45回転のシングル盤が世界を変える

July 26, 2016


45回転のシングル盤が世界を変える

初めての45回転レコード――エディ・アーノルド「Texarkana Baby」の緑のアナログ盤――が、1949年3月31日にRCAビクター・レコードから発売されると、ライバルのレコード会社たちは自分たちも作ろうと躍起になった。何百万もの人々、とくに若者がシングルを購入する意欲があるのは明白だった。

Vinyl Gif

7インチの45回転盤は、重いシェラック製の78回転レコードの粋な代替品で、33回転LPのライバルであり(45は78マイナス33に由来)、音楽の革命をもたらした。5年と経たずして、2億枚以上の45回転盤が売れ、このブームはエルヴィス・プレスリー、チャック・ベリーなどの世界的なスーパースターを生み、彼らの曲を人々の意識に刻み込んだ。

Elvis Presley - That's All Right Artwork

ときに、幸運がしっかりとその任務を果たすことで、モンスター・ヒットが誕生する。とくに優れた耳と人気が備わっている場合に。1954年、プレスリーはサン・スタジオでのレコーディング・セッションの休憩中、ふざけて、ブルース・シンガー、アーサー・クルーダップの1946年の曲「That’s All Right」のアップテンポ・ヴァージョンを即興でプレイし始めた。ビル・ブラックがベースに、スコッティ・ムーアがギター・リックをプレイし、このお遊びに参加した。

もしプロデューサーのサム・フィリップスが注意を払わなければ、この彼らの音楽への熱狂は知られずに終わったかもしれない。フィリップスは、その場で彼らのヴァージョンをレコーディングした。ディスクはメンフィスのDJへ送られ、彼は繰り返しプレイし、人々は瞬く間に虜になった。ラジオ局がヒット・シングルの誕生に大きな役割を果たしたのは、もちろん、これが最後ではない。

Bill Haley - We're Gonna Rock ARound The Clock Artwork

同じ年、ビル・ヘイリーの「(We’re Gonna)Rock Around The Clock」が、とてつもなくヒットしたのも、経験の浅い耳ではあったが、幸運が働いた。ヘイリー&ヒズ・コメッツはこの曲を、核爆発により生き残ったたった14人について歌った風変りなシングル「Thirteen Women And Only One Man In Town」のB面としてレコーディングされた。1954年5月にリリースされたこの黙示録的なシングルは、7万5,000枚が売れたが、もしLAに住む10歳の少年がそのB面に夢中にならなかったら、音楽的には些細な出来事で終わっていたかもしれない。

この少年、ピーター・フォードは、俳優グレン・フォードの息子だった。グレンは、若きシドニー・ポワチエと共に、都市部の学校を舞台に10代の非行を描いた映画『暴力教室(原題:Blackboard Jungle)』に出演する契約を交わしていた。フォードが監督のリチャード・ブルックスにヘイリーの曲について話したことから、ブルックスはオープニング・クレジットで流すのにこの曲を選んだ。アカデミー賞の候補に挙がった映画の成功により、曲の人気に火がつき、1955年3月だけで100万枚が売れた。チャートのトップを飾ったロックンロール・バンドによる初のシングルとなり、8週間1位をキープした。

抑制がゆるんだ戦後の社会で、ティーンエイジャーがレコードを買うことに一体感やアイデンティティを見出し、45回転盤は黄金期を迎えた。音楽は最も人気がある娯楽となり、10代のライフスタイルを形成した。

Chuck Berry - Maybellene Artwork

ティーンエイジャーは、彼らの年代に向けた曲が中年の男性によって作られた(「Rock Around The Clock」)とか、昔のトラディショナルを基にしている(チャック・ベリーの「Maybellene」)ことは知らなかった――もしくは気にしていなかった。踊れて、楽しく、車や恋愛の曲なら、申し分なかった。

45回転盤には、民謡、ブルース、クラシック音楽(クラシックは赤いアナログ盤にプレスされた)さえあったが、多くの消費者を引き付けるという点では、チャック・ベリーが常に“ベートーベンをぶっとばして”いた。ジョン・レノンはこう言っていた。「もしロックン・ロールに別の名をつけるなら、チャック・ベリーになるだろう」 45回転盤の隆盛は、ロックン・ロールの隆盛と連携していた。

