丸屋九兵衛連載第9回:HIP HOP/R&B専門サイトbmr編集長が語るK-POPの魅力(後編)

October 4, 2018


丸屋九兵衛連載第9回:HIP HOP/R&B専門サイトbmr編集長が語るK-POPの魅力(後編)

ヒップホップやR&Bなどのブラックミュージックを専門に扱う音楽情報サイト『bmr』の編集長を務めながら音楽評論家/編集者/ラジオDJなど幅広く活躍されている丸屋九兵衛さんの連載コラム「丸屋九兵衛は常に借りを返す」の第9回の後編(全3回)。今回はK-POPにも造詣が深い丸屋さんに、BTSがなぜアメリカで成功したのかをブラックミュージック専門家の側面から語っていただきました。

* 丸屋九兵衛コラムの過去回はこちら
*「K-POP編」前編はこちら
*「K-POP編」中編はこちら


丸屋さんは韓国に行ったことはあるんですか?

少し前ですが2014年の冬にソウルに行きましたね。そしたら道端で一人でラップしてる、どう見ても高校生でブレザー着てる子がいて。ホンデっていう大学のある街がコリアン・ヒップホップのメッカになってるんですが、そこでも学生がそこらで普通にラップしてました。公園に行ったら公園全体が7、8個の区画に自然に分かれて、それぞれの区画でフリースタイル!  緩衝地帯としてサイレント・ディスコがそこかしこにある、というアイデア設計ですね。

なぜ韓国でラップがそこまで人気になったんでしょう?

2012年から始まった「SHOW ME THE MONEY」の影響が大きいと思います。この番組のことを凄いと実感したのは、去年台湾に行った時。私の友人でもある台湾のラッパーのドゥアギー(大支)主催で、ベトナムの女性ラッパーSuboiや韓国系アメリカ人のフロウシックらがライブをやったんですが、その前にパネルディスカッションをしてたんです。聴衆は、台湾の大学のヒップホップ同好会がメインで。さっき言ったフロウシックはアジアティックス(Aziatix)っていうグループでデビューして、そのグループが活動休止したあとに、プロなんだけど「SHOW ME THE MONEY」に出演して、圧倒的な声力で評判になったんですね。で、彼がその番組の話をしようとしたけど、韓国の番組の話なので台湾で通じるかわからない。だから司会者に「この話していい?」って聞いたら「大丈夫です!全員見てますから」って言われてて。

韓国以外でもそんなに人気だったんですね。丸屋さんも見てました?

ちょこちょこですね。ちなみに「SHOW ME THE MONEY」の影響力が強すぎて、中国がそっくりな番組「The Rap of China」を作りました! 司会者が元EXOのクリス・ウーなんですよ。オーディションして、プロデューサーがついて、勝ち残っていく……というほぼ同じスタイルですね。

そんな番組の始まりが2012年というベストなタイミングもあったんですね。しかし韓国でヒップホップが盛り上がっている中とはいえBTSは本当に突き抜けましたね。

テディ・パークとかiKONのBOBBYとか、つい先日ロック・ネイションからデビュー作を発表したジェイ・パークとかのように、アメリカで育ったコリアン・アメリカンが韓国の音楽シーンに与えた影響も無視できないですね。そんなコリアン・アメリカンがアメリカ市場で上手くいなら理解しやすいんですが、でもBTSは全員韓国生まれの韓国人なんですよね。

でも他の誰よりもアメリカで成功しましたね。

2016年の『Wings』っていうのが26位を記録した時点で我々は腰を抜かしてて、そして『LOVE YOURSELF 承“Her”』が7位で、我々は再度腰を抜かしたわけですが。26位、7位ときてるので次は1位かもしれないと予想して然るべきだったんですが、本当に1位とっちゃうとはねえ。

彼らがアメリカで成功した理由はなんだと思いますか?

色んな理由があるでしょうが、一番肝心なのは曲がいいことですね。今のアメリカの音楽の流れとちょうどあってて、しかも足りないところを補ってくれているんです。

今のアメリカの音楽に足りないものというのは?

