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最高のサイケデリック・アルバム・ベスト30:精神と心を拡張する名作レコードたち

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「サイケデリック」という言葉を辞書で引くと、最初に出てくる定義はたいてい「心の拡張」だろう。それはまさに、サイケデリック・アルバムの優れた作品に共通する要素である。そうしたアルバムのほとんどは1966~1968年のサイケデリック黄金時代に作られたものだが、その後に作られたものも決して少なくはない。

この種のアルバムは、サイケデリック・ブームの震源地であるサンフランシスコやロサンゼルスで作られたものもあれば、テキサス、UK、ブラジルといった遠く離れた地域で作られたものもある。中には明らかにLSDの影響を受けている作品もあるが、幻覚剤をまったく使ったことのないアーティストが作ったものも少なくとも1枚はある(たとえばプリンスのアルバム)。

サイケデリック・ミュージックというジャンルの典型的な形式に当てはまるものもあるし、単に精神的な面でサイケデリック・シーンに繋がりがあるというだけの作品もある。いずれにしても、これから紹介する30作品が聴く人の頭を今まで行ったことのない場所に連れて行ってくれることは間違いないはずだ。

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30位 : クリーム『Disraeli Gears (カラフル・クリーム)』(1967年)

クリームをサイケデリック・バンドだと言い切ってしまうと語弊がある。彼らはLSDを摂取していたたときでさえ、ブルースの演奏や即興演奏の方に重点を置いていた。とはいえ、このバンドの楽曲のうちいくつかはサイケデリック・ロックの傑作だった。そのうち2曲 (「Strange Brew」「Tales of Brave Ulysses」) は、『Disraeli Gears』のオリジナルLP のA面/B面でそれぞれ冒頭を飾っていた。また、あの時代を象徴するようなアルバム・ジャケットも忘れてはならない。

– 注目曲「Strange Brew」

Strange Brew

 

29位 : ニルヴァーナ『The Story Of Simon Simopath』(1967年)

UKのポップ・デュオ、ニルヴァーナは、音楽的にはグランジの代表バンドと大きく異なっていた。このコンセプト・アルバムはドノヴァンやインクレディブル・ストリング・バンドの影響を受けており、童謡のような可愛らしさとフラワー・パワー風の一風変わった音作りがいっぱいに詰まっている。

とはいえ、このアルバムの中心的なコンセプトは社会不適合者が心療内科の専門病院に入院したあとに新しい人生を見出すというものだった。それは、グランジのほうのニルヴァーナも好むようなテーマだったかもしれない。

– 注目曲「Wings Of Love」

Wings Of Love

 

28位 : ザ・ローリング・ストーンズ『Their Satanic Majesties Request』(1967年)

ローリング・ストーンズは、サイケ・アルバムを1枚だけ発表している。そのアルバム『Their Satanic Majesties Request』は大成功と言える仕上がりだった。なぜなら、インド音楽、ピンク・フロイドのようにテープを使った奇妙なサウンド、異様な興奮に満ちたオーケストラといったありとあらゆる要素を受け入れつつ、それでもストーンズらしいサウンドになっていたからだ。

このアルバムはあの時代ならではの産物ということもできるが、そこからシングル・カットされた「She’s A Rainbow」は今でも彼らのセットリストに入っている。

– 注目曲「2000 Light Years From Home (2000光年のかなたに)」

2000 Light Years From Home (Stereo / Remastered)

 

27位 : テーム・インパラ『Lonerism』(2012年)

テーム・インパラの中心人物であるケヴィン・パーカーは、1960年代のサイケデリックな音楽からの影響を最もうまく取り入れている現代のアーティストのひとりである。パーカーのソロ作品では、彼の頭の中にある色とりどりの世界がサウンドで表現されている。

テーム・インパラの2枚目のアルバム『Lonerism』で、彼はアナログ・シンセ、ファズ・ギター、手作りドラム・キットなどのヴィンテージ・サウンドと戯れている。のちに彼は、そうした要素をトリップ・ホップと融合させている。

