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イージー・ライフ『life’s a beach』解説:UK期待の新人バンドがコロナ禍で作り上げた逃避/日常/希望

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Image Courtesy of Island Records

2017年に英レスターで結成、シングルやミックステープを勢力的にリリースし、2020年にはBBCがその年に期待される新人のリスト「BBC Sound of 2020」の2位に選出、NMEアワード2020では「Best New British Act」を受賞したイージー・ライフ(easy life)。そんな今期待されている新人バンドの彼らが2021年5月28日にデビュー・アルバム『life’s a beach』を発売した(日本盤CDは7月16日発売)。

このアルバムへ至る道と、そしてその内容について、『rockin’ on』5代目編集長、現在は音楽ライター/ジャーナリストとして活躍されている粉川しのさんに解説いただきました。

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アルバム発売への道のりとパンデミック

今年のUKインディ・ミュージックのさらなる飛躍を占う最重要作と言っても過言ではない、イージー・ライフの待望のデビュー・アルバム『life’s a beach』がついにリリースされた。当初は6月4日の発売の予定だったが、急遽1週前倒しでのリリースが決まったあたりに彼らのフットワークの軽さというか前のめりな勢いがうかがえるし、ファンが首を長くして待ち望んでいたことを踏まえての決断でもあったのだろう。

【和訳】easy life – skeletons|日本時間6月25日(金)午前4時30分から「フォートナイト」内でパフォーマンス決定

イージー・ライフは2017年にイングランド中部のレスターで結成された5ピース・バンド。ヒップホップを原体験に持つ彼らがソウル、ジャズ、インディ・ギターと柔軟に取り入れていくクロスオーバー、そしてシニカルな毒を秘めつつもイージーゴーイング(*気楽でのんびり)なノリを貫くリリックが醸し出す。

そのメロウで浮遊感たっぷりのそのサウンドはまさにインディ・ポップの今旬を体現したもので、瞬く間に同世代のリスナーのハートを鷲掴みにした。結成して早々に「pocket」「nightmares」などのインディ・ヒットを飛ばして頭角を表した彼らは、BBC恒例の新人リスト「Sound of 2020」では2位にエントリーし、昨年1月にリリースされたEP『junk food』は、ミックス・テープにも拘らずUKチャートで7位を獲得している。

Easy Life – Pockets (Glastonbury 2019)

ツアーも軒並みソールドアウトで、グラストンベリー・フェスティバルでは新人ステージのヘッドライナーに抜擢、同年のNMEアワードでも「Best New British Act」を受賞するなど、常にネクストブレイク最右翼として注目を集め続けていたイージー・ライフ。さらにはデビュー・アルバムも出していないUK新人としては異例の速さでSXSW、コーチェラ・フェスティバルへの出演を果たすなど、US進出も果たした。そう、Easy Lifeを取り巻くバズは、本来であれば2020年の段階でとっくにピークまで高まっていた「はず」だったのだ。

しかし、そんなイージー・ライフを待っていたのが新型コロナウィルスのパンデミックだった。英米が厳しいロックダウンに入った昨年3月以降、ほぼ全てのライブ・エンタテイメントが凍結に追い込まれ、快進撃を続けるイージー・ライフも急ブレーキを踏まざるをえなかった。世界中がパンデミックに否応無く巻き込まれる中で、『junk food』と『life’s a beach』の間に社会的にも、物理的にも、そして彼らの精神面においても断絶があったことは間違いないだろう。

こうしてイージー・ライフは一度立ち止まった。もしも『junk food』直後のイケイケなムードのままデビュー・アルバムを作り始めていたとしたら、それは『life’s a beach』とは全く異なるコンセプトの一作となっていたかもしれない。しかし、彼らはロンドンで、地元レスターで、それぞれにロックダウンの日々を過ごすことになった。否応無く自分自身とより深く向き合う時間を得た。そこで「以前と同じ日常はおそらく二度と戻ってこない」という予感と共に音楽と再び向き合った経験が、『life’s a beach』のテーマにかくも深みを与えたのだろう。

easy life – have a great day (Visualiser)

 

ここではないどこかに行きたいという逃避の感覚

イージー・ライフの変化は、オープニング・トラックの「a massage to myself」で早くも明らかになる。未だかつてないシンフォニーを纏ったオーケストラルな同曲の中で、ボーカルのマレーは「人生はあまりにも短く、時間を無駄にすることなんてできない」と、だから「君が今すべきことは自分の心の中を見つめることだ」と歌う。君以上に君を理解し、成長させる存在はいないのだからと。彼は「a massage to myself」を「究極の個人主義についての曲」と語っているが、イージー・ライフがこれほど真っ直ぐに自分たちのメッセージをリスナーに届けようとした歌は未だかつてないだろう。

