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エアロスミスを振り返る:行けなかった初来日公演と2枚あった『Rocks』

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Photo: Fin Costello/Redferns

ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されている今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第99回。

今回は、オリジナル・アルバム全20タイトルが、ミニLP仕様の紙ジャケットのスタイルで復刻され、第1弾として初期7枚が2025年7月30日に発売されることが決定したエアロスミスについて。

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2枚あった『Rocks』

我が家には、アルバム『Rocks』が2枚存在していました。当時まだ中学生だった3歳下の妹が、私と同じように洋楽ロックにハマり、2人で新譜情報を探っては、次に何を買うか、それを誰が買うかといった担当を決めていました。毎月のお小遣いでどうやりくりするかは、私たちにとって大事な会議だったのです(笑)

クイーンもキッスもチープ・トリックもエンジェルも、仲違いせず、シングルアルバムの担当はすんなり決まったのですが(あっクイーンはすんなりでもなかったかもしれません!)、エアロスミスの『Rocks』だけは、お互い譲ることがなく、結局妹が買うことになりました。しかし、なぜか我慢できずに、私も買ってしまったのです。

同じ家に住んでいるのですから、どちらが買っても聴くことはできるのですが、私にとっては、どうしても自分のコレクションに入れたい1枚だったわけです。今思うと、かなり効率が悪いですね!

Aerosmith – Back In The Saddle (Audio)

 

行けなかった初来日

エアロスミスが初来日した1977年は、アルバム『Rocks』から『Draw The Line』がリリースされた時代で、第1黄金期でした。もちろん、「Dream On」を収録したデビュー・アルバム『Aerosmith』や、「Sweet Emotion」といった名曲を生んだ『Toys in the Attic』は、すでに名盤となっていたわけですが、クイーンは来日しているのに、なぜエアロは日本に来ないの? といった声があふれる中で、満を持しての来日公演だったわけです。

私は、すっかりロック少女となってはいましたが、(著書『青春のクイーン、永遠のフレディ、元祖ロック少女のがむしゃら突撃伝』[電子書籍でもお求めいただけます]をぜひ読んでいただければ)だからと言って初来日公演を即決して観に行ける環境ではありませんでした。クイーンの2度目の公演を観たという経験をエアロで叶えることはできなかったのです。それはバイトだけではチケットを買うまでの余裕がなかったという理由でした。

学校の先輩が、「エアロ行くんだと言って、電車の中で紙チケットを見せてもらい、うらやましい気持ちになったのは今でも忘れることができません。その悔しさを晴らすように、アルバム『Rocks』を毎日のように聴き、特に「Rats in the Cellar」「Combination」「Sick As A Dog」の流れが大好きで、そのパートを何度も針を落とし、気が済むと、飛んで「Home Tonight」で締める日々でした。その後、3月のKISS公演は、何がなんでも行くと決めたのです。

Aerosmith – Rats In The Cellar (Audio)

80年代前半に入ってから、エアロに影響を受けた日本のロック・バンドが数多く登場しました。なかでも、ZIGGYはエアロの音楽やスタイルを受け継いだバンドとして私のお気に入りとなり、応援していました。

ヴォーカルの森重樹一の歌のうまさとセンス、ロックのスタイルをヴィジュアル面やアティテュードでも見せていたベースの戸城憲夫。エアロから受けた影響を隠すこともなく、堂々と素直に表現し、自分たちのサウンドにしていました。「Eastside Westside」をぜひ一度聴いてみてください。ZIGGYがエアロの影響を受けつつも、模倣とは言わせない、かっこよさを感じさせてくれる曲です。

EASTSIDE WESTSIDE

当時の日本のロック・シンガーにはすごい人がたくさんいたな、と時折振り返ります。森重さんだけでなく、DEAD ENDのMORRIEもすごかった! 洋楽の仕事をしていた私の心を動かした2人のシンガーです。その後、稲葉浩志の登場で、どっぷりB’zにハマりました。

 

インタビューができた2度目の来日公演

話が逸れてしまいましたが、初来日公演を泣く泣く諦めた私が、エアロのライヴを初体験するまでに11年の月日が流れました。2度目の来日公演は、1988年。この頃のエアロは、紆余曲折を経て、ブルース・フェアバーンをプロデューサーに迎え、『Permanent Vacation』を大ヒットさせ、第2黄金期に入っていました。メロディックなポップ性も織り込み、シングル・ヒットを連発するバンドへと変化を遂げていったのです。でもそれが、初期から見守ってきたファンを失望させることにはならなかったと信じています。

私の中で『Permanent Vacation』は、最高峰のロック・アルバムだと思っています。その『Permanent Vacation』を引っ提げての来日公演のセットリストを見ると、70年代の曲もしっかり選曲に組み込まれていて、長年待ち続けてきたファンには嬉しい日本武道館公演となったのでした。

Dude (Looks Like A Lady)

そして、この来日時に初インタビューも実現しました。そのことについてはこちらのコラムに書いていますので、ぜひ覗いてください。どのような経緯でドラッグ中毒から立ち直ったか、『Permanent Vacation』での新しい試み、バンドについて、スティーヴンとトムが語ってくれています。

インタビューの詳細が残っているのは、FM誌に掲載されたインタビュー記事をずっと額に入れて飾っていたというのもありますが、当時はフレディ・マーキュリーの記事と共に宝物として残したいという強い思いがあったからだと思います。その後90年代、物々しい雰囲気の中、全員とのインタビューを行い、スティーヴン・タイラー、ジョー・ペリーがいるエアロを目の当たりにし、胸が高鳴ったのを忘れることはできません。

ご存知のように、エアロスミスがツアーに出ることはもうありません。ライヴを日本で観ることは今後予定されていないでしょう。スティーヴンの喉の問題が大きいと思いますが、ロック・シーンの中で、その存在が作品とともに生き続けていって欲しいという気持ちは持ち続けたいです。そしていつか、何かの形で1曲でもパフォーマンスが行える環境が巡ってきたら、ぜひそれを受け入れて、ステージに立って欲しいです。

クイーン、キッス、エアロスミス時代に育った私にとって、この3組は時代が変わっても、多くのロック・キッズに影響を与え続けていくバンドであると信じているのです。と書いているさなか、嬉しいニュースが入ってきました。ブラック・サバスのファイナルショーにロン・ウッド、トム・モレロ、ビリー・コーガン、トラヴィス・バーカー、チャド・スミスなどとスティーヴンが登場し、歌声を聴かせてくれました。こういう姿が少しでも観られることを祈っています。

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Written By 今泉 圭姫子


エアロスミス
全20タイトルがミニLP使用・紙ジャケ・リマスターにて発売
第1弾7タイトル: 2025年7月30日発売
購入はこちら



今泉圭姫子のThrow Back to the Future』 バックナンバー

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