ちゃんとしたR&BらしいR&Bが入ってるんですよ!今のアメリカのシーンだと、ラッパーも歌っちゃうのでシンガーの活躍の場が少なくなってます。でもBTSでは歌担当の人間が4人もいて、彼らがちゃんと歌を聞かせてくれる曲もいくつもあるんですね。そういったいい曲が入っていること、そして歌もラップも上手いっていうのがまず大事なところですね。

それがちゃんとあった上でこんなにも爆発した理由をあげるとするとですが……

私、この間、「メルマ旬報.TV」という水道橋博士の番組に出演したんですが、その時のテーマが「この前はBIGBANGで水道橋博士を洗脳した私が今度はBTSで洗脳してみよう」っていうものだったんです。そしてこの番組に出演する下準備としてBTSのリアクションション・ビデオを100本以上見たんです。

今までにK-POPを聞いたことがないアメリカ人のYouTuberがBTSで始めてK-POPを初めて見たっていう人が相当多いかったですね。K-POPが流行っているようなのでいっちょ聞いてみるかって、ビデオ見始めるんだけど、まずビデオの完成度が高すぎる!とい観点から入る人が多かったです。最近のヒップホップのビデオは昔みたいにお金をかけているわけではないので、アイデア一発のものが多いんですよ。水着のおねえちゃんとラッパーが交互にアップでうつるようなものとか。そういう時代なのでBTSのビデオをみると、「なんじゃこりゃ!」って衝撃を受けるんです。

「Not Today」っていう曲のビデオをみた白人YouTuberが、とてつもない角度で迫り来るカメラの動きとか計算されたシンメトリーな構図とか、夕日をバックに踊る少年たちを見て、まずその映像美に惹かれるんです。次におそらくそのYouTuberは“綺麗な男”をみたことなかったんだと思います。彼は自分で服のセンスがないと言っていて、キャプテン・アメリカのファンらしく、自分の部屋にアメリカ国旗を飾ってるような人なんですが、彼はRMが登場してきた瞬間に映像を止めて「なんてキレイなんだ!」とか「俺は自分のセクシャリティに疑問を持ち始めた!」とか「なんでどこにもニキビの跡がないんだ!」とか。「君たちは何かおかしい!」って怒りはじめたり、「なんでこんなにレザー・パンツが似合うんだ!俺もその体が欲しい!」とか。

Non K-Pop Fan Watches BTS For The First Time *AMAZING*

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他のYouTuberも、最初は「こういうのを見るんだったら、僕もお椀みたいな髪型にしなきゃダメかな」とバカにしたような発言をしてたんだけど、「Blood Sweat & Tears(血、汗、涙)」を見て、青年達があまりにも真正面にこちらを見るから「なんでそんなに誘うような目で見るんだ!」って。我々のように東アジアで生きてると、漫画でもアニメでもヴィジュアル系でも、美しい男性に免疫があるじゃないですか。でもアメリカ大陸に住む彼らは、それに免疫がなかったんでしょうね。

多分一言でいうなら“耽美”ですよね。

「DNA」のビデオだったり「MIC Drop」のビデオだとそうはならないですが、「Blood Sweat & Tears(血、汗、涙)」のビデオは、かつてのニュー・ロマンティックに通じるような服装な上に、胸ははだけちゃってるし。

今のUSのシーンにはいないキャラクターですよね。

別のリアクション・ビデオでは本人もラッパーらしいYouTuberがマリファナ吸いながら「MIC Drop」の動画を見てて、ビートが鳴り始めるとノリノリになって踊っちゃってるんです。ラッパーが聞いてもいい曲なんですよね。

BTSでK-POPを知った人もいるし、BTSを見て「アジア人なのはわかるけど、どこの国かはわからない」というレベルの人もノリノリになってるんです。

他にもコンプトンの黒人青年YouTuberがいて。落ち着いていた人柄ながらヒップホップ的な粋はわかる人。そんな彼がすっかりK-POPにはまってしまい、その後はすっかりK-POPビデオ・リアクションYouTuberになってるんです。そして2NE1 のCLの「Hello Bitches」を見て、「おー彼女が俺の妻だ!」って言い出して、「誰か彼女に伝えてくれ、今夜君と結婚するぞ!」とか(笑)。

その彼はBTSの「MIC Drop」からみて、K-POPのビデオを見るようになり、BTSにはとてもハマってしまったようで、「今日はBTSのJIMIN君を紹介します」というように一人一人のパーソナリティを紹介するコーナーが出来てるんですよ」!

