Ringo Starr on Watching Paul McCartney Perform, New Beatles Movies & Abbey Road Album Cover
2025年にUKカントリー・アルバム・チャートで1位を獲得した『Look Up』に続く新作アルバム『Long Long Road』には、ビリー・ストリングス、シェリル・クロウ、セイント・ヴィンセントらとのコラボ楽曲も収録。アルバムに先駆けて、「It’s Been Too Long」と「Choose Love」の2曲が公開されていた。
またその他の関連のニュースとして、リンゴ・スターの初期ソロ4作品――『Sentimental Journey』(1970年/バターミルク・イエロー盤)、『Beaucoups Of Blues』(1970年/ベイビー・ブルー盤)、『Ringo』(1973年/モルテン・ラヴァ盤)、『Goodnight Vienna』(1974年/サイケデリック・ウェーヴ盤)が、それぞれ特別カラー・ヴァイナル仕様のLPで再発されている。
<収録曲>
1. Returning Without Tears
2. Baby Don’t Go
3. I Don’t See Me In Your Eyes Anymore
4. It’s Been Too Long
5. Why
6. You and I (Wave of Love)
7. My Baby Don’t Want Nothing
8. Choose Love
9. She’s Gone
10. Long Long Road
また、アルバム・タイトル『The Boys of Dungeon Lane』は先行曲「Days We Left Behind」の歌詞に由来している。装飾を削ぎ落とした非常に親密なこの曲は、アルバムの感情的な核心を捉えている。ポールはこう語る。
「これは僕にとってまさに“思い出の歌”だ。アルバム・タイトルの『The Boys of Dungeon Lane』はこの曲の歌詞から来ている。過去に置いてきた日々について考えていた。ただ過去について書いているだけではないかと思うことがよくあるが、では他に何について書けるのだろう、とも思う。これはリヴァプールのたくさんの思い出だ。途中にはジョンとフォースリン・ロード、かつて僕が住んでいた通りについての部分もある。ダンジョン・レインはその近くにある。僕はスピークという労働者階級の地域に住んでいた。ほとんど何も持っていなかったが、それは問題ではなかった。周りの人たちは素晴らしかったし、自分たちが何も持っていないことにすら気づいていなかった」
Paul McCartney – The Boys of Dungeon Lane (Official Album Trailer)
新作アルバムのレコーディング
アルバムの制作は、5年前にポールがプロデューサーのアンドリュー・ワットと紅茶を飲みながらアイデア交換をしたことから始まった。その時ギターを弾いていたポールは、世界で最も成功している現役のソングライターであるポールでさえ認識できないコードに偶然出会った。持ち前の実験精神に突き動かされ、音を一つ、また一つと変えていき、3コード進行が完成。このセッションからアルバムの1曲目「As You Lie There」が生まれた。
『The Boys of Dungeon Lane』は音楽的に多彩であり、ポールの幅広い音楽性を示すさまざまな楽器やスタイルが取り入れられている。ウイングスのスタイルのロック、ザ・ビートルズのスタイルのハーモニー、マッカートニーのスタイルのグルーヴ、控えめで親密な表現、メロディが主導するストーリーテリング、キャラクターを描いた曲ーーそのすべての共通点は“ポール”である。
<収録曲>
1. As You Lie There
2. Lost Horizon
3. Days We Left Behind
4. Ripples in a Pond
5. Mountain Top
6. Down South
7. We Two
8. Come Inside
9. Never Know
10. Home To Us
11. Life Can Be Hard
12. First Star of the Night
13. Sailsman Saint
14. Momma Gets By
Daniel Pemberton – Finding Rocky Voice | Project Hail Mary (Original Motion Picture Score)
原作にはないカラオケのシーンと選曲
そんなペンバートンの劇伴に加え、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』では複数のポップ・ミュージックが挿入曲としてフィーチャーされているのも特徴だ。ちなみに予告編の段階ではハリー・スタイルズの「Sign of the Times」、プリンスの「I Would Die 4 U」、そしてオアシスの「Champagne Supernova」がフィーチャーされていた。どの曲も物語に即したドンピシャな歌詞を持つことから「これらが主題歌候補なのか?!」と大きな話題になったのも記憶に新しい。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』には、クリス・クリストファーソンの「Sunday Mornin’ Comin’ Down」から、エンディングのアイク&ティナ・ターナーの「Glory, Glory」までいつくかの挿入曲が用いられている。そして物語のハイライトを飾るのがザ・ビートルズの「Two Of Us」なのだが、まずは中盤でユニークな使われ方をしているハリー・スタイルズの「Sign of the Times」について触れておこう。
同曲はサンドラ・ヒュラーが演じる「プロジェクト・ヘイル・メアリー」の全責任者、ストラットがカラオケで歌うナンバーとしてフィーチャーされている。もちろん原作にはないシーンだが、いかなる犠牲を払ってでも計画を遂行する、時に冷酷な司令官でもあるストラットの人類の可能性を信じ続ける強さ、そして内に秘めた優しさとが一瞬で明らかになる、非常に上手いシーンだったと思う。何故なら「Sign of the Times」はこんな歌だからだ。
そんな「Sign of the Times」がサプライズ的な名場面を生んだとしたら、本作のファンなら誰もが期待していたのがザ・ビートルズのフィーチャーだろう。『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の中で、「ビートルズ」はヘイル・メアリー号の先端に設置された小型ロケットの名前として登場し、内部の4つのポッドはそれぞれジョン、ポール、ジョージ、リンゴと名付けられている。
ビートルズの楽曲を商業映画のサントラとして使用するハードルは、権利関係的にも金額的にも非常に高い。それでも『プロジェクト・ヘイル・メアリー』にビートルズは必須であり、ファンは必ず使われることを信じていたはずだ。注目は「どの曲が?」「どんな場面で?」という点だったわけだが、「Two Of Us」は選曲的にも、使われる場面的にもこれ以外はない、完璧な一曲だったと思う。
「Two Of Us」は『Let It Be』に収録されたポール・マッカートニー作のナンバー。ポールとジョンがアコギを弾きながらツインボーカルで歌う佳曲で、その歌詞は同曲のレコーディングの6週間後に結婚した、リンダについて歌ったものだと言われている。
こうした歌詞の内容から、「Two Of Us」はポールとジョンが長年分かち合ってきた思い出を想起させるナンバーでもある。映画『ザ・ビートルズ : Get Back』のリハ映像の中で、二人が昔のように向き合い、ふざけ合いながら歌う姿にも、ファンがポールとジョンの絆を投影したくなるのも頷ける。
