映画『ミラベルと魔法だらけの家』で注目、ラテン界の大物シンガー、カルロス・ビべスの5つの魅力

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Carlos Vives by Chino Lemus

4年ぶりとなる新作ディズニー・ミュージカル映画『ミラベルと魔法だらけの家』(原題:Encanto)。音楽を担当するのは『モアナと伝説の海』のリン=マニュエル・ミランダだが、テーマ・ソング「Colombia, Mi Encanto(愛するコロンビア)」にはコロンビアのシンガー・ソングライター、カルロス・ビベス(Carlos Vives)が抜擢された。

カルロス・ビベスは南米コロンビアを代表するトップスターであり、コロンビアを舞台にした映画だけに納得のいくキャスティングといえる。ではなぜカルロス・ビベスがすごいのか、いったいどういうアーティストなのかを5つの角度から解説してみよう。

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1. 故郷のローカル音楽を世界へ発信

カルロス・ビベスは1961年生まれ、コロンビアのサンタ・マルタの出身だ。サンタ・マルタはカリブ海に面した小さな港町で、美しい海とビーチ、そして美味しいシーフードで知られている。まさにコロンビアの中でも屈指の楽園的なエリアのひとつだ。このサンタ・マルタは自然だけでなく、民族的にも非常に興味深い場所であり、先住民の文化が色濃く残っている。

もちろん音楽も盛んで、そのひとつにバジェナートという民族音楽がある。主に2拍子で刻まれる素朴なリズムと、アコーディオンやカハ・バジェナーダという太鼓を使うのが特徴で、ルーツは田舎風の民謡といったところだ。しかしこのローカル音楽を、ロックやポップスとミックスし、モダンな音楽として世に広めた先駆者のひとりが、カルロス・ビベスだ。ロックやポップスだけでなく、今ではダンスミュージックやヒップホップなどを取り入れたりすることも珍しくないバジェナートだが、彼はそういったミクスチャー路線を開拓していったのである。

 

2. コロンビアでは誰もが知る大スター

カルロス・ビベスがバジェナートの第一人者となったのは、テレビの出演がきっかけだ。しかも俳優として評価されたことが大きい。もともと彼は1980年代初頭からテレノベラといわれるテレビのメロドラマに出演していたが、1991年にバジェナートの伝説的な作曲家ラファエル・エスカローナの人生を描いた『Escalona』の主演に抜擢される。このドラマによって、彼の知名度が上がっただけでなく、バジェナートそのものがコロンビア国内で注目を集め、一躍トップスターの座に君臨することになるのである。

この勢いで音楽活動も充実していき、1993年に発表したシングル「La Gota Fría」がビルボードのラテン・チャートで6位を記録。翌1994年にリリースしたアルバム『Clásicos de la Provincia』ではビルボードのラテン・アルバム・チャートで2位まで上り詰め、コロンビア国内だけでなく世界中から注目を集めるようになった。その後も続々とヒット作を連発し、ラテン・ポップの世界では常にトップ・アーティストとして認知されている。なお、カルロス・ビベスのTwitterのフォロワーは525万人を超えており、このことからも彼の人気ぶりは伝わるだろう。

 

3. グラミー賞を始めアワードの常連!

カルロス・ビベスの人気は、もちろん実力あってのこと。バジェナートだけでなく、クンビア、チャンペータ、バンブーコといったローカル音楽を、ロックやレゲトンなどとミックして極上のラテン・ポップに仕上げている。今でこそ、バジェナートをルーツに持つアーティストが続々とコロンビアから登場しているが、いずれもカルロス・ビベスが手本になっているといっても過言ではない。それは、作品のクオリティはもちろんだが、数々の栄誉に輝いている憧れの存在であるということも大きい。

これまでに彼が発表したスタジオ・アルバムは15作品だが、いずれも高い評価を受けている。そのうち『Déjame Entrar』(2002年)と『Más + Corazón Profundo』(2015年)では、グラミー賞のベスト・トロピカル・ラテン・アルバム賞を受賞している。また、ラテン・グラミー賞においてもリリースがある毎にノミネートされる常連であり、トータル11部門で栄冠を勝ち取っているのがすごい。加えて昨年2020年のビルボード・ラテン・ミュージック・アワードではホール・オブ・フェイムとして表彰され、まさにラテン音楽界の殿堂入りとなったのである。(以下は2021年ビルボード・ラテン・ミュージック・アワードでのパフォーマンスの様子)

