Join us

Stories

クイーン『Ballet For Life』:ロックバンド、バレエ、ヴェルサーチによるコラボ作品が出来上がるまで

Published on

有名ダンサーで振付師でもあるウェイン・スリープはこう言った「フレディ・マーキュリーはまるでルドルフ・ヌレエフ(バレエダンサー)のように、ステージを駆けめぐる」。

ルドルフ・ヌレエフの大ファンでロイヤル・バレエ団の元理事長だったジョセフ・ロックウッド。彼と近しい仲だったフレディ・マーキュリーは、生前「僕はステージでバレエの動きを真似ているんです」と語っていた。そうした経緯からも、スイスのバレエ団、ベジャール・バレエ・ローザンヌがフレディ・マーキュリーの人生と音楽からインスパイアされた不朽の名演『Ballet For Life』をつくり上げたのは極自然な成り行きのように思える。

フレディ・マーキュリーが存命だったならフレンチ・バレエの巨匠振付師モーリス・ベジャールによる『Ballet For Life』を間違いなく気に入っていたことだろう。1997年に初演されたこの名作について前述のダンサー、ウェイン・スリープは、クイーンのロック・ミュージックとモーツァルトの古典クラシック作品を融合した“並外れた”舞台として評価した。イーグル・ロックから発売になった(日本盤は2020年1月15日発売)クイーン+モーリス・ベジャールの『Ballet For Life』のDVDでは、このプロジェクトがいかに大胆なものであったのかをご覧いただける。

Queen + Bejart – Ballet For Life (Trailer)

 

「これはまさしく愛についての物語なんです」

このプロジェクトは、ベジャール・バレエ・ローザンヌでダンサー兼オペラ・ディレクターを務めていたモーリス・ベジャールがフレディ・マーキュリーの死後に発売された『Made In Heaven』のジャケット写真を見て、クイーンに連絡をとったことが発端となった。モーリス・ベジャールは2007年に亡くなっているが、フレディ・マーキュリーの人生を讃えるバレエ作品をつくることは彼の願いだった。

「これはまさしく愛についての物語なんです。このプロジェクトでの仕事はとても楽しくて、クイーンの音楽の虜になりました。奇しくも彼は、私たちの花形ダンサーだったジョルジュ・ドンが亡くなる一年前に同じエイズのため亡くなっていて、それがきっかけでもありました」とモーリス・ベジャールは、『Ballet For Life』の舞台裏を描いたドキュメンタリー作品に収められているインタビューの中で語っていた。リン・ウェイクとサイモン・ラプトンが手掛けるこのドキュメンタリー作品は、エミー賞受賞歴を誇るクリストファー・バードによって編集された。

同DVD/Blu-Rayには、この他にも1997年6月にスイス・ローザンヌのメトロポール劇場で上演されたベジャール・バレエ・ローザンヌによるパフォーマンス全編を収録し、この舞台で使われているクイーン楽曲には「Heaven For Everyone」「A Kind Of Magic」「Radio Ga Ga」「Seaside Rendezvous」「I Was Born to Love You」 そして「The Show Must Go On」などがある。

Queen + Bejart – Ballet For Life (A Kind Of Magic Clip)

 

「とても大胆な作品でした」

クイーンのドラマー、ロジャー・テイラーは、フレディ・マーキュリーとジョルジュ・ドンという“双子の死”が、この作品に精神を浄化させるような意味合いと深みが注ぎ込まれていると考えている。ロジャーは、ロンドン・バレエ・カンパニーにて20歳の若さで「白鳥の湖」を演じたフランス生まれのスイス人、モーリス・ベジャールによるフレディとモーツァルトの音楽を融合させるという決断について、刺激的だったとコメントしている。「最初は、クラシックやオペラ風の音楽をロックとミックスさせたような、モーリスの好きな音楽とクイーン楽曲との融合のようなものになると思っていました。クイーンとモーツァルトの音楽をひとつの作品に共存させるなんて考えたこともなったので、とても大胆な作品でした。フレディが生きていたら、この作品も、そしてモーリス・ベジャールのこともすごく気に入っていたことでしょう。まるで別世界に行ったかのような気分でした」と彼は語った。

