『Emotion』が10周年となったカーリー・レイ・ジェプセンとのインタビューを振り返って
ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されているDJスヌーピーこと、今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第104回。
今回は2025年10月にアルバム『Emotion』の10周年記念盤が発売となったカーリー・レイ・ジェプセンについて過去のインタビューを振り返っていただきました。
<関連記事>
・カーリー・レイ・ジェプセン関連記事
・『Emotion』:2010年代のインディとメジャーの感性を架橋した稀有な作品
・カーリー・レイ・ジェプセン『EMOTION』解説
大ヒット中での初来日
『カナディアン・アイドル』出身のカーリー・レイ・ジェプセンが、世界的なスターとして認められたのは、2011年にリリースされたシングル「Call Me Maybe」のヒットでした。本国カナダ、そしてアメリカでもナンバー・ワンに輝き、翌年にリリースされたセカンド・アルバム『Kiss』にも収録され、一躍、世界のガールズたちのモデルとなっていったのです。
もちろん、ジャスティン・ビーバーのマネージャーであったスクーター・ブラウンとの契約によって、一気に世界の扉を開くことができたというビジネス面での後押しもあったわけですが、何よりも、彼女の持つ自然体の姿、ガールズの代弁者とも言える歌詞の内容こそが、多くのティーンエイジャーの心に響いたのです。アルバムからは、「Call Me Maybe」だけでなく、アウル・シティーとのデュエット「Good Time」もヒットしました。
初来日を果たしたのもこの頃でした。忙しすぎて多くの時間が取れず、TVの音楽番組の楽屋でインタビューしたのも懐かしい思い出です。かわいいピンクのミニドレスにカチューシャをつけたカーリー。周りのピリピリとは裏腹に、始終笑顔でインタビューに応じてくれました。
自分のために作った『Emotion』
そんなカーリーの2025年は、お祝い続きでした。今年40歳になり、結婚し、そして11月には第一子妊娠を発表しました。さらにサード・アルバム『Emotion』の10周年でもあったのです。『Kiss』ではなく、このアルバムのアニヴァーサリーを彼女が敢えて祝う意味を考えてみました。きっとそれは、カーリーのアーティスト人生にとって、とても重要な作品であるからということなのでしょう。
「Call Me Maybe」を超えるヒットを誰もが期待し、新作のリリースを急がせるレーベルからのプレッシャーを押し除けて、カーリーは時間をかけて制作することを選んだ、とドキュメンタリーで発言しています。そして『Emotion』は、自分のために作った、とも。そして自分の心とつながるアートを表現したかった、と。アルバムからは「I Really Like You」のヒットが生まれ、「Call Me Maybe」同様、ライヴ会場が大合唱となるカーリーを代表する曲になりました。
10年前のサマーソニックに出演したカーリーを会場でインタビューした時に、「2年かけて作ったアルバム『Emotion』を、初めて日本のファンの前で歌った気分はもう最高。ファンのリアクションもすごく良くて! ロスで2週間バンドとリハをしている時から、爆上がりだったけどね!」と興奮状態で話してくれました。また、「日本の暑い夏は、デトックスにもなるし、フレッシュジュースで乗り越えられるよ」と楽しんでいる様子でした。
『Emotion』のリリースに合わせて公開されたドキュメンタリーの話に戻ると、高校生の時に『Emotion』を聴いていた女性は、こんな風に語っていました。「振り返ると、このアルバムが当時の自分の支えだった」と。
また、『Emotion』は、『Kiss』の時に比べ、明らかにファン層が変化していったこともドキュメンタリーでは紹介していました。大学生の男性ファンが増えたとか。もちろんガールズのモデルでありつつも、アーティストとしてのカーリーの姿勢、歌の世界が、多くの人の心に訴えたアルバムとなったのでしょう。
「1000%の納得がなければすぐには出せない」
2017年のインタビューでは、『Emotion』の制作時に、75曲を書き上げ、そのうちの50曲を、友達を招いてリスニングパーティーをして、皆の感想を聞いたと話してくれました。自分は全曲好きだから、客観的な意見を聞きたかったのだそうです。
当時は、2019年発売の『Dedicated』を制作している最中のインタビューでしたが、その時もすでに100曲以上を書き上げていたけれど、「自分の中で、1000%の納得がなければすぐには出せない」というこだわりも話してくれました。
カーリーは、多くの人たちに勇気と楽しむことを伝えてきましたが、彼女自身を励ました曲は一体なんだったのだろうかと思い聞いてみると、「その時代、時代によって変わるけど、メッセージというよりも、友達と踊り明かしちゃおう、といった楽しい気分になる曲をよく聞いていたわ。80年代の音楽もね、スパイス・ガールズ、シンディー・ローパーかな。スパイス・ガールズは父親の影響かも。なぜかジェリ推しにされていたよ。彼女はビジネスマインドでかっこいい、と言われて。でもそれって単に父がジェリが好きだったってことだよね(笑)」と答えてくれました。
楽しいおしゃべりと、笑いを忘れないインタビュー。気遣いの人らしく、(通訳の松田京子さん曰く)いつ会っても楽しい時間となります。改めて「More」「Guardian Angel」といった未発表曲4曲を含む『Emotion』のアニヴァーサリー・エディションを聴き、彼女が届けてくれたポップ・ソングを楽しんでいます。次回は、ママになったカーリーと会えるのを楽しみにしています!
