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エラ・フィッツジェラルド誕生100周年の1年間を振り返る

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「彼女は、男性と女性の両方を含め、文句なしに世界で最も素晴らしいポピュラー・シンガーだと思う」とフランク・シナトラエラ・フィッツジェラルドについてそう話している。彼の言う通りだ。エラは歌手としてすべてを手にしていた。耳を愛撫するような美しい歌声だけではなく、正確なタイミングを持ち、ひょっとしたら何よりもすごいのは曲を完全に自分のものにしてしまい、リリックをまるで彼女自身の経験であるかのように表現し伝える才能があったことだ。その声は、手短に言えば、完璧そのもので、彼女が作り出す音楽は時代を超越している。昨年、エラ・フィッツジェラルドの誕生100周年が幕を閉じた中、uDiscover Musicではザ・ファースト・レディ・オブ・ソングを祝った1年間を振り返る。

ニューポート・ニューズ出身のシンガーに敬意を払う多くの記念イベントが続いた12ヵ月間だった。2017年4月25日から始まり、ワシントンDC国立アメリカ歴史博物館とロサンゼルスのグラミー・ミュージアムで行われた展覧会では貴重な保管資料が1年間展示された(エラ・フィッツジェラルドの賞、写真、記念品、手紙、楽譜、そしてステージ衣装など)。アメリカ議会図書館でもエラ・フィッツジェラルド誕生100周年記念を祝ってトリビュート・コンサートとマルチメディア・イベントが開催され、ザ・グレイト・アメリカン・ソングブック財団法人は1956年から1964年の間にプロデューサーのノーマン・グランツとレコーディングした有名なソングブック作品に収録されている不滅の曲の数々に焦点を当てた展覧会『Ella Sings The Songbook』を開いた。

エラ・フィッツジェラルド誕生100周年中に重要なアルバムがヴァーヴ・レコードから発売された。まずはデッカとヴァーヴ時代の楽曲に焦点を合わせたCD4枚組コレクション『100 Songs For A Centennial』がリリースされた。年代順のコレクションは1936年から1960年までの楽曲を収めており、比較的無名のビッグ・バンド(30年代後半にドラマーのチック・ウェブと結成したバンド)にいた頃から始まり、ザ・ファースト・レディ・オブ・ソングのニックネームで親しまれるソロ・スーパースターへと成長するまでを記録している。コレクションは目覚ましい音楽の旅であり、素晴らしいソロ楽曲を提供すると共に、ルイ・アームストロング、ルイ・ジョーダン、カウント・ベイシー、そしてデューク・エリントンとのコラボレーションも収められている。

Cheek To Cheek

 

2017年9月には壮大な冒険のような作品『Someone To Watch Over Me: Ella Fitzgerald And The London Symphony Orchestra』が、エルヴィス・プレスリーの画期的な非常に成功した『If I Can Dream』プロジェクトのすぐ後に発売され、昔のヴォーカルに新たにストリングスが追加されている。プロデューサーたちは1950年から1961年に録ったヴォーカル・トラックを使用し、それに世界的に有名なロンドンのアビイ・ロード・スタジオにてホルヘ・カランドレリが作曲、そして指揮を担当した鮮やかなストリングスを飾った。アルバムは、エラの象徴的なレコーディングを華やかにイメージチェンジさせ(その中には多くの人に愛されるルイ・アームストロングとのデュエット「They Can’t Take That Away From Me」と「Let’s Call The Whole Thing Off」)、ロジャース&ハマースタイン作の「People Say We’re In Love」をグレゴリー・ポーターとのデュエットへと作り直している。

2017年12月に発売された『Ella At Zardi’s』は、1956年2月2日にハリウッドにあるクラブで歌うエラのパフォーマンスを収録しており、ちょうどその頃はマネージャーのノーマン・グランツの新しいレーベル、ヴァーヴとの契約を結んだ時だった(ノーマン・グランツは彼女の才能を披露するためにレーベルを立ち上げている)。その夜に行われた2ステージの両方が収録されており、ピアニストのドン・アブニー、ベーシストのヴァーノン・アリー、そしてドラマーのフランク・キャップが最初から最後まで優しく見事なニュアンスで伴奏を弾いている。切ないバラードから指を鳴らしたくなるようなスウィングまで『Ella At Zardi’s』はエラのカリスマと聴く者を魅了する最高のステージをとらえており、’レコード・ストア・デイ’である2018年4月13日に限定版LP2枚組として発売された。

Cry Me A River

 

エラの誕生100周年に発売された最後のアルバムは同じくジャズの偉人ルイ・アームストロングとのコラボレーションを祝う作品である。『Cheek To Cheek: The Complete Duet Recordings』は4枚組セットで、1956年から1958年の間にヴァーヴから発売されたデュエットアルバム3枚(『Ella And Louis』、『Ella And Louis Again』、そして『Porgy & Bess』)を含むだけではなく、その他にもヴァーヴ/デッカ以前のシングルス、ハリウッド・ボウルでのライヴ、そして未発表の違うテイクなども収められている。ルイのだみ声に比べてエラの声はまるでサテンのようで、エラとルイの声の質は明らかに違うが、二人の才能が一緒になるとまるで魔法のようだ。その化学反応は特別であり、レコーディング・スタジオでの二人が作り出した作品は今でもエラのキャリアの頂点であることは間違いない。

エラ・フィッツジェラルドは1996年に79歳で亡くなってしまうが、実際に彼女はまだ私たちと共に存在している。今でも彼女の音楽を楽しむ人はいて、その才能と時代を超越した音楽の美しさ、彼女が作り出す技術と感情の完璧なバランスに魅了され、新しい世代をも惹きつけている。音楽があり続ける限り、エラ・フィッツジェラルドも存在し続ける。200年後、新たな世代が彼女の類いまれな才能を祝うことになるだろう。

彼女は正にファースト・レディ・オブ・ソングである。今でもそれは変わらないし、これからもずっとそうであり続ける。

♪ 『Ella Fitzgerald Best Of



 

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