ヴァーヴ・レコード : サウンド・オブ・アメリカ「アメリカのジャズは、ヴァーヴでみつけられる」

9月 12, 2017


ヴァーヴ・レコード : サウンド・オブ・アメリカ「アメリカのジャズは、ヴァーヴでみつけられる」

ヴァーヴ・レコードほど世にジャズ作品を提供したレコード・レーベルは他に存在しない。チャーリー・パーカービリー・ホリデイなどが所属していたクレフ・レコ―ドやノーグラン・レコードから始まり、後にヴァーヴが誕生した。当初エラ・フィッツジェラルドのために1956年に設立された。それはLPの時代が始まろうとしていた頃で、ヴァーヴはその後オスカー・ピーターソンルイ・アームストロングカウント・ベイシー、そして他にも大勢のミュージシャンたちの傑作をリリースすることになる。1960年初期にはスタン・ゲッツの甘美なサックスによりボサ・ノヴァへの人気に火がつき、ヴァーヴはピアニストのビル・エヴァンスとの素晴らしいレコードを発売した。1960年代が進むにつれて、ヴァーヴも共に発展していき、威勢のいいハモンド・オルガン演奏者ジミー・スミスと天才ギタリストのウェス・モンゴメリーと契約を結んだ。さらに近年になると、ダイアナ・クラールがジャズの可能性を全く新しい世代へと紹介し、ハービー・ハンコックはグラミー賞の最優秀アルバム賞を受賞した2作品目となるジャズ・アルバムを発売した。もちろん2枚の内のもう1枚もヴァーヴから発売された作品である。

ジャズはアメリカが生んだ真のオリジナル芸術形式の一つだ。1960年代中にヴァーヴから発売されたLPの中には必ず“アメリカのジャズは、ヴァーヴでみつけられる”と記載されていた。つまり、ヴァーヴから発売されるすべてのアルバムには“アメリカのサウンド”が含まれていたことになる。

「ジャズは、その瞬間に存在するクリエイティヴィティの可能性を掻き立てる。ジャズは人間性や感情である。エンターテインメントだけではない。ジャズは癒やしなんだ」—ハービー・ハンコック

Verve Records

1955年が終わりを迎えようとしていた頃、ノーマン・グランツはヴァーヴ・レコードを設立することを決めた。しかもそれはエラ・フィッツジェラルドの為だった。すでに彼女のキャリアをマネージメントしていたノーマン・グランツは、彼女に相応しい作品をどうやって作るべきかを把握していた。そして歴史がそれを証明する。2013年に発売された10枚CDのボックス・セット『The Voice of Jazz』は、エラ・フィッツジェラルドの存在の大きさを証明している。

しかし、ヴァーヴの物語はそれよりも10年以上も前へとさかのぼる。そこにはジャズの場をクラブからコンサート会場へと移し、長いこと経営してきたクレフやノーグランを成長させるというノーマン・グランツの野心の原点があった。

ヴァーヴ・レコードの歴史は、25歳のノーマン・グランツが1944年にロサンゼルスにて初の“Jazz at the Philharmonic”(JATP)のコンサートを開いた時に始まった。最初からグランツは、ジャズの場を煙たくて時には怪しいクラブから、ニューヨークのカーネギー・ホールのような立派で名誉ある会場へと移したいというヴィジョンを抱いていた。彼が開催したコンサートに登場した一流ミュージシャンの中には、チャーリー・パーカーやビリー・ホリデイがいる。バードという愛称で呼ばれていたチャーリー・パーカーは、『Charlie Parker With Strings』に収録されている楽曲をステージで演奏するのにストリングスを招いてのコンサートも行い、それを録音したものが近年レコード盤としてリイシューされた。

ビリー・ホリデイのJazz at the Philharmonicコンサートもレコーディングされ(『Billie Holiday at Jazz at the Philharmonic』)、その他にも『Lady Sings The Blues』発売直後にカーネギー・ホールにて行われたコンサートもレコーディングされた。LPからの殆どの曲を歌い、その他にも自伝を読み上げている。チケットが完売となったコンサートでは、その声に限界があったにも関わらず、ビリー・ホリデイは素晴らしいパフォーマンスを披露し、『The Essential Billie Holiday』として発売された。それは彼女の最後のレコーディングとなった。3年以内に彼女は他界してしまう。

Verve Records

拡大していくファンにジャズを紹介したノーマン・グランツは、他にもある使命感を抱いていた。ユダヤ系の彼は人種差別を無くそうと闘い、それは、彼のキャリアとプライヴェートに影響を及ばした。そして彼はミュージシャンたちにかけるお金を惜しまなかった。「ノーマンと旅をする時は必ずファースト・クラスで、一流のホテルに泊まり、人種によって席を分けるような会場では決してコンサートをしなかった」とトランペット奏者のディジー・ガレスピーは言った。

