(function(h,o,t,j,a,r){ h.hj=h.hj||function(){(h.hj.q=h.hj.q||[]).push(arguments)}; h._hjSettings={hjid:104204,hjsv:5}; a=o.getElementsByTagName('head')[0]; r=o.createElement('script');r.async=1; r.src=t+h._hjSettings.hjid+j+h._hjSettings.hjsv; a.appendChild(r); })(window,document,'//static.hotjar.com/c/hotjar-','.js?sv=');
Join us

Columns

オリジナル・ゲットー・ボーイズ!黒人音楽を支えてきたユダヤ人たちの物語【丸屋九兵衛連載】

Published on

ヒップホップやR&Bなどのブラックミュージックを専門に扱う音楽情報サイト『bmr』を所有しながら音楽・映画・ドラマ評論/編集/トークイベントなど幅広く活躍されている丸屋九兵衛さんの連載コラム「丸屋九兵衛は常に借りを返す」の第16回は、ヒップホップやR&Bといったエンターテイメントの世界を長年支えてきたユダヤ人たちについて解説頂きました。

<関連記事>


 

つい最近もFM OH!(旧FM大阪)にて「K-POP研究会」なるものを設立したわたし。「同好会」「研究会」「ユニット」「サークル」を立ち上げるのは好きなようで、例えば☆Taku Takahashi&佐藤大と組んだ『スター・トレック』専門オタク系ユニット「TNG」というものもある。The Trekkie, the Nerd, and the GeekでTNGだ。とはいえ、長らくわたしだけがそう称している状態に留まっていたが、2016年に『SFマガジン』誌上の座談会できっちりユニット名として記載されたために、半ば公式化。もっとも、あとの二人がどう思っているかは定かではないが。

そんな私設ユニットの一つに、畏友・長谷川町蔵と組んでいる(とわたしが宣言している)ものも存在する。

その名は「オリジナル・ゲットー・ボーイズ・ボーイズ」。つまり、「原典たるゲットー・ボーイズを応援する会」だ。今は亡きブッシュウィック・ビルが在籍していたグループならGeto Boys(表記は「ゲトー・ボーイズ」が多い)。だが、我々が応援しているのはGhetto Boys。

……誰や?

ゲットー。この言葉は、たいてい「米黒人街」の同義語として機能しているし、他の民族が集中して居住している地区にも適用されることがある。これはこれで伝統だし、それを否定したらアホだ。だが、原典を知らずして言葉を使うのは、プロフェッショナリズムに欠ける。「ダンジョンズ&ドラゴンズ」を知らずにRPGを語るようなものだ。

では、本来のghettoとは何か。
「中世ヨーロッパの都市に設けられていた、ユダヤ人を強制集住する地区」を意味する言葉である。

そんなゲットーのオリジナル住民、ユダヤ人たちが近代以降の世界で果たしてきた音楽界での功績、特にヒップホップやR&B、ソウルやブルースに対する貢献を正当に評価し、応援する。それが、我ら「オリジナル・ゲットー・ボーイズ・ボーイズ」の活動なのだ。

そんな我々が特に好むトピックは「プロフェッサー・グリフ事件」である。

プロフェッサー・グリフことリチャード・グリフィンはパブリック・エネミーの「情報相」。自身もラッパーにしてスポークンワード・アーティストなのに、グループのメンバーとしては主にステージでS1Wを指揮するリード・ダンサーとしての役割を担う……という不思議な人物だ。

その彼がインタビュー中に「世界の悪の大半はユダヤ人の責任である」と発言したのは1989年のこと。……ユダヤ人とは、資本家として世界経済を動かし、アメリカ政府の動向も左右する陰謀民族。重役やプロデューサーとして音楽業界やハリウッドをも牛耳っている……そんなステレオタイプのユダヤ人像がグリフの脳内にあったのかどうか。いずれにせよ、この発言は非難轟々となった。当たり前である。

特に、当のユダヤ人たちの怒りは大きかった。彼らはこぞってパブリック・エネミーが所属するレーベル「デフ・ジャム」を責め立てたが、そんな騒動の中、デフ・ジャムを支えて頑張っていたのは……ユダヤ人社員たちである。

そもそも、デフ・ジャムは元を正せばリック・ルービンが始めた試みだ。ラッセル・シモンズと知り合わなければ会社として飛躍することはなかったろうが、それでも言い出しっぺはリック・ルービンのほう。

リック・ルービン(左)、ラッセル・シモンズ(右)

そのリック・ルービンは何者だ? ユダヤ人だ。

件のプロフェッサー・グリフの騒動の頃、すでにリック・ルービンはデフ・ジャムを離れており、リオー・コーエンが社長を務めていた。

そんなリオー・コーエンとは何者だろう? ユダヤ人である。

ここで、本来のghettoの話をしよう。
この不思議な響きの言葉が「ユダヤ人街」を意味するようになった経緯については諸説あるが、「16世紀初頭、ヴェネツィア(イタリアという国家はまだない)で、ユダヤ人たちが居住を強制させられた場所が鋳物工場(gheto)の跡地だったから」という説を採りたい。

紀元1世紀後半、ローマ帝国に反乱を起こして失敗し、ユダヤ属州解体&自治禁止という目にあったユダヤ人。以来、彼らは散り散りとなって、世界各国に移住してゆく(ディアスポラ)。

