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デフ・レパード『Euphoria』解説:絶好調のまま90年代に別れを告げ、彼ららしい音に回帰した快作

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1996年5月にデフ・レパード(Def Leppard)が発表した6枚目のアルバム『Slang』は、彼らにとって異色といえるオルタナティヴ・ロック・アルバムだった。そのサウンドは時代性を反映したものではあったが、彼らの代名詞とも言えるアンセムはすっかり影を潜めていた。しかし英ヨークシャー出身の同バンドは、次なるスタジオ・アルバム『Euphoria』で以前の彼ららしいサウンドに回帰したのだ。

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あのサウンドへの回帰

ヴォーカルのジョー・エリオットは2014年、クラシック・ロック誌の取材にこう話している。

「『Slang』は俺たちがずっとやりたかったことを実現したものだった。…でもその後は、デフ・レパードらしいアルバム作りを喜んで再開したのさ。前と同じことをやり出したと言う人もいるだろうけど、実際のところは少し違う。俺たちみたいなレコードはほかに誰も作っていなかったし、それは俺たちに天から与えられたようなものだったんだ」

その構想を実現させるため、レパードの面々は長らくプロデュースを任せてきたロバート・ジョン・”マット”・ラングと再びコンタクトを取った。スタジオ技術や作曲に関するラングの徹底したアプローチは、『Pyromania (炎のターゲット) 』や『Hysteria』など80年代の代表作を成功に導いてきた。メンバーたちがラングと過ごしたのはある週末の間だけだったが、これは彼らにとって濃密な時間となり、『Euphoria』の楽曲制作に着手する上での嬉しい刺激になった。ドラマーのリック・アレンはこう話す。

「本当に、本当に学ぶことが多かった。以前のやり方を思い出させてくれる”補修クラス”みたいだった。彼はとてもクリエイティヴで偉大なミュージシャンだし、優れたシンガーでもある。一緒に働くには最高の男さ」

アルバム収録曲の内容

ラングと再会した短くも充実した期間で、レパードの面々は『Euphoria』でも傑出した3曲を作り出した。アコースティック・ギターを基調とした気品溢れる1曲「It’s Only Love」、夢想的な内容の「All Night」 (プリンス風のファンク・チューンとなった『Slang』の表題曲にも似ている) 、そしてアルバムの目玉となった「Promises」である。特に激しいロック・ナンバーに仕上がった「Promises」は、不朽の名曲となる風格を備えた1曲であった。

DEF LEPPARD – "Promises" (Official Music Video)

残りの制作期間には『Slang』のプロデューサーも務めたピーター・ウッドロフを迎え、バンドはダブリンにある個人スタジオのジョーズ・ガレージにこもって新曲作りに勤しんだ。スタジオに入った彼らは自信に満ち溢れ、その後の演奏にもラングとのセッションでバンド全体が活気づいたことが表れていた。

『Euphoria』は1999年6月8日にリリースされるやいなや、デフ・レパードの復活を印象付けた。実際、ジョー・エリオット自身も堂々たる1曲「Back In Your Face」で「離れていたなんて嘘のようだ (It’s like I’ve never been away) 」と歌っている。

Back In Your Face

同作にはほかにも華やかなサウンドの「Demolition Man」や余裕さえ感じさせる名曲「Promises」、パワフルな終曲「Kings Of Oblivion」など優れた楽曲が並ぶ。「Kings Of Oblivion」では、ギターのフィル・コリンとヴィヴィアン・キャンベルが往年のシン・リジィさながらのツイン・ギターを披露している。

Kings Of Oblivion

『Euphoria』の魅力はそうしたワイルドなロック・ナンバーだけではない。ベースのリック・サヴェージ作のドリーミーな1曲「Goodbye」やキャンベル作の「To Be Alive」は、デフ・レパードが生み出したドラマチックなバラードの中でも屈指の仕上がりと言えるだろう。

DEF LEPPARD – "Goodbye" (Official Music Video)

また、コリン作の爽快なインストゥルメンタル・ナンバー「Disintegrate」やサイケ調の重々しい1曲「Paper Sun」からは、21世紀を前にしてさらに新たな音楽性を開拓していく彼らの野心が垣間見える。

Disintegrate

商業的、批評的成功

ジョー・エリオットをはじめとするメンバーは、制作期間を通じて『Euphoria』がすばらしい作品になると確信していたが、それは間違いではなかった。リード・シングルの「Promises」は、米ビルボードのメインストリーム・ロック・チャートの首位という彼らにふさわしい成績を収めたのだ。

エンターテインメント・ウィークリー誌はプレスを代表し、「スケールの大きさ、不良っぽさ、そして『Hysteria』のような艶やかさを兼ね備えたアルバムで、デフ・レパードが帰ってきた」と的確に評した。

セールス面でも『Euphoria』は米ビルボード・チャートでトップ20入りを果たし、ゴールド・ディスクに認定。同作は無敵のハード・ロック・バンドが、絶好調のまま臆せず21世紀を迎えようとしていることを示したのだ。

Written By Tim Peacock



デフ・レパード『Euphoria』
1999年6月8日発売
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music


最新アルバム

デラックス(左)、通常盤(右)

デフ・レパード『Diamond Star Halos』
2022年5月27日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music

1CDデラックス収録曲
1. Take What You Want
2. Kick
3. Fire It Up
4. This Guitar (featuring Alison Krauss)
5. SOS Emergency
6. Liquid Dust
7. U Rok Mi
8. Goodbye For Good
9. All We Need
10. Open Your Eyes
11. Gimme A Kiss
12. Angels
13. Lifeless (featuring Alison Krauss)
14. Unbreakable
15. From Here To Eternity
16. Goodbye For Good This Time – Avant-garde Mix *
17. Lifeless – Joe Only version *
*ボーナストラック
*限定盤デジパック仕様

1CD通常盤
1. Take What You Want
2. Kick
3. Fire It Up
4. This Guitar (featuring Alison Krauss)
5. SOS Emergency
6. Liquid Dust
7. U Rok Mi
8. Goodbye For Good
9. All We Need
10. Open Your Eyes
11. Gimme A Kiss
12. Angels
13. Lifeless (featuring Alison Krauss)
14. Unbreakable
15. From Here To Eternity
16. Angels – Striped Version *
17. This Guitar – Joe Only version *
*ボーナストラック



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