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トム・ペティ「Love is a Long Road」の詞世界と見事に合致する『グランド・セフト・オートVI』

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Tom Petty - Photo: Aaron Rapoport

ギネス級の売り上げを誇る超人気ゲームの最新シリーズ『グランド・セフト・オートVI』の第一弾トレーラー映像が12月5日に公開され、YouTubeにて音楽ビデオを除き、公開24時間で最も再生された映像(90,421,491回再生)となり、音楽ビデオ以外で最も早く1億回再生を記録、最も「いいね」されたトレイラー映像にもなった。

この記録的なトレイラー映像には全編に渡ってトム・ペティ(Tom Petty)の「Love is a Long Road」が使用され、映像公開1週間で音楽ストリーミング再生は3740万回(前週比66,154%)、YouTube再生は3000万回(前週比473,246%)、Shazamでは34.7万回も検索された。

この楽曲、そして『グランド・セフト・オート』について、この作品について、翻訳家・ライターの石川真男さんに解説頂きました。

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“超”記録的なトレイラー

世界的な人気を誇るクライムアクションゲーム『グランド・セフト・オート』シリーズの第6弾『グランド・セフト・オートⅥ』(以下:GTA6)のトレイラーが12月5日に突如公開された。このトレイラーは、2日間で1.2億回(12月15日現在で1.4億回)という驚異的な再生回数を叩き出しており、この数字は、2013年の前作『グランド・セフト・オートⅤ』のトレイラー(2011年11月公開)がこの12年間で再生された回数をたった2日間で抜き去ったことを意味する。

米国のロックスター・ゲームスが制作・販売する『グランド・セフト・オート』シリーズ。都市を舞台に主人公の視点で様々な犯罪に手を染めながらストーリーを進めていくこのゲームは、これまでにシリーズ5作及びスピンオフが多数リリースされており、中でも前作『GTA5』は1億9000万本という金字塔を打ち立てている。そんなモンスターヒット作品のトレイラー再生回数を公開直後に軽々と抜き去った『GTA6』。2025年にリリースが予定されている12年振りのナンバリング最新作がどれほど待ち望まれているかが分かるだろう。

 

ゲームの内容を示唆する“ヒント”

トレイラー冒頭。淡々と刻まれるエレピの音に導かれて映し出されるのは、夕景の街、続いて刑務所。そこでルシアという女性が「どうしてここに来たのか?」を尋ねられると、こう答える「運が悪かったのよ」。

そして、バンドの音が壮大かつ解放的なパワーコードを鳴らすと、映像も空撮された海岸都市へと切り替わり、その後は、レオニダ州バイスシティと称されるこの都市 (フロリダ州マイアミをモチーフにしている) の多彩な光景が次々と現れる。昼と夜。ビーチやハイウェイや街角。富豪のパーティやワニと格闘する労働者。ソーシャルメディアでライブ配信を行っているようなシーンも見られるが、映像は次第に暴力的な犯罪の色を帯びていき、この街の緊迫感とそこで生きていくことの過酷さを垣間見せる。

たった90秒のトレイラー映像の中に、この新作ゲームの内容を示唆する“ヒント”が盛り込まれているが、その全編に流れている曲はトム・ペティの「Love Is a Long Road」だ。

ゲームの世界観からするとギャングスタ・ラップやトラップあたりが似合いそうだが (実際、初期からそうした音楽は使用されている) 、そこに敢えてトム・ペティを起用したのは、意外ではあるがなかなかのセンスだ。いや、過去にも、同シリーズ『GTAバイス・シティ・ストーリーズ』ではテッド・ニュージェント「Stranglehold」が、『GTAサンアンドレアス』ではガンズ・アンド・ローゼズ「Welcome to the Jungle」が、『GTA5』ではスモール・フェイセス「Ogdens’ Nut Gone Flake」が、それぞれトレイラーなどで使用されており、いずれもその世界観とぴったり合致していて選曲者のセンスの良さが窺える。

Grand Theft Auto: San Andreas PlayStation 2 Trailer –

 

トム・ペティの経歴

トム・ペティは、フロリダ州ゲインズビル出身のロック・ヴォーカリスト/シンガー・ソングライター。そういう意味では、フロリダをモチーフにした『GTA6』に相応しいアーティストであろう。

ペティは、1960年代にフロリダでマッドクラッチというバンドを結成するが、それがトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズへと発展し、1976年にデビューを果たす。1979年には3rdアルバム『Damn the Torpedoes(破壊)』で全米2位の大ヒットを記録。