アルバム・バージョンの「Two of Us」は、ビートルズのルーフ・トップ・コンサート(1969年1月30日)の翌日にレコーディングされている。メンバー間の緊張がピークに達し、解散の瀬戸際で行われた「ゲット・バック・セッション」の締めくくりに、彼らがバンド初期の楽しげなスキッフル調を想起させる同曲をやったという意味でも、センチメンタルな友情を感じずにはいられないナンバーだ。
Two Of Us (Remastered 2009)
「Two Of Us」は二人の友情を乗せて宇宙を駆ける
そんな「Two Of Us」が使われているのは、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』のまさにクライマックスのシーン。ミッションを成功裡に収めたかに思えたグレースとロッキーに、まさかの危機が訪れる。その時、同曲の軽やかなアルペジオが流れ始めるのだ。
ちなみにロード&ミラー曰く、「Don’t Let Me Down」も最後まで候補に上がっていたという。しかし「僕を見捨てないでくれ、一人にしないでくれ」と歌う同曲だと、若干グレースの気持ちに寄りすぎている感も否めない。あのシーンではグレースとロッキーの二人にとってのテーマ曲が流れるべきで、やはり「Two Of Us」が、ポールとジョンの声が重なり合って一つになる同曲こそが相応しいだろう。
「ビートルズ」は人類の希望を乗せて、「Two Of Us」はグレースとロッキーの友情を乗せて宇宙を駆ける。『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は何度も観たくなる映画だろう。次に観る際には「Two Of Us」他、下記の挿入曲にもぜひ注目してみていただきたい。そのどれもが、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』のホープ・コアの精神を体現していることに気づくはずだ。
デニス・ウィルソン「Rainbow」
スコーピオンズ「Winds Of Change」
ハリー・スタイルズ「Sign of the Times」
ニール・ダイアモンド 「Stargazer」
アイク&ティナ・ターナー「Glory, Glory」
リンゴ・スターがニュー・アルバム『Long Long Road』を2026年4月24日にリリースすることが発表された。2025年1月にリリースされたカントリー・アルバム『Lock Up』の成功を受けて制作された第2弾となる。また、サラ・ジャローズとモリー・タトルが参加した、アルバムからの1stシングル「It’s Been Too Long」が先行リリースされ、ヴィジュアライザーも公開された。
T・ボーン・バーネットがプロデュースと多くのトラックの作曲を担った10曲入りアルバム『Long Long Road』には、ビリー・ストリングス、シェリル・クロウ、セイント・ヴィンセントらとのコラボ楽曲も収録。昨年リリースされ一部のチャートを制したアルバム『Look Up』に続く待望の第2弾アルバムである。
リンゴは次のようにコメントを寄せている。
「こうしてT・ボーンと知り合えて、レコードをいくつも一緒に作れている俺は恵まれているよ。前作は自分でもよく聴くくらい気に入っているんだけど、あのアルバムのあと、この作品も自然な流れで作ることになった。喜ばしいことに、俺は時々正しい選択をするんだ。決断を迫られる場面は常にあるけど、その中で俺がしてきた正しい選択の1つがT・ボーンと一緒に『Look Up』を作ったことだった。そして今回、また彼とアルバムを作ることができた。『Long Long Road』ってタイトルにしたのは、俺がこれまで”長い長い道のり”を歩んできたからだ」
『Long Long Road』はそのタイトルが示唆する通り、またリンゴ自身のキャリアと同様、カントリー・ミュージックやアメリカーナに深く根差した作品だ。リンゴはこう説明する。
「ザ・ビートルズでもカール・パーキンスの曲を2曲録音したことがあった。それで今回もT・ボーンと話して、ぜひ1曲取り上げようって話になったんだ。そうして彼が見つけてきてくれたのが、俺の知らなかった美しい楽曲 “I Don’t See Me In Your Eyes Anymore” だった」
『Long Long Road』の収録曲10曲のうち、6曲はT・ボーン・バーネットが単独あるいは共同で作曲したもの。その他2曲はリンゴとブルース・シュガーの共作、1曲はリンゴとマーク・ハドソンとゲイリー・バーの共作、1曲はベニー・ベンジャミンとジョージ・デイヴィッド・ワイスが作曲し、カール・パーキンスが録音した楽曲のカヴァーを収録。
<収録曲>
1. Returning Without Tears
2. Baby Don’t Go
3. I Don’t See Me In Your Eyes Anymore
4. It’s Been Too Long
5. Why
6. You and I (Wave of Love)
7. My Baby Don’t Want Nothing
8. Choose Love
9. She’s Gone
10. Long Long Road
この作品は、2月19日に一夜限りで劇場のみで見ることができる11分の映像がついて公開、そして2月27日にはAmazonのPrime Videoでの配信、同日には同作品のサウンドトラック『Man on the Run – Music from the Motion Picture Soundtrack』も発売される。
ポール・マッカートニー 『Man on the Run – Music from the Motion Picture Soundtrack』 2026年2月27日発売 CD・LP
収録曲
1. Wings – Silly Love Songs (Demo)
2. Paul McCartney – That Would Be Something (2011 Remaster)
3. Paul and Linda McCartney – Long Haired Lady (2012 Remaster)
4. Paul and Linda McCartney – Too Many People (2012 Remaster)
5. Paul McCartney and Wings – Big Barn Bed (2018 Remaster)
6. Paul McCartney – Gotta Sing Gotta Dance
7. Wings – Live and Let Die (Rockshow)
8. Paul McCartney and Wings – Band on the Run (2010 Remaster)
9. Wings – Arrow Through Me (Rough Mix)
10. Wings – Mull of Kintyre (2016 Remaster)
11. Paul McCartney – Coming Up (2011 Remaster)
12. Paul McCartney and Wings – Let Me Roll It (2010 Remaster)
オスカー、エミー、グラミー賞を受賞したモーガン・ネヴィル監督による、ザ・ビートルズ解散後のポール・マッカートニー(Paul McCartney)の創造的再生に迫る親密な長編ドキュメンタリー映画『ポール・マッカートニー:マン・オン・ザ・ラン』が2月19日に一夜限りの劇場公開、そして2月27日にはAmazonのPrime Videoで配信されることにあわせて、同作品のサウンドトラック『Man on the Run – Music from the Motion Picture Soundtrack』が2027年2月27日に発売されることが発表された。
このアルバムには、ポール・マッカートニー&ウイングスの名盤から、時代を超えた名曲、ヒット曲、重要曲など12曲が収録されている。1979年のアルバム『Back to the Egg』セッションからの未発表ラフ・ミックス「Arrow Through Me (Rough Mix)」と、1980年のコンサート映画『Rockshow』からの「Live And Let Die (Rockshow)」は、リリースに先駆けてAmazon Music限定で先行配信されている。
