(function(h,o,t,j,a,r){ h.hj=h.hj||function(){(h.hj.q=h.hj.q||[]).push(arguments)}; h._hjSettings={hjid:104204,hjsv:5}; a=o.getElementsByTagName('head')[0]; r=o.createElement('script');r.async=1; r.src=t+h._hjSettings.hjid+j+h._hjSettings.hjsv; a.appendChild(r); })(window,document,'//static.hotjar.com/c/hotjar-','.js?sv=');
Join us

Columns

DMX遺作アルバム『Exodus』全曲解説:多数のゲストの中、最期まで唯一無二だったその才能と迫力

Published on

2021年4月9日に50歳の若さで亡くなった米ラッパーのDMX。そんな彼の遺作となるアルバム『Exodus』が5月28日に発売されました。元々、生前に発売が予定されており、Def Jam復帰作ともなったこのアルバムには、ヒップホップのアーティスト以外にも、アリシア・キーズやU2のボノも参加しています。

このアルバムについてライター/翻訳家である池城美菜子さんに寄稿いただきました。

<関連記事>
人気ラッパー、DMXが50歳で逝去。その功績を辿る
【追悼】DMXのベスト・ソング
DMXとその時代:自分を合わせられなかったHIPHOP界のダークヒーロー

 

「だてに50才になったわけじゃない」。5月28日にリリースされた遺作『Exodus』のファースト・シングル「Hood Blues」で、DMXが吐いた言葉だ。DMX は21世紀の変わり目に大活躍したラッパーで、J.コールがつい最近に破るまで5枚続けてアルバム・チャートの初登場1位の記録を保持していた。4月9日、50才の若さで逝去してから7週間後という異例の速さで遺作が世に出たのには、理由がある。死後に残された音源を継ぎ接ぎしたり、ゲストのヴァースを足したりして仕上げたポップ・スモーク『Shoot for the Stars, Aim for the Moon』、ジュース・ワールド『Legends Never Die』とは違い、『Exodus』はDMXの生前にほぼでき上がっていたのだ。

ことさら長かったはずの2020年の夏中、DMXは盟友スウィス・ビーツと一緒にLAのスヌープ・ドッグのスタジオに入ってこの作品を仕上げた。ニューヨーク州のヨンカースを拠点にしていたラフ・ライダーズは、90年代の終わりから00年代前半まで一世を風靡したヒップホップ・レーベルであり、DMXもスウィズもそこの出身である。15年以上のブランクを経てリユニオンが実現した発端は、7月22日に行われたヴァーサス・バトル(Verzuz Battle)だ。プロデューサーのティンバランドとスウィズ・ビーツがコロナ禍による自主隔離期間中に始めたインスタグラムのライヴ機能を使用した対決企画であり、プロデューサーやソングライターは自分が作った曲を、アーティストは持ち曲をかけ合ってどちらがより盛り上げたかでスコアをつけて勝敗を決める。

視聴者参加型だったうえ、ベテラン中心のマッチングだったため「世界が同時に懐かしがった」状態となって加速度的に盛り上がり、隔離期間が終わっても引き続き行われている。ヒットの大きさや知名度も大事だが、モニカVSブランディー、ベイビーフェイスVSテディ・ライリー、ビーニマンVSバウンティ・キラーなど、宿命のライバルと目されてきたふたりが揃った回は、長寿ドラマの結末を見るような興奮をもたらした。

スヌープとDMXという超大物同士のバトルは「Battle of Dogs(犬対決)」とタイトルがつけられ、ライヴ配信中の最高視聴者数は190万人を記録。コンスタントにアルバムを出してきたスヌープが有利かと思われたが、DMXの代表曲の破壊力を思い知らされる結果となった。ファンのみならず、多くのラッパーも視聴して先輩ふたりに絵文字のエールを送り続けたのも話題になった。これが、2012年から音楽に集中できていなかったDMXのやる気を駆り立てた。スウィズ・ビーツとのわだかまりも解け、そのままスヌープのスタジオにこもって約2カ月で『Exodus』のレコーディングを終えたという。

Dmx vs Snoop (Verzuz)