– 注目曲「Music To Walk Home By」

Music To Walk Home By

 

26位 : アフロディーテズ・チャイルド『666 (666 ~アフロディーテズ・チャイルドの不思議な世界)』(1972年)

ジェネシスは「Apocalypse In 9/8」という曲をやっていたことで有名だが、アフロディーテズ・チャイルドはありとあらゆる拍子をこの2枚組アルバムで取り入れていた。

後期サイケと初期プログレの架け橋となっている『666』は、まるでLSDをやりながら『黙示録』を読んでいるかような体験を効果的に再現してくれる。アフロディーテズのシンガー、デミス・ルーソスはその後イージー・リスニングのスターになった。またキーボード担当のヴァンゲリスはニューエイジというジャンルの誕生に貢献した。それらの事実自体がサイケデリックといえる。

– 注目曲「The Four Horsemen (4人の騎手)」

Aphrodite's Child – The Four Horsemen (HQ)

 

25位 : ドノヴァン『Sunshine Superman』(1966年)

一部には、ドノヴァンを単なる軽薄な奴だと片付ける人たちもいる (たとえばボブ・ディランも『Dont Look Back』の中でそう語っている)。とはいえ、1960年代にご機嫌な時間を過ごし、無傷のまま生き延びた彼を責めてはいけない。

彼の最もサイケデリックなアルバムである『Sunshine Superman』には、まさしくヘビー級の曲がいくつか収録されている。その例としては、忘れられないシングル曲であり説明不要の名曲「The Trip」があげられる。あるいは、サンフランシスコに捧げる歌「Fat Angel」(曲の中ではジェファーソン・エアプレインに敬意を表している。ジェファーソン・エアプレインは後にこの曲をカヴァーしている) もあるし、たくさんのアーティストたちにカヴァーされた「Season Of The Witch」もある。この「Season Of The Witch」は、やがてヒッピーが金儲けを始めることを予言した曲だった。

– 注目曲「The Trip」

Donovan – The Trip

 

24位 : ブルース・マグース『Psychedelic Lollipop』(1966年)

1966年にリリースされたブルース・マグースのデビュー・アルバムは、2枚目のシングルだけで不朽の名作としての地位を獲得している。そのシングル「(We Ain’t Got) Nothin’ Yet (恋する青春)」は、この時代に出た曲の中でもとりわけ高揚感のある作品のひとつとなっている。

またこのアルバムには、よくカヴァーされる「Tobacco Road」の決定版といえるフリークアウト・ヴァージョンやアシッドな雰囲気の「Love Seems Doomed」も収録されている。そして、この1960年代半ばのサイケデリック・アルバムの中でもベストのひとつと言える作品を録音したとき、彼らがまだ子供のような年齢だったことも忘れてはならない。ヴォーカリストのエミール・チールヘルムは当時まだ16歳だった。

– 注目曲「We Ain’t Got Nothin’Yet」

The Blues MaGoos – We Ain't Got Nothin' Yet

 

23位 : テンプテーションズ『Cloud Nine』(1969年)

『Cloud Nine』は、モータウンの勝利の方程式を変えたアルバムである。当時テンプテーションズは新たなヴォーカリストのデニス・エドワーズを迎え入れ、先見の明のあるソングライター/プロデューサーであるノーマン・ホイットフィールドと組むようになっていた。

このアルバムの約半分はテンプテーションの従来のスタイルで作られているが、それ以外の部分はサイケデリック・ソウルの到来を告げていた。たとえば時事問題を扱ったアルバム・タイトル曲は、デニス・コフィーのワウワウによるイントロが印象的な作品に仕上がっている。また「Runaway Child, Running Wild」は不気味な音作りの大曲で、短く編集されたヴァージョンがヒットになっている。

– 注目曲「Runaway Child, Running Wild」

The Temptations – Runaway Child, Running Wild

 

22位 : ドリーム・シンジケート『The Universe Inside』(2020年)