また、スティーヴィー・ニックスの1981年のシングル「Stop Draggin’ My Heart Around」にザ・ハートブレイカーズの面々と参加。ニックスがペティとデュエットしたこの曲は全米3位まで上昇するヒットとなった。

1988年にはボブ・ディラン、ジョージ・ハリスン、ジェフ・リン、ロイ・オービソンと共にスーパー・グループ、トラヴェリング・ウィルベリーズを結成。また、1989年には満を持して初ソロ・アルバム『Full Moon Fever』をリリースし、アルバムが全米3位、シングル「Free Fallin’」が7位を記録。

Tom Petty – Free Fallin'

このようにペティは、第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン、マイケル・ジャクソンやマドンナなどのメインストリーム・ポップ、あるいはヘア・メタル勢らがシーンを席巻する中、王道アメリカン・ロックの意地を示す存在であった。

2002年にはロックの殿堂入りを、2008年にはスーパーボウルのハーフタイム出演を、いずれもハートブレイカーズと共に果たしている。

In Remembrance of Tom Petty: Super Bowl XLII Halftime Show – Tom Petty & The Heartbreakers

2017年に66歳の若さで逝去するが、2000年代に入ってからもザ・ハートブレイカーズやソロとしてアルバムをいくつもTOP10に送り込み、ザ・ハートブレイカーズ最後の作品となった2014年『Hypnotic Eye』ではNo.1を獲得するなど、晩年までアメリカン・ロックの雄として君臨していた。

 

「Love Is a Long Road」の歌詞と『GTA6』の世界観

「Love Is a Long Road」は、初ソロ・アルバム『Full Moon Fever』に収録された楽曲。アルバムは、前述のように商業的に成功したのみならず、ローリング・ストーン誌の選ぶ「歴代最高のアルバム500選」で298位に選出されるなど高い評価を得ており、ブルース・スプリングスティーンの豪快さから、ボブ・ディランの荘厳さ、ミック・ジャガーの濃厚さ、ジャクソン・ブラウンのリリシズム、そしてルー・リードの陰影を併せ持つかのような、多くの人を魅了するロックンロールが繰り広げられている。トム・ペティが最も脂の乗った時期に放った、実に聴き応えのある名盤だ。

実は「Love Is a Long Road」自体はシングル・カットされていない (英国のみでシングル「Free Fallin’」のB面にはなった) が、リリース当時は“アルバム曲”として人気を博し、ビルボード誌「全米アルバム・ロック・トラックス」チャートで7位まで上昇している。そしてなんと、このたび『GTA6』のトレイラーに使用されたことで、同誌「全米ロック・デジタル・セールス」チャートで再び7位まで駆け上っているのだ(2023年12月16日現在)。『GTA』の影響力たるや!

その詞には、男女の愛が男性目線で描かれている。あまり具体的な状況説明はないが、二人が惹かれ合っていたことは間違いない。だが、どうやら困難な状況にあるようで、しかしながら諦めきれず、「魂を救ってくれるよう彼女にもう一度チャンスを与えよう」と歌う。そしてその後に「愛は長い長い道のり」と嘆くような言葉が続く。これまでに紆余曲折があり、これからもそれが続くことが示唆される。

【和訳】トム・ペティ – ラブ・イズ・ア・ロング・ロード / Tom Petty – Love is a Long Road【『グランド・セフト・オートVI』トレイラー使用曲】

『GTA6』のトレイラーの終盤では、女性主人公ルシアが、「この難局を乗り越える唯一の方法は、チームとして力を合わせること」と言いながら、パートナーと思しき男性(もう一人の主人公ジェイソンだと思われる)と再会し、「信じる?」と問い掛ける。

『GTA』シリーズで初めて女性主人公が登場し、男女2人組で展開される『GTA6』は、犯罪を繰り返しながら逃亡し続けた“ボニーとクライド”のような物語が繰り広げられると予想されているが、まさにそれは「Love Is a Long Road」に綴られた詞の世界と見事に合致する。あたかも、この曲が『GTA6』のために書かれたかのような… (それはもちろん時系列的にあり得ないが)、あるいは、この曲を着想源に『GTA6』のストーリーが作られかのような…(まぁ、その可能性もまず無いだろう)。

いずれにせよ、この映像と楽曲とがもたらす得も言われぬ高揚感を思えば、運命がよくこの“2人”を引き合わせてくれたと感心するばかり。『GTA6』への期待の高まりと共に、「Love Is a Long Road」も限りなく再生され続けることだろう。これを機会にトム・ペティがこれまでにない規模で再評価されることを望む。

Written By 石川 真男


トム・ペティ『Full Moon Fever』
1989年4月24日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music



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