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アリアナ・グランデがガールパワーアンセムを生み出し続けられる理由 by 高橋芳朗

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弱冠25歳ながら、売り上げ、人気ともに現在世界最高の女性アーティストとなったアリアナ・グランデ。2018年8月発売した4作目のアルバム『Sweetener』から半年の期間で発売された5作目のアルバム『thank u, next』は2作連続1位を獲得、ザ・ビートルズ以来となる全米シングルチャート1位~3位を独占するなど大きな話題となっている。そんな彼女の今までの歩みや彼女が影響を受けたアーティスト、そしてフェミニズムの観点から音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんに寄稿いただきました。

*あわせて読みたい:「フェイクな笑顔なんてファック」アリアナ・グランデの本心が詰め込まれた『thank u, next』とラッパー的アプローチ by 渡辺志保

 


「ひとりは愛を教えてくれた / ひとりは忍耐を教えてくれた / ひとりは痛みを教えてくれた / そしていま、私は素敵になった / たくさん恋をして、たくさんのことを失った / でも、わかったことはそれだけじゃない / だからこれだけは言わせてほしい / ありがとう / でも、もう次に行くよ / 元カレのみんなにはクッソ感謝してるからね」ーー単なる失恋ソングを超えた女性のエンパワーメントソングとして高い評価を獲得した「thank u, next」により、完全にポップクイーンの座を手中にしたアリアナ・グランデ。同曲を収録したニューアルバム『thank u, next』をリリースした2月にはビートルズが1964年に達成して以来となる全米シングルチャート上位3位独占の偉業を成し遂げるなど、この勢いは共にヘッドライナーを務めるアメリカの巨大フェス、コーチェラとロラパルーザのステージに向けてさらに加速していくことになりそうだ。

Ariana Grande – thank u, next

Ariana Grande - thank u, next

 

このアリアナの躍進は、自身のコンサートが標的にされて22人が犠牲になった2017年5月22日のマンチェスター爆破テロ事件、その悲しみを跳ね除けるようにしてわずか2週間後に同じマンチェスターで敢行した大規模な慈善コンサート『One Love Manchester』がひとつの契機になっている。『One Love Manchester』の開催直後、『Bloomberg』は彼女を「A Pop Star Is Leader of the Free World for a Day」と評したが、翌2018年の『TIME』誌「Next Generation Leaders」の選出や『Women in Music』での「Woman of the Year」受賞にも象徴的なように、現在のアリアナのステイタスは音楽的成功はもとよりアクティビスト/フェミニストとしての言動によって築き上げられていったところも少なくない。ここ一年であれば、フロリダの高校での銃乱射事件を受けて行われた全米集会『March for Our Lives』でのパフォーマンス、そしてミソジニー発言(女性蔑視)を繰り返していたテレビ司会者ピアーズ・モーガンにSNS上で毅然と反論していった勇姿が印象深い。

Ariana Grande On How Society Underestimates Women | Next Generation Leaders | TIME

Ariana Grande On How Society Underestimates Women | Next Generation Leaders | TIME

 

もっとも、テロ事件がアリアナの転機になったのは確かだが、テロ事件によってアリアナが覚醒したというわけではない。デビューアルバム『Yours Truly』をリリースした2013年当時、「ネクスト・マライア」「ヤング・マライア」などと呼ばれて事あるごとにマライア・キャリーと比べられていたことが彼女の本質を見えにくくしてきたところもあるのかもしれないが(当時のアリアナをマライアと比較すること自体は否定しない。「The Way」でこれみよがしに披露していたホイッスルボイス、ビッグ・パニッシャー「Still Not a Player」をモチーフとするヒップホップの名曲オマージュはいやがうえにもマライアを連想させる)、フェミニズムやマイノリティに対するアリアナの姿勢は基本的に6年前から一貫している。

Ariana Grande – The Way ft. Mac Miller

Ariana Grande - The Way ft. Mac Miller

 

そもそも、アリアナは仲の良い兄フランキーがゲイであることからマイノリティをめぐる不寛容な態度に対して非常に敏感だった。なにしろ、もともとカトリック教徒だった彼女は同性愛を認めない教義に疑問を抱いて11歳のときにカバラへと改宗しているのだ。『V』誌2015年10月号のインタビューにおいてアリアナは、差別行為を目の当たりにすると怒りで体が震えてくると語ると、こんなコメントを残している。「自分の愛する人たちが、意味のないくだらない理由で苦しめられるのが許せない。彼らを苦しめている人々は、どれだけ器が小さくて無知なのだろうと思う」。

そんなアリアナがLGBTQを支援する活動に本格的に取り組むきっかけになったのが、2014年リリースのセカンドアルバム『My Everything』からカットされた「Break Free」のヒットだ。もともと「Break Free」は失恋した女の子が元カレの呪縛から解き放たれていくさまを歌った曲だが(そう、アリアナはこの時点ですでに「thank u, next」に通ずる題材を扱っている)、ゲイのエイリアンがキスするシーンを含むスペースオペラ調のミュージックビデオの登場によってLGBTQコミュニティ内でアンセム化。「私は以前より強くなった。自由になるときがきたんだ」という歌詞がより広い意味を帯びることになった。この状況を受けて、アリアナは翌2015年にLGBTQの祭典『New York City Pride』にスペシャルゲストとして出演。かつてホイットニー・ヒューストンやシェールも歌った栄誉あるステージにおいてLGBTQコミュニティにおける人気曲、チャカ・カーン「I’m Every Woman」とマドンナ「Vogue」のマッシュアップを披露して大喝采を浴びている。