このサイケデリック・ベスト・アルバムのリストに、2020年リリースの作品を加えることができるのは嬉しいことだ。1980年代のロサンゼルスでは、サイケデリックに影響を受けたペイズリー・アンダーグラウンドというムーブメントが盛り上がり、このドリーム・シンジケートもその一翼を担うことで注目を集めた。そしてスティーブ・ウィンはかなりの知名度を誇るシンガー・ソングライターとなった。

とはいえ後に再結成されたドリーム・シンジケートの3枚目のアルバムは、まったく違う作風になっていた。2枚組のアルバムに収められた全5曲は、ありきたりな曲の構造を捨てて、テクスチャーとグルーブの可能性を追求している。それは、現代になってもまだ新しい領域を発見できることを証明していた。

– 注目曲「The Regulator」

The Regulator

 

21位 : キャラヴァン『In The Land Of Grey And Pink (グレイとピンクの地)』(1971年)

サイケデリック・ロックとプログレは細い線を境にして接しているジャンルだが、キャラヴァンの『In The Land Of Grey And Pink』はその両方を易々とこなしている。

アルバム・タイトル曲や「Golf Girl」に見られる風変わりなヒッピー風のユーモアには、見事なまでに英国的なものが感じられる (「Golf Girl」は、違法なドラッグをお茶に変えるという歌だ)。アルバムB面はストレートなジャズやヘビーなリフを含む完璧な組曲となっており、終盤にはゴージャスな牧歌的メロディも登場する。

– 注目曲「In The Land Of Grey And Pink (グレイとピンクの地)」

In The Land Of Grey & Pink

 

20位 : アイアン・バタフライ『In-A-Gadda-Da-Vida』(1968年)

このアルバムの素晴らしいところは、文字通りLSDでトリップしたバブルガム・ポップだという点にある。アルバムのタイトル曲は、15分間にわたるぶっ飛んだジャムの部分を取り除けば、オハイオ・エクスプレスが録音してもおかしくない目も眩むようなラブ・ソングになる。

そして言うまでもないことだが、15分間のジャムは偉大なサイケデリック・アルバムならではの魅力となっている。『In-A-Gadda-Da-Vida』のタイトル曲はB面全体を占めているが、A面のほうもトリッピーであると同時にキャッチーで、1960年代の素晴らしい知恵を今の人間に伝えてくれる。

Flowers and beads are one thing/But having a girl, that’s something!
花やビーズも大事だけれど/ガールフレンドと付き合うことも忘れちゃいけない!

– 注目曲「In-A-Gadda-Da-Vida」

In-A-Gadda-Da-Vida (2006 Remaster Full-Length)

 

19位 : プリティ・シングス『SF Sorrow』、スモール・フェイセス『Ogden’s Nut Gone Flake』(いずれも1968年)

この2枚のアルバムはどちらも1968年に発売され、どちらもコンセプト・アルバムの最初期の例として数えられている。そしてプリティ・シングスもスモール・フェイセスも、その数カ月前までストレートなR&BをやっていたUKのバンドだった。それゆえこの2枚は一緒に並べる必要があるのだ。ただし、この2枚のアルバムは感情的な面ではそれぞれ正反対の内容になっている。

プリティ・シングスのアルバムは、ひとりの男と彼の抱く孤独感の物語を、哀愁たっぷりに心に響くメロディで綴っている。一方スモール・フェイセスの場合、涙を流している暇などない。彼らのサイケデリックな大作は陽気などんちゃん騒ぎであり、LPの片面全体を占めるおとぎ話、ミュージック・ホール風の爆発的なシングル曲「Lazy Sunday」、そしてメタルの原型と言えそうな「Afterglow」などを収録している。

– 注目曲「Lazy Sunday」

Lazy Sunday (Stereo)

 

18位 : トッド・ラングレン『A Wizard, A True Star (魔法使いは真実のスター)』(1973年)

史上最も大胆で最高のサイケデリック・アルバムのひとつである『A Wizard, A True Star』は、ちょうどトッド・ラングレンがポップ・ソング作りの名匠として名声を確立した頃に発売された。