ティーンエイジャーの購買力は高まっていたものの、パフォーマーはときに彼らの音楽を市場に合わせたり、道徳的観念を広めなくてはならないこともあった。リチャード・ウェイン・ぺニマン、リトル・リチャードとして知られる彼は、自身を“ロックン・ロールの設計者”と呼び、賢いことに、妥協しなくてはならないときがあることも承知していた。ニューオーリンズの窮屈なスタジオでレコーディングした画期的な曲「Tutti Frutti」で、彼は印象深いオープニングのライン「A wopbopaloobop alopbamboom」(ドラム・パターンの彼のヴォーカル・ヴァージョン)を歌うのに激しいエネルギーを注ぎ込んだが、クラブできわどい観客を前にプレイしていたみだらな曲から好ましくない部分を削除して歌うことに同意した。ゆえに、“Tutti Frutti, Good Booty”は“Tutti Frutti, Aw Rooty”になった。

Frankie Goes To Hollywood Relax Artwork

45回転盤の歴史で、不快もしくは物議をかもす歌詞が削除されたり検閲された例はいくつもある。「Tutti Frutti」から四半世紀後、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドのあからさまに性的な「Relax」がヒットしたが、英国では、BBCはこの曲を放送禁止にした。

45回転盤流行の第一波はアメリカから生まれ(英国では1952年までリリースされていなかった)、ヨーロッパ中の音楽ファンが、早く最新のリリースを手に入れたいと待ち望んでいた。ラッキーな人は、彼らのヒーローの動きを生で見ることができただろう。1952年、「How High The Moon」をヒットさせたデュオ、レス・ポールとメリー・フォードがツアーを行なった。45回転盤の出現は、一般のレコード購入者だけでなく、世界中の若いミュージシャンにもインスピレーションを与えた。エルトン・ジョン、ザ・ローリング・ストーンズポール・マッカートニー、そして彼の仲間、未来のザ・ビートルズらはみんな、アメリカのロックン・ロールにより形作られた。その後、彼ら自身が波となり大西洋を渡った。

The Beatles - Love Me Do Artwork

「Tutti Frutti」は、マッカートニーにとって重要な曲で、彼の初期のパフォーマンスに必須だった。このリバプール出身の若者を傑出させたのは、自分で曲を作りヒットさせようという情熱だった。マッカートニーが学校のノートブックに書き留めた「Love Me Do」は、ザ・ビートルズ初のヒット・シングルとなった。この曲はファブ・フォーに、レイ・チャールズやリトル・リチャードのカヴァーではなく自分たちの曲をパフォーマンスしようという自信を与えた。

「Love Me Do」のような影響力があるレコードは、音楽を愛する人々の心の中に忘れられない跡を残す。「Love Me Do」はチャートの最高位は17位だったが、UKの長寿ラジオ番組、ゲストが無人島に持っていきたいと思うレコードを明かす『Desert Island Discs』で、16人ものゲストがこれを選んだ。シングルがリリースされたとき14歳だったブライアン・イーノもその1人だ。素晴らしい曲はときに、若き日の記念碑となる。

「Love Me Do」はたった2分しかなく、その時代のほとんどのシングルが短かった(モーリス・ウィリアムス&ザ・ゾディアックスの「Stay」のドゥーワップ・ヴァージョンは1分37秒しかなかった)が、革新的で意欲的なものもあった。

1959年にリリースされたレイ・チャールズの「What’d I Say」は、ポピュラー・ミュージックで最も影響力を持つ曲の1つだ。曲は、チャールズがコンサートで余った12分を埋めるため即興でプレイしたことから誕生した。チャールズはバック・シンガーだったレイレッツに「あれこれいじってみるから、付いて来い」と言ったそうだ。オーディエンスは大興奮し、彼はすぐにレコードにしなくてはと思った。ブルース、ゴスペル、ポップ、ソウルをブレンドし、コール・アンド・レスポンスの歌詞が感動的なこの曲は、画期的な勝利だった。

60年代初期(この頃までにほとんど全てがステレオ・サウンドで制作されていた)には、3分間のシングルが標準となっており、レコード会社の重役たちは、6分以上あるボブ・ディランの曲「Like A Rolling Stone」に成功のチャンスはあるか、議論したものだ。この成功は、さらなる大作の登場を奨励した。その中でもとくに優れていたのが、テンプテーションズの長く感動的なソウル・ソング「Papa Was A Rolling Stone」(1972年)だろう。グラミー3部門を受賞し、名作として残り続けている。