Written by 今泉圭姫子
2025年10月17日発売
Zoetrope盤1LP / 2LP / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
2015年6月24日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
- ボン・ジョヴィ アーティスト・ページ
- ボン・ジョヴィ「It’s My Life」がSpotifyで10億回再生を突破
- デビュー40周年のボン・ジョヴィ:日本のファンとバンドからの日本への愛
- ボン・ジョヴィ、YouTubeにて過去の名曲ミュージック・ビデオをHD化
- ボン・ジョヴィ40周年を記念するドキュメンタリーの予告編が初公開
- ボン・ジョヴィ『Keep The Faith』:グランジの時代にサウンドを進化させた1枚
- ボン・ジョヴィ『Cross Road』解説:日本で初の1位、人生が交差したベスト
- 初の全米シングル1位「You Give Love A Bad Name」
今泉圭姫子のThrow Back to the Future』 バックナンバー
- 第1回 :U2『The Joshua Tree』
- 第2回 :バグルス『ラジオ・スターの悲劇』
- 第3回 :ジャパン『Tin Drum』(邦題:錻力の太鼓)
- 第4回 :クイーンとの出会い…
- 第5回:クイーン『世界に捧ぐ』
- 第6回:フレディ・マーキュリーの命日に…
- 第7回:”18 til I Die” ブライアン・アダムスとの想い出
- 第8回:ロキシー・ミュージックとブライアン・フェリー
- 第9回:ヴァレンシアとマイケル・モンロー
- 第10回:ディスコのミュージシャン達
- 第11回:「レディ・プレイヤー1」出演俳優、森崎ウィンさんインタビュー
- 第12回:ガンズ、伝説のマーキーとモンスターズ・オブ・ロックでのライブ
- 第13回:デフ・レパード、当時のロンドン音楽事情やガールとの想い出
- 第14回:ショーン・メンデス、音楽に純粋なトップスターのこれまで
- 第15回:カルチャー・クラブとボーイ・ジョージの時を超えた人気
- 第16回:映画「ボヘミアン・ラプソディ」公開前に…
- 第17回:映画「ボヘミアン・ラプソディ」サントラ解説
- 第18回:映画「ボヘミアン・ラプソディ」解説
- 第19回:クイーンのメンバーに直接尋ねたバンド解散説
- 第20回:映画とは違ったクイーン4人のソロ活動
- 第21回:モトリー・クルーの伝記映画『The Dirt』
- 第22回:7月に来日が決定したコリー・ハートとの思い出
- 第23回:スティング新作『My Songs』と初来日時のインタビュー
- 第24回:再結成10年ぶりの新作を発売するジョナス・ブラザーズとの想い出
- 第25回:テイラー・スウィフトの今までとこれから:過去発言と新作『Lover』
- 第26回:“クイーンの再来”と称されるザ・ストラッツとのインタビュー
- 第27回:新作を控えたMIKA(ミーカ)とのインタビューを振り返って
- 第28回:新曲「Stack It Up」を発売したリアム・ペインとのインタビューを振り返って
- 第29回:オーストラリアから世界へ羽ばたいたINXS(インエクセス)の軌跡
- 第30回:デビュー20周年の復活作『Spectrum』を発売したウエストライフの軌跡を辿る
- 第31回:「The Gift」が結婚式場で流れる曲2年連続2位を記録したBlueとの思い出
- 第32回:アダム・ランバートの歌声がクイーンの音楽を新しい世代に伝えていく
- 第33回:ジャスティン・ビーバーの新作『Changes』発売と初来日時の想い出
- 第34回:ナイル・ホーランが過去のインタビューで語ったことと新作について
- 第35回:ボン・ジョヴィのジョンとリッチー、二人が同じステージに立つことを夢見て
- 第36回:テイク・ザット&ロビー・ウィリアムズによるリモートコンサート
- 第37回:ポール・ウェラー、初来日や英国でのインタビューなどを振り返って
- 第38回:ザ・ヴァンプスが過去のインタビューで語ったことと新作について
- 第39回:セレーナ・ゴメス、BLACKPINKとの新曲と過去に語ったこと
- 第40回:シン・リジィの想い出:フィル、ゲイリーらとのインタビューを振り返って
- 第41回:クイーン+アダム・ランバート『Live Around The World』
- 第42回:【インタビュー】ゲイリー・バーロウ、7年ぶりのソロ作品
- 第43回:コロナ禍にステイホームで聴きたい新旧クリスマス・ソング
- 第44回:ジャスティン・ビーバー、成長が垣間見えた約3年ぶりのライヴ
- 第45回:アルバムが控えるポール・スタンレーとKISSの想い出を振り返って
- 第46回:コナン・グレイ、孤独の世界に閉じこもって生まれた音楽と希望の新曲
- 第47回:グレタ・ヴァン・フリート、“ツェッペリンらしい”と言われることを語る
- 第48回:クイーンの隠れた名曲:映画で彼らを知った人に聴いて欲しい楽曲
- 第49回:ブルー(Blue)「The Gift」の魅力:今も日本で愛される名曲の想い出
- 第50回:「ハイスクール・ミュージカル」シリーズとは?