Black Guy Reacts to BTS - 방탄소년단 'DNA' | K Pop vs Hip Hop

Black Guy Reacts to BTS -  방탄소년단 'DNA'  | K Pop vs Hip Hop

 

リアクション・ビデオからその先へ行ったんですね!

たぶん課金制のビデオも見てます。開演前にダンスの立ち位置でJINとVが揉めて、それをRMが開演10分前だぞって収めて。公演終わったあとにみんなで話し合って解決するっていう、それを見ながらコンプトンの青年が延々解説するんですよ!

彼もそうだけどやっぱり「MIC Drop」から入る人は多いみたいですね。この「MIC Drop」爆発は、『LOVE YOURSELF 承“Her”』と『LOVE YOURSELF 轉 'Tear'』の間に起こった出来事ですね。ちなみに、1stアルバムに“なぜ俺たちはヒップホップが好きなのか”みたいな曲があって——それを言わなきゃいけないのが東アジア的ではあるんだけど——その曲はヒップホップの人名がもの凄くたくさん出てくるんですよ。それと以前のアルバムには「BST Cypher」というラッパー陣だけの曲が入ってました。

トラックも他の曲と違って削ぎ落としたシンプルなものですね。

そうそう。そういうヒップホップ的観点でいうと、『LOVE YOURSELF 承“Her”』とからのリード曲「DNA」のビデオは明る過ぎたんですよね。でも「MIC Drop」のビデオは、スティーヴ・アオキが出てくる瞬間から何かデンジャラスな感じで、そこがアメリカ人の感性に合ったのでしょう。リアクション・ビデオがいっぱい出てきて拡散されて、K-POPを知らないYouTuber の元にも「MIC Drop」を聞いたほうがいいよとリクエストが来るようになり、それでどんどんハマってしまうYouTuberが増えた、と。「エレンの部屋」でも「MIC Drop」をパフォーマンスしてて、やはりこの曲が転機になった気がしますね。

BTS Let the 'Mic Drop'

BTS Let the 'Mic Drop'

 

最後になるのですが、K-POPを全く知らない人に丸屋さんがBTSの曲を1曲オススメするとしたらやはり「MIC Drop」ですか?

ヒップホップ・リスナーだったら間違いなく「MIC Drop」、R&Bリスナーだったら最新アルバムの『LOVE YOURSELF 轉 'Tear'』に入っている「Love Maze」ですね。音は新しいんだけど曲は何か90年代っぽい懐かしい感じなんです。

メンバーそれぞれの音楽的志向が幅広いからそうなってるんでしょうね。今回もありがとうございました!


【丸屋九兵衛今後のトークイベント】

2018年10月28日(日)14時30分開場 / 会場:東京 Basement GINZA
【Rethink World:マイノリティ・リポート vol.3】with いんちき番長 

2018年10月31日(水)18時30分開場 / 会場: 大阪 Loft PlusOne West
映画『アンクル・ドリュー 』公開記念〜アンクル・ドリューとバスケ映画の世界〜


連載『丸屋九兵衛は常に借りを返す』 バックナンバー


■著者プロフィール

maruya

丸屋九兵衛(まるや きゅうべえ)

音楽情報サイト『bmr』の編集長を務める音楽評論家/編集者/ラジオDJ/どこでもトーカー。2018年現在、トークライブ【Q-B-CONTINUED】シリーズをサンキュータツオと共に展開。他トークイベントに【Soul Food Assassins】や【HOUSE OF BEEF】等。

bmr :http://bmr.jp
Twitter :https://twitter.com/qb_maruya
手作りサイト :https://www.qbmaruya.com/

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