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《四季》:ヴィヴァルディの革新的なヴァイオリン協奏曲へのガイド

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ヴィヴァルディの最も有名な作品である《四季》—一年の季節を描いた4つのヴァイオリン協奏曲のセット—をご紹介する。

アントニオ・ヴィヴァルディ(1678年3月4日-1741年7月28日)は、バロック音楽の発展に多大な影響を与えた。彼は弦楽器の演奏に様々な新しいスタイルやテクニックを導入し、最も重要なジャンルの一つである協奏曲を確立した。

ヴィヴァルディの最も有名な作品である《四季》は、1723年に作曲された4つのヴァイオリン協奏曲のセットで、バロック音楽の中で世界的に最も人気があり、認知されている作品である。4つのヴァイオリン協奏曲は、季節の移り変わりを標題的に表現し、技術的にも革新的であり、新境地を開拓した。

このヴィヴァルディの《四季》のガイドでは、協奏曲の大成功の秘密を分析し、今ではお馴染みのこの音楽がなぜ当時としては革新的なものであったのかを説明する。

ジャニーヌ・ヤンセンが演奏するヴィヴァルディの《四季》のおすすめの録音をお聴き頂きたい。

《四季》:ヴィヴァルディの革新的なヴァイオリン協奏曲へのガイド

ストラヴィンスキーの《春の祭典》、ベートーヴェンの第5番《運命》…そしてヴィヴァルディの《四季》。他の文化的に画期的な出来事と同様に、ヴィヴァルディの最も人気のある協奏曲もまた、音楽史の流れを変えた。

暴動を引き起こすことはなかったかもしれないが、ヴィヴァルディの《四季》が1720年代初頭に初めて演奏されたとき、聴衆はそれまでにこのような音楽を聴いたことがなかった。ヴィヴァルディの様式的な革新を経験したのは、北イタリアの聴衆だけではなかった。

《四季》は理論家たちをも震え上がらせてしまったのだ。これらの一見洗練された美しい作品の中で、作曲家は何世紀にもわたる哲学的な論争を巻き起こす扉を開いたのである。問題の核心は音楽による「描写」にあった。

もし皆さんが、作曲家がオーケストラ作品の中で、言葉の定義に頼らずに、どのようにして特定の人間の相互作用や精神状態を描写することができるのか疑問に思ったことがあるならば、1720年代初頭にアントニオ・ヴィヴァルディの巨大な頭脳を占めていたのと全く同じ難問を考えていることになるだろう。

当時ヴィヴァルディはマントヴァで宮廷学長として勤めていたが、彼はおそらく地球上で最高のヴァイオリニストであるという事実に促されて、すでに何十曲ものヴァイオリン協奏曲を書いていた。だが、ヴィヴァルディはさらに何かを探求したいと考えていた。

それは、特定の風景や情景(この場合は地球における季節の周期)を音楽で表現することで、人間の行動を具体的に表現することである。そうして生まれたこの協奏曲集は、一人のソリストが大きな編成のアンサンブルと対峙して演奏するという協奏曲の形式は終始保たれている。

Vivaldi: Violin Concerto No. 1 in E Major, RV 269 "La primavera" – I. Allegro

 

標題音楽

ヴィヴァルディはかなりの挑戦をしていたが、多くの音楽理論家が好まないアイディアにも出くわしていた。いわゆる「標題音楽」は彼の生きたバロック時代よりも前から存在していたが、一部の人からは、それは劣ったもので時代に逆行したものだと見られていた。

ヴィヴァルディは、描写的な音楽が、洗練されていながらも複雑で、名人芸的な音楽であることを示し、それによって協奏曲の存在価値をも高めることができることも証明しようと決意した。管弦楽の色彩と旋律に対する彼の比類のない才能は、もし誰にもできなかったとしても、ヴィヴァルディには可能にさせたのである。

それで彼は成功したのだろうか?そうとも言えるし、そうでないともいえる。描写的な音楽を向上させたことで、ヴィヴァルディは何世紀にもわたって続いた議論に火をつけた。言葉のない音で物語を語る芸術は、音楽は地上の描写を超越すべきだと考える人々によって批判されることになった。