Richard Harris - MacArthur Artwork

しかしながら、長ければいいというわけでもない。とくに、映画『孤独の報酬(原題:This Sporting Life)』の主演俳優リチャード・ハリスによるサプライズ・ヒット、ややクレイジーな7分間の曲「MacArthur Park」の場合は。歌詞は冷笑された(「Galveston」「Wichita Lineman」等でも知られるソングライター、ジミー・ウェッブは失恋を雨の中置き去りにされたケーキと同じと見なした)が、ソングライターと俳優は1位獲得で笑いながら銀行へ向かったことだろう。この曲は、豪勢な編曲でグラミーの最優秀編曲賞を受賞した。

しかし多分、「MacArthur Park」を、レイ・スティーヴンスの「The Streak」と同列のノベルティ・ソングと決めつけてしまうのは不公平だろう。「MacArthur Park」には正真正銘、持久力があったのだから。70年代のディスコ・ムーヴメントを決定づけた「I Feel Love」を歌ったドナ・サマーは、この曲をカヴァーしヒットさせた。彼女が2012年に亡くなったときも、シングルはビルボードのダンス・クラブ・チャートに再登場した。

ポピュラー・カルチャーに根付いた45回転盤もある。史上最も売れたジャズ・シングル、デイヴ・ブルーベック・カルテットの「Take Five」(1959年)は、HBOの人気番組『The Sopranos』の重要なシーンのバックに流れるのにぴったりだと考えられた。クイーンの「Bohemian Rhapsody」は映画『ウェインズ・ワールド』に登場し、サム・クックの公民権運動のアンセム「A Change Is Gonna Come」は、TVドラマ『ザ・ホワイトハウス』でジェイムス・テイラーが架空の大統領に向け歌い――2008年には本物の大統領へ向け歌われた。ベティ・ラヴェットとジョン・ボン・ジョヴィが、バラク・オバマの就任式でパフォーマンスしたのだ。何十年経っても、これらの名曲は共鳴し続ける。

James Brown - Say It Loud Artwork

有効な政治的手段として使用されたシングルがあるのも、45回転盤の歴史の重要な部分だ。ジェームス・ブラウンとピー・ウィー・エリス(のちにヴァン・モリソンとの作品で有名になるサックス奏者)が共作した黒人の権利拡大についての曲「Say It Out Loud – I’m Black And I’m Proud」や、アメリカを消沈させた暗殺について歌ったマーヴィン・ゲイの感動的な曲「Abraham, Martin And John」(どちらも1968年)がある。

政治的な曲はアメリカに限られるわけではない。60年代、ヨーロッパのミュージシャンによるプロテスト・ソングもたくさんあった。この伝統は、セックス・ピストルズに継承され、彼らのシングル「God Save The Queen」もまた、女王の戴冠25周年だった1977年、BBCで放送禁止となった。音楽で意見を表明したいという欲望は枯れることはなかった(例えば、ザ・スミスと彼らの不安を駆り立てる曲「Meat Is Murder」)。アメリカでも、ピクシーズが「Monkey Gone To Heaven」でロックを通じ環境保護を訴え、90年代にはベックが「Loser」で皮肉に満ちた社会的主張をした。

Aretha Franklin - Respect Artwork

シングルはまた、時代を象徴する。アレサ・フランクリンは、オーティス・レディングの「Respect」を強力なフェミニスト・アンセムに変え、ジミ・ヘンドリックスの「Purple Haze」とジェファーソン・エアプレインの「White Rabbit」は60年代終わりのサイケデリックでドラッグな時代を捉えた。

ショーマンシップは、いつだって音楽の重要なところ(例えば、ジュークボックスの王、50年代に18ものNo.1ヒットを生んだルイ・ジョーダン)で、ヘンドリックスのようなアーティストにも継承された。変わったのは、テレビの力だ。パフォーミング・アートを活気づけ、45回転盤の成功(とくにミュージック・ビデオが盛んになってから)に繋がり、きらびやかなパフォーマーのイメージを結び付けた音楽も現れた。

デヴィッド・ボウイのゴージャスな「Space Oddity」とトム少佐のペルソナは、アバのスタイルに織り込まれた。彼らが奇抜な衣装を着て踊る「Waterloo(邦題:恋のウォータールー)」(もともとはすぐに忘れられそうな「Honey Pie」とのタイトルだった)がそのいい例だ。さらに「Bohemian Rhapsody」(1971年)のビデオに見られるフレディ・マーキュリーとその尊大なキャラクター、80年代のビースティ・ボーイスのアイコニックなふざけたビデオや曲(その皮肉さを理解できない人たちがいたとしても)からレディー・ガガのモダンで人目を引くパフォーマンスにまで継承されている。