さらにアルバムには、1973年のテレビ特番『The James Paul McCartney TV Special』で初披露された「Gotta Sing Gotta Dance」という3曲目の未発表トラックも収録される。
『Man on the Run – Music from the Motion Picture Soundtrack』は、ジャック・ホワイトのThird Man Pressing工場でプレスされた限定版ニューヨーク・タクシー・イエロー・ヴァイナルLP、Amazon限定のタンジェリン・ピール・オレンジ・ヴァイナルLP、ブラック・ヴァイナルLPといったアナログ・レコードなど、様々なフォーマットで発売。SHM-CDで発売される日本盤には映画の場面をフィーチャーしたポスト・カードが先着購入者特典となっている。
アートワークのクリエイティブ・ディレクションは、ポール・マッカートニーと、ヒプノシスのオーブリー・“ポー”・パウエルが担当した。ヒプノシスは、『Band on the Run』『Venus and Mars』『Wings Over America』『Wings Greatest』、そして2025年のベスト・アルバム『WINGS』を含む8枚のウイングスのアルバムでポールと仕事をした象徴的なデザイン・スタジオである。アートワークのデザインはストーム・スタジオのピーター・カーゾンが手掛けている。
ポール・マッカートニー 『Man on the Run – Music from the Motion Picture Soundtrack』 2026年2月27日発売 CD・LP
収録曲
1. Wings – Silly Love Songs (Demo)
2. Paul McCartney – That Would Be Something (2011 Remaster)
3. Paul and Linda McCartney – Long Haired Lady (2012 Remaster)
4. Paul and Linda McCartney – Too Many People (2012 Remaster)
5. Paul McCartney and Wings – Big Barn Bed (2018 Remaster)
6. Paul McCartney – Gotta Sing Gotta Dance
7. Wings – Live and Let Die (Rockshow)
8. Paul McCartney and Wings – Band on the Run (2010 Remaster)
9. Wings – Arrow Through Me (Rough Mix)
10. Wings – Mull of Kintyre (2016 Remaster)
11. Paul McCartney – Coming Up (2011 Remaster)
12. Paul McCartney and Wings – Let Me Roll It (2010 Remaster)
ザ・ビートルズ(The Beatles)解散後のポール・マッカートニー(Paul McCartney)に焦点を当てた新ドキュメンタリー『ポール・マッカートニー:マン・オン・ザ・ラン』(原題:Man on the Run)が、2026年2月19日の1日限定で日本を含めた全世界で劇場公開されることが発表となった。
現在83歳のポール・マッカートニーは、今なお精力的に活動を続けている。昨年秋には、彼自身が監修したウイングスのキャリアを網羅する新たなベスト・アルバム『WINGS』がリリースされた。「Band on the Run」「Jet」「Live and Let Die」といったヒット曲が収録された『WINGS』は、カラー・ヴァイナル仕様の3LPデラックス、2CD、1CDなど多形態で発売中だ。
Paul McCartney & Wings 'Band on the Run' (Lyric Video)
その他の関連ニュースとして、長らく待ち望まれていたザ・ビートルズの『Anthology Collection』(8CD/12LP)が昨年11月にリリースされている。4巻構成、全191曲を収録した同コレクションからは、13曲の未発表音源を含むスタジオでのアウトテイク、ライブパフォーマンス、放送音源、デモ音源に加え、2023年にリリースされた最後のシングル「Now and Then」までを収録した新作コンピレーション『Anthology 4』も単独リリースされている。さらに、この『Anthology 4』から、ジェフ・リンによる「Free As A Bird」と「Real Love」の新ミックスをダブルA面として収録したシングルも7インチLPとCDで発売中だ。
などが決まりましたよ!という情報がてんこ盛りだった。もちろん米ABCと独占契約を結んでいたテレビ朝日は「ニュースステーション」での「Free As A Bird」解禁から始まって年末大晦日の映像版一気オンエアまで決まっていたところが“背骨”ではあったが、そんなこととは別にどのテレビ局もこのことのニュース・バリューをしっかり把握して取り上げてくれた、ということ。
The Beatles – The Beatles – Free As A Bird (Official Music Video) [2025 Mix]
Paul McCartney: Man on the Run – Official Trailer | Prime Video
ドキュメンタリーの内容
アカデミー賞受賞歴を誇るモーガン・ネヴィルが監督を務めた映画『Man on the Run』は、ポール・マッカートニーのソロ・キャリアにおける栄光と葛藤を描き、ウイングスの結成や、1969年に結婚し、1998年に56歳で亡くなった、妻でありバンドメイトでもあったリンダ・マッカートニーとの深い関係にも光が当てられている。
現在83歳のポール・マッカートニーは、今なお精力的に活動を続けている。昨年秋には、彼自身が監修したウイングスのキャリアを網羅する新たなベスト・アルバム『WINGS』がリリースされた。「Band on the Run」「Jet」「Live and Let Die」といったヒット曲が収録された『WINGS』は、カラー・ヴァイナル仕様の3LPデラックス、2CD、1CDなど多形態で発売中だ。
Paul McCartney & Wings 'Band on the Run' (Lyric Video)
その他の関連ニュースとして、長らく待ち望まれていたザ・ビートルズの『Anthology Collection』(8CD/12LP)が昨年11月にリリースされている。4巻構成、全191曲を収録した同コレクションからは、13曲の未発表音源を含むスタジオでのアウトテイク、ライブパフォーマンス、放送音源、デモ音源に加え、2023年にリリースされた最後のシングル「Now and Then」までを収録した新作コンピレーション『Anthology 4』も単独リリースされている。さらに、この『Anthology 4』から、ジェフ・リンによる「Free As A Bird」と「Real Love」の新ミックスをダブルA面として収録したシングルも7インチLPとCDで発売中だ。
1960年代初頭、7インチ・シングルが主流だった時代のグレイテスト・ヒッツは、ヒット曲で埋め尽くされ、ポップスの真髄を詰め込んだフル・アルバムとして強烈なインパクトを放っていた。たとえばザ・ローリング・ストーンズの『Hot Rocks 1964–71』、ザ・フーの『Meaty Beaty Big and Bouncy』、そして『Motown Chartbusters』シリーズなどがその好例だ。