13年前に袂を分かったデフ・ジャムも目ざとくDMXと再契約した。世界的なパンデミックにおける、ヒップホップ/R&B界隈の数少ないポジティヴな出来事がVerzuzの企画であり、DMXの復活だったのだ。『Exodus』はDMXにしては客演が多い作品である。だが、遺作ではなく復活作として作られた作品であるため、お悔やみの言葉もなければ手加減もなく、どこかカラッとしていて聴きやすい。各曲の聴きどころを解説しよう。

 

 

1. That’s My Dog (feat. The LOX & Swizz Beatz)

トップはラフ・ライダーズのリユニオン曲だ。ザ・ロックスのジェイダキッス、シーク・ローチ、スタイルズ・Pが順番に担当して、まるで真打のDMXが出てくるまで座を温めているよう。DMXも絶好調で韻を踏んでいる。

I ain’t playin’ with you ni***s, I got kids your age
お前らニ**は相手にしない お前くらいの子どもがいるんだ

というラインがおもしろい。DMXは老いも、さらには死も悪いことだと思っていなかったそうだ。その人生観がアルバム全編を貫いている。

DMX – That's My Dog (Audio) ft. The LOX, Swizz Beatz

 

2. Bath Salts (feat. JAY-Z & Nas)

DMX、ジェイ・Z、Nasとニューヨークの王たちが揃った目玉曲。もとはNasの2012年『Life is Good』のためにレコーディングされたが、収録されなかった。ジェイ・Zのリリックは2012年のままで、いまなら入れなさそうな「(女性が多い)カダーシアン家」といった言葉もある。Nasは新たにヴァースを書き換えている。

「遺作なのにジェイ・ZとNasが目立ってしまっている」と厳しい評を下したアメリカの音楽媒体があったが、生前でも死後でもDMXは手加減を望まないはずだ。稀代のリリシストであるジェイ・Z、Nasの巧みさの代わりに、DMXは一言発しただけで空気を一変させる存在感があり、その魅力を存分に発揮している。

DMX – Bath Salts (Audio) ft. JAY-Z, Nas

 

3. Dog’s Out (feat. Lil Wayne & Swizz Beatz)

ニューオーリンズの覇者、リル・ウェインとDMXは共通点が少なさそうだが、実は2000年に「ラフ・ライダーズ / キャッシュ・マネー・ツアー」の際に40カ所を一緒に回っている。DMXは当然ヘッドライナーであり、まだ17〜18才だったリル・ウェインはオープニング扱いだった。2012年のリル・ウェインのイベントでDMXが飛び入りした映像を見ても、お互いをリスペクトする仲だったのがわかる。スウィズと弟分プロデューサーのアラブ・ミュージックが作ったミニマムなトラックに、リル・ウェインの名曲「A Milli」を思わせるウェインの飄々としたラップと、噛み付くようなDMXのラップが配されている。

DMX – Dogs Out (Audio) ft. Lil Wayne, Swizz Beatz

 

4. Money Money Money (feat. Moneybagg Yo)

唯一、DMXの死後に仕上げた曲。もともとはスウィズとレコーディングしたポップ・スモークのヴァースを使う予定が、流出してほかで使われてしまったため、代わりにメンフィスのマネーバッグ・ヨーが参加している。マネーバッグ・ヨーは4月に発売した4作目『A Gangsta’s Pain』がビルボードのアルバム・チャート1位になったばかりの注目株。若手を入れるのは、DMXの希望でもあったそう。金をテーマにしたハードな内容だが、サンプリングしているのはフレンチ・ポップのシャンタル・ゴヤの「J’ai Le Cœur En Joie, J’ai Le Cœur En Peine」だ。

DMX – Money Money Money (Audio) ft. Moneybagg Yo

 

5. Hold Me Down (feat. Alicia Keys)

スウィズ・ビーツの妻、アリシア・キーズとDMXは一緒にスタジオに入ったそうで、その親密さがふたりの掛け合いに出ている。ソウルフルなアリシアのコーラスとキーボードに触発されたのか、DMXの本音がこぼれている。