Cyndi Lauper - Girls Just Want To Have Fun Artwork

故ボウイは、類まれだ。しかしときに、既存の曲をより商業的に変えることで金的を射ることがある。「Girls Just Want To Have Fun」はもともと、1979年にロバート・ハザードにより作られレコーディングされた。彼は、バッド・ボーイに夢中な女の子の視点からパフォーマンスしていた。シンディ・ローパーは、1983年、ガール・パワーのアンセムにすることで、これを自分のものにした。ローパーのビデオは崇拝され、ファッション・トレンドになった。

純粋に音楽のトリックで成功する場合もある。1981年、ソフト・セルのマーク・アーモンドはキーを変え「Tainted Love」を歌った。大当たりだった。グロリア・ジョーンズの1964年の曲が新ヴァージョンでヒットしたのだ。

壮大なプランはなくても、人々に気に入られるときがある。ヨーロッパとアメリカでヒットしたブラック・サバスのヘヴィ・メタル・ソング「Paranoid」がそうだった。彼らは後に、アルバムの3分を埋める必要があっただけだと認めている。また、ときにシングルはアーティストの商業面でのブレイクスルーを決定づける。プリンスの「1999」がそうだった。

持続的に影響を及ぼす45回転盤シングルもたくさんある。パーラメントのサウンドはファンクの典型的なモデルに、ミュージカル・ユースの「Pass The Dutchie」は大西洋の両側でレゲエの定番となり、Run DMCは「It’s Like That」でヒップホップのニュー・スタイルを先導し、ニルヴァーナは「Smells Like Teen Spirit」でオルタナティヴ・ロックをメインストリームに持ち込んだ。

Michael Jackson - Don't Stop Till You Get Enough Artwork

しかし、音楽には、記憶に残ろうとあえて努力する必要はない。W・H・オーデンの素敵な一節によると、歌はそれだけで避難場所にも、楽しみにも、消化時間にもなり得る。もしくは、キース・リチャーズの曲で踊るだけだっていい。キースは半分冗談で、ロックン・ロールは頭を垂れている(意気消沈している)人のための音楽だと言った。ザ・ローリング・ストーンズの「(I Can’t Get No) Satisfaction」、ビーチ・ボーイズの「Good Vibrations」、マイケル・ジャクソンの1979年のヒット「Don’t Stop ‘Til You Get Enough(邦題:今夜はドント・ストップ)」で踊るだけでも、たくさんの忘れがたき思い出が作られた。

もちろん、ダンス・ブームはマイケル・ジャクソンの前にもあった(チャールストンはその時代、とても人気だった)が、50年代のロック・シングルの隆盛は、ダンスホールからビッグ・バンド・ミュージックを追い出した。ロックン・ロール・ナイトは大盛況で、チャビー・チェッカーの「The Twist」など新しいダンスが大流行した。

ジェネレーション・ギャップという懸念は、1965年、ザ・フーによって決定づけられた。しかし、45回転盤はただのオーディオ・センセーションではなく、それ自体が胸を躍らせる物だった。大抵の人は、初めて買ったシングルを覚えている。特に、それが美しいミニチュアのジャケットで飾られていた場合は。45回転盤を買うのはワクワクすることだった。新しいアナログ盤はいい匂いがし、傷がつくのを恐れた人もいるだろう。ギタリストのジョニー・マーは、45回転盤を“別世界の物”と表した。ストリーミングやデジタル・ダウンロードが21世紀のリスナーに、シングルを即時に購入、アクセスできるという嬉しい体験をもたらしたとしても、アナログ盤がいまだ賛美されるのは不思議ではない。

特別な曲は、人々を繋げる力を持ち、同じ曲を聴くことで悲しみを共有することさえできる。ジョン・レノンの「Imagine」はもともとシングルとしてリリースされていなかったにも関わらず、彼が殺害された後、1位に輝き、人々は彼の美しい言葉に慰めを求めた。エルトン・ジョンが、ダイアナ妃の死後、再レコーディングし発表した「Candle In The Wind」の新ヴァージョンは、史上最も売れたシングルとして残り続けている。

疎外感を歌った傑作、ボウイの「Space Oddity」であろうが、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの瞑想的な「Family Affair」、ファッツ・ドミノの躍動的な「The Fat Man」(45回転盤が登場した年のビッグ・ヒットの1つ)であろうが、素晴らしい曲は、我々の心の世界の感動的なサウンドトラックであり、楽しませてくれる最高のフォームでもある。重要なシングルのリストは人それぞれだろうが、我々のプレイリストにある45回転盤はいつだって刺激的で楽しいものだ。

Written by Martin Chilton


 


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