“グレイテスト・ヒッツ”アルバムは、キャリアの節目(ニール・ヤングの『Decade』)、活動の終止符(R.E.M.の『Part Lies, Part Heart, Part Truth, Part Garbage 1982–2011』)、そして死後に評価を高めたアーティスト(ニック・ドレイクの『Way to Blue』)など、アーティストやグループにとって様々な意味合いを持つ。また、ニルヴァーナのセルフタイトル盤(2002年)のように、新世代のリスナーにとっての入門編としても大きな役割を果たしてきた。
特にディスク1は、音質も悪く演奏も粗削り。カヴァーも多く、最初“これはどう楽しめば?”と思った人も多そう(筆者も最初そうでした)だが、『ビートルズ: Get Back』を通過した今、これこそが彼ら(特にポール)が“ゲット・バック・セッション”で目指した原点、という視点で聴くと、また違った楽しみ方ができるかもしれないと思う。では、本アルバムのメインディッシュ「Free As A Bird」は後に回し、収録内容について順に解説していく。
ディスク1
まずディスク1。3曲目「That’ll Be the Day」、4曲目「In Spite of All the Danger」は、ビートルズ関連で2番目に古い音源(最も古い音源は1957年、ジョンとポールが出会った日のクオリーメンのライヴ音源)。ビートルズの前身、クオリーメンが1958年7月にフィリップスのサウンド・レコーディング・サーヴィスで録音した自主制作盤で、録音メンバーはジョン、ポール、ジョージにドラムのコリン・ハントン、ピアノのジョン・ダフ・ロウを加えた5人(なおこの頃、ポールはギターとヴォーカルを担当し、ベースレスの編成)。
「That’ll Be The Day」は、楽器編成やコーラス・ワーク、そのバンド名(意:こおろぎ)からも、ビートルズに大いに影響を与えたバディ・ホリー&ザ・クリケッツのカヴァーで、歌唱はジョン。ジョンは既に歌唱スタイルや自由なキャラクターが固まりつつあるが、ポールはコーラス含め控えめに参加している印象だ。
「In Spite Of All The Danger」は唯一となるポールとジョージの共作(ポール曰く“当時はリード・ギターのパートを考えたら、クレジットしなければいけないと思っていた”)のオリジナルで、こちらの歌唱はジョン。自作曲だからか「That’ll Be The Day」よりもポールのコーラスが積極的だが、ロカビリー調の曲自体は3コードのシンプルなもので、メロディ・メイカーとしての片鱗はまだ見えず。
In Spite Of All The Danger
6曲目「Hallelujah, I Love Her So」、7曲目「You’ll Be Mine」、8曲目「Cayenne」は1960年にポール宅で、借りたテープ・レコーダーで録音した音源。ジョン、ポール、ジョージに加え、後に“5人目のビートルズ”と呼ばれるスチュワート・サトクリフがベースで参加している。
弾き語り調の「Hallelujah, I Love Her So」はレイ・チャールズのカヴァーで、歌唱はポールによる。ジョンとポール作曲の「You’ll Be Mine」はシンプルなロッカ・バラードだが、ポールはバリトン風に大げさに歌唱し、ジョンは高低使い分けたコーラスや間奏には低い声の朗読を入れ、二人がやりたい放題だ。ポール個人の作曲名義「Cayenne」は、1950年代後半から活躍したバンド、ザ・シャドウズと似たスタイルで演奏した即興性の強いインストで、ジョージは不参加。いずれの楽曲も3曲目「That’ll Be the Day」、4曲目「In Spite of All the Danger」と比べリラックスした雰囲気での演奏だ。
You'll Be Mine (Home Demo)
10曲目「My Bonnie」、11曲目「Ain’t She Sweet」、12曲目「Cry For a Shadow」は1961年6月のドイツ、ハンブルク巡業で、歌手、トニー・シェリダンのバック・バンドを務めた頃の演奏。この頃のビートルズは、これまた“5人目のビートルズ”とも言われるピート・ベストがドラムとして加入、その後、サトクリフが脱退しポールがベースを担当することになり、後のビートルズと同じ4人組の構成として固まった時期だ。
トニー歌唱の「My Bonnie」は、有名なスコットランド民謡をアップ・テンポのロックンロールにアレンジしている。11曲目「Ain’t She Sweet」と12曲目「Cry For a Shadow」はビートルズのみの演奏で、ジョンが歌唱する「Ain’t She Sweet」は1927年に作曲され、ジーン・オースティンを始めとして様々なアーティストにカヴァーされたスタンダード。1956年、ジーン・ヴィンセントのカヴァー版を基に軽快なロックンロール調にアレンジしたか。
「Cry For A Shadow」は、「Cayenne」と同じくザ・シャドウズを意識したインストで、ジョンとジョージの共同作曲という唯一のクレジット。即興感が強かった「Cayenne」より完成度は高い。巡業の成果か、これらの音源は演奏に安定感があり、デビューに向け下地が固まってきているのを感じる。
Cry For A Shadow
1961年12月、ブライアン・エプスタインのマネージャー就任という転機から、ビートルズはいよいよデビューに向けたレコード会社探しを始める。ブライアンによる営業活動が実り、1962年1月1日に受けるのがデッカ・レコードの選考、デッカ・オーディションで、その際に録音された15曲のうち5曲が15曲目「Searchin’」、16曲目「Three Cool Cats」、17曲目「The Sheik of Araby」、18曲目「Like Dreamers Do 」、19曲目「Hello Little Girl」。15曲目と16曲目はアメリカのR&Bグループ、コースターズのカヴァー。
17曲目「The Sheik Of Araby」は、1921年に作曲され、ファッツ・ドミノなど多数のアーティストにカヴァーされたスタンダード。歌唱はジョージで、彼が大ファンだったジョー・ブラウン&ザ・ブルヴァーズが前年にリリースしたカヴァーをもとにアレンジ。18曲目、19曲目は3曲演奏されたオリジナル曲のうち2曲。「Like Dreamers Do」はポールによる作曲・歌唱。青臭さはあるが、随所にポールのメロディ・メイカーとしての片鱗を感じさせる。この曲はビートルズとしてリリースされることはなかったが、1964年、デッカ・レコードのバンド、アップルジャックスに提供され、英国シングル・チャートで20位にランクインした。
Like Dreamers Do (Decca Audition)
「Hello Little Girl」はジョンによる作曲・歌唱。この曲は1957年頃作曲の、ジョン曰く“最初の完成曲の一つ”で、前述のバディ・ホリー&ザ・クリケッツの影響が濃い。また、ポールの他にジョージのコーラスも確認でき、その後の肝となる3人でのコーラス・ワークが確認できる。これらの演奏からは、オリジナル曲のクオリティも上がりビートルズらしさが生まれてきているが、カヴァー曲が中心でオリジナル曲が少ないセットリストが影響したか、結果的にビートルズはこのオーディションに不合格となる。
その後、元メンバーのサトクリフの突然死などを経験するなか、1962年6月、EMI傘下パーロフォン所属のプロデューサー、ジョージ・マーティンによる選考がビートルズに対して実施。同年6月6日に、審査のためEMIのアビー・ロード・スタジオで録音されたのが21曲目「Besame Mucho」と22曲目「Love Me Do」だ。
「Besame Mucho」は、メキシコのコンスエロ・ベラスケスにより1932年に書かれたスタンダード。この曲は上述のデッカ・オーディションや、1969年の“ゲット・バック・セッション”でも演奏された。そして、ついにその後、ビートルズとして公式にリリースされる曲が登場。のちのデビュー・シングル「Love Me Do」だ。