当時、世間の側が期待していたのはそれまでと同じ路線のポップ・ソングだった。その代わり、彼はこの極彩色のマインド・トリップを提供した。彼がメインストリームのスーパースターになれなかったのは、おそらくそれが理由だったのだろう。

とはいえ、45年経った今でも多くの人が彼を追いかけている理由は、やはりこのアルバムにあるのだろう。

– 注目曲「International Feel (世界的意識)」

International Feel (2015 Remaster)

 

17位 : ムーディー・ブルース『In Search Of The Lost Chord (失われたコードを求めて)』(1968年)

ムーディー・ブルースの名作アルバム7枚はそれぞれが統一されたテーマを持っており、それぞれが異なる仕上がりになっていた。とはいえその中でも、『In Search Of The Lost Chord』は最もサイケデリックな作品だった。

「Ride My See-Saw」をはじめとする巧みに形作られた楽曲群の中で、ムーディー・ブルースは人生の本質を追い求め、選択肢としてLSD、瞑想、ロマンティック・ラブという3つの道を試していた。その後のキャリアを見れば、彼らが第三の道を選んだことは明らかだろう。

– 注目曲「Legend Of A Mind (ティモシー・リアリー)」

Legend Of A Mind

 

16位 : ザ・デュークス・オブ・ストラトスフィア『25 O’Clock』(1985年)

このXTCの覆面バンドが作ったアルバムは、素晴らしい音楽的なおふざけである。1960年代のサイケを知る人なら、このアルバムが隅から隅までマニアの内輪ネタで埋め尽くされていることがわかるはずだ。

XTCの分身であるザ・デュークス・オブ・ストラトスフィアは、最高のサイケデリック・アルバムに愛情とオマージュを捧げるバンドであり、ここに収録されているすべての曲がそれぞれ素晴らしい作品に仕上がっている。ピンク・フロイド風のタイトル曲からムーディー・ブルースにインスパイアされた「Your Gold Dress」まで、サイケの影響はあからさまに見て取れる。こうした作風は、XTCがこの次に制作したオフィシャル・アルバム『Skylarking』にも受け継がれている。

– 注目曲「Your Gold Dress」

Your Gold Dress – Dukes of Stratosphear – Sick Audio

 

15位 : ハスカー・ドゥ『Zen Arcade』(1984年)

サイケデリアは1980年代のアンダーグラウンド・ロックで取り入れられた数多くのスタイルのひとつであり、『Zen Arcade』が周囲に及ぼした影響は非常に大きいものだった。

ハスカー・ドゥのハードコアな激しさはここでも健在だが、彼らはテープ・ループや繰り返し登場する曲の断片、壮大なエンディング・ジャムなども使うことで、家を出たばかりの若者の万華鏡のような体験を巧みに表現している。

– 注目曲「Something I Learned Today」

Something I Learned Today

 

14位 : ドクター・ジョン『Gris-Gris』(1968年)

この傑作デビュー・アルバムで、ドクター・ジョンはサイケデリアのスピリチュアルなイメージとニューオーリンズのブードゥー教がさほどかけ離れたものではないことに気づいた。ニューオーリンズの優秀なスタジオ・ミュージシャンたちと協力することで、彼はこれまで聞いたことのないような不気味でファンキーなサウンドを生み出し、それに合わせて記憶に残るキャラクターを作り上げたのである。

もしこのアルバムの収録曲「I Walk On Gilded Splinters」がサイケでないとしたら、何をサイケと呼べばいいのかわからなくなるだろう。ちなみにこのアルバムの制作費は、ドクター・ジョンと彼のアレンジャーがソニー&シェールのセッションで稼いだ金から支出されていた。

– 注目曲「I Walk On Gilded Splinters」

I Walk on Guilded Splinters

 

13位 : プリンス&ザ・レヴォリューション『Around The World In A Day』(1985年)

