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レディー・ガガ2026年日本公演ライブレポ:一大スペクタクルとして作りあげられたThe Mayhem Ball

2026年1月21日の大阪・京セラドーム公演を皮切りに自身最大級となる国内ドームツアー6公演をおこなったレディー・ガガ(Lady Gaga)。この初日公演について、ライターの木津 毅さんによるレポートを掲載。
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圧倒的な熱量のエンターテインメント・ショウ
レディー・ガガとはいったい何者なのか。そのことをレディー・ガガ自身が問い、突き詰め、その現時点での回答と達成を観客とともに分かち合い祝福するような、圧倒的な熱量のエンターテインメント・ショウだった。トップ・スターによるパフォーマンスとしての凄まじさだけでなく、ひとりの真摯なアーティストが自身の表現に徹底的に向き合うことの覚悟が、そこには宿っていたように思う。
最新作『Mayhem』を引っさげたコンサートであると同時に、いや、それ以上にレディー・ガガによる一大スペクタクルとして作りあげられた〈The Mayhem Ball〉。コーチェラでの初披露以来、世界ツアーで大絶賛を受けてきたこのショウが2026年1月21日、ついに日本でもスタートした。初日は大阪、京セラドーム。関西での単独公演はじつに約16年ぶりだ。スタート前から満員になった会場にはアリアが流れ、ボルテージがどんどん上がっていくのを肌に感じる。
開幕まであと1時間🔥 pic.twitter.com/UwRFIQl9nD
— Lady Gaga Japan (@GAGA_JAPAN) January 29, 2026
壮大なオープニング
画面にブルネットとブロンドによる2つのヴァージョンのレディー・ガガが対峙するように映されると、オペラ調のイントロとともに“Act I: Of Velvet and Vice”の文字が現れる。すると巨大すぎる深紅のガウンの上で歌うガガその人がついに登場し、「Bloody Mary」を歌いあげる。壮大なオープニングだ。
そして、間髪入れずにガガの新たなポップ・アンセムとなった「Abracadabra」を投下! オーディエンスに配られたリストバンドが放つ光とステージの照明、そして楽曲が完全に同期し、その盛り上がりは一気に頂点へと到達する。巨大ガウンから降りてくる(ガウンから“降りてきた”人が人類で他にいるのか私は知らない)と、激しいダンスを繰り広げるガガ。一瞬で会場全体が熱狂に飲みこまれるようで、エンターテイナーとしてのパワーを余すことなく見せつけていた。
〈The Mayhem Ball〉は5幕で構成された非常に演劇性の高いショウとなっていて、そのストーリーは『Mayhem』とリンクする内容だ。ガガいわく“内なるカオス”をテーマとしたアルバムは彼女自身の混沌をそのままの純度で封じこめるような作品だったが、それゆえ今回の“舞台”もリミットをかけずに大仰で過剰、ド派手で華美なものとなった。コロッセオ風のオペラハウスの装置が象徴的なように、それははっきりと見世物であり、そこで彼女は誰も見たこともないパフォーマンスを繰り広げるのだ。
加えて、ガガ自身の二面性や混沌を様々なモチーフで示す哲学的な要素を含んでいるため、ともすればやたら高尚なものとなりそうなところを、美術や衣装、そしてダンスとビートであくまで視覚的、肉体的なエンターテインメントへと昇華しているところに彼女のポップ・アーティストとしてのプライドを感じる。ビートを強調した「Judas」や「Aura」を立て続けにドロップした第1幕からそのことがよく表れており、「Garden of Eden」ではギターをかき鳴らしてみせたし、「Poker Face」では白と黒の衣装を纏ったダンサーの間を練り歩き、ショウのコンセプトをわかりやすくヴィジュアルで示すことに成功していた。
ダークなムードと圧倒的な歌唱力
“And She Fell Into A Gothic Dream”と題された第2幕では、ぐっとダークなムードに。ブロンドの髪に白いドレスを着て、白骨の横で寝そべりながら歌うのは「Perfect Celebrity」だ。セレブリティである自身への葛藤や怒りを激しく表したこの曲は『Mayhem』においてもハイライトだったが、こうして舞台として見るとユーモラスでもあるのが興味深い。それは同じ幕で示された「Paparazzi」でも同様で、銀の松葉杖をついて歌いあげるガガの姿はどこか人智を超えたようなハイパーさが感じられる。もちろん、圧倒的な歌唱力がその印象を後押ししているのだが。
