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カルチャー・クラブ『Colour By Numbers』解説:1000万枚売れた傑作ポップ・アルバム

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“洋楽名盤”の魅力を再発見する新企画として、海外及び日本で展開している音楽コンテンツキュレーションサイト「uDiscoverMusic」の名を冠した新シリーズ「uDiscovemusicシリーズ」が始動。

時代を超えて愛される洋楽名盤やアーティストの代表作を数多くラインナップし、「新しい音楽との出会い」の場を提供する新たなスタンダード・シリーズの第一弾として、カルチャー・クラブ&ボーイ・ジョージの全6作品が9月24日に発売される(予約はこちら)。

カルチャー・クラブ
1. Kissing To Be Clever
2. Colour By Numbers
3. Waking Up With The House On Fire
4. From Luxury To Heartache

ボーイ・ジョージ
5. Sold
6. Tense Nervous Headache

このアルバムの解説を順次公開。第2回目は2ndアルバム『Colour By Numbers』。

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デビューアルバムよりも上を目指して

シングル「Do You Really Want To Hurt Me?(君は完璧さ)」は1982年の秋に全英チャートで首位を獲得し、全米シングルチャートでも2位まで上昇。同曲はロンドン出身の4人組であるカルチャー・クラブ(Culture Club)のブレイク作となり、彼らを一躍メインストリームの中心へと押し上げた。

さらに、その収録アルバムであるデビュー・アルバム『Kissing To Be Clever』も全英トップ5入りを果たしたが、メンバーたちは次作『Colour By Numbers』をそれよりはるかに質の高い作品にする必要があると感じていた。当時はスパンダー・バレエ、デュラン・デュラン、ワム!といった英国内のライバルがいずれも国民的人気を獲得しつつあった。それゆえ、彼らはそうでもしなければポップ・シーンの頂点に留まり続けられないと考えたのである。

華やかな出で立ちでカルチャー・クラブのフロントマンを務めるボーイ・ジョージは1983年初頭、音楽・芸術を取り上げるイギリスのテレビ番組「The Tube」でそんな不安をこう口にしていた。

「素晴らしいバンドがこれだけたくさんいれば、世間に忘れられるのもあっという間だ。新人グループの場合は特にそうだ。だから、勢いを失わないようにレコードを発表し続けることが僕たちには重要なんだ」

ジョージが「The Tube」に出演したころ、カルチャー・クラブは心のこもったファンク調のナンバー「Time (Clock Of The Heart)」で、2度目となる英米両国でのトップ3入りを達成。それにより、少し心にゆとりをもって『Colour By Numbers』の楽曲制作に取り組むことができていた。そのためかジョージは「The Tube」で、新曲の数々はデビュー作のどの曲より格段に完成度の高いものになるとも断言していた。

「次のアルバムでは、僕たちがとても音楽性豊かなグループだということを証明できるはずだ。前作よりずっと落ち着きと品のある作品になる……。僕らは(プロデューサーの)スティーヴ・レヴィーンととても密に協力しながら制作を進めている。彼はカルチャー・クラブの5人目のメンバーみたいな存在なんだ」

Culture Club – Time (Clock Of The Heart)

 

プロデューサーとカーマは気まぐれ

プロデューサー/エンジニアとしてジギー・マーリー、クラッシュ、XTCらの作品に携わっていたレヴィーンは、1980年代に登場した新技術を早くから積極的に取り入れていた。ドラム・マシンや、先駆的なサンプリング・キーボードであるフェアライトの活用を熱心に後押しする彼は、カルチャー・クラブの音楽が進化を遂げる上で不可欠な役割を果たしていた。

ベーシストのマイキー・クレイグは1983年10月、ミュージシャン誌のインタビューでこう語っている。

「当初、(スティーヴの)影響力は大きかった。彼は技術面を熟知していて、僕らはまだ勉強中だったからね。だけどこの2ndアルバムでの彼の役割は、言うなれば大使のような感じだ。衝突が起きないようにスタジオでのプロセスを仕切って、作業を円滑に進める。実際、彼はそういうことにすごく長けている。彼は素晴らしいサウンドを作り上げてくれるけど、そのほかのことにはあまり干渉してこないんだ」

