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カルチャー・クラブ『Kissing To Be Clever』解説:大ヒットを記録したデビューアルバム
“洋楽名盤”の魅力を再発見する新企画として、海外及び日本で展開している音楽コンテンツキュレーションサイト「uDiscoverMusic」の名を冠した新シリーズ「uDiscovemusicシリーズ」が始動。
時代を超えて愛される洋楽名盤やアーティストの代表作を数多くラインナップし、「新しい音楽との出会い」の場を提供する新たなスタンダード・シリーズの第一弾として、カルチャー・クラブ&ボーイ・ジョージの全6作品が9月24日に発売される(予約はこちら)。
カルチャー・クラブ
1. Kissing To Be Clever
2. Colour By Numbers
3. Waking Up With The House On Fire
4. From Luxury To Heartache
ボーイ・ジョージ
5. Sold
6. Tense Nervous Headache
このアルバムの解説を順次公開。第1回目はデビュー・アルバム『Kissing To Be Clever』。
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・カルチャー・クラブ「Do You Really Want To Hurt Me 」が与えた衝撃と反響
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発売が危うかったデビュー・アルバム
カルチャー・クラブ(Culture Club)のデビュー・アルバム『Kissing To Be Clever』は、現在では80年代前半の英国を代表する名ポップ・アルバムと評価されている。だが当時は、そのレコーディング自体が危ぶまれ、制作が実現しない可能性さえあった。
最初の2作のシングル「White Boy」と「I’m Afraid Of Me(あしたのボクは?)」がいずれもチャート・インを逃したため、ヴァージン・レコードは3作目のシングル「Do You Really Want To Hurt Me?(君は完璧さ)」が英国でヒットしてようやく、アルバム制作にゴー・サインを出したのである。
「Do You Really Want To Hurt Me?」は現在、カルチャー・クラブの代表曲として広く認知されている。だが驚くべきことに、1982年秋のリリース当時、フロントマンのボーイ・ジョージはこれがバンドの運命を好転させる1曲になるか確信が持てずにいた。プロデューサーのスティーヴ・レヴィーンは、YouTubeで公開された”Top Of The Pops”のドキュメンタリーでこう振り返っている。
「ボーイ・ジョージは本当に自信を持てていなかった。リリースに踏み切るのが本当に難しい楽曲だった。とても独特な雰囲気の曲だからね。レゲエ・トラックではあるけれど、本格的なレゲエとも違っていた。あれは僕たちなりにアレンジしたレゲエだったんだ」
しかし、そんな不安はあっという間に払拭された。「Do You Really Want To Hurt Me?」は英チャートですぐさま1位まで到達し、アメリカでもほぼ同様の成績を残したのだ。
彼らが”Top Of The Pops”に出演した際、ボーイ・ジョージはそのソウルフルな歌声と中性的な佇まいでいともたやすく大衆を魅了した。実のところ、カルチャー・クラブはその一度のテレビ出演で一気に世間の注目の的になったのである。
ポップソングの集大成
この時点でヴァージンがカルチャー・クラブのアルバムを是非とも世に出したいと考えたことは間違いないだろう。そして、『Kissing To Be Clever』はその期待を裏切らなかった。
時流を捉えたポップ・ソングの数々で堂々と勝負した同作では、「Take Control(お気に召すまま)」や「White Boy」などファンキーでダンサブルな楽曲と、サンバの影響を滲ませた「You Know I’m Not Crazy(知ってるくせに)」やカリプソ風の「I’ll Tumble For Ya(君のためなら)」が見事に共存。
一方、ダブの影響を取り入れつつ洗練されたサウンドに仕上げられた「Love Twist」は、「Do You Really Want To Hurt Me?」に続いてレゲエを下敷きにした1曲だった。
『Kissing To Be Clever』には概して、完成度が高くラジオ向けの楽曲群が並んでいる。そんな同作は、カルチャー・クラブがシングルの成功からさらなる飛躍を遂げる上でこれ以上ない作品であり、発表のタイミングも完璧だった。彼らは英国では、ニュー・ロマンティック・ムーブメントの一団に括られたことで時流に乗っており、また彼らの音楽は、1982年当時の米国のシーンにも見事にマッチしていた。
この年には、同時期に英国から登場したデュラン・デュランやヒューマン・リーグなどのアーティストたちがビルボード・チャートの上位にたびたび顔を出していたのである。その結果、『Kissing To Be Clever』は英米両国で大きな反響を呼び、全英チャートではトップ5入り、ビルボード200チャートでもトップ20入りを達成。これまでの世界累計売上は400万枚ほどにのぼると言われている。わずか半年前にはバンドの将来が危ぶまれていたことを考えると、これは驚くべき成果だった。
ボーイ・ジョージは2015年のシティーTVのインタビューで、波乱に満ちたこの時期をそう振り返っている。
「僕たちは(成功を)文字通り一夜にして手にした感じだった。一時はレコード契約さえ取れない無名のバンドだったのに、テレビに出た途端、何よりも世間のみんなが僕たちを気に入ってくれたんだ。カルチャー・クラブは、いつもそうやってみんなに助けられてきたように思う」
Written By Tim Peacock
“洋楽名盤”の魅力を再発見する新企画
「uDiscovemusicシリーズ」第1弾カルチャー・クラブ『Kissing To Be Clever』
2025年9月24日発売
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★英国オリジナル・アナログ・テープを基にした2022年DSDマスタリング
★SHM-CD仕様
★解説/歌詞・対訳付
- カルチャークラブ アーティストページ
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