Ariana Grande – Break Free ft. Zedd

Ariana Grande - Break Free ft. Zedd

 

こうした活動が実を結んでアリアナは新時代のゲイアイコンと呼ばれるようになるが、実は彼女はデビューのころよりマライア・キャリーやホイットニー・ヒューストン、グロリア・エステファン、ブランディ、ビヨンセなど共に、影響を受けたシンガーとしてジュディ・ガーランドを挙げている。幼いころからジュディの映画やコンサート映像を見て育ったというアリアナは当時のことを「母と一緒に毎日ジュディのVHSを見ていた。彼女の歌を通じて語られる物語が大好きだったの」と回想しているが、よく知られている通り自身がバイセクシャルであったことから同性愛に強い理解を示していたジュディはエンターテインメント界におけるゲイアイコンの先駆け。ゲイコミュニティでの彼女の影響力は絶大で、1969年6月28日にニューヨークで起きた同性愛者たちによる権利運動「ストーンウォールの反乱」(現在のLGBTプライド月間の起源)はその5日前のジュディの死が彼らの団結を高めたと言われている。

Somewhere Over the Rainbow – The Wizard of Oz (1/8) Movie CLIP (1939) HD

Somewhere Over the Rainbow - The Wizard of Oz (1/8) Movie CLIP (1939) HD

 

そんな背景から当時17歳のジュディが主演映画『オズの魔法使い』(1939年)で歌った「Over The Rainbow」(虹の彼方に)は同性愛解放運動のアンセムとして愛されるようになるわけだが、マンチェスターのテロ事件を受けての慈善コンサート『One Love Manchester』のフィナーレでアリアナが涙ながらに熱唱したのはまさにこの「Over The Rainbow」だった(のちにチャリティシングル「Somewhere Over The Rainbow」として配信リリース)。つまり、あの局面でアリアナが「Over The Rainbow」を選んだのは思いつきでもなんでもなく、歴とした理由とバックグラウンドがあったということ。彼女は「Over The Rainbow」が多様性に寛容であることを求める運動のシンボルとして歌われてきたことを踏まえて、「あの虹の向こう側にはすべての夢が叶う場所がある」という一節により広範な愛のメッセージを付け加えたのだ。

Ariana Grande Performs 'Somewhere Over the Rainbow' – One Love Manchester

Ariana Grande Performs 'Somewhere Over the Rainbow' - One Love Manchester

 

また、アリアナがデビュー当初より大きな影響源として挙げながらも、ジュディ・ガーランドと同様にあまりクローズアップされなかった存在にインディア・アリーがいる。インディア・アリーは、ディアンジェロエリカ・バドゥを送り出したキダー・マッセンバーグの後ろ盾によって2001年にデビューしたR&Bシンガー。日本での知名度はいまひとつだが、これまでグラミー賞のノミネートは計21回(うち受賞4回)を数え、全世界でのアルバムの総売り上げは1,000万枚を超えるネオソウルを代表するアーティストだ。デビュー以前からインディアの「There’s Hope」や「Private Party」のカバー動画を公開していたアリアナは、彼女の魅力についてこんなふうに語っている。「インディアの声は天国。とても柔らかくて、歌詞にもすごく癒される。彼女の音楽を聴いていると、何事もなるようになると思えてくるんだ。なんていうか、最高の友達が歌を通じて人生のアドバイスを与えてくれるような感じ。インディアの歌を聴いているときに感じる心地よさと温かさが大好き」

"There's Hope"- Ariana Grande

"There's Hope"- Ariana Grande

 

「癒される」「何事もなるようになると思えてくる」「最高の友達が歌を通じて人生のアドバイスを与えてくれるような感じ」ーーアリアナが言わんとしていることは、とてもよくわかる。というのも、インディアはまさにアリアナが「thank u, next」で歌ったような自尊心や自己肯定の大切さを執拗に説いてきたシンガーだからだ。「私はあなたがよく観ているビデオに出てくるような美人でもないしスーパーモデルのような体型でもない。でも自分を無条件に愛することを知っている。なぜなら私のなかでは私こそがクイーンなんだから」と歌う「Video」(2001年)。「もし頭の上にあるものじゃなく頭の中にある考えが問題ならば、こう言ってやればいい。私は私の髪の毛じゃない。私は私の肌でもない。私はあなたの期待じゃない。私は自分の中に息づく魂なんだ」と訴える「I Am Not My Hair」(2006年)。いまでいうところのボディポジティブの先駆的な作品も歌っていたインディアは、2000年代のR&Bシーンにおけるフェミニズムの急先鋒であった。

India.Arie – Video

India.Arie - Video

 

