世界を席巻するポップ界の女性版神童たち

12月 7, 2017


世界を席巻するポップ界の女性版神童たち

ポップの世界は昔から絶えず移り気だったわけだが、ストリーミング全盛の時代である現在、ポップ・スターたち(とりわけ女性の場合)はとてつもなく機転が利いて順応性が高くなければ、既にポップ・チャートに浸透している大勢のラッパーたちやDJたちには太刀打ちできないのが現状だ。

テイラー・スウィフト、ビヨンセ、リアーナ、アデル、ケイティ・ペリー、それにレディー・ガガといったパワフルな女性アーティストたちを無視することは容易ではなく、宣伝するための音楽作品がない時でさえ、彼女たちの圧倒的な影響力は度々メディアの大見出しを飾っている。だが、新たなポップ・ワールドの物語を生み出していく次世代のプレイヤーたちと言うと誰になるのだろう? 元子役スターからインターネットの寵児、シンガー・ソングライターまで、これらの若い女性ポップ・スターたちはここに至る歩みこそ多岐にわたっているものの、いずれもそれぞれの形で成功を手にしつつある。

アレッシア・カーラ
同世代の数多くのシンガーたち同様、この20歳のカナダ人アーティストもYouTubeでヒット曲のカヴァーを歌っていた早熟ぶりでデフ・ジャムに見出されてレコード契約を交わし、パーティー嫌いな内向的性格を代弁したキャッチーな抒情歌であるデビュー・シングル 「Here」をリリースした。それは完璧なシングルで、ダウンテンポのビートとメロディックなヒップホップ調のヴォーカル――そのすべての要素がアイザック・ヘイズの「Ike’s Rap II」の魅惑的なストリングスと見事にマッチしている――で歌われるキャラ自身の心情が、どこにでもいる自分に自信の無いティーンエイジャーたちの心に真実味を持って響いたのだった。さしたる前宣伝もないまま世に出たこの曲は、チャートでじわじわと火が点き、最終的に2015年の終わりにはほぼすべての批評家たちが年間最優秀楽曲リストのトップに挙げる事態となる。彼女のデビュー・アルバム『Know-It-All』の残りの収録曲も、続く2曲のシングル「Wild Things」と、自分の魅力の再認識を促すアンセム 「Scars To Your Beautiful」を含め、堅実な内容だ。

より社会意識の高いポップ・ミュージックを追求したいという野望を抱くキャラは、ポップR&Bスターのカリッドと共に、全米自殺防止ダイヤルの番号である「1-800-273-8255」をそのままタイトルにしたラッパーのロジックの曲に参加し、更に歩みを進めている。現代のシンガーたちが、90年代から2000年代後期に社会的な問題に対して起爆剤になろうとしたアーティストたちとはますます距離を取る傾向にある中、アレッシア・カーラは自らをアウトサイダーと位置づけ、洗練されたプロダクションを通して赤裸々な歌詞を拡散し、特定のジャンルの隅に塗り込められることを潔しとしない、新種の女性ポップ・スターの代表格だ。

■セレーナ・ゴメス
こちらもディズニーのスター製造マシーンが生んだおませなタレント、セレーナ・ゴメスデミ・ロヴァートジョナス・ブラザーズ、マイリー・サイラス、そしてニコロデオンのスターからポップ・センセーションとなったアリアナ・グランデら子役スター一派のひとりである。弱冠25歳にして、彼女は業界のヴェテランであり、ビルボード誌が選んだ2017年のウーマン・オブ・ザ・イヤーなのだ。

元々はバンドの一員としてスタートしたセレーナ・ゴメスは、2013年のソロ・デビュー・アルバム『Stars Dance』をもって、バブリーなティーンからボリウッドの影響を感じさせるシングル「Come & Get It」で世界中を誘うような成熟した女性アーティストへと完全なる変身を遂げた。反逆児的な側面の殆どは女優業のために取っておいているようだが、トーキング・ヘッズの「Psycho Killer」をサンプルした軽快でとんでもなくキャッチーな「Bad Liar」や、「It Aint Me」でのカイゴ(Kygo)とのダンス・ポップ・コラボ、そしてシングル「Wolves」でのプロデューサーのマシュメロとの仕事と、クリエイティヴな面における方向転換は大いに今後に期待させるものがある。

