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ヴァイナル盤で手に入れたいエッセンシャル・レゲエ・アルバム10選

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レゲエは、一部ではシングル用の音楽として扱われ、レアで引っ張りだこの45インチは、熱狂的なコレクター市場を動かしている。しかしLP盤アルバムは、『Tighten Up Volume 2』といったパーティーをスタートさせるコンピレーションから、イージー・スカンキングなヴァイブに溢れるボブ・マーリーの『Kaya』や、タフ・ゴングの息子ダミアンとニューヨーク・ヒップホップ・アイコンのナズによるコラボレーション等々、ベスト・レゲエ・ヴァイナルを生み出すこともある。

みなさんのサウンド・システム用のベスト・レゲエ・ヴァイナル・アルバムを、ここで10作紹介しよう。

■バーニング・スピアー『Marcus Garvey』(1975)
1975年ではあまり聞いたことのないアーティストによってリリースされた、プロデューサーのローレンス・リンド初監修のこのレコードは、ルーツ・レゲエを象徴するアルバムであり、リード・シンガー兼ソングライターのウィンストン・ロドニーを永遠のスターにした作品だ。実際のところ、バーニング・スピアーは1969年に登場し、素晴らしいラスタ・レゲエを生んでいたが、知名度が低かった為に無名だと思われていたのだ。

このアルバムの非常に美しいアレンジと、絶妙なプレイと、よく練られたミキシングによるパッケージには、ガーヴェイ的世界観が描かれ、オープニングの小節から最後のフェイド・アウトする瞬間まで、非常に満足のいく内容になっている。そうして他のアルバムがこれまでやったことのない方法で、ラスタのライフスタイルの魅力をアピールし、マーカス・ガーヴェイの哲学を新しい世代に紹介した。

これをLPで購入する選択肢はふたつ。収録曲が1曲少ないオリジナル・ヴァージョンで、こちらの方がよりオーセンティックだと言うファンもいるミックスか、あるいは1曲多く若干テンポが速い、イギリス・ヴァージョンか…。でもなぜ選ばなければならない? どちらもベスト・レゲエ・ヴァイナル・コレクション・リストに入れるのに相応しい。

収録曲でお勧め:「Old Marcus Garvey」

■トゥーツ&ザ・メイタルズ『Funky Kingston』(1973)
彼の初期作品の方がスキンヘッドを導き、よりファッショナブルだと見なされているが、『Funky Kingston』は1973年のリリース時、ベスト・レゲエ・ヴァイナルとしてアンダーグラウンド・ヒットした。この太陽のような、とてもソウルフルなチャンキー・レゲエ作品は、現在でも本当に最高のサウンドを誇り、トゥーツの歌は神のようだし、ヴォーカル・パートナーのザ・メイタルズは、彼を完璧にサポートしている。その下で支えるダイナミック・サウンズ・ハウス・クルーは、ダンスフロアに親しみ易く、人生を肯定する喜びの渦を引き起こす。

お気に入りを挙げるのは間違っているような気もするが、「Pomp And Pride」と、心和むようなタイトル・トラック(バンドのファンキーさとは相反し、キングストンはファンキーじゃない、シャンキーだ…とトゥーツは言う)、そしてこれまたトゥーツの人気ナンバー「Daddy’s Home」は、どれも素晴らしい。

収録曲でお勧め「Louie, Louie」

■ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ『Kaya』(1978)
ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズといって、必ずしも真っ先に思い浮かぶアルバムではないかも知れないが、レコード盤で聴くと最高にカッコいい。ボブ・マーリーは1971年の傑作を、1978年にメロウな雰囲気にリメイクし、マリファナを称賛する(それも立派にやってのけている)。

この柔らかなフィーリングは、ヒット曲の「Satisfy My Soul」、非常に抽象的な「Sun Is Shining」のより磨きが掛かったヴァージョン、それから「Easy Skanking」でも続く。更なるヒット作「Is This Love」はここ数十年間の露出度にも拘らず、今でも新鮮に聴こえるが、もっと刺激が欲しいと思うまさにその瞬間に、耳障りな「Crisis」、せわしない「Running Away」、そして焦点が合ったり外れたりする不思議な「Misty Morning」が登場する。哲学的な「Time Will Tell」(ボブ・マーリーが書いた曲中で最も過小評価されているもののひとつ)で終わるこのレコードは、未踏の深みを秘めた作品だ。

