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ザ・ライフ・オブ・テイラー・スウィフト:新作『The Life of a Showgirl』発売までの軌跡

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テイラー・スウィフト(Taylor Swift)がニュー・アルバム『The Life of a Showgirl』を2025年10月3日にリリースした。

2024年の『The Tortured Poet’s Department』に続く、テイラーにとって12作目のスタジオ・アルバムの発売を記念して、彼女のこれまでの軌跡をライターのセメントTHINGさんにまとめていただきました。

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世界で最も有名なアーティストといえば?その答えは人によって異なるだろう。しかし、その候補者リストにテイラー・スウィフトの名前が含まれるのはまず間違いない。

21世紀に名声を得たアーティストのなかで、テイラーは疑いようもなく最も巨大な存在だ。アメリカ最大の音楽賞、グラミー賞には58回ノミネートされ、14回受賞。そのうち年間最優秀アルバム賞は4回受賞しており、これは史上最多記録となる。

テイラーはどのようにしてここまで有名になったのか?彼女の劇的な人生を追いながら、その謎に迫っていきたい。

 

0歳:ペンシルベニア州ウエスト・レディングで生まれる

1989年12月13日に誕生。両親とも金融畑出身で、ビジネスと縁の深い家庭だった。「テイラー」というユニセックスな名前にしたのは、娘が仕事で性差別を受けないように……との母の配慮だったそう。音楽的影響はオペラ歌手の祖母から。

 

11歳:レーベルにデモ音源を提出するが反応はほぼなし

フェイス・ヒルのドキュメンタリーに衝撃を受け、両親に頼んでカントリーの聖地ナッシュビルへ。有名カントリー曲のカラオケカバー音源を様々なレーベルを巡り提出。契約は得られなかったが、その後もナッシュビルに通うように。レーベルにカントリーのリスナーとして想定されていない同年代のティーン女性に向け曲を書きはじめる。

 

13歳:初の大手レーベルとの契約、そして決別

13歳でテイラーは大手レーベルと養成契約を結ぶ。だが“今”の自分を曲で表現し、同世代からの支持を得たいと願うテイラーにとって、デビューを先延ばしにする契約は理想的なものではなかった。最終的には15歳でレーベルを離れる。

 

16歳:念願のデビュー!シングル「Tim McGraw」を発表、大ヒット

後ろ盾を失い、自身で企画した自作曲ショーケースを開催。そこでスコット・ボーチェッタと出会う。彼の新会社「ビッグ・マシン・レコード(以下BMR)」とテイラーは契約を決める。テイラーの父が資本金を一部出資までした

2006年6月デビュー・シングル「Tim McGraw」リリース。高校時代の年上の彼氏との共通の思い出である、有名カントリー歌手の名前がタイトル。半自伝的な内容をユニークな語り口で曲にするテイラーの作風はこの時点で固まっていた。

Taylor Swift – Tim McGraw

テイラーはラジオ局に送るサンプルCDの梱包作業を行い、カントリー歌手として異例のMySpaceを使ったオンラインマーケティングも積極的に行った。

「Tim McGraw」はホット・カントリー・ソングで6位まで上昇。デビュー・アルバム『テイラー・スウィフト』をリリース。全米チャートTOP200に157週間ランクインするロングヒットに。

 

18歳:『Fearless』発売、前作を上回る成功

シングル「Love Story」「You Belong With Me」が、カントリーのみならずポップチャートでもヒット。2ndアルバム『Fearless』はアメリカで700万枚以上売るメガヒットに。またジョー・ジョナスとの恋愛をアルバム曲「Forever & Always」に反映したとトークショーで語り話題を集める。

Taylor Swift – Love Story

 

19歳:VMAカニエ乱入、初のグラミー最優秀アルバム賞、乱高下の激しい一年

MTVのVideo Music Awards 2009で『You Belong With Me』が最優秀女性ビデオ賞を受賞したが、受賞スピーチ中にカニエ・ウェスト(現:イェ)が乱入。マイクを奪い自身の主張を展開する事件が発生。その後の二人の関係にしこりを残す。

