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フランク・ザッパのギター・ソロ・ベスト8選:見落とされがちな独特のスタイルやテクニック

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Photo: Larry Hulst/Michael Ochs Archives/Getty Images

フランク・ザッパ(Frank Zappa)は作曲家としての業績があまりにも素晴らしいので、ギタリストとしての独特のスタイルやテクニックが見落とされることがある。ザッパ自身、1977年のギタープレイヤー誌のインタビューで、「私は“フランク・ザッパ、ロックンロールのギターヒーロー”というより、ギターという楽器をたまたま操ることができた作曲家としてアプローチしている」と語っている。

しかしながらそれは、彼の独創的な音色の使い方、リズムの予測不可能性、ギタリストとしての想像力を正当に評価していない発言だろう。ザッパの天才的なギタープレイを知らない人のために、彼の最高のギターソロを聴くことができる8曲をリストアップしてみたので是非楽しんでほしい

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1. Willie The Pimp:1969年『Hot Rats』収録

アルバム『Hot Rats』で唯一ヴォーカルをフィーチャーした曲である、ハードなブルースのグルーヴを持つ「Willie The Pimp」はキャプテン・ビーフハートが圧倒的な存在感を示しており、彼のヴォーカルは、ザッパの荒々しく疲れを知らないソロにマッチしている。

さらに印象的なのは、ザッパは組合(ミュージシャンが加入するユニオン)の役員が背後にいる状態でソロをレコーディングしていることだ。1985年にザッパがインターナショナル・ミュージシャン&レコーディング・ワールドにて次のように語っている。

「私がワウワウペダルを弾きまくっていると、組合のヤツが入ってきたんだ。彼は私の後ろに立って、クリップボードに鉛筆を叩きながら、私の演奏が終わるのを待っていた。そうすれば、私が何人のミュージシャンを使っているのか、組合の書類を提出したかどうかっていうのを私に尋ねることができる。それがこの曲のソロなんだが、これを録音している最中、ずっとこの組合の馬鹿野郎が後ろに立っていたんだ」

Frank Zappa – Willie The Pimp (Visualizer)

 

2. My Guitar Wants To Kill Your Mama:1970年『Weasels Ripped My Flesh』収録

世代間のギャップを埋めるようなこのR&B曲は、ザッパとマザーズがリリースする可能性のあるシングルの中では、最もありふれたものだった。しかし、ザッパは作品に一石を投じずにはいられなかった。

この曲の場合、中間部では木管のファンファーレを1オクターブあげ、ザッパ自身による珍しいアコースティック・ギター・ソロをフィーチャーしている。この軽快な転換は、ザッパが望めば簡単にフォーク界に旋風を巻き起こすことができたことを示唆している。

My Guitar Wants To Kill Your Mama

 

3. Montana:1973年『Over-Nite Sensation』収録

ソウルフルでレイドバックしたグルーヴに乗せて、ほとんど言葉を発しないヴォーカルで、モンタナに移住して“デンタルフロス”を収穫してデンタルフロスの王様になることを歌っているのがこの「Montana」だ。ザッパはこの曲について後にCash Boxでこう語っている。

「ある日起きて、デンタルフロスの箱を見て、“ふむふむ”と言ったんだ…フロスの観察者として、パッケージとの関係を表現するのが義務だと思った。それで、階下に降りてタイプライターの前に座り、そのことについて歌を書いたんだ」

この冒頭の超現実的な気まぐれさは、次の1分半で彼がギブソンSGの指板で繰り出す激しさとは対照的だ。特に1974年後半のライヴでは「Montana」の部分が拡張され、ワイルドなインプロヴィゼーションが可能になった。

Frank Zappa, The Mothers Of Invention – Montana (Visualizer)

 

4. Muffin Man:1975年『Bongo Fury』収録

「Muffin Man」は1973年のアルバム『Over-Nite Sensation』に収録された「Camarillo Brillo」の最後の3つのコードを中心にしたジャムから生まれ、コンサートではこの曲が先行して披露されていた。

一方、1975年のアルバム『Bongo Fury』では、ザッパが1959年に書いた、ザッパが所有していたレコーディングスタジオ「ユーティリティ・マフィン・リサーチ・キッチン」の従業員についてのウィットに富んだ短編小説が紹介されている。

ザッパのギタープレイは、ジミ・ヘンドリックスの全盛期を彷彿とさせ、ギターが入ると艶やかなエネルギーがハイドラマのように爆発する。ザッパは先駆的なギタリストを次のように賞賛している。

「ヘンドリックスは、音楽的にも社会的にも、今日のポップカルチャーの中で最も革命的な人物の一人だ。ジミ・ヘンドリックスの音楽はとても面白い。そのサウンドは…極めて象徴的だ。オーガズム的なうめき声、拷問されたような鳴き声、淫らなうめき声、電気災害、その他無数の聴覚的好奇心が、極めて高いデシベルレベルで観客の感覚メカニズムに届けられるのだ」

