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クリーム初のライヴ:急に決まったジャズ&ブルース・フェス2日前のクラブでの演奏

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Cream photo - Courtesy: Mark and Colleen Hayward/Redferns

公式な記録によれば、クリーム(Cream)が初めてライヴのステージに上がったのは1966年にウィンザーで行われた第6回全国ジャズ&ブルース・フェスティヴァルでのこと、となっている。しかし本当の初ライヴは、実はその2日前に行われていた。急に決まったそのライヴは、ほとんど目立たないかたちで行われた。その会場となったクラブは、のちにノーザン・ソウル・シーンの中心地となる場所だった。

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代役としてデビューライブ

1966年7月29日(金曜日)の夜、イングランド全土は期待と不安に包まれていた。かつてないほど重要なサッカーの試合、ワールドカップ決勝のイングランド対西ドイツ戦を翌日の午後に控えていたのだ。

とはいえジャック・ブルースはスコットランド出身なので、イングランド代表の試合にあまり興味がなかったかもしれない。人気ソウル・シンガーのジョー・テックスがマンチェスターのトゥイステッド・ホイールでのライヴを土壇場でキャンセルしたため、ジャック・ブルースとエリック・クラプトンとジンジャー・ベイカーの3人はこの金曜日に突然北へ向かうことになった。3人が乗った車は、クラプトンの友人のキーボード奏者、ベン・パーマーが運転する黒のオースティン・ウェストミンスターだった。ブルースはのちにこう語っている。

「あのときはクリームという名前がついたばかり。ライヴの宣伝もされてなかった。誰かがライヴをキャンセルしたんで、その代役をやることになったんだ。ウィンザー・ジャズ・フェスティヴァルに出る前の練習としてね。そのジャズ・フェスが正式なデビュー・ライヴだったよ」

トゥイステッド・ホイールは、もともとブレーズノーズ・ストリートにあったR&Bのライヴ会場だった。ここはスモール・フェイセスが初めてライヴをやった場所でもあり、またホリーズが定期出演していた場所でもあった。ここにはジョン・リー・フッカーも出演したことがあり、また1964年にはシリル・デイヴィス・オールスターズもライヴを行っている(当時はデイヴィスが亡くなった直後で、メンバーの中には若きロッド・スチュワートもいた)。

1965年、ブレーズノーズ・ストリートにあった店舗はジョン・メイオール&ブルースブレイカーズのライヴを最後に閉店し、ホイットワース・ストリートに移転した。移転後のトゥイステッド・ホイールに初めて出演したのはスペンサー・デイヴィス・グループだった。そして1966年の夏、2週間前に正式に結成したばかりの新しいトリオがここで初舞台を踏むことになる。

クリームのメンバーは、3人とも以前トゥイステッド・ホイールで演奏した経験があった。ブルースとクラプトンはメイオールのブルースブレイカーズで、さらにブルースはマンフレッド・マンで、そしてベイカーはグレアム・ボンド・オーガナイゼーションでそれぞれ出演していた。このあとまもなくクリームは、ロバート・スティグウッドの会社RSO(Robert Stigwood Organisation)と契約を結び、10月にはデビュー・シングル「Wrapping Paper(包装紙)」を発表。12月にはデビュー・アルバム『Fresh Cream』を発売する。

Wrapping Paper (Remastered)

しかしそうした活動の最初の一歩となったのは、あの汗臭いクラブでのことだった。あの場に居合わせた観客は、クリームがどういうバンドなのかはっきりわかっていなかった。ここで演奏されたのは、「Crossroads」「I’m So Glad」「Spoonful」、インストゥルメンタルの「Toad(いやな奴)」、そしてブルースが作った曲「Traintime(列車時刻)」だった。

ちなみに車を運転してきたベン・パーマーはのちに以下のように回想している。

「クラブの裏手に車を停めると、エリックとジャックとジンジャーが中に入っていった。それで、こちらは店の最寄りのパブに行った。1時間くらい時間をつぶせば向こうも準備が整うだろうから、そのくらいに戻ってどんな案配か確かめようと思ったんだ。そうして1時間後に戻ってみると、アンプはまだ車の中に積んだままになってた。で、ジンジャーがこう言ってきた。『長々と散歩してたな。もう準備はいいか?』。俺は『何だそりゃ?』と返した。別に長々と散歩してたわけじゃない、一杯飲んでただけだってね。するとジンジャーが『だけどお前はローディだろう』と怒鳴ってきたんだ。『機材の用意をするのはお前の仕事じゃねえか!』と。だからこう返したんだ。『機材の用意なんてどうやっていいか全然わからない。こっちは車の運転をして5ポンドもらえるかなくらいのつもりだったんだ。俺は帰るよ、またな』ってね」

Written By Paul Sexton


クリーム『Fresh Cream』

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