収録曲でお勧め「Crisis」

■ヴァリアス・アーティスト『Tighten Up Volume 2』(1969)
パーティー気分のレコード…まさに1969年スタイルだ。トロージャンの長年続くコンピレーション・シリーズは、この時代のレゲエ・ヒットが詰まっていて、安価で非常によく売れた。ザ・ブリーチャーズの「Come Into My Parlour」、ルディ・ミルズの「John Jones」、ザ・ソウルメイツの「Them A Laugh And A Ki-Ki」等々…。これ等のナンバーは、現在でも最高傑作と見なされており、この作品は今でもベスト・レゲエ・ヴァイナル・アルバムのひとつだ。スキンヘッド・リヴァイヴァル・ダンスでDJしても、誰も文句は言わないだろう。図体のデッカイ若者達がやって来て、喧嘩が始まっちゃった時に備えて、上に名前をちゃんと書いておくように。

収録曲でお勧め ザ・キングストニアン「Sufferer」

■ザ・グラディエーターズ『Trenchtown Mix Up』(1976)
ザ・グラディエーターズが、10年以上シングルをレコーディングし、他アーティストのサポートやプロデュースを行なった後に、発表したプロパーなファースト・アルバムは、待った甲斐のあるものだった。著名なスタジオ・ワンで誕生した45回転盤からのマテリアルは、例えばタイトル・トラック等の場合のように、一部しか使用されていないが、彼等の素晴らしい曲に捧げられたこのアルバムは、温かく、落ち着いた感じのルーツ・レゲエに詰まっている。グループのヴォーカルは、これまでのように印象的だ。

プリンス・トニー・ロビンソンが手掛ける引き締まったプロダクションは、サウンドボードのスキルを見せつけるのではなく、ヴァイブが伝わってくるように作られている。ボブ・マーリーの2曲「Soul Rebel」と「Rude Boy Ska」は、ザ・グラディエーターズの強い個性を失うことなく扱われており、壮大な「Eli Eli」は、聴き手をあっという間に輝かしい70年代半ばのジャマイカへと誘ってくれる。

収録曲でお勧め「Eli Eli」

■ジ・アップセッターズ『Super Ape』(1976)
これぞスーパー・ダブ。リー・ペリーが1976年にリリースしたこのコレクションには、彼のより一般的なマテリアルのウルトラミックス・ヴァージョンに、他では殆ど聴いたことのないメロディが幾つか加えられ、途切れなく続く、心躍るような経験をリスナーに提供する。マックス・ロメオによる「Chase The Devil」等、より最近の(捨てられた)世代によく知られるものもあれば、ザ・ヘプトーンズがその激しいミックスを行ったり来たりする、力強い「Dread Lion」等、70歳代が喜ぶようなナンバーも登場する。マリアナ海溝よりも深く、スタジオの淀んだ空気と山霧と、濃厚さと広く開放的な空間に満ちた、70年代ダブが最大限に堪能出来る作品だ。

収録曲でお勧め「Dread Lion」

■ナズ&ダミアン・マーリー:『Distant Relatives』(2010)
“Distant Relatives=遠い親戚”と言いながら、そう遠くはないとも言える。ヒップホップ文化はレゲエに物凄く影響を受けており、代わりにジャマイカン・ミュージックに沢山のものをもたらした。従ってヒップホップ界のレジェンドのひとりと、ボブ・マーリーの息子のラッパーが、2010年に組んだのは自然な流れだった。その上、双方のスタイルを跨いだり跨がなかったりしながら、これが実に上手くいった。オープニングの魅力的なシングル「As We Enter」で、ふたつのルーツが明確に示される(サンプリングはエチオピアン・ジャズ)。「Count Your Blessings」は輝きを放つR&Bだが、ナズが登場すると流れが変わる。そしてデニス・ブラウンの非常にパワフルな「Promised Land」は、“約束の国”のことで溢れている。大掛かりで、まとまりがあって、力がこもっていて、分かり易くて元気が出る、『Distant Relatives』は素晴らしいアルバムだ。