同年グラミーで最優秀アルバム賞を受賞し、同部門の史上最年少受賞者へ。テイラーを巡る報道が爆発的に増える。

 

20歳:『Speak Now』リリース

全曲一人で作詞作曲した3rdアルバム『Speak Now』発売。彼女の能力を疑問視する人々への意趣返しだった。シングル「Mean」は意地悪な相手へのアンサー。

Taylor Swift – Mean

またこの頃テイラーはギタリストのジョン・メイヤーと破局しており、その経験が反映されたとみられる曲も収録されている(「Dear John」「The Story of Us」)。

 

22歳:『Red』、ポップ路線移行への過渡期

4thアルバム『Red』リリース。リード曲「We Are Never Ever Getting Back Together」のプロデュースはポップ畑のマックス・マーティン&シェルバック。それまでの曲と一線を画すダンサブルなサウンドで大成功。

今作はカントリー路線からポップ路線への過渡期的内容。カントリーで培った情感豊かな作曲法が、キャッチーなサウンドと溶け合った、2010年代を代表する一作に。

Taylor Swift – We Are Never Ever Getting Back Together

 

24歳:『1989』、ポップに振り切る

マスからの支持を得たテイラーはポップアルバムを出すと宣言。マックス・マーティンと二人三脚で作り上げた5thアルバム『1989』でポップに振り切る。

Taylor Swift – Shake It Off

雑音に惑わされず自由に生きようと歌う「Shake It Of」は、当時の姿勢を象徴。ジェイク・ギレンホールやハリー・スタイルズとの交際報道で「恋多き女」とレッテルを貼られれば、「Blank Space」のMVでそのパロディを演じ話題に。加熱する報道を逆手にとって自分のストーリーの主導権を奪い返す方法論を確立した。ポップスターとしての黄金期へ突入。

Taylor Swift – Blank Space

 

26歳:カニエとの確執再燃、世間からのバッシング、そして沈黙

カニエが自曲「Famous」で「俺とテイラーは(あんなことがあったが)それでもセックスするかもしれない/なぜか?俺があのビッチを有名にしたからだ」とラップ。テイラーは《ビッチ》という表現に同意していないと批判。カニエは事前に同意したはずと反論。カニエの妻(当時)キム・カーダシアンが、テイラーとカニエが「Famous」の歌詞について話す電話の様子を公開し、世論は一気にテイラー批判へ傾く。

映像は部分切り取りで、テイラーは問題の箇所には同意していなかったと後に明らかになった。だが当時のテイラーは炎上し、嘘つきを意味する「ヘビ」の絵文字がSNSへ殺到。彼女は公の場から姿を消し、ほぼ1年間沈黙。

 

27歳:劇的なカムバック、そして『Reputation』

2017年8月、テイラーはSNS投稿を全消去。その後謎めいた「ヘビ」の動画をアップして、新曲「Look What You Made Me Do」でカムバック。自分に向けられた悪評を自ら演じるMVを公開した。

Taylor Swift – Look What You Made Me Do

11月、6thアルバム『Reputation』リリース。“評判“に引き裂かれる自分自身を主題にした異色作で、トラップやダブステップから影響を受けたダークなサウンドと、生々しい感情表現が融合した一枚となった。

テイラーはその実力を改めて証明し、アルバムのツアーも成功させた。しかし、グラミー賞では一部門にノミネートされただけで受賞なしという、それまでと比べて段違いの冷遇を受けてしまう。2020年のNetflixドキュメンタリー『ミス・アメリカーナ』には、ショックを受けて泣いて悔しがる当時のテイラーの姿が収められている。

『ミス・アメリカーナ』予告編 – Netflix

 

29歳:『Lover』、政治的発言の解禁、原盤権を巡る争い

テイラーはBMRとの契約終了後リパブリックレコードへ移籍。直後、ジャスティン・ビーバーなどの音楽マネージャー、スクーター・ブラウンの会社イサカ・ホールディングスがBMRを買収。テイラーの過去作の原盤権はイサカが所有することに(後に投資ファンドのシャムロック・キャピタルへ再売却)。

