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グレタ・ヴァン・フリートの未来と新作アルバム:“驚異の新世代”から“過去最強”の現在地へ

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Photo By Lewis Evans

グレタ・ヴァン・フリート(Greta Van Fleet)が、ニュー・アルバム『Palace For The People』を2026年10月9日にリリースする。

このアルバムの前にバンドのこれまでのキャリアを振り返る記事と新作についてを音楽評論家の増田勇一さんに連続して寄稿いただきました。最終回の今回は新作アルバムと彼らの未来について。

<関連記事>
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過去最強というべき次元に

デビュー当時の「突然変異的に現れた驚異の新世代バンド」といった印象は、年月の経過とともにやや薄れてきたものの、グレタ・ヴァン・フリートがこれまでのディケイド(10年間)において最も高い実績をあげてきたロック・バンドのひとつであることは間違いない。

前2回の記事内でも触れてきたように、『Anthem Of The Peaceful Army』(2018年)、『The Battle At Garden’s Gate』(2021年)、『Starcatcher』(2023年)という過去3枚のアルバムは、すべて全米アルバム・チャートにおいてトップ10入りを果たしている。

ガンズ・アンド・ローゼズやメタリカとのツアーを経験し、エルトン・ジョンをはじめとするレジェンドたちからも絶賛の声を集め、グラミー賞などの権威あるアワードでの受賞歴、ノミネート歴も着実に重ねてきた。

しかも彼らは、まだまだ若い。双子の兄弟であるジョシュ&ジェイク・キスカは今年ようやく30歳になったばかりだし、その弟であるサム・キスカ、幼馴染にあたるダニー・ワグナーはまだ20代だ。実際、誤解を恐れずに言えば、シーンに登場した当時の彼らに寄せられた期待と賞賛は、その「若さに見合わぬほどの音楽的説得力」に対するものだったともいえる。ただ、それ以降ずっと進化と深化を重ねてきた彼らは現在「過去最強というべき次元に達しつつ、まだまだ若い」という状態にあるのだ。

 

第4作『Palace For The People』で挑む構築と破壊

そんな彼らの歴史における新たな章の幕開けとなりそうなのが、この10月14日にリリースされる第4作『Palace For The People』である(輸入盤、デジタル配信は10月9日より)。すでにこのアルバムからは「Play Your Games」「Saw You Stand」「Tear It Down」の3曲が先行配信されているが、いずれもこの最新アルバムの壮大かつ神秘的、普遍的かつ革新的な魅力の一端を伝えてくれる楽曲だ。

ダイナミックなギター・リフが耳をひく「Tear It Down」には「限界を超えたらどうする?」「築き上げてはまた壊す」という自問自答めいた内省的な歌詞が乗せられているが、今作での彼らはまさに、これまで積み重ねてきたものを破壊することを厭わずに、自らの限界を超えようとしているのではないだろうか。

この第4作の完成に際し、ジョシュ・キスカは「アーティストの役割は、この世界にまだ存在していないものを生み出すことにあると思う」と語っている。そしてその発言は、次のように続けられている。

「僕たちは冒険、情熱、荒々しさ、美しさ、セックス、そして想像力を体現するアルバムを作りたかった。だから実際、その通りのものを作った。ロンドンで“Palace Of The People”と呼ばれる場所でライヴをしたことがあるんだけど、僕たちにとっては音楽そのものが“人々のための宮殿”だといえる。世界のいろいろな場所を見てくると、まだ見たことのない世界がどれだけあるのかということにも気付かされる。僕たちは星を追い求める者たちだ。人間として経験することを受け止め、それを音楽に変換しているだけなんだ」

 

目指すべき星と人々のための宮殿

この発言中に登場する“星を追い求める者”という言葉は、『Starcatcher』という前作のタイトルを思い起こさせずにはおかないし、作品づくりにおいて文学的・映像的な要素を重んじているというジョシュの基本的な思考のあり方が変わっていないことを感じさせる。

さらに言うなら、彼らは第2作の時点で“本格的な探求の場に歩みを進めていくうえでの闘い”に挑んでいたのではないか――そのうえで目指すべき星をみつけ、本作においては自分たちにとっての音楽の本質について確信しながら理想を体現しているのではないか、などとも思わされる。