標題音楽は、ハイドン、ベートーヴェン、リヒャルト・シュトラウスの最善の努力にもかかわらず、必ずしも作曲の神聖な聖域において両手を広げて歓迎されてはいない。ヴィヴァルディが紛れもなくこれで成功したのは、作曲技法の探求に成功して、《四季》が作曲されたからである。

ヴィヴァルディの《四季》の構造的な考え方は、各楽章—全12曲(季節ごとに3曲)—が特定の雰囲気を確立し、それを背景に物語的な出来事が展開されるというものであった。犬の吠え声、酔っぱらいの踊り子、虫の鳴き声など、それらの出来事の細部に至るまで、ヴィヴァルディは他の作曲家による動物の鳴き声の陳腐な表現を超え、優雅さとオリジナリティを発揮したのである。

〈冬〉の最終楽章では、第2ヴァイオリンとヴィオラのオクターヴによる下行音型を使って、氷の上を滑る男の姿が描かれている。同じ協奏曲の中で、ソリストと低弦はヴィヴァルディの専門家が「火のそばの暖かさ」と呼んだものを思い起こさせ、ヴァイオリンは外で降る氷の雨を表現している。

Vivaldi: Violin Concerto No. 4 in F Minor, RV 297 "L'inverno" – III. Allegro

それに加えて、各楽章にはソネット(14行から成る、イタリアで創始された定型詩)が付され、ヴィヴァルディは〈春〉では、独奏ヴァイオリンには “il capraro che dorme”(眠る羊飼い)、ヴィオラには “il cane che grida”(吠える犬)のように演奏するよう指示しているのだ。

これらの協奏曲を演奏するためには、強い想像力と個性が必要だと音楽家たちが口を揃えて言うのも無理はない。ヴィヴァルディの《四季》を演奏することで地球の気象の周期を駆け巡る、という音楽家たちの欲望はいつの時代も衰えることはないのだ。

《四季》の録音

1942年にヴィヴァルディの《四季》が初めて録音されて以来、バロック音楽の演奏は認識を超えて変化してきた。現在でも入手可能な最古の録音は、ヴァイオリニストのルイ・カウフマンとニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団の弦楽器による1947年の録音である。これは力強く聞こえるが、かなり繊細さに欠けてもいる。

1984年、若きヴィルトゥオーソ、アンネ=ゾフィー・ムターがヘルベルト・フォン・カラヤンの指揮でこの作品の初録音を行ったが、彼女は、バロック音楽ではブラームスの作品の演奏のときと同様に、弦楽器は豊かに響きを保った音を出すべきだと主張していた。

彼らの真摯な姿勢には疑いの余地はないが、この壮大な演奏には、音楽の遊び心に満ちた機敏さが欠けているように感じられる。同じ頃、バロック時代の音楽の演奏に対する考え方も変わり始めていた。ピリオド楽器(古楽器)演奏を復興する運動により、マイクの前で演奏する人が少なくなったり、金属ではなく、「ガット弦」と呼ばれる、動物の腸で弦を張った楽器を目にするようになったのだ。

これはヴィヴァルディが生きていた当時の再現である。しかし何よりも重要なことは、私たちが目にしている楽器そのものより、そこから聴こえてくる軽快さや明快さ、そして途方もないエネルギーを持った音楽だ。それらは、強大な力をもって新たな時代を切り開いたヴィヴァルディのことを物語っている。

おすすめのレコーディング
ジャニーヌ・ヤンセンが演奏するヴィヴァルディの《四季》

「現在100種類近くの録音が発売されているので、レコード会社やソリスト、一般の人たちは《四季》に飽きたと思っていたかもしれない。しかし、この演奏は、オーケストラを単一の楽器に縮小し、独奏パートをこの素晴らしい若きオランダ人ヴァイオリニストが見事に演奏している。その結果、素晴らしい個性と卓越した個性を持った、生き生きとした色彩豊かな演奏が実現しているのだ」—クラシックFM

Written By uDiscover Team


■リリース情報


ジャニーヌ・ヤンセン『ヴィヴァルディ:協奏曲集《四季》』
2019年10月23日発売

CD / iTunes / Amazon MusicApple Music / Spotify




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