KISSによる50周年の新ライヴ盤と1978年での日本武道館での来日公演
ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されているDJスヌーピーこと、今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第114回。
今回は新たなライヴ・アルバム『KISS Destroys Anaheim ’76』を2026年8月21日にリリースしたKISSについて。
また、今泉圭姫子さんは10月8日にLOFT9 Shibuyaで行われる伊藤政則さんによるトークイベント「政則十番勝負2026」に出演が決定しています。
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伝説的なライヴと言われ、これまでにもブートレッグが出回っていたというKISSのライヴ・テイクが、コンサート開催50周年という節目に、オリジナル作品として正式発売となりました。これは、KISS史上最大規模となった1976年8月20日、カリフォルニアのアナハイム・スタジアムで4万2千人を集めたコンサートの模様です。タイトルは『DESTROYS ANAHEIM ’76』。KISSの作品を数多く手掛けてきたプロデューサー、エンジニアのエディー・クレイマーが新たにミキシングしています。
KISSといえば、1975年に初のライヴ・アルバム『地獄の狂獣キッス・ライヴ / ALIVE!』をリリースし、初のプラチナ・ディスクを獲得しています。このライヴ・アルバムは、KISSをロック・スター・バンドへと押し上げるきっかけとなりました。
その後、『地獄の軍団 / Destroyer』(1976)、『地獄のロック・ファイアー / Rock And Roll Over』(1976)、『ラヴ・ガン / Love Gun』(1977)といったオリジナル・アルバムを大ヒットさせ、2枚目のライヴ・アルバム『アライヴⅡ / Alive II』(1977)で、世界の頂点に立ち、ライヴ・バンドとしての人気を決定づけました。
『Alive!』と『Alive II』は、70年代のKISS作品を集約し、ベスト・アルバム的な存在でした。『DESTROYS ANAHEIM ’76』は、まさにその当時のKISSを象徴し、上昇気流に乗ったバンドであることを感じさせてくれます。
セットリストは、『地獄の軍団 / Destroyer』までの代表曲が選曲されています。『Alive II』では、「Love Gun」「Hard Luck Woman」といったKISSにとっては新境地となったサウンドが収録され、新しいKISSのツアーとなっていましたが、その1年前の『DESTROYS ANAHEIM ’76』は、スタジオ・アルバムとしては歴代最高の売り上げとなった作品『地獄の軍団 / Destroyer』を引っ提げてのツアーだけに、地獄シリーズの集大成とも言える、迫力あるコンサートだったことが想像できます。
ジーンのベース・ソロから「God of Thunder / 雷神」にかけては血を吐き、「Firehouse」では火を吹き、「Black Diamond」でドラムセットがせり上がる……。曲目をチェックするだけで、そのパフォーマンスが目に浮かびます。いい意味ではありますが、彼らの大いなるワンパターンは、飽きることなく、何度見ても楽しめる。これこそKISSライヴの醍醐味といえます。
私は、KISS、クイーン、エアロスミスといった3大ロック・バンドが台頭していた時代を音楽と共に駆け抜けました。元祖ロック少女もこの時代があったからこそ、がむしゃらぶりを発揮できたわけです。
KISSとの思い出は、第45回のコラムに書いているのですが、改めて紹介させてください。
KISSの初来日公演は、1977年でした。そしてその1年後、1978年の再来日公演が私の初KISSでした。学生時代の友人、妹と一緒にチケットを買うために、当時のウドー音楽事務所に明け方から並んで、購入したのは忘れられない思い出です。70年代は、チケットを買いに出かけるシステムです(笑)。しかし明け方では遅すぎました。手に入れたチケットは、日本武道館の2階席でした。クイーンの時もそうですが、KISSも2階席。
しかし、KISS公演は、どこの席に座っていても十分楽しむことができるエンターテインメント。私自身、その頃は、少しはコンサート慣れしていたので、ロック・コンサートの楽しみ方を自分なりに考えられるようになっていました。KISSの時は、公演日に間に合うように、ジーン・シモンズ人形を作り、それを持っていくことにしました。誰に見せるというわけではないのですが、なぜかそういう思考回路になったのです。妹はポール・スタンレーの人形を作りました。本当は、メイクをしていきたかったのですが、その勇気が出ず、人形となったように思います。
とにかく楽しかった! ロック・コンサートがまるでお祭りのようで、次から次へとステージ展開が変わり、ドキドキワクワクの時間だったことを覚えています。私のジーン人形は「God of Thunder / 雷神」の演奏時に最大限の主張をし、公演後にKISSファンの皆さんの人気者となりました(笑)。