ノーマン・グランツは明確なヴィジョンを持った人で、1947年にこう話している。「Jazz at the Philharmonicは、後にジャズが沿うことになる流行が象徴されていた。それは、とろんとした目の17人のジャズ・ファン(おしゃれで誰をもジャックと呼ぶような観客)がいる小さな薄暗いお決まりのナイト・クラブではなくて、数千人の喜んでいる観客が集まるコンサート会場である。観客たちの音楽に対する基準を高め、それまで“アート”として扱われてきたジャズにちゃんとした定義と名声を与えた」Jazz at the Philharmonicのツアー範囲が広がると同時に、ノーマン・グランツは現代のツアーの枠組みを発展させ、ジャズからロックまで様々なジャンルのアーティストたちが今日もそのやり方を真似している。

ノーマン・グランツがそもそもレコード会社を設立したのはJazz at the Philharmonicを拡大するためであったが、彼のコンサートに出演したアーティストたちはすぐにそれはスタジオ・アルバムを作る機会へと繋がることに気付いた。1940年代後半から1950年代初期には、チャーリー・パーカー、ビリー・ホリデイ、ディジー・ガレスピー、レスター・ヤング、カウント・ベイシー、そしてスタン・ゲッツなどのアーティストたちの作品をノーマン・グランツはクレフ・レコ―ドやノーグラン・レコードの2つのレーベルから発売した。

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ヴァーヴ設立直後にノーマン・グランツはクレフとノーグランを新レーベルの傘下に入れ、お陰で設立間もないレーベルに数々のアーティストと作品を所属させることになり、ジャズの黄金時代からの最高のアーティストと作品の殆どを発売することになった。新しいアーティストもヴァーヴと契約を結び、レーベルが拡大し更なる成功を手に入れると、多くの音楽ファンたちがジャズに興味を抱くようになった 。1956年の『The Cole Porter Songbook』を始めとするエラ・フィッツジェラルドのグレイト・アメリカン・ソングブックは、初期の功績の数々を代表する作品となった。エラ・フィッツジェラルドがルイ・アームストロングと行ったデュエットは珍しい組み合わせとなり、素晴らしい作品が完成した。“サッチモ”の愛称で知られるルイ・アームストロングとオスカー・ピーターソンとの作品も同様に非凡のミュージシャン2人を組み合わせることによって、スタジオにて魔法を生み出した。圧倒的なスタンダード曲を聴きたいのであれば、『Louis Armstrong Meets Oscar Peterson』を聴けば彼らが 20世紀最高のジャズ・ミュージシャンであることを確信できるだろう。

カナダ人ピアニストのオスカー・ピーターソンはヴァーヴ・レコードから最もレコードを数多くリリースしたアーティストとなっている。レーベルに所属する最高のミュージシャンたちの伴奏、そしてパートナーを務めた作品は非常に素晴らしく、『Ben Webster Meets Oscar Peterson』を聴けば納得するだろう。しかしオスカー・ピーターソンは、トリオやカルテットのリーダーとしての才能を発揮している時が一番輝いている。彼のグレイト・アメリカン・ソングブックの作品『The Jazz Soul of Oscar Peterson』や『Oscar Peterson At the Concertgebouw』はその証しである。

設立して間もない頃、クレフ・レコードから最も熟達した2人のジャズ・ピアニスト、アート・テイタムとバド・パウエルの作品が発売され、そして1962年にヴァーヴからビル・エヴァンスが『Empathy』でデビューを果たした。それから彼は『Conversations With Myself』からあの素晴らしい『Bill Evans With Symphony Orchestra』まで、多様でクリエイティブな作品を幾つもリリースした。

カウント・ベイシーも同様にジャズ界を代表する最高のミュージシャンたちとのコレボレーション演奏を行い、その中にはエラ・フィッツジェラルドとフランク・シナトラがいる。しかし彼がそれを成し遂げられたのは、1930年代からずっと最高のバンドのリードを務めてきたからである。ベテランであるカウント・ベイシーはカウント・ベイシー&ヒズ・オーケストラとして幾つもの洗練された作品を制作し、その最初の作品はクレフから発売された。しかし、ヴァーヴからの初のリリースとなった『April in Paris』を聴けば、ビッグ・バンドこそ最も興奮する音楽体験であることを思い知らされるだろう。

Verve Records

1960年にノーマン・グランツはヴァーヴをMGMレコードに売り、すぐにクリード・テイラーがその代表を務め、新しい方向へとレーベルを導いた。スタン・ゲッツとチャーリー・バード、ジョアン・ジルベルトと妻のアストラッドなどが代表する南米発のボサ・ノヴァ・ジャズへの人気が大きな貢献をもたらした。ジャズはカッコイイだけではなく、かつてないほどにチャートに登場するようになり人気を得るようになったのだ。「The Girl From Ipanema(邦題:イパネマの娘)」を含むゲッツ/ジルベルト(ジョアン)のアルバムは1965年にグラミー賞にて最優秀アルバム賞を受賞した。