『Around The World In A Day』は名盤『Purple Rain』の次に発表されたアルバムだが、当時はこういうアルバムがリリースされるとは誰も予想だにしていなかった。プリンスは、ウェンディ&リサの助けを借りて、自らの音楽の定型と意識の両方を大きく拡張した (プリンスにビートルズのレコードを初めて聞かせたのはどうやらウェンディ&リサだったようだ)。

収録曲「Raspberry Beret」は1960年代のサイケデリアを新たな世代に紹介したが、このアルバムは全体が太陽と花で埋め尽くされていたわけではなかった。「Condition Of The Heart」はプリンスの最も素敵なバラードかもしれない。一方「Temptation」は、神との緊迫した出会いを表現している。

– 注目曲「Paisley Park」

Paisley Park

 

12位 : ゾンビーズ『Odessey & Oracle』(1968年)

あるアルバムが正しく評価されるまでに半世紀を要するような場合、そのアルバムはつまるところ不朽の名作ということになる。とはいえゾンビーズの場合、1968年にいきなり時代の流れに乗った。そしてもともとのルーツであるR&Bから進化を遂げ、不朽の平和と愛のアンセムである「Time Of The Season」を作り上げた。

これはアルバム『Odessey & Oracle』から生まれた唯一のヒットとなった。ただし、このアルバムはほかの曲もすべてが見事なまでの独創性にあふれていることもあってか、それが多くの人に理解されるまでには数十年が必要だった。1960年代のほかのバンドに比べて、ゾンビーズが薬物に手を出さないクリーンなグループだったことは周知の事実だ。しかしこのアルバムは、夢見心地な幻想的な雰囲気が非常に強くなっている。

– 注目曲「Time Of The Season (ふたりのシーズン)」

Time of the Season

 

11位 : カントリー・ジョー&ザ・フィッシュ『Electric Music For The Mind And Body』(1967年)

1967年初頭にリリースされたカントリー・ジョー&ザ・フィッシュのデビュー・アルバムは、あらゆる可能性を追求していた。たとえば浮かれたジャム演奏、詩的なバラード、フリーフォームのラーガ(インドの古典音楽)、さらには政治的な風刺といった具合。

ジョー・マクドナルドは基本的にはソングライターだったので、このアルバムは全体がメロディがはっきりした親しみやすい作風になっている。アルバムを締めくくる「Grace」は、グレース・スリックに敬意を表したロマンチックな叙事詩である (次のアルバムではジャニス・ジョプリンについて同じようなトリビュート曲が作られている)。

– 注目曲「Flying High」

Country Joe and the Fish – Flying High from Electric Music For The Mind and Body

 

10位 : モンキーズ『Head』(1968年)

モンキーズ (またはキャロル・キング) がサイケデリックだと思わない人は、きっと「Porpoise Song」を聴いたことがない人なのだろう。キャロル・キングと当時の彼女の夫ジェリー・ゴフィンによるこの曲は、モンキーズ の映画のサウンドトラック・アルバム『Head』に収録されている曲で、リスナーを催眠術にかけるような雰囲気にあふれている。しかしこの曲はモンキーズの若いファンには敷居が高すぎたようで、彼らのシングルとしては初めて不発に終わった。

このアルバムのほかの曲に目を向けると、「Circle Sky」ではマイク・ネスミスがご機嫌なグルーヴを披露していた。一方ピーター・トークは輪廻転生をテーマにしたファズ・トーンのロック曲を提供している。そうしたすべてが、アルバムの中ではシュールな音声によって繋ぎ合わせていた。このアルバムが最高にぶっ飛んでいると思う人は、映画そのものを見るとさらに驚かされることだろう。

– 注目曲「Porpoise Song」

Porpoise Song (Theme from "Head")

 

9位 : 13th・フロア・エレベーターズ『The Psychedelic Sounds Of The 13th Floor Elevators』(1966年)

