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ロッド・スチュワート『An Old Raincoat Won’t Ever Let You Down』

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1969年の夏、ロック・ミュージシャンを夢見る24歳のロッド・スチュワートはすでにジェフ・ベック・グループと共にヴォーカリストとして何年もツアーやスタジオに参加していた。その前はロング・ジョン・ボールドリーやR&Bに染まったスティームパケットの他のメンバーたちと歌ってきた。“ロッド・ザ・モッド”と呼ばれたスチュワートは、自分の名前で幾つものシングルをデッカ・レコード、コロムビア・レコード、そしてアンドリュー・ルーグ・オールダムのイミディエイト・レコードからリリースしているが、ただまだ自分の名前でアルバムをリリースしていなかった。

しかしマーキュリー・レコードのA&R担当ルー・ライズナーと1968年にソロとしての契約を結び、契約上の遅延が過ぎ去るのを待つと、スチュワートは初のソロ作品のレコーディングに好きに取り掛かることができた。1969年後半にアメリカで先行発売され(タイトルは『The Rod Stewart Album』と付けられた)、UKでは1970年前半に『An Old Raincoat Won’t Ever Let You Down』とタイトルが付けられ発売され、そして今回reDiscovered Albumの一枚に選ばれた。

ソロとバンドのキャリアを両立しようとしたスチュワートは普通ではない理想でもない状況に立たされていた。1960年代にスティーヴ・マリオットが脱退してからスモール・フェイセスからフェイセズへと改名されたバンドのヴォーカリストになった。デビュー作品『First Step』は、スチュワートのソロ・アルバムが発売されたたった1ヶ月後の1970年3月にUKでリリース。

『An Old Raincoat Won’t Ever Let You Down』と、アルバムからの唯一のシングルでザ・ローリング・ストーンズの「Street Fighting Man」(1968年)のカヴァーはUKチャートには登場しなかった。今思い返すと、スチュワートのデビュー・アルバムの中で最も知られるトラックのマンフレッド・マンのフロントマン、マイク・ダボの「Handbags and Gladrags(邦題:ハンドバッグと外出着)」のカヴァーは、ヒットしたわけでもなくシングルにもならなかったことは不思議なことだ。

スチュワートとライズナーの2人が共同プロデューサーとしてクレジットされたアルバムに収録されているイワン・マッコールのフォーク・スタンダート「Dirty Old Town」のカヴァーでスチュワートはそのかすれた声を披露しており、後にザ・ポーグスとよく比べられるようになる。他にも数十年経ってから賞賛される曲の一つとして「Man Of Constant Sorrow(邦題:いつも悲しい男)」があり、映画『O Brother! Where Art Thou(オー・ブラザー!)』のサウンドトラックにソギー・ボトム・ボーイズのブルーグラス・カバーが収録されている。

「Blind Prayer」、「I Wouldn’t Ever Change A Thing(邦題:君だけを)」、「Cindy’s Lament(邦題:シンディの嘆き)」、そしてタイトル・トラックなどその他にもアルバムに収められている曲はスチュワートの作曲家としての腕前を見せている。フェイセズで一緒のロン・ウッドとイアン・マクレガンがフィーチャリングされ、「I Wouldn’t Ever Change A Thing」ではキース・エマーソンが演奏している。USで139位とオーストラリアで31位にしかランクインされなかったが、『An Old Raincoat Won’t Ever Let You Down』は新しいロック・ミュージシャンの誕生を示している。スチュワートのマーキュリー時代の曲を集めたものが、アルバムに含まれている。


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