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リー・モーガンはどのようにしてブルーノートの若手スターとなり『The Cooker』を作ったのか

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1957年の9月29日、ニュージャージー州ハッケンサックにあるルディ・ヴァン・ゲルダーのレコーディング・スタジオに入ったリー・モーガンは、当時まだ20歳の誕生日を迎えてすらいなかった。フィラデルフィア出身のモーガン(1938年〜1972年)は、自動車事故で1956年に他界した画期的なハード・バップ・ホーン奏者クリフォード・ブラウンに憧れるトランペットの神童で、もう一人の注目を集めていたトランペッター、ディジー・ガレスピーが率いた短命のビッグ・バンドのホーン・セクションを担当していた。それは1956年、モーガンがまだ18歳の時のことだ。

同年のその後、彼は当時先進のジャズのインディーレーベルだったニューヨークのブルーノート・レコードから契約をオファーされ、デビュー・アルバム『Lee Morgan Indeed!』をレコーディングを行った。その後、リー・モーガンは、10ヵ月半の間にさらに5枚のアルバムを吹き込んた。しかし彼自身の作品の制作と同時に、リー・モーガンの天賦の超人的才能のニュースは素早く広まり、テナー・サックス奏者で同じくブルーノートと契約していたハンク・モブレーのレコーディングにも参加。そして、おそらくもっと重要なこととして、『The Cooker』をレコーディングする4日前、リー・モーガンはルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオで、同じくフィラデルフィア出身の新進のテナー・サックス・スター、ジョン・コルトレーンと共に、コルトレーンの初期の名作『Blue Train』に収録される曲を演奏している。

コルトレーンとのセッションで厳しい鍛錬と集中力を求められた後、モーガンは、よりリラックスした雰囲気をスタジオに取り込むことを望んだ。彼はハイアートの概念と注意深く考え出されたアレンジを使って、参加ミュージシャン達がそれぞれの演奏を、即興の堅苦しくないやり方で披露できるような旧来のようなセッションをやることにした。

1958年3月に発表された『The Cooker』は、モーガンのそれまでのブルーノート作品(『Lee Morgan Sextet』『Lee Morgan Vol.3』『City Lights』)とは違い、少人数のグループが起用された。実際には5人組で、マイルス・デイヴィスの人気のクインテットからベーシストのポール・チェンバース、ドラマーのフィリー・ジョー・ジョーンズという強力なメンバーを迎え、ピアノは、ザ・シティ・オブ・ブラザリー・ラヴの若手ミュージシャン、ボビー・ティモンズ(彼は後に名のあるハード・バップ作曲家となった「Moanin」「Dat Dere」という名曲を作曲した)。ティモンズは、モーガンのように、最終的にはアート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズに加入している。モーガンのスタジオ・バンドは、バリトン・サックスのスペシャリスト、ペッパー・アダムスが加わって完成した。アダムスのサウンドの響きは、特にモーガンのホーンと混ざり合う時に、個性的で、よりダークな側面を曲にもたらした。

Photo: Francis Wolff/Mosaic Images

『The Cooker』のオープニング曲は、40年代のビバップのモーガン流の解釈である「A Night In Tunisia(チュニジアの夜)」で、彼の以前のボスであるディジー・ガレスピーの共作曲だった。この曲は尋常でないペースで演奏されていたが、9分のパフォーマンスの幕開けでフィリー・ジョー・ジョーンズが叩くタムタムは、ミドルテンポで始まる。チェンバース、ジョーンズ、ティモンズが穏やかでありつつパーカッシヴなグルーヴを築いた後、アダムスが、モーガンが引き出すガレスピーの有名な東洋風のメロディの上にサウンドを織り込んでいる。それから一連のソロが始まり、モーガンは鮮やかなサウンドと振動するトレモロを融合して眩しい輝きを見せる。その後オリジナルのテーマに創意に富んだメロディの捻りを散りばめたペッパーの見事なソロが続き、それからティモンズがスピーディーなピアノ伴奏を入れている。

A Night In Tunisia

「Heavy Dipper」はモーガンのオリジナル曲のひとつだ。素晴らしいソロと調和のとれたアンサンブルが特徴のゴキゲンな曲で、フィリー・ジョー・ジョーンズが短いドラム・ソロを披露してスポットライトを浴びる瞬間も入っている。

Heavy Dipper (Rudy Van Gelder Edition/2006 Digital Remaster)

ペッパー・アダムスは、コール・ポーター作「Just One Of Those Things」の強力なカヴァーで、最初に圧倒的なソロを披露。この曲ではチェンバースの力強いベースラインも印象的だ。モーガンのソロは3分すぎまで現れないが、それが出てくると、当時17歳の若きフィラデルフィア人がジャズの新星の一人とみなされた理由が容易に理解できる。

Photo: Francis Wolff/Mosaic Images

グループは、ブルージーでロマンチックなバラード曲「Lover Man」の素晴らしく落ち着いたカヴァーでクールダウンする。この曲はビリー・ホリディのために書かれた曲だ。始めに聞こえるのは、モーガンの輝かしいトランペットとチェンバースのベースで、それから残りのアンサンブルが加わる。アダムスのソロがしっかり雄弁に響いて特に注目を引く。

Lover Man (Rudy Van Gelder Edition/2006 Digital Remaster)

『The Cooker』は、本作2曲目のモーガンのオリジナル曲「New-Ma」で締めくくられる。これはベースラインと共に進むミドルテンポの曲で、そのリラックスしたスタイルは、4ヵ月後にレコーディングされた同じブルーノート所属のピアニスト、ソニー・クラークのハード・バップの名曲「Cool Struttin’」の先駆けといえる。

New-Ma

これらのヴィンテージな曲でリー・モーガンが大人びたサウンドを鳴らしているのを聴くと、彼が人生についても音楽についても、まだ沢山のことを学ぶ必要のあるティーンエイージャーであったことを忘れてしまいそうになる。それでも、『The Cooker』はクリフォード・ブラウンの影から自由になり、独自のサウンドと音楽的アイデンティティを築き始めた若い男の姿を我々に見せてくれる作品である。

Written By Charles Waring


リー・モーガン『The Cooker』
   



 

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