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エルトンとレノン、二人のジョンが送る夢のコラボレーション「Whatever Gets You Thru the Night(真夜中を突っ走れ)」

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「Whatever Gets You Thru the Night(真夜中を突っ走れ)」の原型は1974年の初夏に生まれている。当初のラフ・デモや初期ヴァージョンは後のジョン・レノンの「Jealous Guy」に通じるものがある楽曲だった。ジョン・レノンが「Whatever Gets You Thru the Night」のメロディのヒントにしたのは、1974年5月にリリースされていたジョージ・マックレーの「Rock Your Baby」で、この曲はその後ビルボード・チャートで1位を獲得している。

初夏から真夏になってニュー・アルバム『Walls And Bridges(心の壁、愛の橋)』の制作が始まると、より洗練された第2弾のヴァージョンがニューヨークのレコード・プラントで録音された。その際、『Captain Fantastic』をアメリカで制作していたエルトン・ジョンがレコーディングに協力している。先にレコードを完成させ、ニューヨークに宿泊していたエルトンはある晩、スタジオを訪れてコーラスやピアノ、オルガンで参加したのだ。ジョン・レノンはこう回想する。

「ある晩、おれが遊び半分に作業していたら、エルトン・ジョンがアップルのトニー・キングとスタジオに現れた。エルトンが『その曲にピアノを足していいかな?』と言うから、おれは『もちろんだよ』と答えた。彼はあっという間に演奏してみせた。おれはその才能に驚いたんだ。彼のことは知っていたけど、演奏するのを見たことはなかったんだ。ミュージシャンとしても、ピアニストとしても見事だった。あれだけ自由な曲に音を足して、リズムの変化にも難なくついていくのを見るのは本当に楽しかった。明らかに、同じリズムでは進んでいかない曲だからね。その後でコーラスもしてくれたんだ。すばらしい時間だったよ」

ふたりは一本のマイクでコーラスをレコーディングし、エルトンはオルガンも弾いてみせている。だがエルトン自身は「おれは最悪のオルガニストだ。だけど、始めてみたらたった5分で終わってしまったけどね」と話している。

WHATEVER GETS YOU THRU THE NIGHT. (Ultimate Mix, 2020) – John Lennon (official music video HD)

レコーディングが終わるとレノンはエルトンに対し、ソロで1位を獲っていないのはビートルズで自分だけだとこぼした。するとエルトンは、「Whatever Gets You Thru the Night」が1位になったあかつきには、感謝祭に開催されるエルトンのニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでのコンサートにジョンを呼ぶと伝えた。

おそらくジョン・レノンはその約束が現実になるとは思っていなかっただろうが、「Whatever Gets You Thru the Night」が11月16日付のビルボード・チャートで1位になると、エルトンはレノンに連絡を取っている。レノンはしっかりと約束を果たしたが、後にこう話している。

「エージェントに話したわけでもなかったし、おれは急に困り果ててしまったんだ。何をしていいかもわからないでステージに立ったってわけなんだ」

Lennon No.1

1974年11月28日、ジョン・レノンは黒のジャケット姿に黒のフェンダー・テレキャスターを携えてエルトン・ジョンとステージに立った。彼はチャートの首位を獲得した新曲のほかに、「Lucy In The Sky With Diamonds」と「I Saw Her Standing There」を披露したが、皮肉にも「I Saw Her Standing There」はジョンではなく、もともとポール・マッカートニーがリード・ヴォーカルを務めた曲だった。大きなコンサートの舞台に立つのはジョン・レノンにとってこれが最後になったが、この日は興味深い終幕になった。

この頃ジョンは妻のヨーコと距離を置いていたが、彼はこの日のチケットを彼女に送っている。一方のヨーコは夫のジョンとエルトンへランの花を渡し、彼らはステージでそれを身に着けた。終演後にステージ裏で緊張気味に対面したジョンとヨーコは、1975年2月までに関係を修復している。

Elton John & John Lennon – Whatever Gets You Thru The Night (Live)

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ジョンはこのお返しとして、エルトンが7月の後半に「Lucy In The Sky With Diamonds」をレコーディングしたとき、コーラスとギターで参加している。同曲はシングルとしてマディソン・スクエア・ガーデン公演の1週間前にリリースされ、1975年1月初旬の2週間に亘りビルボード・チャートの首位になった。

レノンは同シングルにドクター・ウィンストン・オー・ブギーの変名でクレジットされたが、これは誰を小馬鹿にしたわけでもない。何を隠そう、B面には『マインド・ゲームズ』に収録されたレノン作の「One Day (At a Time)」のカヴァーが収録されたのだ。

また、1975年前半に発表されたエルトンの次シングル「Philadelphia Freedom」のB面には、ジョン・レノンと共演したマディソン・スクエア・ガーデン公演で収録された「I Saw Her Standing There」のライヴ・ヴァージョンが収められている。

このエピソードには微笑ましいこぼれ話がある。1975年10月、コラボレーションを通じ、エルトンと友人になった証として、ジョンとヨーコは、息子ショーンの名付け親にエルトンを選んだのだのである。

Written By Richard Havers



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