現在に至るアリアナのフェミニストとしての言動には、このインディア・アリーの作品が少なからぬ影響を及ぼしていると考えている。アリアナの発言の背後にインディアの存在を感じた出来事としては2015年2月、NBAオールスターゲームのハーフタイムショーでニッキー・ミナージュと共にパフォーマンスしたアリアナがニッキーの豊満な体と比較して「棒のような色気のない体」とバッシングを浴びた一件がある。アリアナはこれを受けて、自身のInstagramですぐさま「誰かの体を比較/評価して傷つけ合うのはもう止めにしない? そんなのまちがってる。私の小柄な体とニッキーのダイナミックなボディ、どちらも最高に素敵なんだから」と反論。一部メディアから「ボディポジティブムーブメントの新しいスーパーヒーロー」と賞賛されることになった。

さらに2015年11月、SNSでアリエル・ウィンターのカービー(ふくよか)な体型と比べられて同様の批判にさらされたアリアナは、やはりInstagramにこんなメッセージを投稿している。「こういうコメントは誰に対してもいいことがない。いまは女性も男性もありのままの自分を受けいれられない風潮があるけど、本当は多様性こそがセクシーなんだよ。自分を愛することこそがセクシー。セクシーじゃないものはなにかわかる? ミソジニー、人を物のように扱ったりレッテルを貼ったり比べたりすること、自分の体を誰かと比べて恥ずかしいと思うこと。なにか意見を求めるときに、誰かの体を見世物のようにさらすこと。そういうのはぜんぜんセクシーじゃない。もっと自分とそれ以外の人々を祝福しようよ。人と違うことこそが、私たちを美しくしているんだから」。

こうしたアリアナの一連の発言には、インディアが「Video」や「I Am Not My Hair」で歌ったメッセージがオーバーラップしてくる。そしてこれらの言動からは、のちにアリアナが「God Is a Woman」で歌うようなテーマはもともと彼女が内包していた要素だったことがよくわかる。アリアナは先述のNBAハーフタイムショー直後の2015年3月、『Daily Star』の取材で「私はポップミュージックが大好き。でも、私のお気に入りのアーティストのなかにはイモーガン・ヒープやインディア・アリーもいる。いつか、そういうポップからは距離を置いたアルバムも作ってみたい」と将来のビジョンを語っているが、この発言はフェミニズムや女性のエンパワーメントに対する主張がより具体的に作品に反映されていく『Sweetener』以降の方向性を示唆しているようにもとれる。

Ariana Grande – God is a woman

Ariana Grande - God is a woman

 

そんな「フェミニスト:アリアナ・グランデ」のベストモーメントを紹介して、この原稿を締めくくろうと思う。2015年6月、アリアナはラッパーのビッグ・ショーンと破局した直後にワン・ダイレクションのナイル・ホーランとの交際報道が流れたことに激昂。『The Sun』のインタビューで「もういちいち男に紐づけられるのはうんざり。私はビッグ・ショーンの元カノでもなければ、ニールのカノジョ候補でもない。私はアリアナ・グランデなの」と言い放つと、Instagramにミソジニーについての長文のメッセージを投稿した。以下はその一部。

「インタビューでビッグ・ショーンの元カノなんかじゃないって言ったのは、女性が誰かひとりの男性の過去、現在、未来としてしか語られないこの世界で生きることに辟易したから。フェミニズム運動の活動家、グロリア・スタイネムが1969年に『After Black Power, Women’s Liberation』を出版してから46年も経つというのに、私たちを取り巻く状況は大して変わっていない。女がセックスを好きだと言うとあばずれ扱いされるのに、男の場合はボスだキングだ色男だと囃し立てられる。女がセックスについておおっぴらに語ると辱しめを受けるのに、男が女性をビッチだ売女だってラップすると賞賛される。こういうダブルスタンダードとミソジニーは一向になくなることがない。デートしたり、結婚したり、くっついたり、セックスしたりしなかったり、一緒にいるところを見られたり……そういうときに相手で評価されるのではなく、自分個人として認められる世界になってほしい」。

このアリアナの投稿を『Teen Vogue』は「We all need to listen to what she has to say」という見出しと共に紹介。テイラー・スウィフトはTwitterを通じてアリアナに「常にあなたのことを誇りに思ってる。でも、今日はいつにもまして特別」とのメッセージを送った。「thank u, next」や「7 rings」といったアリアナのガールパワーアンセムは、決して突発的/偶発的に生まれてヒットしているわけではない。こうした下地のもとに成り立っているからこその強さと説得力なのだ。

Ariana Grande – 7 rings

Ariana Grande - 7 rings

 

Written By 高橋芳朗

高橋芳朗プロフィール:東京都港区出身。音楽ジャーナリスト、ラジオパーソナリティ、選曲家。「ジェーン・スー 生活は踊る」の選曲・音楽コラム担当。マイケル・ジャクソンから星野源まで数々のライナーノーツを手掛ける。2019年4月5日には単著「生活が踊る歌 -TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』音楽コラム傑作選」(駒草出版)が発売。


アリアナ・グランデ『thank u, next』
CD / iTunes / Apple Music / Spotify



 

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