また、この発言の中に出てくる公演会場は、ロンドン北部にあるアレクサンドラ・パレスのことを指している。1862年に開催されたロンドン万博の際に使用された建造物の解体資材で造られたという、壮麗なヴィクトリア朝建築によるこの建物は、元々“Palace Of The People(人々のための宮殿)”という名称で建造されており、その名が示すとおり、王族や貴族のためではなく、あくまで市民のために作られたものだった。そこには「大衆が現実から離れ、驚きや感動を味わうための場所」という、当時としてはとても先進的な発想があったとされている。

グレタ・ヴァン・フリートは2022年6月25日、欧州ツアーの際に同会場で初めて公演を行なっているが、その場所に掲げられていた“Palace Of The People”という言葉が、彼らに「今の時代において“人々のための宮殿”とは何か?」「何をもってすればそこに辿り着けるのか?」を考えさせ、結果、彼らにとっては音楽そのものが“宮殿”なのではないかという気付きをもたらすことになった。

前回の記事でも書いたが、こうした作品タイトルの出自ひとつをとっても、ツアーで世界各地を巡ってきたことが彼らにとっていかに意味深かったかを感じさせられる。

しかも彼らにとっては、訪れる場所のほとんどが“初めての場所”だった。長きにわたりロードの生活を繰り返し、それが完全にルーティーンになっているようなキャリアの持ち主たちならば、いちいち会場の名前などにインスパイアされることはないのかもしれない。体験することすべてをスポンジのように吸収してしまう若々しい感性を持つ彼らだからこそ、こうした発見をすることができたのではないだろうか。

 

新たな“宮殿”を携え、再び世界へ

そして実際、このアルバムは、過去3作で綴られていた物語の単なる“つづき”ではなく、それらすべてを血肉としながら描かれた、未来へと向かうストーリーが詰め込まれた1枚だといえる。ハード・ロック・バンドとしてのわかりやすさを損なわぬまま(過度な長尺曲はない)、なおかつごく自然に多様性が追求されていて、しかも特定の誰かと比較したくなるような作風でもない。ターンスタイルからフィオナ・アップル、シェリル・クロウ、ジョン・バティステに至るまでとの仕事歴を持つマイク・エリゾンドとの共同プロデュース体制をとったことも、功を奏したようだ。

彼らはこの10月3日、アルバムのリリースに先駆け、この作品の録音地でもあるテネシー州ナッシュヴィルにある『The Basement East』というクラブのステージに立ち、本作からの3曲を含む全12曲を演奏している。同会場では10月10日、17日にもライヴが予定されているが、さすがにクラブ規模の会場だけにチケットはとうに完売となっている。そして、2027年2月からは新たなツアーが開始されることが発表されており、3月末までは北米、5月から6月にかけては欧州、そして7月からはふたたび北米各地を巡演することが決まっている。

2024年の『Summer Sonic』出演時には、マリン・ステージに5番手として登場し、約50分間の熱演を披露した4人。その際のライヴ・パフォーマンスは圧巻としか言いようのないものだったが、近年の日本の夏ならではの酷暑が災いしてか、残念ながら集客面では今ひとつという結果となったことを認めざるを得ない。

ただ、その際に聞こえてきた「こんなすごい音を、4人だけで出してるの?」「ギターが1本だけなのにすごい」「こんなヴォーカル、聴いたことがない」といった若い世代からの反応(実際にそうした会話も聞こえてきたし、SNS上にもそのような書き込みがみられた)は、このバンドの規格外のすごさが確実に伝わっていること、それが時代を問わず通用するものであることを裏付けているように感じられたものだ。

あの時に初めてグレタ・ヴァン・フリートと対峙した人たちは一刻も早く再会の機会が巡ってくることを願っているはずだし、これから『Palace For The People』でこのバンドの音楽と出会うことになる人たちも、絶対に彼らのライヴに触れたくなることだろう。

しかも彼らの音楽は、未知の世界へと誘ってくれるばかりではなく、大地に深く根差したロック・ミュージックの歴史や伝統と向き合うためのヒントまでもたらしてくれる。2026年秋、彼らが構築と破壊を繰り返しながら創造してきたこの“宮殿”と、是非向き合ってみて欲しい。

Written By 増田 勇一


最新アルバム


グレタ・ヴァン・フリート『Palace For The People』
2026年10月9日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music



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