Everyday it gets darker, the road gets longer
My body gets weaker, my faith gets stronger
The Devil’s working on me hard, because God loves me
As long as I’m in His graces, it’s gon’ get ugly
But, only He can judge me so
What anothеr motherfucker say don’t matter
毎日闇が濃くなっていく 道のりはさらに長く
俺の体は弱っているけど 信仰心は強くなっていく
悪魔がしつこく俺を狙ってくる 神に愛されているからだ
彼の御加護がある限り 事は悪化していく
でも俺を裁けるのは彼だけだ
ほかのくそったれが何を言おうと関係ない

神の愛が強いほど試練も大きくなるという視点に、DMXの強い信仰心が伝わってくる。彼はレコーディング中に本作を最後のアルバムにしたいと言っていたそう。その代わりゴスペル・ラップの可能性をスウィズと話していたとのことで、その片鱗がこの曲で聴ける。

DMX – Hold Me Down (Audio) ft. Alicia Keys

 

6. Skyscrapers (feat. Bono)

本作一番の飛び道具、U2のボノの登場である。ボノとアリシア・キーズは20年来のつき合いで、チャリティ活動やデュエットで組んできた。夫のスウィズとも親しく、この曲のトラックとボノのヴォーカル・パートは2012年に出来ていたそう。4人関わっているプロデューサーのひとりがワイクリフ・ジョンのいとこであり、右腕でもあるジェリー“ワンダ”デュプレシス。曲の原型を作ったのはメロディアスなトラックを得意とする彼だろう。多くのラッパーが自分で歌うようになった10年代以前は、この手の他ジャンルの大物シンガーとのコラボは多かったし、より広範囲でラジオでかかるために有効な手法だった。そのため、「みんな摩天楼のように高くそびえ立とう」とボノが歌うこの曲は懐かしい雰囲気を湛えており、またこういうコラボが流行るといいな、と思える名曲だ。DMXの遺言のようなパートがあるので、訳出したい。

Every day I live, every day I die
Don’t always laugh, but every day I cry
Used to wonder why, now I enjoy the rain
Get stronger with the struggle, can’t live without the pain
I just wanna be heard, fuck the fame
My words will live forever, fuck my name
毎日を生きて 毎日のように死ぬ
俺はあまり笑わないけど 毎日泣いている
昔は不思議な感じがしたけれど いまでは雨も好きだ
苦しむほど強くなれる 痛みがない人生なんかないから
俺の曲を聴いてほしいだけだ 名声とかいらない
俺の言葉は永遠に生き続ける 俺の名前はどうでもいい

この曲にはスウィズとカニエ・ウェストのヴァージョンもあるが、このヴァースを聴くとなるべくしてDMXの曲になったと思う。レコーディングした際、ボノは「君の声と並ぶなんて光栄だ」とのメッセージと詩を添えた写真を贈り、DMXがいたく感激したそう。

DMX – Skyscrapers (Audio) ft. Bono

 

7. Stick Up Skit (feat. Cross, Infrared & Icepick)

スキット(寸劇)が入っているのも王道のヒップホップ・アルバムらしい。アイスピックはラフ・ライダーズのプロデューサーで2017年に大腸ガンで他界している。

DMX – Stick Up Skit (Audio) ft. Cross, Infrared, Icepick

 

8. Hood Blues (feat. Westside Gunn, Benny The Butcher & Conway)

アルバムに先駆けてリリースされた先行シングル。ウェストサイド・ガン、ベニー・ザ・ブッチャー、コンウェイはニューヨーク州北西部のバッファローを拠点にするグリセルダ・レコーズの面々だ。DMX同様、ハードコアなスタイルで知られる人たちであり、お互いがファンだったため非常にスムーズにでき上がったそう。DMXが中心になってレコーディングした様子はビデオに残っている。

DMX – Hood Blues (Official Video) ft. Griselda

 

9. Take Control (feat. Snoop Dogg)

このアルバムの影の立役者は、スタジオを提供したスヌープ・ドッグだ。エミネムの友だちグループ、D12出身のミスター・ポーターが作ったマーヴィン・ゲイ「Sexual Healing」の大ネタ使いのトラックで、定番の性豪ネタを展開するアラフィフのふたりである。ここまで大胆なサンプリングはそれなりの使用料がかかるはずであり、そこを度外視するスウィズ・ビーツに深い愛情を感じる。

