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「フェイクな笑顔なんてファック」アリアナ・グランデの本心が詰め込まれた『thank u, next』とラッパー的アプローチ by 渡辺志保

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弱冠25歳ながら、売り上げ、人気ともに現在世界最高の女性アーティストとなったアリアナ・グランデ。2018年8月発売した4作目のアルバム『Sweetener』から半年の期間で発売された5作目のアルバム『thank u, next』は2作連続1位を獲得、ザ・ビートルズ以来となる全米シングルチャート1位~3位を独占するなど大きな話題となっている。そんなアルバム『thank u, next』のタイトルの意味、歌われた内容やラッパー的なアプローチ、そして先日コラボレーション楽曲を発表したラッパー、2チェインズとのエピソード等音楽ライターの渡辺志保さんに寄稿いただきました。

*あわせて読みたい:アリアナ・グランデがガールパワーアンセムを生み出し続けられる理由 by 高橋芳朗

 


「thank u, next」というフレーズを聞いたときに思い出してしまうのは、アメリカのスーパー・マーケットや薬局、そしてニューヨークの地下鉄の駅に用意されたインフォメーション・ボックスや、ファースト・フード店のカウンターでの場面だ。長い列に並んでやっと自分の番がきた。お会計が終わると、一応、私には「サンキュー」と声を掛けられ、長い列の先頭にいる次の客に向けて「ネクスト!」と呼びかける。その場合、丁寧な日本の接客ルールとは異なり、やや不躾なトーンで「ネクスト!」と呼びかけられることも多い。

だから、アリアナ・グランデの新曲が「thank u, next」だと知った時、いささか驚いた。「サンキュー、ネクスト」は、次の客を呼ぶ時のインスタントな常套句だったからだ。リリックにも顕著に現れている通り、そして、皆さんの多くもすでにご存知の通り、本曲でアリアナは元彼たちの名前を列挙して歌っている。しかも、曲が始まってすぐにショーンやリッキー、ピートにマルコム…と名前が続くのだから、リスナーはぐっと胸を掴まれてしまう。ちなみにアリアナは、(ビッグ・)ショーンやリッキー(・アルヴァデス)たちにもこの曲を聴かせたという。「この曲をリリースすることに、最初はとてもナーヴァスになっていたけど、周りの人たちの反応はとても温かった」とインタヴューでも語っていた。自分が恋に落ちた相手の名前を出して、「ありがとね、はい、次の人!」と呼びかけるアリアナ。元彼に未練を残さず、能動的に次の相手を求める姿も、媚びておらずかっこいい。「thank u, next」で、アリアナ・グランデはよりクールなかっこよさを、非常に自然な形で体現したように見えた。

Ariana Grande – thank u, next

 

そして、「thank u, next」に続いて発表されたシングルが「7 rings」だ。一聴した時に私が最も驚いたのは、あの名曲「Favorite Things」をなぞっている点…では全くなくて、そのフロウだ。<符割り>という言葉にも置き換えられると思うが、まるでスタッカートが付いているように細かく、単語を一つ一つ落とすように歌うフロウは、まさにサウスのラッパーのそれと同じで、私の脳裏にはソルジャー・ボーイの「Pretty Boy Swag」や、F.L.Y.の「Swag Surfin’」といった楽曲のフロウが浮かんだ。歌詞の内容も、6人の女友達とお揃いのリングをティファニーで購入するというもの。しかも驚きなのは、それが実話だということだ。アリアナほどの財力があれば、そんなことはティファニーで朝飯を食べるより簡単なことだろう。ただ、女性のポップスターでここまで自分のパワーを誇示したアーティストが果たして何人いただろうか。そして、自分が持っているパワーをとことんリアルに、そして分かりやすく曲にする、というスタイルもまた、やはりラッパーのそれと被ってしまうのであった。

Ariana Grande – 7 rings

 