収録曲でお勧め「As We Enter」

ドクター・アリマンタド:『Best Dressed Chicken In Town』(1978)
パンク・ロッカーの大好きなドクター・アリマンタドの70年代シングルを集めた、この1978年リリースの作品は、驚くほどまとまりがあり、この時代屈指のレゲエ・ヴァイナル・アルバムとして現在でも知られる。そのスタイルが非常に独創的だったからか、彼はこの10年の殆どの間、エリートDJとしてではなく、Uロイ、ディリンジャーやトリニティーといった人々の背後に隠れながら、懸命に突き進んでいた。しかし、ガチャガチャ金属音を立てるエイリアン・ロボット達がどんちゃん騒ぎしそうなダブの最中、アリマンタドがチャントする様々な一節が積み重ねられていくコーラスが登場する度肝を抜かれるタイトル・トラックで、彼は次第にその勢いを増していく。それからハードエッジな「Gimmie Me Gun」、小躍りしたくなるような「I Killed The Barber」、セクシーな「Ride On」と、そのどれもが異なるヴァイブを持っているが、全てはこの素晴らしい絵の一部分だ。彼は仕事の天才だが、イギリスのパンク達に気づかれるまで、知る者は殆どいなかった。彼等には見る目があったのだ。

収録曲でお勧め「Best Dressed Chicken In Town」

■ザ・プロフェッツ(ヤビー・ユー)『Conquering Lion』(1975)
このヴァイナルを手に入れる機会は、幾度もあったはず。何度も再発されているのだから。問題は、みんな心の準備が出来ているかだ。キング・タビー、リー・ペリー、そしてその仲間がミキシングした、とてもとてもヘヴィーなルーツ・ヴォーカル・ミュージックと、ヤビー・ユー&ザ・ザ・プロフェッツの音楽は、他に類をみないものだ。深く、チャントするラスタ・ビジネスのタイトル・トラックや、ぶつかり合い、激しくも精巧に重ねられた音による、見事な「Jah Vengeance」「Love Thy Neighbour」の中世風にさえ聴こえるサウンド。これは太古の嵐によって届けられた、時代を越えた音楽だ。1975年にリリースされ、今日でも極めて現代的で、そうして本当に古風に聴こえるこの作品は、見事ベスト・レゲエ・ヴァイナル・アルバムの仲間入りを果たした。

収録曲でお勧め「Jah Vengeance」

Vivian Jackson – Jah Vengeance / Tubbys Vengeance [1975]

 

■ヴァリアス・アーティスト『King Tubbys Presents Soundclash Dubplate Style』(1982)
キング・タビーはダブの発明者として知られるが、ダブがジャマイカで下火になった頃、彼はダンスホール・プロデューサーとしての“セカンド・キャリア”をスタートさせていた。そうしてダンスのサウンド・システムの周辺という、レゲエが発展していった場所で、成人後ずっと過ごしてきた為、彼はこの音楽を本能的に理解していた。従って、その分野で並外れたスキルを持つプロデューサーとして知られ、『King Tubbys Presents Soundclash Dubplate Style』は1989年2月に悲劇的な死を遂げた彼が行なった、レゲエ・ミュージックに対する最後の大きな貢献だった。

少なくとも少しダンスホール・セッションのように聴こえるように作られた、このコレクションには数々の大御所と才能ある新人が、その歌詞と音楽の内容でライバルのサウンド・システムをやっつけるように作られたトラックをレコーディングしている。最も意外なのは、ダンスホールMCのファジー・ジョーンズが曲紹介をしていることだ。その素晴らしい声としばしば奇抜なイントロダクションは、その後カニエ・ウェストが「Mercy」でサンプリングした。この作品は、最初から最後までロウで脆く、例えばマイケル・ビタスの「Die You Die」や、ジュニア・バイルズの「Fade Away」のリトル・ジョン・ヴァージョンといったトラックは、デジタル・ダンスホール術の象徴だ。

収録曲でお勧め キング・エヴェラルド「Kill Ole Pan」

Written By Reggie Mint



ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ『Kaya』40周年記念盤 8月24日発売!


2CD2LP2LPカラー/デジタルにて発売

   

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