ヴァーヴは新しいアーティストたちと契約を結び、その中にはジミー・スミスやウェス・モンゴメリーもおり、彼らも新たにジャズのファンを増やした。ジミー・スミスはブルーノート・レコードから幾つもの素晴らしいアルバムを発売していたが、ヴァーヴから初めてリリースすることによりそのキャリアの頂点に達した。革新的でクリエイティブな作品として、ラロ・シフリンの複雑なアレンジによって価値が高められた『The Cat』(1964年)、オリバー・ネルソンのアレンジでレコーディングされた1962年の『Bashin’ The Unpredictable Jimmy Smith』が挙げられる。後者ではビッグ・バンドがハモンドと組み合わせられているが、ジミー・スミスの力強いオルガンに影を投げ掛けることは決してない。

ジミー・スミスはウェス・モンゴメリーと共に『The Dynamic Duo』などの素晴らしい作品を作り、クリード・テイラーはレーベル所属の最高のミュージシャンたち二人を組み合わせて作品を作るというノーマン・グランツのアイディアを引き継いだ。しかし、彼らギタリストのソロ・アルバムの方が評判を築いた。ウェス・モンゴメリーは1964年にヴァーヴからデビューし、翌年には『Bumpin’』が発売された。ウェス・モンゴメリーのギターがまるで12弦あるかのように聞かせる彼の才能を体験したいのなら、この作品から始めるのが良いだろう。

Verve Records

ヴァーヴ・レーベルは変わらずに高度な技術のあるミュージシャンたちを重要視してきた。そしてその中でもダイアナ・クラールは現代のジャズ界で最も才能あるミュージシャンの一人として存在する。フランク・シナトラはタイミングのセンスと曲の中に入り込む才能があると人々は言う。ダイアナ・クラールはフランク・シナトラと同じ土俵に立つことのできるミュージシャンである。彼女は深く掘り下げ、誰も真似できない方法で曲の物語を伝える。2001年の『The Look of Love』は全米アルバム・チャートで9位にランクインされ、ダイアナ・クラールの最も売れた作品となった。ダイアナ・クラールの卓越したヴォーカル、繊細で気だるいクラウス・オガーマンのアレンジに合わせた完璧なピアノの伴奏、そしてトミー・リピューマの精妙なプロダクションは気品に溢れ、初期の素晴らしいヴァーヴ・レコード作品の伝統を受け継いでいる。

真の伝説的人物であるハービー・ハンコックはやっと1994年にヴァーヴから作品を発売し、2007年にアルバム『River: The Joni Letters』がグラミー賞にて最優秀アルバム賞を受賞し、最高傑作となった。これは、「あまりジャズには興味がない」という人にぜひ聴いて欲しい作品だ。

2011年にプレジデントに就任し、ロッド・スチュアートメアリー・J.ブライジのクリスマス・アルバムや『We Love Disney』といったプロジェクトをヒットさせたデイヴィッド・フォスターを経て、現在トニー・ベネットの息子であるダニー・ベネット率いるヴァーヴ・レコードは、ダイアナ・クラール、バリー・マニロウ、そしてスモーキー・ロビンソンなどのアーティストの質の高い新しい作品を作り続けている。ノーマン・グランツがジャズの場をクラブからコンサート会場へと移すことを決意した70年後、彼が始めたミュージック革命が今でも栄え続けている。1944年7月2日に初めて行われたJazz at the Philharmonicのコンサートには、ナット・キング・コールが出演した。2013年、ナット・キング・コールの娘であるナタリー・コールが『Natalie Cole en Español 』をヴァーヴからリリースし、輪は一周したことになる。

Verve Records

2013年に400ページの書籍『Verve – the Sound of America』がThames & Hudsonから発売され、その驚くべきレコード・レーベルの物語が綴られている。掲載されている1,200枚以上の写真も含み、それらの殆どはニューヨークにあるヴァーヴのアーカイブで撮影された。書籍には5枚のCDを含むボックス・セット『Verve: The Sound Of America: The Singles Collection』がついてくる。それには100枚のシングルと、オリジナル・ジャケットのデザインをそのまま使用し、アビイ・ロードにてリマスタリングされた10枚のリイシュー盤を含み、チャーリー・パーカー、スタン・ゲッツ、オスカー・ピーターソン、そしてビリー・ホリデイのLPも含まれている。

Written By  Richard Havers



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The Sound Of America: The Verve Singles

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