フロントマンのロキー・エリクソンのキャリアの中では、このアルバムは比較的ストレートなロックンロール・アルバムとして位置づけられている。オープニングの「You’re Gonna Miss Me」は、パンクの金字塔としか言いようがない曲だった。とはいえ、ある意味では、これはローリング・ストーンズが作るべきだった偉大なサイケデリック・アルバムである。

13th・フロア・エレベーターズは、生々しいブルース・ロックと幻覚剤が呼び起こすイメージを結びつけ、そこにいつも通りこの世のものとは思われないエリクソンの叫び声を加えている。

– 注目曲「You’re Gonna Miss Me」

You're Gonna Miss Me

 

8位 : ドアーズ『The Doors (ハートに火をつけて)』(1967年)

このアルバムがリリースされた1967年の第1週は、ロックの未来にあらゆる可能性が開けているように思われていた。そんな状況の中では、ディオニソス的なビート詩人を前面に出したジャズ志向のバンドも決して場違いではなかった。

ドアーズのデビュー作は驚くほど多様性に富んでおり、ウィリー・ディクソンとベルトルト・ブレヒトの両方の曲がカヴァーされていた。A面は性的なイメージを発散する「Light My Fire (ハートに火をつけて)」で締めくくられ、B面は黙示録的な「The End」で終わる。とはいえ、このアルバムが史上最高のサイケデリック・アルバムのひとつになったのは、ここに含まれるすべての音が超越的な雰囲気にあふれていたせいだった。

– 注目曲「The End」

The End (Mono) (2017 Remaster)

 

7位 : ジェファーソン・エアプレイン『After Bathing At Baxter’s』(1967年)

ジェファーソン・エアプレインのディスコグラフィの中で最もサイケデリックなアルバムは、“サマー・オブ・ラブ”の前に作られた『Surrealistic Pillow』だという人もいる。しかし今回のリストでは、こちらのアルバムを選んだ。

ポール・カントナーがのちに説明していたように、アルバム・タイトルにある「バクスターズで入浴する」というフレーズは「LSDを摂取する」ことを指すバンド仲間での隠語だった。このアルバムではそちらの方面からの影響がはっきりと表れている(ジェファーソン・エアプレインのその後のアルバムは歌を重視するようになり、サイケ色が薄れている)。

グレース・スリックは、自由連想風のキャバレー・ソングを2曲提供。一方ヨーマ・コーコネンとジャック・キャシディは、その後に結成するホット・ツナの活動の下地を作っている。そしてカントナーの「The Ballad Of You And Me And Pooneil」は、これまでに書かれたアシッド・ソングの中でも最高に素晴らしい作品のひとつである。

– 注目曲「The Ballad of You And Me And Pooneil」

The Ballad of You & Me & Pooneil

 

6位 : グレイトフル・デッド『Aoxomoxoa』(1969年)

『Anthem of the Sun (太陽の賛歌)』はグレイトフル・デッドの最高傑作のひとつとしてよく取り上げられるが、デッドのスタジオ・アルバムの中で最もサイケデリックな作品といえば『Aoxomoxoa』ということになろう。

8分間の「What’s Become of The Baby」は、実質的に彼らにとってのザ・ビートルズの「Revolution #9」だった。注目すべきことに、ジェリー・ガルシアの声にフェーズ処理が施された「China Cat Sunflower」は、ライヴ・ヴァージョンにはない神秘的な雰囲気を漂わせている。さらにこのアルバムには、初期デッドにあったガレージ・ロックの要素 (「Doin’ That Rag」) もかすかに残っている。一方「St Stephen」は、その後の彼らがアメリカーナの方向に進んでいくことを示す曲だった。

– 注目曲「What’s Become Of The Baby」

What's Become of the Baby (2013 Remaster)

 

5位 : ガル・コスタ『Gal』(1969年)

ブラジルのトロピカリア・ムーブメントは、サイケデリアであると同時に政治的な主張でもあった。これは、抑圧的な政府に対抗して作られた過激な音楽だった。同時にこれは、純粋な音楽面で見てもスリリングなムーブメントであり、トム・ゼー、オス・ムタンチス、カエターノ・ヴェローゾなどの画期的な作品が生み出された。