第2幕の終わりの「The Beast」からハード・ロック的な激しいサウンドとなり、第3幕“The Beautiful Nightmare That Knows Her Name”では巨大な頭蓋骨が登場し、ますます過剰な展開になっていく。「Zombieboy」でのホラー風の演出、「The Dead Dance」や「LoveDrug」でのゴシック風のヴィジュアル。次から次へと濃厚な光景が繰り広げられ、私たち観客はそれらをそのままの濃度で浴び続けるしかない。初期の代表曲「Just Dance」ではドーム全体が巨大なダンスフロアになったようで、その中心で激しく踊るガガは紛れもなくクレイジーな舞台を統べるクイーンとしてそこで君臨していた。
それが第4幕“Every Chessboard Has Two Queens”になると、音楽的に少し柔らかさも感じられるようになる。爽やかなファンクが感じられる「Kill for Love」では手拍子も起こり、ガガが軽快なギターフレーズを鳴らす「Summerboy」では明るい曲調によって開放的な空気感が広がる。そして、「大阪のクィア・コミュニティがここにいるか知りたいの」の呼びかけから「Born This Way」。21世紀最大のクィア・アンセムであるこの曲はこの日も、クィアの誰もが自分をそのままで愛せるようにパワフルに、高らかに歌われていた。あるいは、“私はこんな風に生まれた”という宣言は、現在のガガ自身に捧げられるものでもあったはずだ。
過剰な装飾と溢れんばかりの愛
〈The Mayhem Ball〉の過剰な装飾や度肝抜かれる展開は、ガガの下積み時代の出自であるクィアのナイトクラブに大きく影響を受けたものだろう。ドラァグクイーン文化におけるキャンプの精神は彼女の表現の根っこのところにあり、『Mayhem』という原点回帰的な側面のあったアルバムによって再び開花したように感じる。
そして、その大仰なストーリーテリングによって示されていたのは、ふたりの女王の和解、自分のなかにある二面性を受け入れることだった。そうした相反する側面や“内なるカオス”を受け入れ、唯一無二のポップアートにまで高めているのが現在のレディー・ガガなのだ。
ショウはいよいよ終盤へと向かい、渡し船に乗って「Shallow」を歌いあげると、ピアノの前に座り「Die With a Smile」を弾き語り、ドーム全体が温かい空気に包まれる。すると、それまでの演劇仕立てがいったん中断され、本当に優しい口調で大阪に集まったファンに感謝を伝えるガガ。ここで公演ごとに異なる曲が演奏されるのだが、この日選ばれたのは「The Edge of Glory」と、なんとライヴでは16年ぶりだという初期の名曲「Brown Eyes」。隅々まで綿密に構築されたショウのなかで、もっとも緩やかで柔らかいムードが漂った瞬間だった。
今夜のサプライズソングは
「Come To Mama」
「Marry The Night」!!!#ガガ様来日 #MayhemBallJapan pic.twitter.com/upn5cgi2gX— Lady Gaga Japan (@GAGA_JAPAN) January 29, 2026
その後の「Vanish Into You」でステージを降りてオーディエンスと気さくに触れ合うガガを見て、本質的にものすごく愛を湛えたアーティストなのだとあらためて思った。
フィナーレは、「私たちはモンスターであり、モンスターはけっして死なない」の宣言から「Bad Romance」。大勢のダンサーを引き連れ、高らかにコーラスを歌うガガ。文句なしの大団円だ。モンスターとは異形のポップを繰り広げてきたレディー・ガガ自身のことであり、それを愛してやまないファンたち――“リトル・モンスターズ”――のことでもある。そのパワフルなポップ・ソングは、エキセントリックに生まれついたすべての人びとに溢れんばかりの愛を捧げるようだった。アンコールでは派手な衣装もメイクも落としたレディー・ガガがバックステージから「How Bad Do U Want Me」を歌いながら再び現れると、その想いは確実に、会場の隅々まで届いていた。
✨🎤✨🔥✨━━━━
オフィシャルレポート公開
🇯🇵 #レディー・ガガ ❤️
「Lady Gaga: The MAYHEM Ball」
━━━━✨🔥✨🎤✨約3年4か月ぶりの来日公演🔥… pic.twitter.com/1mb0LW0iRg
— Lady Gaga Japan (@GAGA_JAPAN) February 1, 2026
Written By 木津 毅
<最新アルバム>
レディー・ガガ『Mayhem』
2025年3月7日発売
CD&LP / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music
【来日公演情報】
全公演ソールドアウト!
「The MAYHEM Ball」ジャパン・ツアー
2026.1.21(wed) 22(thu) : 京セラドーム大阪
2026.1.25(sun) 26(mon) 29(thu) 30(fri) : 東京ドーム
セットリスト・プレイリスト公開中!
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