当初、マーティンは当時の慣例通り、作曲家が書いた曲でのデビューを提案し録音されたのが英国の作曲家、ミッチ・マレー作の23曲目「How Do You Do It」で、歌唱はジョン。アレンジもビートルズらしく演奏も申し分ないが、自身のオリジナルでデビューしたいというメンバーの意見が最終的に通り、「Love Me Do」でのデビューが決まる。
それならば、とマーティンは2枚目のシングルに「How Do You Do It」を推すが、メンバーがオリジナルにこだわるため、“この曲に負けない曲を作れ”と発破をかける。それを受け、当初、スロウ・テンポだったのを、マーティンのアドヴァイスもありテンポを上げて録音したのが24曲目「Please Please Me」。結局、この曲が2枚目のシングルとなるが、正ヴァージョンとの主な違いは、ハーモニカが入っておらず、コーラスが控えめ、そしてドラムをアンディが担当しているところ。
Please Please Me (First Version)
なかなか日の目を見ない「How Do You Do It」はミッチ・マレー自身、ビートルズが行なったアレンジが気に入らず、またB面と扱われるのを嫌い、お蔵入りに。「Please Please Me」は英国チャートで1位を記録し、ビートルズは一躍、人気グループとなる。
勢いそのままシングル「From Me To You」の制作を開始。そのセッションの中録音されたのが25曲目と26曲目の「One After 909」。ここではたびたび演奏を止めては話し合う模様が記録され、その後通して演奏されたのがとなる。試行錯誤が伝わるが、結局この録音はお蔵入りに。その後、6年越しに”ゲット・バック・セッション”で演奏・録音され、『Let It Be』に収録される。
27曲目「Lend Me Your Comb」と28曲目「I’ll Get You」、30曲目「I Saw Her Standing There」から34曲目「Roll Over Beethoven」は、1stアルバム『Please Please Me』のリリース後、TVやラジオに出演した時の演奏。27曲目「Lend Your Comb」は、英国放送協会(BBC)での放送のため録音されたカヴァー。原曲は1957年にリリースされており、その同年にカール・パーキンスがカヴァーしたヴァージョンを基にしたアレンジか。
28曲目「I’ll Get You」はTV番組での収録で、絶えず黄色い歓声が上がるなかでの演奏。30曲目から34曲目は、スウェーデンのラジオ番組での演奏で、32曲目「Money」から34曲目「Roll Over Beethoven」は2ndアルバム『With The Beatles』に収録されるカヴァーだが、そのリリース前の演奏である。
I'll Get You (Live On Sunday Night At The London Palladium)
Written by ポニーのヒサミツ
ザ・ビートルズ『Anthology Collection』 2025年11月21日発売
① 8CDボックス・セット
品番:UICY-80700/7
価格:22,000円税込/完全生産限定盤
予約はこちら
② 12LPボックス・セット
品番:UIJY-75340/51
価格:69,300円税込/直輸入盤仕様/完全生産限定盤
予約はこちら
1968年の録音で占められるディスク1は、デモ以外はすべてEMIスタジオ録音。ほとんどの曲は『The Beatles』に収録されるが、4曲目と5曲目は『Abbey Road』に、7曲目は『McCartney』、19曲目は『George Harrison』のソロ作に。ディスク2は1969年の録音で占められる(22曲目は1970年、23曲目には1967年「A Day in the Life」のピアノが追加)。
1曲目から9曲目、11曲目、12曲目はアップル・スタジオでのゲット・バック・セッション(以下、GBS)。それ以外はEMIスタジオ。ジョージが自分の誕生日に録音したのが10曲目、13曲目、16曲目。2曲目、9曲目、14曲目〜17曲目、20曲目は『Abbey Road』、1曲目、3曲目、4曲目、5曲目、8曲目、12曲目、21曲目、22曲目は『Let It Be』に。6曲目は『McCartney』、10曲目は『All Things Must Pass』とソロ作。録音日とテイク数を最初に記した以下の解説では、録音時の状況やユーモア溢れるしゃべり、完成版に使われなかった歌詞を中心に拾った。
ディスク1
1曲目「A Beginning」1968年7月22日:「Now and Then」で始まるはずだった本作は、代わりにジョージ・マーティン作曲のインストで幕を開ける。この録音の数日前に公開された映画『イエロー・サブマリン』では、オープニング・クレジットの後にこの曲が挿入されている。リンゴ・スターが何年も世に出させてもらえなかった初の自作曲「Don’t Pass Me By」をどう調理するか悩んだ末に出たのが、このインストを冒頭に追加するというジョン・レノンのアイディアだったが、奇妙すぎるとボツに。
2曲目「Happiness Is a Warm Gun」: 完成版のヴァース1がない分、文学色が薄まりドラッグとヨーコ色が強い。途中コードを間違えたと悪態をつきつつ、ジョンがアコギを弾いて一人で歌う。
16曲目「While My Guitar Gently Weeps」1968年7月25日テイク1:他のメンバーのこの曲にかける熱意の薄さに失望したジョージが、完成版で聴けるエリック・クラプトンのギターを投入することになる。アコギとポールによるハーモニウムで演奏される本作では、「あなたが上演する演劇を舞台袖から私は見守る」の歌詞が聴ける。
22曲目「What’s The New Mary Jane」1968年8月14日 テイク4:ジョンの曲でジョージとヨーコ(絶叫が楽しい)とマル・エヴァンズと共に録音。エキゾチックな響きの名詞がたくさん出てきて、途中、外国人風の発音で歌われる。プラスティック・オノ・バンド名義で出そうと69年にリミックスするも、本作まで日の目を見なかった。
23曲目「Step Inside Love / Los Paranoias」1968年9月16日:「I Will」録音の合間のジャムで、シラ・ブラックに提供した曲を歌った後でポールが、ジョー・プレーリーズ&ザ・プレーリー・ウォールフラワーズと、リヴァプールのバンド風に長い架空のバンド名で自分たちを呼ぶ。するとジョンが、パラノイアの集団のようなバンド名、ロス・パラノイアス(自分たちをよくこの架空のバンド名で呼んでいた)で応酬し、「ご参加お待ちしております。何でも歌いますから」とポールが即興で歌う。ジョンが女性の声で「もう無理よ」と言うのが笑える。
A Beginning
26曲目「Why Don’t We Do It In the Road?」1968年10月9日 テイク4:演奏後に「みんな(この時、他のメンバーは不在)どう思う? もっと良くなるかな」とポールが言っているが、会話の続きは『The Beatles』スーパー・デラックス・エディションのテイク5で聴け、「静かなヴァースとラウドなヴァースにしたいんだ」と言っている。硬軟混ぜる歌い方は、完成版では不採用に。この曲に関して、ジョン「ポールが俺たちを入れずに一人でやると、いつも傷ついた」、ポール「後でこの曲をジョンが歌っていた。気に入ってるみたいで、一緒にやりたかったようだ。ジョンっぽい曲だしね」の発言が残されている。
まずディスク1の1曲目「Real Love」は、1979年にジョンがダコタハウスで録音したデモ音源を元に、「Free As A Bird」に続く2曲目の新曲として1995年2月にレコーディングされた。サイケデリックな色合いの強い「Free As A Bird」に対して「Real Love」は、曲名通りの“純愛ソング”。どちらが好きかでジョン(ビートルズ)の曲の嗜好がわかるが、この2曲は、さしずめ「Strawberry Fields Forever」と「All You Need Is Love」のどっちが好きか?と問われているような嗜好の違いがある、