ギタリストのブライアン・メイは、“喪失”、“死”、“芸術的な優美”を追求し、恐ろしい病のため若くして命を落とした人々へ捧げるこのバレエ作品での仕事は、クイーンにとって「素晴らしい時間でした。“Ballet For Life”は、恐ろしい物語ではありますが、決して絶望的ではなく、そこには美の追求があります」と語っている。

「店内にあったクイーン関連作品を全て買いあさりました」

同公演で主役を演じ、現在ベジャール・バレエ・ローザンヌで芸術監督を務めるジル・ロマンは、このプロジェクトが始まった当初、クイーンの音楽は、「振り付けをつけるには主張が強すぎた」と、出演者を悩ませていたことを明かす。ジル・ロマンは、ジョルジュ・ドンとフレディには、“ステージ上で爆発的になれる”という共通点があると考える。「ジョルジュと同じく、フレディもその瞬間を大いに楽しむことができるアーティストでした。彼はまるでダンサーのように、自由に動き回る。モーリスはクイーンの音楽にのめり込んでいました。僕はレコードショップに行って、店内にあったクイーン関連作品を全て買いあさりました」と彼は語った。

Queen + Bejart – Ballet For Life (Brian and Roger Clip)

 

この舞台には、モーリス・ベジャールの親友で、ローザンヌでの撮影直後に、50歳の若さでマイアミで殺害されたジャンニ・ヴェルサーチがデザインした13点の華々しいコスチュームが起用されており、同作品は、フレディ・マーキュリー、モーリス・ベジャール、クイーン、そしてジャンニ・ヴェルサーチの貴重な資料映像にもなっている。今作に収録されているバレエの舞台映像は、モーリス・ベジャールに加え、「Bicycle Race」「Radio Ga Ga」「I Want To Break Free」といったクイーンの名作ビデオ、そしてフレディ・マーキュリーの「The Great Pretender」を手掛けたデヴィッド・マレットが共同監督を務めている。

『Ballet For Life』は1997年1月、パリのシャイヨー国立劇場で、元フランス大統領ジャック・シラクの妻であるベルナデット・シラクが見守る中で初演をされている。フレディの友人だったエルトン・ジョンが、ブライアン・メイとロジャー・テイラー、そしてベースのジョン・ディーコンの演奏で、フレディの曲を披露し、その後引退を決意したジョン・ディーコンにとって、それがクイーンでの最後のパフォーマンスとなった。「彼がすごく緊張していたのがわかりました。ずっとタバコを吸い続けていて…フレディを失ったことが彼にとってはずっとトラウマだったんです」とロジャー・テイラーは当時を振り返っている。

Queen & Elton John – The Show Must Go On (Live, 1997)

 

現在『Ballet For Life』は世界中で上演されているが、モーリス・ベジャールは、その見事なバレエの舞台を通して、若くして亡くなった 魅力的なパフォーマー、そしてフレディ・マーキュリーへの卓越したトリビュート作品を私たちに遺してくれたのだ。

Written By Martin Chilton


クイーン『Ballet For Life』
日本盤 2020年1月15日発売
Blu-ray / DVD
[収録内容]
●ドキュメンタリー(2017年/約58分)
●バレエ(1997年/約90分)
●メイキング・オブ(1997年/約23分)
※日本語字幕付き


フレディ・マーキュリーの全キャリアを網羅したボックス・セット10月11日発売


『ネヴァー・ボーリング – フレディ・マーキュリー・コレクション』
3SHM-CD+ブルーレイ+DVD

ネヴァー・ボーリング – ベスト・オブ・フレディ・マーキュリー』CD
『MR. バッド・ガイ(スペシャル・エディション)』CD
『バルセロナ (オーケストラ・ヴァージョン)』CD

Freddie Mercury – Never Boring (Trailer)

 


Share this story
Share
日本版uDiscoverSNSをフォローして最新情報をGET!!

uDiscover store

Click to comment

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Don't Miss