■チャーリーXCX
この英国生まれのシンガー・ソングライターは、今回のリストに並ぶ他のお馴染みの名前と比れるとあまりビッグネームとは言えないと思われるかも知れないが、彼女は16歳でレコード契約を獲得して以来、実はこの10年の間に大ヒット曲を幾つも書き上げているのだ。2016年最大のポップ・ブレイクとなったアイコナ・ポップの 「I Love It」に必殺のフックを提供したのを皮切りに、彼女はグウェン・ステファニーイギー・アゼリア、セレーナ・ゴメス、リアーナらのために曲を書き、それと並行して自分自身でもとっておきの 「Boom Clap」や、ミュージック・ヴィデオにおける隠喩を諷刺した「Boys」を世に送り出した。後者のPVでは自らメガホンを取り、現代のプリティ・ボーイたちにカメラを向けている。メジャー・デビュー・アルバム『True Romance』にはまだ典型的な垢抜けないオルタナティヴ・ポップが並んでいたが、いまやチャーリー XCXはポップ・ミュージックにおけるメイン・キャラの代表格であり、一緒に歌える「After The Afterparty」などは彼女が単なるイギー・アゼリアの 「Fancy」のコーラス担当には留まらないタレントであることの何よりの証明である。

■ヘイリー・スタインフェルド
こちらも女優から歌手への転身組、映画『Pitch Perfect 2』で歌のスキルに注目が集まったヘイリー・スタインフェルドは、実はそもそも14歳にしてオスカーにもノミネートされたことのある逸材だった。レコード・デビューは甘い歌声で人気のショーン・メンデスとのアコースティック・デュエット・ヒット「Stitches」で、その後リリースされたソロ名義のEP『Haiz』には、覚えやすい先行シングルで女性たちを勇気づけるアンセム「Love Myself」が収録されているが、この曲はディヴァイナルズの 「I Touch Myself」の当代版という解釈がもっぱらだ。

アレッシア・カーラやセレーナ・ゴメス、チャーリーXCXと同じように、ヘイリー・スタインフェルドも第一線のDJ/プロデューサー、ゼッドとのコラボによる 「Starving」でプラチナ・ディスクを獲得、アコースティック・ポップもダンスフロアも達者にこなせるところを見せつけた。ダンス・ポップの曲調と力づけるような歌詞を得意とするヘイリー・スタインフェルドが書いたシングル「Most Girls」は、トロピカル・ハウスのフレイヴァーを織り交ぜたキャッチーで気持ちの良いヒットとなり、間もなく出るフル・アルバムに対する期待値を更に高めている。ソングライターとしての技量も証明済みの20歳はワーナーと作家契約も結んでおり、『Pitch Perfect 3』にも同じ役で出演予定だ。

■カーリー・レイ・ジェプセン
ポップ・チャートの動向には疎い向きでも、このカナダ人シンガー・ソングライターのデビュー・ヒット「Call Me Maybe」は耳にしたことがあるのではないだろうか。ウイルスのようにセンセーションを巻き起こしたこの曲は、先頃YouTubeで視聴回数記録1億回を突破したところだ。‘この世代最高のポップ・ソング’と評された曲の後に、カーリー・レイ・ジェプセンは違うルートを取ることを選び、その道の達人であるシアやブラッド・オレンジのデヴ・ハインズを起用して80年代の影響色濃いシンセ・ポップ・アルバム『E•MO•TION』を完成させた。

アルバムはカルト・ヒットとなり、女性ポップ・スターとしてのキャリアを華々しくスタートさせる助けとなってくれた低年齢層のYouTubeオーディエンスより、もっと大人のインディ・ポップ愛好者のリスナーたちを惹きつけることに成功した。カーリー・レイ・ジェプセンは報われない恋心というお気に入りのテーマをベースに自ら歌詞の大半を書いており、このパターンにインスパイアされたマニフェストまで生んでいる。伝えられるところでは彼女は既に4枚目のアルバムのために80曲余りを書き上げているそうだが、『E•MO•TION』の時には200曲の用意があったと聞くと、まだまだ制作作業には時間がかかりそうだ。