ただし「Real Love」のこのテイクはジョンのキンキン声が人工的に響くので、ヴォーカルだけ聴くと「Strawberry Fields Forever」に近い印象がある。『Anthology 4』に収録された「Real Love」(激変版)は、最新技術により「All You Need Is Love」以上にまろやかなジョンの歌声が堪能できる。
「Real Love」は1996年3月4日に先行シングルとして発売され、カップリングはいずれも『Anthology 2』未収録となった。7インチ・シングルとCDシングルには1965年8月30日のハリウッド・ボウル公演からの「Baby’s in Black」、4曲入りのCDシングルにはさらに『Revolver』のセッションから、イントロにリンゴのセリフの入った「Yellow Submarine」(テイク4、5/1966年5月26日、6月1日録音)と「Here, There and Everywhere」(テイク7と13/6月16日録音)が収録されている。
2曲目から5曲目は『Help!』のセッションから。2曲目「Yes It Is」はテイク2にオフィシャルのテイク14を途中から被せたリミックス版(1965年2月16日録音)。3曲目「I’m Down」は「I’ve Just Seen a Face」「Yesterday」と同じ日(6月14日)に録音されたポール作の3曲のうちのひとつ。テイク1からエンジン全開。曲が終わったあとにポールが、『Rubber Soul』のタイトルのヒントとなった“Plastic soul, man, plastic soul”と呟いているところまで収録されているのがミソ。この曲は、もともと6曲目(「Help!」の前)に収録される予定だったのを、ポールの希望で3曲目に変更されたらしい。これで「Ticket to Ride」と「Help!」のシングルB面曲が続くことになり、ポールの曲が前半になかったのを解消する流れとなった。
Real Love (1996 Mix)
4曲目「You’ve Got to Hide Your Love Away」は、ジョンがブライアン・エプスタインに向けて歌ったと思しき曲で、『Anthology』の映像集でも、エプスタインの紹介映像のバックにこの曲が使われている。テイク1、2、5(テイク5は、オフィシャルのテイク9以外で完奏された唯一のテイク/2月18日録音)が聴ける。
5曲目「If You’ve Got Trouble」と6曲目「That Means a Lot」は『Help!』のアウトテイク。「If You’ve Got Trouble」はリンゴ用にジョンとポールが書いた曲で、4曲目「You’ve Got to Hide Your Love Away」と同じく2月18日に1テイクのみ録音された。「Ticket to Ride」の二番煎じと言えそうなギター・リフが耳に残るものの、この単調なロックンロールではなく、6月17日に録音されたバック・オーウェンズの「Act Naturally」のカヴァーをアルバム用に選んだのは真っ当な判断だった。映画『Help!』で主役を務めたリンゴが歌うからこそより引き立つ。「Act Naturally」はアメリカでも日本でもシングルとして発売されたが(B面は「Yesterday」)、「Yesterday」をなぜA面にしなかったのかと担当の高嶋弘之氏にお訊きしたら”あの時期はリンゴは日本で人気が高かったから”とのこと。
6曲目「That Means a Lot」はフィル・スペクターの“音の壁”をさらにおどろおどろしくしたかのようなサウンドが奇妙奇天烈なポールの曲(2月20日録音)。アレンジやテンポを変えて何度もレコーディングが行なわれたが、やればやるほど悪くなる“ゲッティング・ワース”な一曲に。その中でもわりとまともなテイク1が収録されているが、 “can’t you see”とポールが歌い上げるフレーズが(個人的に苦手な)「What You’re Doing」に通じる趣あり。その後、ブライアン・エプスタインのNEMSがマネージメントしていたP・J・プロビーに提供された。
『Help!』からさらにジョンとポールのアコースティック・ギターによる傑作2曲。7曲目「Yesterday」は、ポールが2番の歌詞の1か所を入れ替えて歌う、ストリングスがまだダビングされていないテイク1(6月14日録音)。8曲目「It’s Only Love」はオフィシャル版よりもより躍動感のある、リンゴのドラムがいいアクセントになっているテイク3と2を合わせたリミックス版。「It’s Only Love」が録音された6月15日は、『ミュージック・ライフ』の星加ルミ子氏がEMIスタジオでビートルズと初対面した日でもあった。
13曲目「Everybody’s Trying To Be My Baby」は1965年8月15日のニューヨーク、シェイ・スタジアム公演からジョージの溌剌としたヴォーカルが聴ける曲が選ばれた。ポールが歌う「She’s a Woman」の収録予定もあったようだが、その曲のライヴ音源は、日本武道館での演奏(25曲目「She’s A Woman」)から選ばれた。
14曲目から16曲目は、『Rubber Soul』でのスタジオ・セッション曲。次作の『Revolver』からは6曲も選ばれていることを思うと、『Rubber Soul』からの曲は明らかに少ない。14曲目「Norwegian Wood (This Bird Has Flown)」は、セッション初日(10月12日)に録音されたテイク1で、オフィシャル版よりもジョージのシタールが拙い。
15曲目「I’m Looking Through You」はテンポが緩めでアコースティック・ギターの音色が心地よい、改良前のテイク1(10月24日録音)。16曲目「12-Bar Original」は、ブッカー・T&ジ・MGズの「Green Onions」を彷彿させる、「Cry For A Shadow」(1961年)に次いで、あるいは「Flying」(1967年)よりも前に演奏されたインスト曲(11月4日録音)。もともと6分36秒あったテイク2の短縮版。ジョージ・マーティンのハーモニウムがいい味わいだ。
17曲目からは、『Revolver』の制作過程の面白さが伝わるテイクばかり。17曲目「Tomorrow Never Knows」は、アルバム・セッションの初っ端となった1966年4月6日に録音されたテイク1。「Revolution」と「Revolution 1」以上に、オフィシャル版との表情の変化が楽しめるテイクで、映像版『Anthology』では、ポール、ジョージ、リンゴがこの曲のプレイバックをジョージ・マーティンとともに聴いている時に、リンゴが“泳ぐ真似”をしているのが印象的だった。そのくらい浮遊感のあるサウンドで、こちらもオフィシャルで出ていたら面白かったんじゃないかと思う。
18曲目「Got to Get You Into My Life」も興味深いテイク。オフィシャル版はブラス・ロック的アレンジが軽快で重厚な仕上がりだったが、こちらは3人のコーラスを多用したテイク5(4月7日録音)。むしろ今の時代にもしっくりくる洒落たアレンジが耳に心地いい。19曲目「And Your Bird Can Sing」はポールお気に入りの、ジョンとポールがヴォーカルをさらに重ねている最中に笑いが止まらなくなる微笑ましいテイク2(4月20日録音)。
Real Love (1996 Mix)
20曲目「Taxman」は、後追いコーラス“anybody got a bit of money”のアイデアを取り入れたテイク11(4月21日録音)で、編集で追加されたエンディングのポールのギター・ソロはなく、普通に終わる。21曲目「Eleanor Rigby」はストリングスだけを聴かせるヴォーカルなし版(4月28日録音のテイク14)。バーナード・ハーマンが音楽を手掛けた映画『サイコ』とともに楽しみたい。㉒と㉓も興味深いテイクで、オフィシャル版4月27日録音の二日後に新たに録音されたものの、使われず未使用となったもの。