同曲のプロデュースを務めたのはケンドリック・ラマーの『DAMN.』も手がけた世界的プロデューサーのBēkon。ヒップホップとR&Bをバンドの下地とした彼らにとっては夢のタッグだろう。実際、『life’s a beach』のサウンド自体はこれまでのイージー・ライフの軽やかなクロスオーバーを踏襲したものになっている。マレーの脱力ボイスが時にメロウに、時にコミカルにリリックを紡ぐR&Bから、ジャズやUKバンドらしいガラージのグルーヴ、インディ・ギターの親しみやすいメロディからボサノバやアフロポップの借用まで、イージー・ライフらしいチルでレイドバックしたムードでアルバムの隅々まで満たされている。

easy life – a message to myself (official video)

ちなみに『life’s a beach』の収録曲のほとんどは、ロックダウン中にマレーが自宅で書き溜めたものだという。「白日夢を見ながら君のことを考えている」と歌う「daydream」などは、まさに「社会的距離」が叫ばれ、否応無く引き篭もりになっていたあの時期の一人一人のメンタルを反映した曲で、「ただ何かをするために、一日中飲んでる」なんていう一節には、身につまされる人も少なくないはず。ここではないどこかに行きたいという逃避の感覚はイージー・ライフの音楽に不可欠なもので、それがロックダウンの中でより強まったことは想像に難くない。

easy life – daydreams

しかしその一方で、ひたすらエスケープし、ゆるふわとした足取りでモラトリアムの境地を伝い歩くかつてのそれとは異なり、本作はアルバムの真ん中を突っ切る一本の道を感じるというか、地に足をつけ、道の遥か先を見通そうとするような彼らの意思を感じる作品でもあるのだ。そんな『life’s a beach』の前半のクライマックスが「skeletons」だ。とにかくこの曲は思いっきり醒めている。イージー・ライフの曲でこれほど「逃避しない」曲、今・此処のリアルな息遣いを感じさせるジャズ・ファンク・チューンは初めてではないか。ちなみに彼らは同局を引っさげて米人気TV番組「Jimmy Kimmel Live!」に出演、アメリカでTVデビューを飾った。この時はホーン・セクションを引っさげてのゴージャスな編成で、さらにこの曲の醒めっぷりを体感できるパフォーマンスだった。

Easy Life – skeletons (live on jimmy kimmel live!)

自殺願望、不眠症、シアトリカルな世界

アルバムは約30秒のタイトル・トラックを折り返し地点として後半に入っていく。ミックステープのようにただ曲を詰め込むのではなく、アルバムとしての構成、起承転結を彼らがちゃんと考えていることがうかがえる。実際、後半は前半よりもよりハードな曲が並んでいる。自殺願望について歌う「living strange」や、不眠症について歌った「nightmares」など、ミレニアルズやZ世代が直面するメンタルヘルスの問題について当事者の率直な言葉で綴られたリリックもまたイージー・ライフの音楽の醍醐味だ。ちなみに「nightmares」は収録曲の中で唯一の既発シングルで、2018年にリリースされた同曲は彼らが最初にブレイクするきっかけとなった記念すべきナンバー。ライブでも常に大合唱になるアンセムだ。

Easy Life – Nightmares (Live) | The Circle° Sessions

アルバムの後半でも特に素晴らしいのがラストの「music to walk home to」だ。これはぜひ歌詞をチェックしながらお聴きいただきたい。パーティが終わった深夜、ヘトヘトに疲れた体と妙に冴えた意識を引き摺りながら家に帰る道中を舞台に、マレーのラップというかポエトリー・リーディングが写実と幻覚の入り混じったシアトリカルな世界を描き出していく。「じゃあまた明日…とかなんとか…まあ、そういうわけでお休み」と脱力したエンディングは何ともこのバンドらしいが。そうしたユルい表層の裏にストリートワイズな文学性が息づいている、イージー・ライフの真価が発揮されたナンバーなのだ。

music to walk home to

イージー・ライフ曰く、『life’s a beach』における「beach」とはカリブ海やアメリカ西海岸のおしゃれなビーチでも、はたまた地中海の優雅なリゾート地のそれでもなく、マーゲイトのようなイングランドの古き良き保養地のイメージなのだという。少し時代遅れで、どこまでも平凡で退屈なそれらの海辺のイメージは、まさに平凡で退屈な典型的なイングランドの地方都市であるレスターに生まれ育った彼らにとって「日常」のメタファーに他ならない。そして今、アフター・コロナの時代に向けて着実に歩を進めつつあるイギリスの彼らにとって、日常とは取り戻すべき希望でもある。

easy life – ocean view

この夏、7月にスペインの「Mad Cool Festival」に出演するのを皮切りに、いよいよイージー・ライフのライブ・ツアーが再起動する。約1年半の空白を埋めて余りあるパフォーマンスを期待したいし、バンド最大のアンセムとなること必至の「skeletons」を未だ満員のオーディエンスの前でプレイしていないことを思えば、彼らの最初のゴールはまだまだ先だ。そしてまだまだ先のゴールのさらに先で、イージー・ライフの来日公演が実現する日が来ることを願ってやまない。

Written by 粉川しの



イージー・ライフ『life’s a beach』
2021年5月28日発売
国内盤CD 7月16日発売
CD / iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music




 

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