来日公演は、その後10年間、実現しなかったのですが、その間何度か海外でも見ることになり、そのたびにいつもワクワクな気持ちで楽しみました。ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでは、聖地で見るKISSの姿にいつも以上に興奮したり、ロンドンでは、ノーメイク時代のコンサートだったのですが、ある意味、彼らの音楽に集中して見ることができ、それはそれで楽しかったという記憶があります。つまり、KISSは魅せるショウだけではなく、彼らの楽曲そのものが良い作品である、と改めて思えたのです。
KISSのインタビューは、残念ながら実現しませんでしたが、ニューヨークのホテルのロビーでポール・スタンレーに遭遇したり、いつだったか、大阪公演の楽屋でお会いすることができました。ジーン・シモンズには、自身のレーベルのプロモーションで来日した際に、素顔のジーンにインタビューしました。舌をベロベロと出すイメージが強いジーンですが、その時はしっかりとレーベル・オーナーとしてのビジネスマンの顔を見せていました。
Written By 今泉圭姫子
KISS『KISS Destroys Anaheim ’76』
2026年8月21日発売
CD / LP
2026年10月8日19:30開演:LOFT9 Shibuya
チケットはこちら
今泉圭姫子のThrow Back to the Future』 バックナンバー
- 第1回 :U2『The Joshua Tree』
- 第2回 :バグルス『ラジオ・スターの悲劇』
- 第3回 :ジャパン『Tin Drum』(邦題:錻力の太鼓)
- 第4回 :クイーンとの出会い…
- 第5回:クイーン『世界に捧ぐ』
- 第6回:フレディ・マーキュリーの命日に…
- 第7回:”18 til I Die” ブライアン・アダムスとの想い出
- 第8回:ロキシー・ミュージックとブライアン・フェリー
- 第9回:ヴァレンシアとマイケル・モンロー
- 第10回:ディスコのミュージシャン達
- 第11回:「レディ・プレイヤー1」出演俳優、森崎ウィンさんインタビュー
- 第12回:ガンズ、伝説のマーキーとモンスターズ・オブ・ロックでのライブ
- 第13回:デフ・レパード、当時のロンドン音楽事情やガールとの想い出
- 第14回:ショーン・メンデス、音楽に純粋なトップスターのこれまで
- 第15回:カルチャー・クラブとボーイ・ジョージの時を超えた人気
- 第16回:映画「ボヘミアン・ラプソディ」公開前に…
- 第17回:映画「ボヘミアン・ラプソディ」サントラ解説
- 第18回:映画「ボヘミアン・ラプソディ」解説
- 第19回:クイーンのメンバーに直接尋ねたバンド解散説
- 第20回:映画とは違ったクイーン4人のソロ活動
- 第21回:モトリー・クルーの伝記映画『The Dirt』
- 第22回:7月に来日が決定したコリー・ハートとの思い出
- 第23回:スティング新作『My Songs』と初来日時のインタビュー
- 第24回:再結成10年ぶりの新作を発売するジョナス・ブラザーズとの想い出
- 第25回:テイラー・スウィフトの今までとこれから:過去発言と新作『Lover』
- 第26回:“クイーンの再来”と称されるザ・ストラッツとのインタビュー
- 第27回:新作を控えたMIKA(ミーカ)とのインタビューを振り返って
- 第28回:新曲「Stack It Up」を発売したリアム・ペインとのインタビューを振り返って
- 第29回:オーストラリアから世界へ羽ばたいたINXS(インエクセス)の軌跡
- 第30回:デビュー20周年の復活作『Spectrum』を発売したウエストライフの軌跡を辿る
- 第31回:「The Gift」が結婚式場で流れる曲2年連続2位を記録したBlueとの思い出
- 第32回:アダム・ランバートの歌声がクイーンの音楽を新しい世代に伝えていく
- 第33回:ジャスティン・ビーバーの新作『Changes』発売と初来日時の想い出
- 第34回:ナイル・ホーランが過去のインタビューで語ったことと新作について
- 第35回:ボン・ジョヴィのジョンとリッチー、二人が同じステージに立つことを夢見て
- 第36回:テイク・ザット&ロビー・ウィリアムズによるリモートコンサート
- 第37回:ポール・ウェラー、初来日や英国でのインタビューなどを振り返って
- 第38回:ザ・ヴァンプスが過去のインタビューで語ったことと新作について
- 第39回:セレーナ・ゴメス、BLACKPINKとの新曲と過去に語ったこと
- 第40回:シン・リジィの想い出:フィル、ゲイリーらとのインタビューを振り返って
- 第41回:クイーン+アダム・ランバート『Live Around The World』
- 第42回:【インタビュー】ゲイリー・バーロウ、7年ぶりのソロ作品
- 第43回:コロナ禍にステイホームで聴きたい新旧クリスマス・ソング
- 第44回:ジャスティン・ビーバー、成長が垣間見えた約3年ぶりのライヴ
- 第45回:アルバムが控えるポール・スタンレーとKISSの想い出を振り返って
- 第46回:コナン・グレイ、孤独の世界に閉じこもって生まれた音楽と希望の新曲
- 第47回:グレタ・ヴァン・フリート、“ツェッペリンらしい”と言われることを語る
- 第48回:クイーンの隠れた名曲:映画で彼らを知った人に聴いて欲しい楽曲
- 第49回:ブルー(Blue)「The Gift」の魅力:今も日本で愛される名曲の想い出
- 第50回:「ハイスクール・ミュージカル」シリーズとは?