これをテイラーは激しく批判。原盤権を買い戻すチャンスがなかったこと、以前カニエを担当していたスクーターに売ったことを理由にあげ、「最悪のシナリオ」と発言。その後テイラーは過去のアルバムを全て再レコーディングすると表明。自身が原盤権を所有できる新録版によって作品を完全に所有し、同時に旧版の影響力を削ぐ目的。

8月23日、7thアルバム『Lover』リリース。「愛」にまつわる多様な感情を、シンセ・ポップ基調に掘り下げた。アルバム曲「Cruel Summer」は後のツアーで人気を得て代表曲に。

【和訳】テイラー・スウィフト – クルーエル・サマー / Taylor Swift – Cruel Summer

また、この時期からテイラーは自身が直面した性差別の経験なども踏まえ、政治的発言を解禁。民主党支持を表明し、収録曲でもLGBTQ+コミュニティ支持などを訴える。

Taylor Swift – You Need To Calm Down

 

30歳:『folklore』、そして『evermore』

『Lover』のツアーをコロナ禍でキャンセル。隔離生活中、空想の世界に浸るように。そこから発展し、自身の経験のみに基づかない、純粋な物語を語る新作制作を決意。

2020年7月、8thアルバム『folklore』をサプライズリリース。ザ・ナショナルのアーロン・デスナーと組み、フォークやインディーロックの要素の色濃い繊細で内省的なサウンドで、新境地を拓く意欲作に。姉妹作『evermore』とともにパンデミック期の精神を体現したアートとして絶賛される。

今作でテイラーの音楽的評価は完全に復活し、見事3度目のグラミー最優秀アルバム賞を受賞。結果として騒動前以上の高評価を各方面から集め、アーティストとしての評価を再び揺るぎないものとした。

[和訳] Taylor Swift – cardigan / テイラー・スウィフト – カーディガン [公式]

 

31歳:「Taylor’s Version」リリース開始

初の旧作再録版『Fearless (Taylor’s Version)』を、未公開曲を追加しリリース。2023年の『1989』再録版まで、現時点で4枚発表済み。『Red』再録版の「All Too Well」10分版は大反響を呼び、全米1位となった最長の曲に。

【和訳】Taylor Swift – All Too Well: The Short Film / テイラー・スウィフト – オール・トゥー・ウェル; ショート・フィルム

 

32歳:『Midnights』

新作『Midnights』発表。テイラーの実体験を取り入れ、サウンドもポップになるなど、コロナ禍前の作風に回帰。「Anti-Hero」を筆頭に、全米シングルチャートTOP10が全てテイラーの曲になる大ヒット。またこのアルバムで史上最多となる4度目のグラミー最優秀アルバム賞を受賞する。

【和訳】 テイラー・スウィフト – Anti-Hero / アンチ・ヒーロー

 

33歳:『The Eras Tour』

過去のすべてのアルバムから曲を披露する世界ツアー「The Eras Tour」を開始。3時間半の公演時間を通し、40曲以上のヒット曲をノンストップで歌い上げるという、現時点でのキャリアの総決算ともいえる豪華な内容となった。長丁場でも完璧なパフォーマンスを届けるため、テイラーはツアーの半年前からハードなトレーニングを行い、最高のコンディションを維持するための努力を重ねた。

その甲斐あって「The Eras Tour」は最終的に約3,100億円という史上最高の興行収入を記録、来日公演は341億円の経済効果を生んだ。テイラーはツアーの成功で音楽のみでビリオネア(資産10億ドル以上の大富豪)になった初のミュージシャンとなり、「スウィフトノミクス(テイラー・スウィフト経済圏)」という言葉も生まれた。

TAYLOR SWIFT | THE ERAS TOUR Concert Film Official Trailer

 

35歳:原盤権を取り戻す、婚約、そして『The End of Showgirl』へ

シャムロックとの交渉がまとまり、なんと原盤権の買い戻しに成功。以前から付き合っていた彼氏、トラビス・ケルシーとの婚約も決まり、ファンに喜びの報告を行った。

新作『The End of Showgirl』を10月3日にリリース。

Written By セメントTHING


テイラー・スウィフト『The Life of a Showgirl』
2025年10月3日発売(フィジカルは10月4日)
CD&LP / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music



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