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ゴーゴーズ『Beauty and the Beat』解説:LAを象徴する女性5人組とニュー・ウェーブの金字塔

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Cover: Courtesy of Capitol Records

「Our Lips Are Sealed」の小気味よいドラムビートと弾むギター・リフがアルバム『Beauty and the Beat』の幕を開けを飾ると、思わず足でリズムを刻みたくなる。ポップでありながら適度なエッジを備え、キャッチーなメロディが満載の、まさにニュー・ウェーブの魅力を凝縮した一曲だ。

1981年7月に『Beauty and the Beat』がリリースされると、世界はゴーゴーズ(The Go-Go’s)という、当時最もイケてる女性5人組バンドの存在を知ることになった。「We Got The Beat」「This Town」「Our Lips Are Sealed」といった忘れがたい名曲を収録したこのアルバムは、ゴーゴーズを1980年代を代表する新世代バンドへと押し上げた。

アルバムは全米アルバム・チャート(Billboard 200)で1位を獲得しただけでなく、その年の年間アルバム・セールス・ランキングで第2位を記録。さらに、史上最も売れたデビュー・アルバムの一枚として、その名を音楽史に刻んでいる。

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The Go-Go's – We Got The Beat

 

パンクからの出発

ラジオ映えするキャッチーで明るいメロディが魅力の作品だが、ゴーゴーズのルーツは、実はロサンゼルスで勃興していたパンク・ロック・シーンにあった。フロントウーマンのベリンダ・カーライルは、ドッティ・デンジャー(Dottie Danger)の名で活動し、70年代後半にLAのバンド、ジャームスのドラマーとして音楽キャリアを始めた。

バンド仲間のパット・スメアは後にニルヴァーナ、さらにフー・ファイターズに加入することになる。ギタリストのシャーロット・キャフィーは地元バンドのジ・アイズでベースを弾いており、リズム・ギタリストのジェーン・ウィードリンは、シーンの中心人物として知られる一方、アンダーグラウンドで人気のファッション・デザイナーとしても活躍していた。3人は、初期ゴーゴーズのメンバーであるエリッサ・ベロ、マーゴット・オラヴァリアとともに、ライヴ会場で出会い、親交を深め、やがて自分たちのバンドを結成することを決意する。

ハリウッドのWhisky A Go GoやThe Masqueといった名門ライブハウスで定期的に演奏を重ねるうちに、ゴーゴーズは急速に人気を集めていった。やがて彼女たちは、イギリス・ツアーを行っていたマッドネスの前座に抜擢される。そして渡英中に、英国のインディーズ・レーベル、スティッフ・レコードで初のシングル「We Got The Beat/How Much More」をレコーディングし、発表した。

1980年代に入る頃には、ドラマーのジーナ・ショックとベーシストのキャシー・ヴァレンタインが、エリッサ・ベロとマーゴット・オラヴァリアに代わって加入。これにより、ゴーゴーズの黄金期を支えたクラシック・ラインナップが完成した。バンドのサウンドもまた変化を遂げ、初期のパンク・ロック色を残しつつも、よりポップで親しみやすいニュー・ウェーブへと軸足を移していった。

1981年4月、5人はIRSレコードと契約。同レーベルは、バングルス、R.E.M.、デッド・ケネディーズ、ストラングラーズなど、80年代を代表するオルタナティヴ、ニュー・ウェイヴ、カレッジ・ロックの大物たちを擁していた。ゴーゴーズはすぐにニューヨークへ飛び、プロデューサーのロブ・フリーマン(ブロンディ、ラモーンズ、キッス)とリチャード・ゴッテラー(リチャード・ヘル、ジョーン・アーマトレイディング、フレッシュトーンズ)とともにデビュー・アルバムを録音した。

 

ポップ・カルチャーの試金石

一方、キャッチーな「We Got The Beat」はイギリスでシングルとしてリリースされた。1981年の夏を通じて、このエネルギッシュな楽曲はヨーロッパのダンス・クラブで人気を集め、その評判は大西洋を越えてアメリカのDJたちにも広まっていく。その結果、Billboard Hot Dance Club Playチャートでは最高35位を記録した。

その後、アルバム『Beauty and the Beat』のために再レコーディングされたIRS版「We Got The Beat」は、1982年1月にアメリカで正式リリースされる(B面は英国盤とは異なり「Can’t Stop The World」を収録)。この新録ヴァージョンは大ヒットとなり、全米シングル・チャート(Billboard Hot 100)で3週連続2位を記録。ゴーゴーズにとって最大のヒット曲となった。さらに、同曲は1982年公開の青春映画のカルト的名作『初体験/リッジモント・ハイ(原題:Fast Times at Ridgemont High)』のオープニング・クレジットでも使用され、1980年代ポップカルチャーを象徴するアンセムとしての地位を決定づけた。

Fast Times At Ridgemont High – intro – (1982)

しかし、『Beauty and the Beat』からの先行シングルとなったのは、気丈さと切なさが同居する「Our Lips Are Sealed」だった。1981年6月にリリースされたこの曲は、ジェーン・ウィードリンがザ・スペシャルズのフロントマン、テリー・ホールから受け取った一通の手紙をきっかけに生まれたものだ。