新参者の移民である以上、農耕用の土地は与えられないケースが多かった。そんな彼らが参入できたのは――貿易を除けば――金融や芸能、アカデミズム等の世界。このようにユダヤ人は、移住先の新天地で差別される都市住民であり、その意味で米欧における黒人、ラティーノ、エイジャンたちの大先輩とも言える。ユダヤ人の場合、国を失い離散した民族ならではの団結の強さと、国を持たないがゆえに国境をまたぎ続けるネットワークの力は、それらの業種でプラスとなったろう。

しかし金融にしろ芸能にしろ、長らく日陰者的だった(時として蔑視される)産業であり、だからこそユダヤ人が関与できたのだ。それらの業種が重要視されるのは近代以降。「陰謀民族ユダヤ人が美味しい産業を乗っ取った!」のではなく、長年にわたって家業のように続けてきたマイナー産業が、いつの間にかメジャーになっただけの話である。

R&Bとはもちろんリズム&ブルースの略称だが、このRhythm & Bluesというジャンル名はもともと、『ビルボード』編集者時代のジェリー・ウェクスラーが考案したもの。のちにアトランティック・レコーズに入社し、トルコ系のアーティガン兄弟と共にレイ・チャールズを支えたウェクスラーもユダヤ人だ。

そして、チェス・レコーズのレナード・チェス。マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフ、チャック・ベリー、ボ・ディドリーといった偉人たちも、このユダヤ人経営者なしに成功し得ただろうか?

「奇妙な果実」ことStrange Fruitはどうだ?
「南部の木々には奇妙な果実がなる」と始まる同曲は、白人によるリンチで殺された黒人の亡骸が、首に縄をかけて木に吊るされている様子を描写したもの。ビリー・ホリデイの持ち歌として有名だが、メロディもリリックもAbel Meeropolによって書かれたものだ。教師にして詩人、アクティヴィストにしてソングライターのユダヤ人である。

Strange Fruit

 

アイランド・レコーズを設立したクリス・ブラックウェルは、イングランド生まれジャマイカ育ち。18世紀からジャマイカで貿易や金融業を営んできたユダヤ一家の出身だ。一部のレゲエ・アーティストから「吸血鬼」呼ばわりされるブラックウェルだが、彼なかりせばレゲエはここまで開花したろうか?

あるいはCBS~アリスタ~Jレコーズ~ソニーのクライヴ・デイヴィス。スライ&ザ・ファミリー・ストーンやアレサ・フランクリンから、ホイットニー・ヒューストンやアリシア・キーズまでをフックアップし育てた彼なしに、ソウルやR&Bは今のように発展し得ただろうか?

とはいえ、ソウルやR&B、ヒップホップ界におけるユダヤ人は、ソングライターやプロデューサー、あるいはエグゼクティヴといった裏方ばかり、アーティストが不在のように思えるかもしれない。でも、ビースティー・ボーイズがいるのだ。旧約聖書「ダニエル書」でバビロニアのネブカドネザル王によって火の中に投げ込まれるも生還したユダヤ人3人組(Shadrach, Meshach, Abednego)に自分たちを喩えたビースティーズが。

Photo courtesy of Universal Music Group

TVや映画の世界に目を移すと、ユダヤ人が多大な貢献をしてきたシリーズとして『スター・トレック』がある。
J・J・エイブラムス制作による2009年からの劇場版『スター・トレック』3部作は、ビースティー・ボーイズと縁が深い。2009年の『スター・トレック』では主人公カークが”Sabotage”を絶叫、2013年の『スター・トレック イントゥ・ダークネス』ではカークが”Body Movin’ (Fat Boy Slim Remix)”を聴いていて、2016年の『スター・トレック ビヨンド』ではカークが異星人を音楽攻撃する際に再び”Sabotage”を使う。つまり、毎回毎回、劇中の人物が聴く曲として使われているのだ(観客に向けた演出用音楽ではなく)。23世紀の惑星連邦でもビースティーズ人気は健在らしい。

Star Trek Beyond (2016) – Sabotage Scene (8/10) | Movieclips

 

J・J・エイブラムス監督は1960年代半ば生まれ(ビースティーズと同世代)で特技はヒューマン・ビートボックス、ニューヨークとLAを行き来して育ったユダヤ人。そんな彼にとって、「アーティスト/パフォーマーとしてのユダヤ人」をレプリゼントするビースティー・ボーイズは、何者にも代えがたい存在なのではないか……と夢想する。

Written by 丸屋九兵衛


丸屋九兵衛トークライブ


連載『丸屋九兵衛は常に借りを返す』 バックナンバー


■著者プロフィール

 

maruya

丸屋九兵衛(まるや きゅうべえ)

音楽情報サイト『bmr』の所有者/音楽評論家/編集者/ラジオDJ/どこでもトーカー。2020年現在、トークライブ【Q-B-CONTINUED】シリーズを展開。他トークイベントに【Soul Food Assassins】や【HOUSE OF BEEF】等。

bmr :http://bmr.jp
Twitter :https://twitter.com/qb_maruya
手作りサイト :https://www.qbmaruya.com/

Share this story
Share
日本版uDiscoverSNSをフォローして最新情報をGET!!

uDiscover store

Click to comment

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Don't Miss