50年代を代表するロックン・ロール・サウンドトラック10選

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50年代はロックン・ロール映画がブームになった時代だ。その多くは立ち上がり反抗的なことをするティーンエイジャー(ボックスオフィスとレコード・セールスのターゲットだった視聴者達)を中心に据えた物語だった。映画は当時人気上昇中のスター達に溢れ、ロックン・ロール・サウンドトラックが次々と誕生し、チャック・ベリー、ファッツ・ドミノ、エルヴィス・プレスリー、リトル・リチャードといったロックン・ロール・アイコン達が作品に登場した。若者とロックの映画が続々と後に続き、『暴力教室』(1956)の成功で主題歌「 (We’re Gonna) Rock Around The Clock」は大ヒットとなり、ビル・ヘイリーはスターになった。

その後何年にも渡り多くに影響を与えたこの象徴的な映画で、我々の50年代を代表するロックン・ロール・サウンドトラック・ベスト10リストのスタートを切ろう。

■『暴力教室(原題:Blackboard Jungle)』(1956)
『暴力教室』後に起こった、ビル・ヘイリーのシングル「Rock Around the Clock」のレコード盤を求める人々の熱狂ぶりは、後にも先にもないようなものだった。この曲が映画の主題歌に起用されたことには、当時10歳の男の子ピーター・フォード(俳優グレン・フォードの息子)が、ロックン・ロール史で興味深い役割を果たしている。下町の高校が舞台の十代の非行を扱ったこの映画に、父親が出演する予定になっていた彼はその頃、ビル・ヘイリーのレコードB面ナンバーで生存者僅か14人の核爆発について歌われた「Thirteen Women And Only One Man In Town」に夢中になっていた。若きシドニー・ポワチエと共に出演を果たしたグレン・フォードが、息子から聞いたこの曲のことを監督のリチャード・ブルックスに話したところ、監督も大層気に入り「(We’re Gonna) Rock Around The Clock」を映画の主題歌として使うことにした。その後のことは皆さんもご存じの通り。サウンドトラックは当時アルバムとしてリリースされなかったが、ビル・ヘイリーの「See You Later, Alligator」と「Rudy’s Rock」のみならず、ザ・プラターズの「The Great Pretender」と「Only You」等、映画に起用されたその他の曲も強いインパクトを与えた。またフレディ・ベル&ザ・ベルボーイズやトニー・マルティネス&ヒズ・バンドの曲も登場した。画期的な映画にジルバ・ダンスに心躍る音楽…。こんな50年代ロック映画、他にはないだろう!

■『Don’t Knock The Rock』(1956)
ロックが禁止された小さな町が舞台のこの映画は、1956年のニューヨーク・タイムズの批評家の好みには合わなかったようだ。とある評論家はこう書いている「やかましい騒音で、会話の殆どは聞き取れなかった。ロックン・ロールとは一体何なんだ? ああ、最前列に座るというとんだ失敗をしてしまった、中年に近い男には、この映画がドシン・ドシン・ドシン・ドシンときてつらい」。しかし当時の若い鑑賞者の多くにとって、この”うるさい”サウンドトラックは刺激的で、リトル・リチャードが自ら映画に登場して思い切りプレイした「Long, Tall Sally」と「Tutti Frutti」に若者たちは興奮した。その他ザ・プラターズ、ルース・ブラウン、ジミー・ボーウェン、ナッピー・ブラウン、フランキー・ライモン&ザ・ティーンエイジャーズ、ザ・キャディラックス、ビル・ヘイリー、アラン・デイルの曲で、このベスト・ロックン・ロール・サウンドトラック・リスト入りが確定した。

■『Shake, Rattle And Rock』 (1956)
50年代半ば、ブルース・シンガーのビッグ・ジョー・ターナーはさまざまなロックン・ロール・レヴュー・ツアーに参加する花形スターだった。その彼が1956年に映画『Shake, Rattle And Rock』に出演し、ファッツ・ドミノとともに音楽を担当した。ロックン・ロールに脅威を感じる横暴な市民委員会を描いたこの映画は、ティーンエイジャーの心を掴んだ。後年テレビ・ドラマ『マニックス』の刑事役でゴールデン・グローブ賞を受賞し名声を得る若きマイク・コナーズが主演、ファッツ・ドミノがピアノで見事なナンバー3曲(「I’m In Love Again」、「Honey Chile」、「Ain’t That A Shame」)をプレイしている。

