アリアナ・グランデのキャリアを振り返る:ポッププリンセスの誕生とポップスター栄冠の幕開け
2026年7月31日にリリースされるアリアナ・グランデ(Ariana Grande)の8作目のスタジオ・アルバム『petal』。リード・シングル「hate that i made you love me」は英米のシングル・チャートで初登場1位、アメリカを除くグローバル・チャートでも、Spotifyのグローバル・チャートでも1位を獲得している。
“他人が作った私と決別する”ことがテーマとなる新作アルバムの発売を記念して、辰巳JUNKさんによるアリアナのキャリアを振り返る短期連載が公開。第1回となる今回はデビューから2ndアルバム『My Everything』までを取り上げる。
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子どもたちの人気者のアリアナ
「あなたから離れても、私は自分の道を見つけられる」
(「hate that i made you love me」より)
世界一に輝く大ヒットを記録中の「hate that i made you love me」。他人から押し付けられるイメージを拒絶するアンニュイな歌詞も話題だが、こうした姿勢は、10年以上におよぶキャリアの初期から始まっていた。
「歌っていないころの記憶がないんです」。アリアナ・グランデは、まさに歌うために生まれてきたアーティストだ。1993年、アメリカのフロリダ州で生を受け、ものごころがつく前から音楽映画『オズの魔法使』の真似をして育った。
4オクターブに及ぶ天性の歌声がスターに認められたのは4歳のとき。家族で乗ったクルーズ船のカラオケでセリーヌ・ディオンを歌っていたら、偶然居合わせたグロリア・エステファンから「絶対に歌をつづけなさい」と激賞されたのだ。
8歳から地元劇団でミュージカルを始めたアリアナは、作曲やフレンチホルンを学びながらニューヨークのブロードウェイに立った。有名になったのは16歳のころ。キッズ向けドラマ『ビクトリアス』(2010〜2013)で役者として成功し、主演スピンオフ『サム&キャット』(2013〜2014)までつくられる人気を博した。
すっかり子どもたちの人気者になったアリアナだったが、デビューアルバムの制作には3年もかけていた。ソロ楽曲「Put Your Hearts Up」を発表してはいたものの、ドラマの役を彷彿とさせるバブルガム・ポップソングで、本人のアーティスト性からはかけ離れていたのだ。
本当の自分を紹介:ポップ・プリンセスの誕生
本当に好きな音楽をつくるべきだと勧めた存在こそ、正式デビューシングル「The Way」に客演しているラッパー、マック・ミラーだった。曲の冒頭で彼が「昔のノリに戻ろう」と呼びかけるように、サウンドはノスタルジックな90年代風R&B。まさしく、アリアナが聴いて育った音楽だ。
こうして完成したデビューアルバムこそ『Yours Truly』(2013)。世界に「本当の自分」を紹介するラブレターとして「敬具」を意味するタイトルがつけられた。
おとぎ話のような「Honeymoon Avenue」で幕を開けると、ミュージカルやドゥーワップ、ピアノバラードなど、アリアナらしさが輝いていく。はからずも、17歳のとき作曲したラブソング「Tattooed Heart」は、古典を愛するアーティストとしての音楽との関わり方も象徴している。「1954年みたいに、真摯につきあってるって言いたいの」。
「アリアナの歌声が大好きです。本当に美しい声質で、聴いているだけで心地がいい。こんなふうに人を幸せな気持ちにしてくれる歌い手は、本当に久しぶりです」
(ベイビーフェイス、『Yours Truly』プロデューサー)
『Yours Truly』は「マイク一本で聴衆を魅了するボーカリスト(歌唱派)を復活させたアルバム」として評価されることになる。2013年といえば、ケイティ・ペリーやレディー・ガガなど、見た目から派手なダンスポップの時代。もちろんアデルなどのバラード歌手もいたが、しんみり重厚なシリアス路線だった。
古風なR&Bポップで登場したアリアナは、マライア・キャリーら90年代ディーバたちの魅力を思い出させる存在だった。ただ上手いだけではなく、聴く者の人生を楽しくハッピーにしてくれるピュアな歌声。そんなポップ・プリンセスの座を確立した名曲こそ、恋にわきたつ気持ちを歌い上げる「Baby I」。日本でも人気を博し、葉加瀬太郎とのコラボ版がアニメ『Go-Go たまごっち!』のエンディングテーマに起用された問答無用の代表曲だ。
作風の拡張:ポップスター栄冠の幕開け
「『My Everything』は、私の人生を変えてくれたアルバム」
(アリアナ・グランデ、リリース10周年記念コメント)
『Yours Truly』がポップ・プリンセスの誕生なら、次なる『My Everything』(2014)はポップスターの栄冠の幕開けだ。「私のすべてを見せる」宣言から始まるこの2ndアルバムで、アリアナはトッププロデューサーと作風を拡張し、ヒット曲を連発していった。
先行シングルから度肝を抜くものだった。レトロな個性を残しつつ、王道ポップスターらしい派手なダンス路線だったのだ。イギー・アゼリアとのジャジーな「Problem」を気丈な態度で乗りこなし、ゼッド制作の「Break Free」では貫くように歌い上げた。
EDM全盛期の華やかさを残しつつ、2010年代後半のポップサウンドへの橋渡しも果たしていた。ザ・ウィークエンドとのダークでセクシーなデュエット「Love Me Harder」は、当時急成長していたオルタナティブR&Bサウンドを大衆化させた名曲と名高い。
「アリアナこそが『My Everything』の輝かしい楽曲群を仕上げたのです。彼女はどんな曲にも命を吹き込み、心に響く意味を与えてくれます」
(チャーリー・ウォーク、リパブリック・レコード創業者)
『My Everything』の大成功の秘訣は、やはりアリアナの歌声とセンスにある。
キャリア屈指の人気を誇る「One Last Time」は、基本的には、元恋人に戻ってほしいと願う悲しい曲だ。しかし、演劇的に展開されるボーカルが昇華していくにつれ、切ない解放感がもたらされていく。のちにこの曲が追悼歌としても広まっていったことは、聴く人や状況によってさまざまな感情を喚起させる奥深さあってこそだろう。
意外にも、新曲「hate that i made you love me」と通ずる要素もある。アルバムの最後を飾る「You Don’t Know Me」は、批判や偏見にも晒されていった若きスターとして、求められる理想像を拒否する宣言だった。
「正直言って これは私の人生(あなたは知らない)」
「あなたのルールに従う必要はない」
(「You Don’t Know Me」より)
実際、スターとしての足場を整えたあとには、より一層の音楽的な変革を通じて世間を驚かせていくことになる。
キャリアの最初から音楽業界の「当たり前」に屈さず、信念を貫いてきたアリアナ・グランデ。その軌跡をたどることは、世界中から期待をかけられる立場のなか、自分らしさを守り育んできた闘いを知ることでもある。
Written by 辰巳JUNK
アリアナ・グランデ『petal』
2026年7月31日発売
CD・LP / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
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