- 第51回:ブライアン・メイ初のソロアルバムを振り返る
- 第52回:離婚を歌ったケイシー・マスグレイヴスが3年前に語っていたこと
- 第53回:ロジャー・テイラーのヴォーカルと楽曲
- 第54回:ABBAの新作と、“第2のビートルズ”と言われていた40年前
- 第55回:ザ・ウォンテッドの復活:休止前の想い出と最新インタビュー
- 第56回:アンとナンシーのウィルソン姉妹、ハートの想い出
- 第57回:80年代後半に活躍したグラス・タイガーを振り返る
- 第58回:ブライアン・メイのソロ2作目『Another World』を振り返る
- 第59回:ブライアン・メイ復刻盤『Another World』の聴き所
- 第60回:ポリスのドキュメンタリー『Around The World』とインタビュー
- 第61回:フィル・ライノットの生涯と音楽を振り返るドキュメンタリー映画
- 第62回:10代のジャネット・ジャクソンとのインタビューを思い返して
- 第63回:ブロンディのデボラ・ハリーとUK音楽シーンの女性達を振り返る
- 第64回:セバスチャン・イザンバールが語る新作や、故カルロス・マリンへの想い
- 第65回:クイーン『The Miracle』当時の想い出と未発表の新曲「Face It Alone」
- 第66回:『ビー・ジーズ 栄光の軌跡』で描かれる3兄弟と『小さな恋のメロディ』
- 第67回:アリアナ・グランデとのインタビューを振り返って
- 第68回:サム・スミスの最新アルバム『Gloria』と初来日の時に語ったこと
- 第69回:ブライアン・アダムス、6年ぶりの来日公演前に最近の活動を語る
- 第70回:洋楽アーティストが歌う“桜ソングス”のおすすめ
- 第71回:The 1975、過去のインタビューからの発言集
- 第72回:『ガーディアンズ』新作とザ・ザのマット・ジョンソンとのエピソード
- 第73回:来日直前サブリナ・カーペンター、今までの来日インタビューを振り返る
- 第74回:50周年のエアロスミス、1988年の来日インタビューを振り返って
- 第75回:オリアンティとのインタビューを振り返る
- 第76回:クランベリーズのドロレス・オリオーダンとのインタビューを振り返る
- 第77回:オリヴィア・ロドリゴ、2ndアルバムへのプレッシャーを語る
- 第78回:ロビー・ウィリアムスのインタビューとテイク・ザットとの関係性
- 第79回:今年クイーンが出場するNHK紅白歌合戦
- 第80回:ボン・ジョヴィを後押しした日本のファンとバンドからの愛
- 第81回:クイーン+アダム・ランバート来日公演
- 第82回:『ロッキー』と『プリティ・イン・ピンク』のサントラを振り返る
- 第83回:ボン・ジョヴィのドキュメンタリーは私たちに贈られたアナザー・ストーリー
- 第84回:テイラー・スウィフト、来日公演と報道の仕方、そしてそばにいてくれる音楽
- 第85回:ボン・ジョヴィデビュー40周年のバンドによる新たなチャプター
- 第86回:29年振りの来日公演が迫るテイク・ザット
- 第87回:カントリーは再度音楽と向き合えるチャンスを与えてくれる
- 第88回:7年振りの来日公演が控えるバステッド
- 第89回:29年振りの来日公演を行うテイク・ザット
- 第90回:ABBA最新のベスト盤『The Singles』
- 第91回:29年ぶりのテイク・ザット来日公演レポートとメンバーとの会話
- 第92回:『エルトン・ジョン:Never Too Late』:リアルな人生と最後に選んだ道
- 第93回:韓国を代表するテノール・シンガー、イム・ヒョン
- 第94回:ロッド・スチュワートの想い出と来日時のインタビュー
- 第95回:映画『BETTER MAN/ベター・マン』とロビー・ウィリアムス
- 第96回:ロビー・ウィリアムスの代表的MV
- 第97回:エルトン・ジョンの最新アルバム
- 第98回:モーガン・ウォーレン最新アルバム
- 第99回:行けなかったエアロスミス初来日公演と2枚あった『Rocks』
- 第100回:連載100回記念インタビュー
- 第101回:4年振りとなる新作を発売したスティックスを振り返る
- 第102回:2026年1月に来日を控えたブライアン・アダムス
- 第103回:ボン・ジョヴィ新作アルバムとツアーの発表
- 第104回:カーリー・レイ・ジェプセンとのインタビューを振り返って
- 第105回:フレディ・マーキュリー『Mr. Bad Guy』:本人が語る愛に溢れた作品
- 第106回:ブルー(BLUE):リユニオン後の活動とライブへの期待
- 第107回:新ドキュメント『テイク・ザット ~30年の軌跡~』ともう一つの物語
- 第108回:ジェイ・チョウの魅力と過去のインタビュー
- 第109回:ジェイ・チョウの新作アルバムのMVと映像の世界観
- 第110回:映画『マイケル』を見て思い出す吉川晃司と見たウェンブリー公演
- 第111回:デイヴの娘、ヴァイオレット・グロール:2世アーティストたちの苦悩
- 第112回:ジェイ・チョウ、リイシューされる3作品と2007年の来日インタビュー
- 第113回:ジェイ・チョウ『カプリコーン』制作時のインタビューと当時の出演映画エピソード