22曲目「I’m Only Sleeping」のリハーサル・テイクは、29日録音のテイク5を録音する前にテープが巻き戻されてしまい、危うくすべて消去されてしまうところ、演奏が早めに終わり、1分だけ奇跡的に残ったという。オフィシャル版とは表情が大きく異なり、ヴィブラフォンをフィーチャーしたラウンジ感覚のあるサウンドが素晴らしい。23曲目「I’m Only Sleeping」は29日録音のテイク1。快活なサウンドで、睡眠誘導効果は低い仕上がりだ。
当初の予定では、『Revolver』セッションから「Paperback Writer」のヴォーカルだけを取り出したテイク、「I’m Only Sleeping」と「Love You To」の別テイクも収録される予定だったという。24曲目「Rock and Roll Music」と25曲目「She’s A Woman」は1966年6月30日の日本公演から。当初は「Nowhere Man」も入る予定だったそうだ。25曲目のポールの“シマウマ”都市伝説は、やはり“She, my woman”に聞こえる。
Real Love (1996 Mix)
Written by 藤本 国彦
ザ・ビートルズ『Anthology Collection』 2025年11月21日発売
① 8CDボックス・セット
品番:UICY-80700/7
価格:22,000円税込/完全生産限定盤
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② 12LPボックス・セット
品番:UIJY-75340/51
価格:69,300円税込/直輸入盤仕様/完全生産限定盤
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本作ではクオリーメンなどデビュー前の音源は割愛され、英ファースト・アルバム『Please Please Me』のオープニング曲「I Saw Her Standing There」のテイク2からスタート。配信のみで2013年に出たアルバム『Bootleg Recordings 1963』に収録されていたものだ。テンションもアンサンブルも完成形にほぼ近い演奏だが、ジョン・レノンによる低音部のコーラスが歌詞を間違えたり入り方をトチったりして失敗しているのと、間奏のギター・ソロもいささか散漫でまだできあがっていない。
2曲目「Money (That’s What I Want)」も同じく『Bootleg Recordings 1963』で発表済みで、ジョージ・マーティンのピアノをダビングする前のテイク。テイク自体はほぼ完成形で、すでにコーラスもハンド・クラッピングも入っている。ピアノなしだと演奏の荒々しいガレージ・ロック感やジョンのワイルドなシャウトがむき出しになっていて、この頃の彼らの粗野な魅力がダイレクトに伝わってくる。
3曲目「This Boy」は1995年のシングル「Free As A Bird」に収録されていたテイク12と13。始まってから1分ほどでメンバーが笑い出してしまって演奏が止まり、再び頭から演奏して今度はスムーズに進行するものの、終盤にまた笑い出してそのまま終わる。ポールの歌うようなベース・ラインが大きめなのも印象的。
ここからは8曲連続で未発表テイクが続き、本作の最たる聴きどころといえるだろう。
まず4曲目「Tell Me Why」のアウトテイクはこれが初出。1964年2月27日に8テイクが録音され、テイク8が完成形なのだが、ここではテイク4と5を収録している。ジョンのカウントから勢いよく始まるもすぐストップしてしまい、すぐさまやり直していい感じに転がっていく。ジョン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスンによる3声コーラスもすでにできあがっていて、完成形とさして遜色のない、いい演奏だ。
I Saw Her Standing There (Take 2)
同じ2月27日の5曲目「If I Fell」はテイク11。『レコーディング・セッションズ完全版』(シンコーミュージック刊)によれば、ジョージ・マーティンのアドヴァイスでこのテイクからイントロにジョンのアコギ・カッティング、アウトロにジョージのギター・フレーズが加えられており、それが確認できる。1分53秒のところでメンバーが笑いそうになって崩壊しかけるも最後まで演奏し、前述したジョージのギターも入っている(いささか頼りなさげなプレイだが)。
カール・パーキンスのカヴァーである6曲目「Matchbox」は1964年6月1日に5テイク録ったうちのテイク1。ジョージ・マーティンのピアノやイントロのハンド・クラッピングなどのオーヴァーダビング類がいっさいなく、ゴリゴリ感が露わになった演奏だ。メイン・ヴォーカルのリンゴ・スターはこの日、喉の調子が悪かったそうだが、そうとは思えないくらい彼らしくまろやかな高音のヴォーカルを聴かせている。ただ、間奏のギター・ソロの後、 “Till your big…” のところでミスってしまうのが惜しい。
7曲目「Every Little Thing」は1964年9月30日のテイク6〜7。テイク6は始まって1分ほどまできたところでポールがゲップをしてしまい、彼が“ソーリー”と言っていったん頓挫。テイク7がスタートして順調に進んでいくものの、最後の最後でジョンが笑い出してしまってそのまま終了。
ジョージ作の曲としては公式2曲目となる8曲目「I Need You」はテイク1を収録。完成形はヴォリューム・ペダルを施したギターのインパクトが絶大で、ボンゴやカウベルのパーカッション類も入っているのだが、それらのオーヴァーダビング類はなし。代わりに完成形にはないシェイカーがずっと鳴っており、とてもプリミティヴでソリッドなヴァージョンだ。ジョンによるアコギのカッティングが完成形の左チャンネルから右チャンネルに移動しており、アタックの強いダイナミックなプレイだし、ポールのベースも幾分フリーに弾いているなど、シンプルな曲だけに個々のプレイが際立っている。2分5秒あたりから誰かの笑い声が入り、つられてジョージも笑いかけてしまい、最後は爆笑になって崩れるようにエンディング。
I Saw Her Standing There (Take 2)
9曲目「I’ve Just Seen a Face」は6テイク録ったうちのテイク3。ポールによるカントリー&ウェスタン色の強い曲で、ベースレスでポール、ジョージ、ジョンの3人がすべてアコースティック・ギターをプレイする曲だ。完成形にあるイントロのガット・ギターや間奏のギター・ソロは入っていない。ポールがカウントを取って始めようとするがジョンがトチってしまい“ソーリー、ソーリー”と謝り、すぐさまやり直し。イントロや間奏を含めすでにできあがっており、特にリンゴの力強いブラシ・プレイが前面に出ていて、切れ味抜群の演奏。
10曲目「In My Life」は3テイク録った中でテイク3が採用されたが、今回はテイク1を収録。完成形はジョンのヴォーカルが右チャンネル寄りのダブル・トラックだったが、ここではシングルでどっしりと鳴っており、彼のやわらかなヴォーカルがリアルに伝わってくる。間奏のジョージ・マーティンによるピアノ・ソロやタンバリンはまだ入っていないが、コーラスはすでに入っており、ナチュラルなミックスも含めて完成形に匹敵する仕上がりだ。
12曲目「Got to Get You into My Life」は『Revolver』Super Deluxeのディスク2に収録されていたセカンド・ヴァージョンのアンナンバード・ミックス。1966年4月7日録音のファースト・ヴァージョンからはダンサブルに姿を変え、ブラス・セクションが入る前だがそのブラス部分をファズ・ギターで鳴らし、この曲の方向性を示してみせた重要なテイクだ。
同じく『Revolver』Super Deluxeのディスク2からの13曲目「Love You To」は完成形に近いテイク7。アニール・バグワットのタブラも入ったテイクで、完成形はフェイド・アウトだが、このテイクではエンディングまで演奏。完成形では削られてしまったポールのコーラスも聴ける。