左「7 rings」│ 右『Pretty Girls Like Trap Music』

ラッパーと被る、といえば、「7 rings」のジャケットはアトランタのラッパー、2チェインズが2017年に発表したアルバム『Pretty Girls Like Trap Music』のジャケットに似ている(*上写真)。そして、「7 rings」そのもののフロウも、2チェインズの「Spend It」という曲に酷似している…。と、思っていたら、なんとその2チェインズをフィーチャーした「7 rings remix」が公式に発表されたではないか。もちろん、これまでにもアリアナは多くのラッパーとコラボを果たしてきたので、2チェインズとの共演自体は特に驚くことでもない。しかし、アリアナのアルバム『thank u, next』のわずか3週間後に発表された2チェインズの最新アルバム『Rap or Go To The League』には、「7 rings」のお礼とばかりに、アリアナ・グランデ本人がフィーチャーされた楽曲「Rule The World」が収録さてており、先日、MVも公開になったばかりだ(ちなみにストリングスの響きが美しいこの曲は、もともと女性シンガーのエイメリーが2002年に発表した「Why Don’t We Fall In Love」をサンプリングしたもの)。さらに、2チェインズの『Rap or Go To The League』には「7 rings」と同じ「My Favorite Things」をサンプリングした楽曲、「I Said Me」が収録されており、このシンクロ具合にはただ驚くばかり。2チェインズがRap Geniusのインタヴューで語ったところによると、アリアナの「7 rings」がリリースされた直後、「自分のアルバム・ジャケットとよく似たものが無断で使用された」と感じた2チェインズは、もともと知り合いだったアリアナのマネージャーに連絡し、彼女と会って「パクリ」の件に関して直接話し合いたいと申し出たそうだ。

アリアナとは初対面だった2チェインズだが、会うなり彼女から「あなたのために曲を書いた」と言われ、そのまま「7 rings remix」の収録を行ったそう。さらには、初めてアリアナの歌声を直接耳にした2チェインズは、彼女の歌声に非常に感動し「アリアナのようなポップスターを相手に喧嘩してもしょうがない」と判断したとのエピソードを語っている。なんだか、このエピソード自体がおとぎ話のようでもある。2チェインズといえば、長年アトランタでトラッパー(ハスラーとほぼ同義で、裏稼業で稼ぐ者のこと)として知られ、ハードな作品とリッチ&派手な風貌で知られたアーティストだ。身長だって190cmある。そんなラッパー相手に全く怯まず「曲を書いた」と返せるアリアナ、どこまで肝が座っているんだろうか。

2 Chainz – Rule The World ft. Ariana Grande

 

「thank u, next」、「7 rings」ときて、アルバムから話題になった曲がもう一つある。それが「break up with your girlfriend, i’m bored」だ。長いタイトルに思えるかもしれないが、「i’m bored」までがタイトルになっているのが肝で、アリアナは男性に「彼女と別れて」と迫るが、その理由は「私が退屈(bored)」だから、に他ならない。例えば、これまでに「私の方があなたを愛せる、私の方があなたを満足させられる。だから別れて」と迫るラヴ・ソングはたくさんあったが、どこまでも自分本位に「私がヒマしちゃうから別れてよ」と迫る歌はなかなか多くはない。しかもリリックでは「This shit always happen to me(いつも私の身に起こる出来事なの)」と、いつもこんな調子であると歌っている。

Ariana Grande – break up with your girlfriend, i'm bored

 

アルバム『thank u, next』を聴いていて心地がいいのは、アリアナがどこまでも自分本意だからだ。「不安な気持ちになって、あなたに依存しちゃうかも」という気持ちも隠さず、「いつも一緒じゃなくて、たまには別々に過ごしたい」と歌ったり「フェイクな笑顔なんてファック、もう平気なふりしてるのも無理」と吐露する。このアルバムは、アリアナのキャリア史上初めてフィーチャリング・アーティストのいないアルバムだ。短期間で、仲のいい女友達らち一緒に曲を書いて作り上げたとも聞く。だからこそ、これまでの何倍も彼女の本心が詰め込まれているようにも思う。何もかも、彼女が「やりたいようにやっただけ」のアルバムであり、だからこそ、かっこよくて潔い。これまでのことはもう終わったこと。サンキューを告げて、アリアナもリスナーの私たちも、ネクスト・ムーヴに向けて用意しなきゃ。そのためには自分へのご褒美がてら新しいコスメでも買って、海外旅行の計画でも立てようかなと思わされたアルバムである。

Written By 渡辺志保

渡辺志保プロフィール:主にヒップホップ関連の文筆や歌詞対訳に携わる。これまでにケンドリック・ラマー、A$AP・ロッキー、ニッキー・ミナージュ、ジェイデン・スミスらへのインタヴュー経験も。共著に『ライムスター宇多丸の「ラップ史」入門」(NHK出版)などがある。block.fm「INSIDE OUT」などをはじめ、ラジオMCとしても活動中。2019年4月からbayfmでレギュラー番組の開始が決定。


アリアナ・グランデ『thank u, next』
CD / iTunes / Apple Music / Spotify



 

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