■アリアナ・グランデ
このリストにある多くのタレントたち同様、アリアナ・グランデのスターダムへの道を切り拓いてくれたのもティーン向けTV番組だった。しかし彼女が、例えばマイリー・サイラスなどと異なっているのは、子供のエンターテインメントからの卒業がごく控えめな形で進行したために、元々いたファンを困惑させることなく、より上の年齢層に対してアピールするようになって行けた点である。トレードマークのポニーテールと、小柄で華奢な体躯を包む大きなサイズのスウェットシャツ姿で、ともすれば実年齢の23歳より幼く見えるアリアナ・グランデだが、自分の欲望を意のままに表現するテクニックと、‘ミニ・マライア・キャリー’の異名を取るほどのパワフルな声量を武器に、既に一人前の成熟した女性アーティストへと進化済みだ。またそのマライア・キャリーと同じく、彼女もデビュー・シングルの 「The Way」のマック・ミラーから「Side To Side」のニッキー・ミナージュまで、多くのヒップホップ・アーティストたちとのコラボレーションでチャートを賑わせている。

Spotify時代のポップ・スターの面目躍如と言うべきか、アリアナ・グランデはストリーミングがチャートの集計対象となってから最初に全英第一位に輝いたアーティストである。アリアナ・グランデの声はレトロ・ポップ・サウンドを再解釈するにはもってこいの道具だが、それだけに留まらず、EDMにアシストされたヒット曲 「Break Free」 (相棒はご明察、かのゼッドである)から「Dangerous Woman」の煽情的なR&Bまで、彼女の柔軟性はジャンルを問わないのだ。そして言うまでもなく、大半の女性ポップ・スターたちと比べると政治に対する意識も強いアリアナ・グランデは、常に人々を驚かせるのが得意だが、マンチェスターでのコンサート会場における爆弾テロ事件の直後には、彼女の熱狂的ファンたちのために僅かな時間で大がかりなコンサートを決行して見せ、時ならぬヒーローとなったことも記憶に新しい。

■デミ・ロヴァート
ここまで紹介してきただけでも、若くフレッシュで才能豊かなこれらの女性ポップ・スターたちが、実は我々がその子供時代からずっとその活動ぶりを目や耳にしてきた少女たちであることを思うと、何とも奇妙な気持ちになるものだ。ディズニーのスター製造マシーンの中でセレーナ・ゴメスと共に活躍したデミ・ロヴァートは、デビュー・アルバム『Don’t Forget』も2008年にBillboard誌のアルバム・チャートで初登場第2位を記録し、幸先よくソロ・キャリアをスタートさせた。以来、彼女は5作連続でアルバムをチャート上位に送り込んでいるが、その成功に至る道は葛藤と無縁ではない。ディズニーのはしごを登ってきたが故に負わされてきた、徹底して健全なイメージを維持するために、デミ・ロヴァートは常に自らがクスリや酒とは無縁であることやメンタル・ヘルスに関する問題を非常にオープンに語り、そうしたデリケートな話題をタブー視する傾向自体を止めさせることに尽力している。

殆どのポップ・アーティストたちが簡素なアレンジメントやトラップ的なインストゥルメンテーションにダウンサイズ化したヴォーカルに押されている昨今、ロヴァートは常に怯むことなく堂々たるヴォーカリストぶりで、どんな曲でも揺るぎない自信が透けて見えるほどに朗々と歌いあげるスタイルだ。ニュー・アルバム『Tell Me You Love Me』からの最新トップ10ヒット 「Sorry Not Sorry」はまさにその典型例である。

■ロード
既に自分自身のフィールドの中で存分に活動を展開しているロードを、今更女性ポップ・スターのリストに入れることにはいささか憚られるものがある。彼女が地殻変動的なデビュー・アルバム『Pure Heroine』を携え、ミステリアスな様子でシーンに登場してきた時、その16歳にして既に完成されたアーティスト然とした佇まいに、一般大衆からは反則ではないかという声が挙がった。実は影のソングライターがいたのではないか? 年齢をごまかしているのではないか? 様々な憶測が飛び交った。だが、要はそれだけポップ・シーン全体を揺るがす一大事だったと言うことだ。

4年後、2枚目のアルバム『Melodrama』と共にシーンに戻ってきたロードは、 過去の成功パターンを繰り返すことを狙わず、不摂生や恋愛、大人になることにつきものの悩みやコンプレックスについて、自らの心情を吐露するコンセプト・レコードを書き上げていた。どれだけTop 40ヒットを飛ばしても、彼女は本質的には詩的な歌詞をラジオでかかりやすい音楽にはめることが上手な、シリアスなソングライターのままなのだ。ロードがソングライティングとプロデュースの重責をもっと担うことになれば、昨今のプロデューサー頼みで公式通りに量産されるポップ・ヒット全盛の時代を、ひょっとするとこのニュージーランド生まれの天才は終わらせることになるのではないだろうか?

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