■『女はそれを我慢できない(原題:The Girl Can’t Help It)』(1956)
コメディ俳優マークス・ブラザーズのジョーク・ライターだったフランク・タシュリンは、ジェーン・マンスフィールド主演映画『女はそれを我慢できない』を監督/プロデュースした時、これが世間にどれほど影響を与える作品になるか、想像していなかったのかも知れない。ミュージシャンのリトル・リチャード、エディ・コクラン、そしてジーン・ヴィンセントのゲスト・パフォーマンスにより、ロックン・ロール・サウンドトラック史上最も影響力を持った作品が生まれた。16歳のジョン・レノンはリヴァプールでこの映画を観て心を奪われた。未来のザ・ビートルズはこの時初めて、“崇拝する”ロックスター達を目にしたと告白している。タイトル・ソングを担当したのはリトル・リチャード(彼は「Ready Teddy」と「She’s Got It」もプレイしている)。魅力的なサウンドトラックにはこの他、ジュリー・ロンドンが歌う「Cry Me A River」、ジーン・ヴィンセントの「Be-Bop-A-Lula」、ファッツ・ドミノの「Blue Monday」、エディ・コクランの「Twenty Flight Rock」、それから当時活躍していたマイナーなロカビリー歌手ジョニー・オレン等のナンバーも収録されている。

■『ロック・ロック・ロック!(原題:Rock, Rock, Rock!)』(1956)
『ロック・ロック・ロック!』には「Alan Freed, The King Of Rock’n’Roll」という副題がついていた。やや弱い映画だったが、初期の名ロックン・ロール・シンガーやグループによる21のパフォーマンスが散りばめられていることで知られる。その中のベスト・ソングは、ラヴァーン・ベイカーの「Tra La la」、チャック・ベリーの「You Can’t Catch Me」、ジョニー・バーネット・トリオの「Lonesome Train」、コニー・フランシスの「I Never Had A Sweetheart」等。それからあまり知られてはいないのが、アイヴィ・シュルマン&ザ・ボウタイズの「I Just Want To Rock」。歌っているのは7歳の若手スターだった。またこの映画にはフランキー・ライモンと彼のバッキング・グループによる「I’m Not A Juvenile Delinquent」もフィーチャーされていた。ザ・ティーンエイジャーズが歌う「Why Do Fools Fall in Love」はこの年、人々の記憶に残るヒットになった。

■『監獄ロック(原題:Jailhouse Rock)』(1957)
エルヴィス・プレスリー映画の大半は60年代に作られたが、このキング・オブ・ロックン・ロールは50年代にも5作品を生み出している。その中で最高傑作といったら『闇に響く声』と「監獄ロック」だろう。後者はエルヴィス・プレスリーが名声を得るまでの話を、ヴィンス・エヴァレットなる人物を通して描かれた半自伝的映画で、刑務所に入り、ペギー(ジュディ・タイラー)と激しい恋愛関係を持つ彼をエルヴィス・プレスリー自らが演じた。ジェリー・リーバーとマイク・ストーラーの実に見事なナンバーがフィーチャーされているこの映画のサウンドトラックは、同時代ロックン・ロール・サウンドトラックを代表する存在だ。更にエルヴィス・プレスリーのミュージカル映画曲中で恐らくは最も有名な「Jailhouse Rock(邦題:監獄ロック)」の、目が覚めるようなダンス・シーケンスも登場する。ギタリストにスコッティ・ムーア、そしてベーシストにビル・ブラックを迎えた一連の曲は「I Want to be Free」「Don’t Leave Me Now」「Young And Beautiful」「(You’re So Square) Baby I Don’t Care」(後年ザ・ビートルズ、ジョ二・ミッチェルクイーン、そしてブライアン・フェリーもレコーディングしたナンバー)等。

■『ジャンボリー(原題:Jamboree)』(1957)
『ジャンボリー』はデュオとして一夜にしてスターになったポール・カーとフリーダ・ホロウェイというふたりの若きシンガーが主演した物語だ。映画には同時代を代表する偉大な演奏家達が、自分達のレコーディングに合わせて口パクで歌うゲスト・パフォーマンスがフィーチャーされている。有名なのはジェリー・リー・ルイスが歌う、サン・レコードからリリースされたヒット曲「Great Balls Of Fire」のオルタナティヴ・ヴァージョン。その他、カール・パーキンスが歌う「Glad All Over」、スリム・ホイットマンの「Unchain My Heart」、フランキー・アラヴォンの「Teacher Pet」、それから今は亡き偉大なファッツ・ドミノが歌う「Wait And See」等が収録されている。ジャズ・スターのカウント・ベイシーもまた、「One O’Clock Jump」(ジョー・ウィリアムスをフィーチャーしたヴァージョン)で仲間に加わっている。