DMX – Take Control (Audio) ft. Snoop Dogg

 

10. Walking in the Rain (feat. Nas, Exodus Simmons & Mr. Porter)

ミスター・ポーターによる、70年代のソウルを意識したコーラスの曲。アルバムのタイトル『Exodus / エクソダス』は脱出の意味もあるだろうが、DMXの15人の子どものうち、最年少の息子の名前であり彼はコーラスでも参加している。2行ずつ丁寧に韻を踏むDMXもいいが、最近は詩人と呼んで差し支えないNasのヴァースがとても深い。NasとDMXは1998年の映画『BELLY 血の銃弾』で一緒にスクリーン・デビューを果たし、「Life is What You Make It」(1999年)でもコラボレーションをしている。

DMX – Walking In The Rain (Audio) ft. Nas, Exodus Simmons, Denaun

 

11. Exodus Skit

2016年生まれのエクソダスが父親にかわいらしいエールを送るスキット。彼の母親であるデジリーとは2019年に婚約していたそう。本作のアートワークは、喉元に彫った息子の名前のタトゥーだ。

DMX – Exodus Skit (Audio)

 

12. Letter To My Son (Call Your Father) (feat. Usher & Brian King Joseph)

ほかの遺作ほどは悲しいムードに支配されていない本作だが、終盤にきて泣かせに入る。「息子への手紙(父さんに電話しろ)」という直球のタイトルの曲は、断絶していた長男ザビエルに当てた曲だ。DMXは彼の母親タシェラとの15年間の結婚生活で4人子供に恵まれ、関係を修復するためにリアリティ番組に一緒に出演したものの、結局離婚した。すでに成人しているザビエルもテレビ番組で「ドラッグを止めてほしい」と訴えたが、そこで答えているDMXはすでにシラフではなかった。

I don’t know what you thought about my use of drugs
But it taught you enough to not use them drugs
俺がドラッグを使うことをどう考えたか知らないけど

それでお前はドラッグに手を出さなかっただろ

というリリックに言葉を失う。スヌープのスタジオにアッシャーが顔を出した際にできた曲で、DMXは非常に喜んだそう。ブライアン・キング・ジョセフが奏でるヴァイオリンとピアノの音色が美しい。

DMX – Letter To My Son (Call Your Father) (Audio) ft. Usher, Brian King Joseph

 

13. Prayer

最後は神に帰依していたDMXがカニエのサンデー・サービスに参加したときに行った説教である。牧師としてもプロ級で、生きていればランDMCのランのように牧師になる未来があったのだ、と思わずにいられない。

DMX – Prayer (Audio)

 

「たられば」の話をしても仕方がない。スウィズ・ビーツは、「DMXは昼から夕方までしか作業しないし、無理強いもしなかった」と話している。この言葉の行間を読むと、DMXには長時間、音楽に取り組む気力は残っていなかったのかもしれない。生前に完成していたのに、全体の半分以下しか主役がラップしていないのもそれで説明がつく。だが、彼のラップに漲る緊張感と迫力は往年のままであり、そこに彼の生命力が煌めく『Exodus』はすばらしい遺作だと私は思う。

幼児期〜少年時代のつらい記憶を怒りに変えてラップし、21世紀をまたぐタイミングでヒップホップを制したDMXは名曲の数々とカルト・クラシックな映画数本、そしてこの『Exodus』を残して永眠した。余白を残さずきっちりラップするDMXのスタイルは、いまどきのラップを聴き慣れている耳には古く響くかもしれない。でも、痛みを遠吠えにしたり、ステージで獰猛にラップしたあと泣き出したり、中毒や女性問題を「仕方ないじゃん(It is what it is)」と開き直って許されたりするラッパーは、きっとこれからも出てこない。老いるのも死ぬのも怖くないよ、とアルバム全体で伝えてDMXは逝った。ダークマン・Xは、最期まで唯一無二の才能だったのだ。

Written By 池城 美菜子(ブログはこちら



DMX『Exodus』
2021年5月28日発売
iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music




Share this story
Share
日本版uDiscoverSNSをフォローして最新情報をGET!!

uDiscover store

Click to comment

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Don't Miss