- 第51回:ブライアン・メイ初のソロアルバムを振り返る
- 第52回:離婚を歌ったケイシー・マスグレイヴスが3年前に語っていたこと
- 第53回:ロジャー・テイラーのヴォーカルと楽曲
- 第54回:ABBAの新作と、“第2のビートルズ”と言われていた40年前
- 第55回:ザ・ウォンテッドの復活:休止前の想い出と最新インタビュー
- 第56回:アンとナンシーのウィルソン姉妹、ハートの想い出
- 第57回:80年代後半に活躍したグラス・タイガーを振り返る
- 第58回:ブライアン・メイのソロ2作目『Another World』を振り返る
- 第59回:ブライアン・メイ復刻盤『Another World』の聴き所
- 第60回:ポリスのドキュメンタリー『Around The World』とインタビュー
- 第61回:フィル・ライノットの生涯と音楽を振り返るドキュメンタリー映画
- 第62回:10代のジャネット・ジャクソンとのインタビューを思い返して
- 第63回:ブロンディのデボラ・ハリーとUK音楽シーンの女性達を振り返る
- 第64回:セバスチャン・イザンバールが語る新作や、故カルロス・マリンへの想い
- 第65回:クイーン『The Miracle』当時の想い出と未発表の新曲「Face It Alone」
- 第66回:『ビー・ジーズ 栄光の軌跡』で描かれる3兄弟と『小さな恋のメロディ』
- 第67回:アリアナ・グランデとのインタビューを振り返って
- 第68回:サム・スミスの最新アルバム『Gloria』と初来日の時に語ったこと
- 第69回:ブライアン・アダムス、6年ぶりの来日公演前に最近の活動を語る
- 第70回:洋楽アーティストが歌う“桜ソングス”のおすすめ
- 第71回:The 1975、過去のインタビューからの発言集
- 第72回:『ガーディアンズ』新作とザ・ザのマット・ジョンソンとのエピソード
- 第73回:来日直前サブリナ・カーペンター、今までの来日インタビューを振り返る
- 第74回:50周年のエアロスミス、1988年の来日インタビューを振り返って
- 第75回:オリアンティとのインタビューを振り返る
- 第76回:クランベリーズのドロレス・オリオーダンとのインタビューを振り返る
- 第77回:オリヴィア・ロドリゴ、2ndアルバムへのプレッシャーを語る
- 第78回:ロビー・ウィリアムスのインタビューとテイク・ザットとの関係性
- 第79回:今年クイーンが出場するNHK紅白歌合戦
- 第80回:ボン・ジョヴィを後押しした日本のファンとバンドからの愛
- 第81回:クイーン+アダム・ランバート来日公演
- 第82回:『ロッキー』と『プリティ・イン・ピンク』のサントラを振り返る
- 第83回:ボン・ジョヴィのドキュメンタリーは私たちに贈られたアナザー・ストーリー
- 第84回:テイラー・スウィフト、来日公演と報道の仕方、そしてそばにいてくれる音楽
- 第85回:ボン・ジョヴィデビュー40周年のバンドによる新たなチャプター
- 第86回:29年振りの来日公演が迫るテイク・ザット
- 第87回:カントリーは再度音楽と向き合えるチャンスを与えてくれる
- 第88回:7年振りの来日公演が控えるバステッド
- 第89回:29年振りの来日公演を行うテイク・ザット
- 第90回:ABBA最新のベスト盤『The Singles』
- 第91回:29年ぶりのテイク・ザット来日公演レポートとメンバーとの会話
- 第92回:『エルトン・ジョン:Never Too Late』:リアルな人生と最後に選んだ道
- 第93回:韓国を代表するテノール・シンガー、イム・ヒョン
- 第94回:ロッド・スチュワートの想い出と来日時のインタビュー
- 第95回:映画『BETTER MAN/ベター・マン』とロビー・ウィリアムス
- 第96回:ロビー・ウィリアムスの代表的MV
- 第97回:エルトン・ジョンの最新アルバム
- 第98回:モーガン・ウォーレン最新アルバム
- 第99回:行けなかったエアロスミス初来日公演と2枚あった『Rocks』
- 第100回:連載100回記念インタビュー
- 第101回:4年振りとなる新作を発売したスティックスを振り返る
- 第102回:2026年1月に来日を控えたブライアン・アダムス
- 第103回:ボン・ジョヴィ新作アルバムとツアーの発表