そんな『Colour By Numbers』から生まれた最大のヒット・シングルは、カルチャー・クラブがより幅広い層にアピールするスタイリッシュなポップ・ミュージックを作るようになったことをはっきりと示していた。その「Karma Chameleon(カーマは気まぐれ)」は、著名なセッション・ミュージシャンのジャド・ランダー(ポール・マッカートニー、アニー・レノックス、ABCらの作品に参加)によるハーモニカの演奏が全編を見事に彩る1曲。同曲はラジオ向けのポップ・ナンバーとして、これ以上ないほど完璧な仕上がりだった。ボーイ・ジョージの書いた歌詞はよく聴くと暗い内容だが、その歌は底抜けに明るいバックの演奏と鮮やかな対照を成しているのである。

ジョージはフレッド・ブロンソンの著書『The Billboard Book Of #1 Hits』の中でそう説明している。

「(“Karma Chameleon”は)人びとが抱く孤立への強い恐怖、何かのために立ち上がることへの恐怖について歌った曲だ。みんなに気に入られようとする人についての曲なんだ。要するに、誠実でなかったり、自分の気持ちに正直に行動していなかったりすれば、カルマの裁きを受けることになる。それが自然の報いというものなのさ」

たまらなく心地良いメロディーが武器の「Karma Chameleon」は、リリースされるやいなや破竹の勢いで売り上げを伸ばしていった。英米両国のチャートで首位を獲得し、1983年秋を通じて昼間のラジオでひっきりなしに流れ続けたのである。結果、本国での同曲のセールスは100万枚を超え、その年の英国で最も売れたシングルとなったほか、1984年にはブリット・アワードとアイヴァー・ノヴェロ賞の両方で栄冠に輝いた。

Culture Club – Karma Chameleon (Official Music Video)

 

素晴らしいアルバム収録曲

称賛すべきは、カルチャー・クラブが『Colour By Numbers』のほとんどの収録曲を、この不朽の名ヒット曲にも劣らぬ完成度に仕上げたことだ。モータウンの作品を思わせるパワフルな1曲「Church Of The Poison Mind」が「Karma Chameleon」に続き全英トップ5入りを果たしたことも、その証左といえよう。

Culture Club – Church Of The Poison Mind

他方、彼らが優れた芸術性を花開かせるのは、テンポが遅めのゆったりとした楽曲であることが多かった。実際、『Colour By Numbers』には「Black Money」、芝居がかった大仰な曲調の「Victims」、ゴスペルの影響を滲ませた「That’s The Way (I’m Only Trying To Help You)」(後者では女性シンガーのヘレン・テリーが、ボーイ・ジョージに引けを取らない素晴らしい歌声を披露している)などのバラードが収められているが、それらはいずれもカルチャー・クラブのキャリアを代表する名演と評価されているのだ。

That's The Way

批評面での絶賛(ローリング・ストーン誌は、”リード・シンガーのボーイ・ジョージは、ブルー・アイド・ソウル界随一のバラード歌手としての地位を確かなものにした”と評した)によりさらなる後押しを得た『Colour By Numbers』は、1983年10月のリリースから間もなく世界中のチャートを席巻。

マイケル・ジャクソンの『Thriller』に阻まれビルボード200チャートでの首位獲得こそならなかったものの、最終的には全世界で約1,000万枚を売り上げた。このアルバムは1980年のポップ界屈指の完成度を誇る傑作であり、現在でもその評価はまるで揺らいでいない。

Written By Tim Peacock


カルチャー・クラブ『Colour By Numbers
2025年9月24日発売
購入はこちら

★英国オリジナル・アナログ・テープを基にした2022年DSDマスタリング(一部楽曲を除く)
★SHM-CD仕様
★解説/歌詞・対訳付



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