 

4. スケールの大きい魅惑のヴォーカル

カルロス・ビベスの魅力といえば、なんといってもそのエモーショナルな歌声だ。最初にヒットした「La Gota Fría」(1993年)を聴いてみればよく分かる。勢いのあるアップテンポのバジェナート・サウンドに乗せたヴォーカルは、力強さと繊細さが同居し、非常に情感豊かな魅力に溢れている。

その後の彼のヒット曲をたどってみると「La Tierra del Olvido」(1995年)でも同様にアグレッシヴだが朴訥さを感じられるし、ビルボードのラテン・チャートで初の1位となった「Fruta Fresca」(1999年)はアップテンポながらクールに決めてくれる。

ミディアム・テンポの「Déjame Entrar」(2001年)の包容力、「Como Tú」(2004年)のハードなギター・サウンドに負けない力強さもさすがだ。かと思えば「La Foto de los Dos」(2013年)のような情熱的なミディアム・バラードもしっかりと聴かせる。いずれにせよ、アレンジやリズムが変化しても、包み込むようなヴォーカルの魅力は変わることがなく、常に聴く者を虜にするのだ。

 

5. 世界中の有名ミュージシャンと共演

ラテン・ミュージック・シーンにおいてVIPアーティストであるカルロス・ビベスは、共演の依頼も絶えない。実際に多くのアーティストとのコラボレーションを行って話題になっている。最も多いのはやはり同郷であるコロンビアのアーティストだ。

コロンビアのスーパースターといえばまっ先にシャキーラを思い出すが、彼女とのデュエット曲「La Bicicleta」(2016年)は各国のラテン・チャートを独占する大ヒットを記録。米国やスペインを含むスペイン語圏10カ国で1位を獲得した。

また「La Bicicleta」でもフィーチャーされ、コロンビアではカリスマ的な人気を誇るマルーマとは「Volví a Nacer」(2012年)や「Ella Es Mi Fiesta」(2014年)でも共演してこれらも大ヒット。同じくコロンビアの人気シンガー、セバスチャン・ヤトラとは「Robarte un Beso」(2017年)でコラボレートした。

スペイン語圏の人気アーティストでは、マーク・アンソニー、ディエゴ・トーレス、アレハンドロ・サンス、ルベン・ブラデスなど数えればきりがないが、日本でも知られているアーティストでいえば、レゲトンの帝王ダディ・ヤンキーをフィーチャーした「Nota de Amor」(2015年)や、郷ひろみのカヴァーで有名なリッキー・マーティンとの「Canción Bonita」(2021年)は特筆すべきだろう。

また、非スペイン語圏との交流も増え始めており、現時点での最新アルバム『Cumbiana』(2020年)では、レゲエ・シーンのトップスターであるジギー・マーリーやコロンビアの血を引くがカナダ在住のジェシー・レイエズとも共演している。今後もこういったコラボレーションは増えていくことだろう。

 

カルロス・ビベスはラテン・ミュージックの世界では圧倒的な人気を誇るトップスターである。しかし、スペイン語圏以外ではそれほど彼の魅力はまだまだ浸透していないかもしれない。きっと今回の映画主題歌をきっかけに、日本を始め世界中の音楽ファンがカルロス・ビベスの魅力に気付くことだろう。

Written by 栗本 斉



映画『ミラベルと魔法だらけの家』オリジナル・サウンドトラック
2021年11月19日配信
国内盤CD:12月17日発売予定
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music


【映画情報】

映画『ミラベルと魔法だらけの家』
2021年11月26日(金)日本劇場公開
日本公式HP

監督:バイロン・ハワード(『塔の上のラプンツェル』『ズートピア』)、ジャレド・ブッシュ(『ズートピア』)
音楽:リン=マニュエル・ミランダ(『モアナと伝説の海』)



 

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