Muffin Man

 

5. Black Napkins:1976年『Zoot Allures』収録

『Zoot Allures』で聴ける「Black Napkins」のバージョンは、1976年2月3日に大阪の厚生年金会館で行われたライヴで録音されたものだ。この煮え切らないインストゥルメンタルは、1975年春に初めて演奏され、セットリストの定番となった。

ザッパのソロは、曲の流れに合わせ、必殺のシュレッダーから優雅なロングノートまで、ダイナミクスを駆使した名演奏だ。2分11秒のところでは、オーバーハイムのVoltage Controlled Filterにギターを通し、サンプル&ホールドを行い、彼の演奏をデジタル・スクークに似たものに変化させ、さらにレベルアップしている。

1977年2月17日のロンドン公演でザッパがハーモナイザーでソロを弾いたバージョンは、1981年のソロ集『Shut Up ‘N Play Yer Guitar』に「Pink Napkins」の名でリリースされている。

Black Napkins

 

6. Zoot Allures:1976年『Zoot Allures』収録

『Zoot Allures』のアルバム・タイトル曲の最初のセクションでは、ドラム、ベース、マリンバ、ハープの豊かな波の上で、ザッパが長く、激しく打ち鳴らされたコードを演奏している。

ソロになると、ザッパの演奏はギクシャクと角ばった予測不可能なものになり、雰囲気は一変する。彼の自由で遊び心のあるソロは、曲をひっくり返し、そのメロディーの可能性は無限大だ。ザッパは並列と極端を提示することに喜びを感じている。

この曲では、ソロのギターの音色が硬く鼻につくので、ピッキングの仕方を変えたり、愛用のピグノーズ・アンプを使っている。

Zoot Allures

 

7. Inca Roads:1988年『You Can’t Do That On Stage Anymore, Vol 2』収録

1975年の『One Size Fits All』に収録されたこのザッパの大作曲は、1988年にリリースされた『You Can’t Do That On Stage Anymore, Vol 2』で聴くことができる1974年9月のヘルシンキ公演のギターソロを編集して使用したバージョンだ。

ザッパはCのリディアン・スケールでソロを弾き、バンドはCメジャーからDメジャーへの進行のバリエーションに基づくグルーヴを演奏している。ザッパは1983年のGuitar Playerのインタビューで、ソロの終盤の必殺技についてこう語っている。

「左手で音を鳴らして、右手もピックで音を鳴らしている。弦を弾く代わりに、弦をフレットで弾くんだ…そうすれば、本当に速く前後に動ける…弦にまっすぐ照準を合わせるだけさ」

同誌の別のインタビューでは、この奏法について「ブルガリアのバグパイプのような音が出るんだ」とも語っている。

Inca Roads

 

8. Watermelon In Easter Hay:1996年『Watermelon In Easter Hay (Frank Zappa Plays The Music Of Frank Zappa: A Memorial Tribute』

コンピレーション・アルバム『Frank Zappa Plays The Music Of Frank Zappa: A Memorial Tribute』では、ザッパの代表作とされる3曲、つまり彼独特のギタースタイルが特徴的な「Black Napkins」「Zoot Allures」、そして素晴らしい「Watermelon In Easter Hay」が紹介されている。

1979年のアルバム『Joe’s Garage』に収録されたヴァージョンは、1978年2月24日、ドイツのエッペルハイムで録音されたものだ。

バンドはゆっくりとしたスペイシーで催眠的なアルペジオのパターンを確立し、その上でザッパはフィードバックとトーンの見事なコントロールを見せる。美しい音楽だが、ザッパはそれにジョークで対抗せずにはいられず、1980年にBBCラジオ1でそのタイトル「Watermelon In Easter Hay」についてこう話している。

「この曲の完全なタイトルはこれじゃないんだ。“Playing A Guitar Solo With This Band Is Like Trying To Grow A Watermelon In Easter Hay(このバンドでギターソロを弾くのは、イースターヘイでスイカを育てようとするようなものだ)”っていうんだよ。(Watermelon In Easter Hayっていうのは)そこからきているんだ」

Watermelon In Easter Hay

Written By Jamie Atkins


フランク・ザッパ『Waka/Jawaka & The Grand Wazoo』
2022年12月16日発売
CD / iTunes Store / Apple Music



フランク・ザッパ『Zappa ’75: Zagreb / Ljubljana』
2022年10月14日発売
CD

フランク・ザッパ『ZAPPA/ERIE』(6CD)
2022年6月17日発売
国内盤CD / iTunes Store / Apple Music



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