解説
- 第18回:映画「ボヘミアン・ラプソディ」解説
- 第19回:クイーンのメンバーに直接尋ねたバンド解散説
- 第20回:映画とは違ったクイーン4人のソロ活動
- 第21回:モトリー・クルーの伝記映画『The Dirt』
- 第22回:7月に来日が決定したコリー・ハートとの思い出
- 第23回:スティング新作『My Songs』と初来日時のインタビュー
- 第24回:再結成10年ぶりの新作を発売するジョナス・ブラザーズとの想い出
- 第25回:テイラー・スウィフトの今までとこれから:過去発言と新作『Lover』
- 第26回:“クイーンの再来”と称されるザ・ストラッツとのインタビュー
- 第27回:新作を控えたMIKA(ミーカ)とのインタビューを振り返って
- 第28回:新曲「Stack It Up」を発売したリアム・ペインとのインタビューを振り返って
- 第29回:オーストラリアから世界へ羽ばたいたINXS(インエクセス)の軌跡
- 第30回:デビュー20周年の復活作『Spectrum』を発売したウエストライフの軌跡を辿る
- 第31回:「The Gift」が結婚式場で流れる曲2年連続2位を記録したBlueとの思い出
- 第32回:アダム・ランバートの歌声がクイーンの音楽を新しい世代に伝えていく
- 第33回:ジャスティン・ビーバーの新作『Changes』発売と初来日時の想い出
- 第34回:ナイル・ホーランが過去のインタビューで語ったことと新作について
- 第35回:ボン・ジョヴィのジョンとリッチー、二人が同じステージに立つことを夢見て
- 第36回:テイク・ザット&ロビー・ウィリアムズによるリモートコンサート
- 第37回:ポール・ウェラー、初来日や英国でのインタビューなどを振り返って
- 第38回:ザ・ヴァンプスが過去のインタビューで語ったことと新作について
- 第39回:セレーナ・ゴメス、BLACKPINKとの新曲と過去に語ったこと
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- 第85回:ボン・ジョヴィデビュー40周年のバンドによる新たなチャプター
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