ゴーゴーズが初めてイギリスをツアーした際、ジェーンとテリーは恋愛関係にあった。その関係は長くは続かなかったものの、決して無駄ではなかった。テリーが手紙に綴った言葉やフレーズは「Our Lips Are Sealed」の歌詞の随所に取り入れられ、その貢献の大きさから、彼は共同作曲者としてクレジットされている。

「Our Lips Are Sealed」は、全米シングル・チャートでは最高20位止まりだったものの、ダンス・チャートやロック・チャートにもランクインし、最終的に全米チャートには30週以上にわたってとどまり続けた。これは、シングルとしては極めて異例のロングヒットであり、楽曲の息の長い人気を物語っている。さらに、この曲はアメリカ以上に海外で高い支持を集め、カナダでは最高3位、オーストラリアでは最高2位を記録するなど、国際的なヒットとなった。

The Go-Go's – Our Lips Are Sealed

 

自由でイケてるLAの体現

「Our Lips Are Sealed」のカラフルなミュージック・ビデオでは、メンバーが1960年代風のオープンカーに乗ってビバリーヒルズを走り回り、街の名所であるエレクトリック・ファウンテンではしゃぐ姿が描かれた。この映像によって、ザ・ゴーゴーズは世界中のティーンエイジャーにとって、自由でイケてるロサンゼルス・ライフスタイルの象徴となった。

アルバムのもう一つの聴きどころが、ロサンゼルスへの愛情と皮肉をユーモラスに織り交ぜた「This Town」である。重なり合うコーラスで彼女たちは、ロサンゼルスのきらびやかなイメージを茶目っ気たっぷりに演出する。

「この街は私たちの街/なんて華やかな街なの/あなたも住めるなら住みたいでしょう?/そして私たちの仲間になりたいでしょう?」

しかし、最後のヴァースでは一転して、その華やかな街の現実を鋭く描き出す。

「さっきまでのセリフは忘れて/ここにいるのは夢追い人ばかり、そして身を売る者たち/見捨てられたスターたちは/乗り捨てられた車のように/この街の通りにあふれている」

この対比によって「This Town」は、ロサンゼルスという街の夢と幻滅、華やかさと厳しい現実を見事に描き出した、アルバム屈指の楽曲となっている。

This Town (2011 Remaster)

アルバムのほかの楽曲にも、ゴーゴーズの幅広い音楽性が色濃く表れている。「Fading Fast」では、1960年代のガールズ・グループを思わせる甘く切ないバラードの影響が感じられる一方、「How Much More」「You Can’t Walk In Your Sleep (If You Can’t Sleep)」「Skidmarks On My Heart」といった、よりラフでスピード感あふれるナンバーでは、バンドのパンク・ロック時代のルーツが鮮明に顔をのぞかせる。

その荒々しく勢いに満ちたサウンドは、ザ・ジャムやザ・クラッシュをはじめとする同時代のパンク/ニューウェーブ・バンドを彷彿とさせ、ポップなメロディとパンクのエネルギーを絶妙なバランスで融合させた『Beauty and the Beat』の魅力をさらに引き立てている。

 

ジェンダーの壁を破る

リリース後、『Beauty and the Beat』は、ゴーゴーズに初のグラミー賞ノミネーションをもたらした。最優秀新人賞である。そして翌1982年のセカンド・アルバム『Vacation』が大ヒットしたことからもわかるように、ファンは、ファンはさらなる作品を待ち望んでいた。バンドは1980年代半ばに一度活動を休止するものの、その後1990年代以降に何度も再結成を果たした。しかし、『Beauty and the Beat』がニュー・ウェーブを代表する金字塔であるという評価は、今なお揺らぐことはない。

さらに、このアルバムは音楽史におけるジェンダーの壁を打ち破った作品でもあった。ゴーゴーズは、全米アルバム・チャート(Billboard 200)で1位を獲得したアルバムを、全曲自作し録音した唯一のオール・フィメール・バンドとなり、その歴史的な偉業によって後続の女性アーティストたちに大きな道を切り開いた。

リリースから数十年が経った今なお、『Beauty and the Beat』は新鮮さと勢い、そして何より圧倒的なかっこよさを失っていない。一見すると、ゴーゴーズは作られたポップ・グループのように見えるかもしれない。しかし、その実態はまったく異なっていた。確かに彼女たちの楽曲は全米トップ40ラジオで頻繁に流れていたが、当時の洗練された商業的ポップ・グループとは一線を画していた。彼女たちが提示したのは、確かな演奏力、機知に富んだソングライティング、そして反骨精神に満ちた唯一無二のサウンドだった。

社会のはみ出し者が持つインディペンデントな精神を体現したゴーゴーズは、後に“ガールパワー”と呼ばれるムーブメントを先取りした存在だったともいえる。彼女たちは、当時のティーンエイジャーたちに「自分もこんなふうになりたい」と思わせる憧れのロールモデルとなり、単なるヒットメーカーではなく、一つの時代を象徴するカルチャー・アイコンとして音楽史にその名を刻んだ。

Written By Sophie Smith



ゴーゴーズ、『Beauty and the Beat』
1981年7月14日発売
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music



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