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ジーン・ヴィンセントの『Bluejean Bop!』は過去最高のデビューアルバムか?

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“ブルー・ジーン・ベイビー”。イギリスのロッカーたちのある世代は、イアン・デューリーが‘スウィート’なジーン・ヴィンセントに捧げたことでこの言葉を知っている。彼らの音楽教育においては悲劇だが、その多くのファンはそのオリジナルを聴くことなくきてしまっている。最初の数秒での息遣いや親密感溢れる『Bluejean Bop!』は、本当にありのままをさらけ出した初のアメリカのロック・スターの初のアルバムだった。この音楽は今でも人を虜にし、自分自身の主張もせずにエルヴィス・プレスリーの真似事をしているのではないぞ、と知らせる通告でもあった。

1956年に、このようなイントロを聴いたことがあっただろうか? ジーン・ヴィンセント以上に本物のロックン・ロールで人々の注目を集めた人がいただろうか? 彼のバンド、ザ・ブルー・キャップスよりもいいバンドと演奏していた人などいただろうか? 『Bluejean Bop!』は50年代、いや、どの世代においても最高のデビュー・アルバムと言える、そしてその理由もあるのだ。だからこそ、すべてのロック・コレクションにこの名作が含まれていないのは、本当に悲劇といえる。それほどまでに良いアルバムなのだから。

証拠はこうだ。まずジーン・ヴィンセント自身が夢のような歌い方で、優しい雀のようだったのに、それを食べる野良猫のようにも豹変する。後年に崩れて行き、切羽詰まったようなジーン・ヴィンセントまではいかないが、それでも当時の彼は、これが自分にとって唯一のチャンスだとわかっているかのように、何か緊迫したような空気感があった。あの当時のスターで、海軍にいる時にトライアンフのバイクで事故を起こし、足に鋼鉄の器具をつけて常に痛みに耐えていたものなどいただろうか? 足を引きずり、結果的に社会の端くれにいるような感覚で生きていた人間に、他にどのようなチャンスが訪れるというのだろう? まだ50年代半ば、障害を持つ人に対して平等な世の中とは言えなかった。

ジーン・ヴィンセントはこのチャンスをものにしなければならないと分かっていた、そして彼が発するすべての音にそれはひしひしと現れている。アルバムの空気感もある。透明だけどスモーキーで、前に飛び出るがスラップバック・エコーは距離を保つ。まるでギラギラの太陽の光が霧の中から差し込んでいるかのようだった。そしてブルー・キャップスという50年代で最もタイトなロックン・ロール・バンドがいて、メンバーそれぞれがあだ名を持っていた。確実で安定したリズムギターのウィー・ウィリー・ウィリアムズ、ベースのジャンピン・ジャック・ニール、ディープなドラムのビバップ・ディッキー・ハレル、そしてリード・ギターのギャロッピング・クリフ・ギャラップ。クリフ・ギャラップの演奏はまさにギタリストにとってのロカビリーのお手本だった。彼はジーン・ヴィンセントと35曲レコーディングしてから業界をやめたが、60年代半ばに1枚だけカントリー調のアルバムに参加した。しかし、彼がロックン・ロールに残したその痕跡は根強く、今日のギタリストはこの6弦の天才に(ブルーの)キャップを持ち上げて称えるのだ。

ジーン・ヴィンセントの音楽の評判の全ては『Bluejean Bop!』に由来する。ワイルドさ、「Who Slapped John?」は女性をめぐっておきたストリートの喧嘩を歌っている。サプライズ、どんな曲でも自分のものにしてしまう、それはベタな「Ain’t She Sweet」もホーギー・カーマイケルの「Up A Lazy River」もそうだ。街で一番かっこいいキッズと一緒にツルみたいと願った「Bop Street」。タイトル・トラックや「I Flipped」や「Jumps, Giggles And Shouts」のように信じられないほどクールな女性の話。そして何よりも、彼の素晴らしい、心からの歌声と、ただロックしたいバンドという、最低限の材料のみであの嵐を巻き起こしたのだ。ロカビリーという塵が大きな音楽の山となり、後に続く世代にその道を示した。エネルギーと芸術性、そして強い意志があればできるんだということを。

Gene Vincent – Blue Jean Bop

芸術性:フランク・シナトラ、ジュディ・ガーランド、デューク・エリントン、スタン・ケントンを語る際によく使われる言葉だ。同じようにそれは、ジーン・ヴィンセントにも当てはまる。彼がいかに歌を伝えたか、エネルギーを貯めてから、シャウトで一気に歌い出して、そこにクリフ・ギャラップがギターで入り込んでくる。一度たりとも自意識過剰に聴こえることはない。自分に何ができるかよく把握していて、その才能を操るマスターだったからこそ、自然に流れ出てくるのだ。

プロデューサーのケン・ネルソンの貢献も多大なもので、この魔法の世界を彼はテープに残したのだ。キャピタルのA&Rで、カントリーミュージック部門のトップだったケン・ネルソンは凄腕だった。バンドがスタジオに現れ、姿を見ないまま、ケン・ネルソンは彼らの才能に気が付き、自由に演奏させたのだ。ジーン・ヴィンセントらがそのムードをつくりあげ、ケン・ネルソンは彼の若さ、エネルギーとスタイルを楽器やヴォーカル、叫びで表現するよう励ました。その結果、50年代のヴァージニア州ノーフォーク(チャック・ベリーの「Proimsed Land」のスタートポイントとしても有名)のストリート・ライフのサウンドが出来上がった。

ロカビリーでもヒルビリー・ロックでもカントリーとリズム&ブルースの融合とでも好きに呼んでくれ。なんと呼ぼうが、『Bluejean Bop!』はその後に続く多くのものの原点だったことは間違いない。ブルー・ジーン・ベイビー、あなたはまさに、これまで愛されてきた本物のロックン・ロールの青写真そのものなのだ。

By Ian McCann


  • ジーン・ヴィンセント『Bluejean Bop!』を聴く ⇒ iTunes / Spotify

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