ガル・コスタが1969年に発表したこのアルバムは、それらの中でも最も過激で美しいものだった。当時既に驚異的なヴォーカルで知られていたコスタは、このアルバムで見事なまでにフリーキーなスタジオ・バンドとコラボレーションしている。ヴェローゾの「Cinema Olympia」はもともとは映画のことを歌った素敵な曲だったが、このアルバムでの演奏は実に驚くべき仕上がりになっている。

– 注目曲「Cinema Olympia」

Cinema Olympia

 

4位 : ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス『Electric Ladyland』(1968年)

ジミ・ヘンドリックスはその存在自体がサイケデリックであり、2枚組の大作アルバム『Electric Ladyland』は、ほかのどのレコードよりも彼の頭の中を (そして体のほかの部分を) 表現していた。このアルバムでのブルース曲は壮大で、ロック曲は激烈。そして脱線気味の曲は未知の領域に挑戦している。

「Voodoo Child (Slight Return)」を聞けば、ブルースというジャンルの歌詞のイメージがもともとサイケデリックなものだったことがよくわかる。

– 注目曲「Voodoo Child (Slight Return)」

Voodoo Child (Slight Return)

 

3位 : スピリット『Twelve Dreams Of Dr. Sardonicus』(1970年)

1970年11月に発売された『Twelve Dreams Of Dr. Sardonicus』は、オリジナル・サイケデリック時代の最後を飾る傑作である。歌詞の面では、このアルバムは当時の人間が主張しようとしていたことをすべて集約したような内容になっている。

「Nature’s Way」や「Nothing To Hide」といった曲は真っ当な世界を鼻で笑っていた。一方「Love Has Found A Way」や「Life Has Just Begun」は、心の準備ができていれば、実にさまざまな可能性が開けてくるということを示した曲だった。

音楽的な面では、このアルバムは果てしなく独創的な内容になっていた。スピリットならではのジャズ、ポップス、ヘビーロックの要素が、ここではアストラル界の同じ平面上に並べられている。この作品はある時代の瞬間を結晶化したものだったが、それにもかかわらず、少しも古さを感じさせない。

– 注目曲「Life Has Just Begun」

Life Has Just Begun – Spirit

 

2位 : ザ・ビートルズ『Magical Mystery Tour』(1967年)

音楽界を一変させたのは『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』だったのかもしれないが、世界をサイケデリックにした作品があるとすれば、それは1967年2月にリリースされたシングル「Strawberry Fields Forever」だろう。ごく簡単に言えば、それまでのAMラジオでは、このような曲が放送されたことがなかったのだ。

同じ年のクリスマスにアルバム『Magical Mystery Tour』が発売された頃には、このシングルは既に名曲となっていた(『Magical Mystery Tour』はアメリカではアルバムとして発売されたが、イギリスでは当時シングルで発表済みの曲を除いた2枚組EPとして発売された)。

「I Am the Walrus」や「Fool On The Hill」といった曲は、ザ・ビートルズがまだ冒険を続けていることを示していた。

– 注目曲「Strawberry Fields Forever」

Strawberry Fields Forever (Remastered 2009)

 

1位 : ラヴ『Forever Changes』(1967年)

この傑作アルバムは、今回挙げたベスト・サイケデリック・アルバムの中でも特に優れた作品である。ここには、スタジオで処理した効果音も、フリーフォームのジャムも、エレクトリック・ギターさえも、ほとんど存在しない。ここで聞けるサイケデリックな要素は、すべてラヴの中心人物アーサー・リーの心から生まれたものだ。

彼の歌詞は常にこの世のものとは思われない内容になっており、うまく説明することはできない。けれどもそのメロディーは、忘れられない非常に印象的なものになっている。「You Set The Scene」は、今でもロックの歴史に残る偉大な実存的宣言のひとつとして位置づけられている。

– 注目曲「You Set The Scene」

You Set the Scene (2015 Remaster)

Written By Brett Milano




 

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