『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』に移り、同時期に録音の14曲目「Strawberry Fields Forever」はSuper Deluxeのディスク2収録のアウトテイク3種のうち、テイク26が選ばれた。完成形よりもかなりテンポの速いテイクだが、これとテイク7の速度を均一化してつなぎ合わせて完成に至っている。このテイク26は使用された後半部分、特にインタープレイでのスピード感にあふれた演奏とケイオティックな音像がすごい。
16曲目「Baby, You’re a Rich Man」は1967年5月11日に12テイク録ったうちの最後、テイク11とテイク12を収録。テイク11と思われる前半は演奏を始めてすぐ終わってしまい、ほとんどリハーサルのようなテイク。後半のテイク12はクラヴィオラインやハンド・クラップ、タンバリンなどのオーヴァーダブものはまだ入っていないが、ピアノを含む演奏はすっかりできあがっている。なによりも圧巻なのがジョンのヴォーカルで、終盤にかなりのテンションでしゃくり上げるようなシャウトを繰り返し、演奏もそれに引っ張られてか相当に熱を帯びている。
17曲目「All You Need Is Love」は、1967年6月25日の宇宙中継特別番組「アワ・ワールド」の本番直前にBBCで放送されたリハーサル部分だろう。日本でも放送された有名な映像で、その音源を編集しており、リハの状況を説明するアナウンサーの声も入っている。この日、リハーサル・テイクとして録られた三つのテイクのどれかと思われ、オーケストラとの共演でほぼ完成形の演奏。ジョンはリハだけにかなりリラックスしていて幾分ラフに歌っており、時折シャウトも入れている。完成形よりもオーケストラの演奏が明瞭で、その音圧や美しさにゾクゾクさせられるし、全体としても各楽器の粒立ちがくっきり。歌が終わった後の5分過ぎにインダストリアルなハンマー音が入っている。オーケストラはエンディング近くの「In The Mood」も含めて演奏している。
I Saw Her Standing There (Take 2)
18曲目「The Fool on the Hill」のアウトテイクは『Anthology 2』にデモとテイク4が収録されていたが、今回はそのテイク4の翌日となる67年9月26日のテイク5が初お目見えとなった。このテイク5は“ほとんど作り直し”といわれるほどテイク4からガラリと変化しており、大半の楽器が新たに演奏したと思われる。インストだが、わずか1日でイントロのピアノ・フレーズやブラシのドラミングなどがまったく変わり、ほぼ完成形のスタイルができあがっていて、その進化ぶりにいささか驚かされる。今回はアコギの響きをずいぶん強調していて、特に2ヴァースめで空間を右から左へと漂うように鳴るアコギがとても美しい。間奏のフルートも入っている。このテイクは約4分42秒と長く、完成形では2分59秒に短縮されている。
ディスク1最後を飾るのが19曲目「I Am the Walrus」。『Anthology 2』に収録の1967年9月5日のテイク16はオーヴァーダブ類なしのメンバーによる演奏だったが、今回のテイク19はその逆で、9月27日のオーケストラによるオーヴァーダブ・セッション。よってメンバーの演奏は入っておらず、ガイドライン的に流しているテープのヴォーカルが小さく聞こえるのみ。参加しているのはヴァイオリン8台、チェロ4台、コントラバス・クラリネット1台、ホルン3台の総勢16名。こうやってオーケストラ部分だけ聴くと、予測不能な急展開が極めてスリリングで、アレンジを施したジョージ・マーティンのアヴァンギャルドなセンスを再認識せずにはいられない。弦楽器や管楽器がいっそう生々しく迫ってくるというところでも貴重な録音だろう。なお曲の終盤、4分15秒過ぎから、完成形にはないホルンのフリーなアドリブ的プレイが聴ける。
3曲目「While My Guitar Gently Weeps」はサード・ヴァージョンのテイク27で、リメイクを繰り返した後、完成形のスタイルにたどり着いており、このテイクはイントロのピアノやギターのフレーズが若干異なるものの、ほぼできあがっている。この後、エリック・クラプトンが弾くことになる“泣きのギター”も、ジョージが弾きまくり。
4曲目「(You’re So Square) Baby I Don’t Care」、5曲目「Helter Skelter」はセット的なもの。「Helter Skelter」をプレイする前の“景気付け”的な位置付けとしてエルヴィス・プレスリーのカヴァー「(You’re So Square) Baby I Don’t Care」を演奏し、そのまま「Helter Skelter」へとなだれ込む。ブルース調のファースト・ヴァージョンから大きく変化したヘヴィ・ロック的なセカンド・ヴァージョンのテイク17だ。ポールのイカれたようなハイ・テンションのヴォーカルがすごい。
I Saw Her Standing There (Take 2)
6曲目「I Will」と7曲目「Can You Take Me Back?」もセット。1967年9月16日の「I Will」セッションでポールは5曲のカヴァーや即興曲を次々に歌っており、その中の2曲だ。ポールがウィスパーといえるくらいのひそやかな声で歌っているのが妙味。
さて、アルバムの最後を締めくくるのは、1995年以降に出た新曲3曲だ。そのうち15曲目「Free As A Bird」、16曲目「Real Love」の2曲はオリジナルのプロデューサーでもあるジェフ・リンが最新ミックスを手がけており、“デミックス”の技術によってジョンのヴォーカル・トラックが分離及び抽出され、新たに生まれ変わっている。本作のもうひとつの目玉といえるだろう。
まず「Free As A Bird」はそのヴォーカルがオリジナルよりも前面に出ていっそう生々しくなり、コーラス・ワークとの絡みやポールのヴォーカルへのつなぎも違和感がなくなり、とてもナチュラルな仕上がりだ。また、この曲はサウンド面も特筆すべきで、これまでは引っ込んでいたアコギのカッティングを前面に出し、滝の流れが落ちてくるさまをイメージさせるような、ウォール・オブ・サウンドのような立体的音像を生んでいる。ちょっと鳥肌ものの感動的なミックスだ。
I Saw Her Standing There (Take 2)
デミックスの効果というところでは、もうひとつの「Real Love」の方がさらに上だ。オリジナルのヴォーカルはいささか濁ったような質感だったが、今回はそれがかなりクリアになって前面に出ており、やはりコーラスとの絡みもスムーズ。サウンド面でも「Free As A Bird」と同じ考え方で、アコギのシャープな鳴りを強調して奥行きのある音像を成し得ており、その中でジョンのヴォーカルも自然に溶け込んでいる。また、この曲はオリジナルの3分54秒よりも19秒短い3分35秒で、それはインタープレイでのフェイド・アウトが早いからだ。オリジナルではフェイド・アウトしながらギター・ソロが聞こえるが、今回はそれよりも前に終わってしまうので、まったく聞こえない。
ザ・ビートルズの『Anthology Collection』(8CD/12LP)に収録され、単独としても発売された新作『Anthology 4』から「Free As A Bird」と「Real Love」のジェフ・リンによる2025ミックスを収録した7インチ・アナログ・シングル盤が、2025年11月28日に日本で唯一のザ・ビートルズのオンラインストアであるTHE BEATLES STORE限定でサプライズで発売が開始となった。
今回ダブルA面として発売となる「Free As A Bird」と「Real Love」は、ジェフ・リンがジョン・レノンの残されたボーカルを用いて新たな命を吹き込んでオリジナルのアンソロジーに収録された新曲だ。これは1970年代にジョンが自宅録音したデモ音源を基に制作され、後にポール、ジョージ、リンゴが録音したボーカルと演奏パートで完成された作品。今回も同じくジェフ・リンが手掛けた最新ミックスとなっている。