■『The Big Beat』(1958)
1957年と58年は、ロック映画にとって不思議な時期だった。『監獄ロック』等のヒット作と共に、当時ブームになっていたカリプソ音楽をベースにした映画も幾つか誕生した。そんなカリプソ・ミュージカルのひとつに主演したのがマヤ・アンジェロウだった。元ザ・ビートルズのリンゴ・スターがナレーションを担当したドキュメンタリー作品『Hollywood Rocks The Movies: The Early Years』には、「I’m Sorry」を歌うザ・プラターズがフィーチャーされた1957年映画『Rock All Night』に関するひとコマが登場した。より持続的な成功を収めたのは、翌年発表の『The Big Beat』だろう。同作はタイトル・ソングと「I’m Walking」を歌うファッツ・ドミノ、そしてアラン・コープランド、ザ・ミルス・ブラザース、ザ・デル・ヴァイキングス、ゴギ・グラント・ウィズ・ザ・ハリー・ジェームス・オーケストラ、ザ・ダイアモンズ、ザ・フォー・エイセス・ウィズ・ザ・フレディ・マーティン・オーケストラ、更にジャズの影響が感じられるザ・カル・ジェイダー・クインテット等の素晴らしい音楽に溢れている。

■『Hot Rod Gang』(1958)
歌手/俳優のジョン・アシュレーは映画『フランケンシュタインの娘』の主演後まもなく、ドラッグ・レースに夢を抱き、その資金を捻出する為にジーン・ヴィンセントのバンドに参加して、ホット・ロッド・ドライバーの役を手に入れる。当時ジーン・ヴィンセントは、1956年にブルー・キャップスとレコーディングしたロカビリー・ヒット「Be Bop-A-Lula」ですでにスーパースターになっていた。映画に登場するジーン・ヴィンセントは、サウンドトラックでは「Dance In The Street」「Baby Blue」「Lovely Loretta」「Dance To The Bop」を歌っている。女優モーリン・アーサーの「Choo Choo Cha Poochie」も収録されたこのサウンドトラックは、EPとしてキャピトル・レコードからリリースされた。50年代後半には、ポピュラー音楽の魅力はあらゆる種類のジャンルに浸透し、『Rio Bravo』のような西部劇でも、ロック・スターのリッキー・ネルソンの音楽がフィーチャーされた。イギリス人シンガーのビリー・フューリーやトミー・スティール等、多数の50年代ロックスター達が映画に登場した。

■『ゴー・ジョニー・ゴー(原題:Go, Johnny, Go!』)(1959)
名高い映画『ローレル&ハーディ』の監督の息子であるハル・ローチ・ジュニアが監督した『ゴー・ジョニー・ゴー』は、幾つかの理由で特別な作品だった。チャック・ベリーがあの有名な“ダック・ウォーク”ダンスを披露し、映画が制作された年に、バディ・ホリーと共に飛行機墜落事故で亡くなったリッチー・ヴァレンス唯一の出演作になった。アラン・フリードはこの映画撮影の為に、DJのアラン・フリードにデモ・レコードを送り有名になっていく、孤児院出身のティーンエイジャーのジョニー・メロディ演じるジミー・クラントン等、錚々たる50年代ロックンロール・スター達を集めた。ザ・フラミンゴズの「Jump, Children」、ジェイ・ウォーカーの「Please, Mr Johnson」、ジャッキー・ウィルソンの「You Better Know It」、リッチー・ヴァレンスの「Ooh My Head」、ジミー・クラントンの「My Love Is Strong」、そして比類なきチャック・ベリーの歌う「Johnny B Goode」「Little Queenie」「Memphis, Tennessee」等、その音楽は強く活気に溢れていた。またエディ・コクランが、その後全米・シングル・チャート入りする「Teenage Heaven」を演奏している。

Written By Martin Chilton

♪ プレイリスト『50s


 

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