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未だ輝き続けるフリーダの80年代最後の作品『Shine』

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1984年の春、その年の9月発売予定のフリーダのアルバム『Shine』のレコーディングがパリで行われている間、マドンナの大成功によって女性ポップ・アーティストの成功とはどういうことかが華々しく再定義されていた。多くの女性アーティストにとって、突如として気持ちが冷めてしまった瞬間でもあった。しかしフリーダは前作『Something’s Going On (邦題: 予感)』のリリースから18ヶ月が経過し決定的に市場の状況が変わっていたとしても、前作よりも徹底した最新のポップ・ロック・アルバムを作ろうとしていた。

前作と同じく再びフィル・コリンズにプロデューサーを依頼したものの、フィルが本業であるジェネシスの活動と成功していた彼自身のソロ活動で多忙を極めていたため、U2とシンプル・マインズのプロデューサーであった、スティーヴ・リリーホワイトを起用することになった。彼のよりハードなロックへのアプローチはフリーダの旋律豊なポップ・ボイスのエッジさをより高めようとし、同時にアルバムに収録される10曲を野心的で、時には困難なワイドスクリーンの広さに入れようとしていた。

アルバムに収録された曲は、元アバのメンバーに人々が期待する音の幅を広げることになった。アルバムには、前作に引き続き幅広い作曲家たちが参加することになった (スティーヴ・リリーホワイトの妻、カースティ・マッコールの名前もアルバムの3曲にクレジットされている)。「Slowly」はフリーダの前のバンド仲間であるアバのベニーとビョルンによる作曲で、アルバム『Shine』に最も親しみのある瞬間を提供してくれている。トレードマークでもあるハーモニーがより印象的に押し出され、2人組が持つ作詞作曲への特別な才能を見せたもうひとつの好例だ。ミッド・テンポな曲で意外にもシングル曲となった「Twist In The Dark」とのコントラストはこれ以上、大きくなりようがない。

ほとんど国のマーケットにおいて、刺激的なタイトル曲がシングル曲として選ばれたが、チャートでの成績は控えめであった。エディ・ハウエルと「Jeans On」で有名になったデヴィット・ダンダスによって書かれた力強いバラード曲「Come To Me (I Am Woman)」はいくつかのヨーロッパ地域で勢いよく宣伝されたが、予測通りの成功とはならず、UKチャートでは1985年10月になんとか82位に入ったぐらいだった。ビッグ・カントリーのフロントマンであるスチュアート・アダムソンが参加した他のシングル盤「Heart Of The Country」もイギリスでリリースされた。この曲はちょうど1年前に世界的にヒットしたビッグ・カントリーの『The Crossing』収録曲を思い出させるものになったがこれもチャート的な成功には至らなかった。プロデューサーのスティーヴ・リリーホワイトはこのアルバムの制作業務もこなして『Shine』のプロジェクト全体の協力的な雰囲気をより一層強化させている。

のちにクライミー・フィッシャーの一人としても名声を得ることになる有名なソングライターであったサイモン・クライミーは、「One Little Lie」と粋な「Chemistry Tonight」を作曲しアルバムに貢献した。後者はカースティ・マッコールと、アリソン・モイエのコラボレーターであるピート・グレニスターとの共作。ピート・グレニスターはアルバムのクロージング曲「Comfort Me」も制作している。

「Don’t Do It」はフリーダが制作した楽曲としてクレジットされていた。この切ないバラードは、フリーダを世界的なスターにしたアバの時のような雰囲気で包み込み、アルバムのひとつのハイライトとしても映える曲だ。この暖かく、軽快な曲がより多くラジオで流れて露出が増えていれば、このアルバムは間違いなくもっと注目を浴びただろう。しかし、この曲が日陰に置かれていたという事実こそが、当時のムードを反映していると言えるのかもしれない。現代の私たちには実感が湧かないのは、80年代半ばの時点では、世間はまだアバの創造力の凄さに気がついていなかったし、アバのメンバーたちも自分自身が達成した成功から距離を置いているようだったのだ。

この後フリーダは、ソロ・キャリアでの多忙な日々から長い休暇をとることにして、たまにプロジェクトをやったり、ライヴに出演したりといった活動だけで10年間を過ごした。『Shine』はヨーロッパで数えきれないほどチャートインすることはなかったが、フリーダが1996年に復活してリリースしたニュー・アルバム『Djupa Andetag』は、彼女の母国語のスウェーデン語でレコーディングされ、故郷では1位を獲得してかなりのヒット作となった。

2005年に『Shine』を振り返ったフリーダは、このアルバムはちょっとやり過ぎたところがあったかもしれないけれど、生き生きとした衝動的な曲のコレクションで、当時よりも現在の方が時代に合うかもしれないと語っている。あるアメリカ人のスーパースターが1984年にこのパワフルなタイトル・トラックをレコーディングしていたとしたら、30数年経った今もそれを聴いていたに違いない。



Shine: 未だ輝き続ける80年代フリーダの最後のソロ・アルバム

フリーダ『Shine』

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