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リアーナ『Loud』解説:トラウマを解消してポップ界に復帰、世界が待ち望んでいたパーティアルバム

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2010年に行われた「Last Girl On Earth」ツアーで、リアーナ(Rihanna)はセットリストだけでなく、燃えるような赤い髪型で観客を魅了した。これは、22歳のシンガーにとって、美学的にも音楽的にも変化をもたらすものだった。

2009年に発売した4枚目のアルバム『Rated R』で精神的・肉体的トラウマを解消したリアーナは、MTVビデオミュージックアワードのパフォーマンスでマドンナのコスプレをしたり、5枚目のスタジオ・アルバム『Loud』で新たな時代に乗り出したりと、完全にポップモードになっていた。

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ユーロダンスとリアーナ

リアーナは、MTVビデオミュージックアワードに出演する2日前に、『Loud』からのファースト・シングル「Only Girl (In The World)」を発表した。リアーナは5年前からダンス・ポップの分野で確固たる地位を築いてきたが、「Only Girl (In The World)」のアップテンポなベースは、リアーナにとって全く新しいサウンドだった。

「Only Girl (In The World)」の脈打つビートは、EDMがポップの世界を支配していたことを示しているが、ユーロダンスがこれほど良いサウンドだったことはなかった。

Rihanna – Only Girl (In The World)

『Loud』には多くのヒット曲が収録されているが、ドレイクのアシストによるシングル「What’s My Name」では、リアーナがR&Bの限界に挑戦し続けている。

続くシングル「Raining Men」は、デビュー・アルバム『Music Of The Sun』以来、リアーナが完成させてきたダンスホール・サウンドに回帰したもので、エレクトロ・スカのリディムにアドリブを乗せている。この2つのシングルで、リアーナはさらに2つのNo.1ヒットを獲得したが、彼女の快進撃はまだ始まったばかりだった。

Raining Men

 

淫靡さと反抗的な態度

2010年11月12日にリリースされた『Loud』は、みなのツボを押さえた作品だった。バルバドス出身の彼女は、壁の花のような存在ではなかったが、5枚目のスタジオ・アルバムでは、より大胆に、より反抗的になっていった。

アルバムのオープニング曲「S&M」は、リアーナがザ・キュアーの「Let’s Go To Bed」のフックを使って「棒や石で骨を折られても、鎖やムチで興奮する」と魅力的に歌うサビで大きな波紋を呼んだ。世界中の放送局が「Only Girl」のバブルガムのようなエネルギーを受け入れる一方で、多くの放送局は「S&M」の淫靡さを拒否し、放送禁止にするところもあった。

この曲のビデオでリアーナは、『Rated R』時代に彼女の一挙手一投足に飛びついたマスコミをあざ笑い、有名なゴシップ記者のペレス・ヒルトンに拘束され猿ぐつわをさせた。その後、同じくタブロイドの女王であるブリトニー・スピアーズとのリミックスで、「S&M」は全米シングルチャートのトップに躍り出り、彼女にとって10枚目のNo.1シングルとなった。

Rihanna – S&M

『Loud』に収録された他の楽曲も、リアーナの反抗的な態度を誇示し続けている。エンヤ「One By One」をサンプリングした「On Fading」は、ハンドクラップと808サウンドをバックに、平凡な人間関係を断ち切るような曲だ。

また、「Raining Men」では、さらに一歩踏み込み、ニッキー・ミナージュのヴァースとザ・ウェザー・ガールズの1982年のヒット曲「It’s Raining Men(ハレルヤ・ハリケーン)」のサンプリングを用いて、猫なで声の男や恋人を拒絶する。

Fading

 

エネルギッシュなポップ

『Loud』は爽やかなポップに満ちたアルバムだが、リアーナは恋愛のマイナス面にも触れている。カントリー・ポップ調の「California King Bed」では、パートナーとベッドを共にしながらも、「1万マイルも離れている」と感じることについて歌っている。

Rihanna – California King Bed

「Man Down」は、ナイトクラブでの性的暴行事件を描いたビデオだ。リアーナ演じるトラウマを抱えた主人公は、復讐のために、カリブ海版グランドセントラルステーションの野外で加害者を殺害することになる。

前年の『Rated R』から続く銃の象徴は、レゲエのビートに乗って自分の武器を「22/I call her Peggy Sue(ちっちゃな22口径  その銃をペギー・スーって呼んでいた)」と表現しており、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ「I Shot The Sheriff」の2010年版のような作品となっている。

Rihanna – Man Down

「Complicated」では、リアーナは『Loud』というタイトルの期待に応え、トランスの影響を受けたダンスポップナンバーで自分のフラストレーションを歌い上げた。この曲は、躍動的なハウスビートでありながら、混沌としたパーカッションとダークなシンセサイザーが、典型的なクラブミュージックとは一線を画すサウンドを生み出している。

Complicated

アルバムの最後を飾る「Love The Way You Lie (Part II)」は、エミネムの『Recovery』に収録されたこの夏の大ヒット曲の続編だ。今回はリアーナがパワフルなヴォーカルでリードし、エミネムがヴァースで罵詈雑言を浴びせる中、女性らしい視点で物語を展開していく。

Love The Way You Lie (Part II)

 

大成功したアルバム

リアーナのアルバムは、彼女の次の時代を予見することなしに完成することはない。官能的なオルタナティヴR&Bの「Skin」では、マドンナが1992年に発表したアルバム『Erotica』時代のような洗練されたビートから爆音のギターリフに変更し、彼女の誘惑を倍加させた。

『Loud』からの最後のシングル「Cheers (Drink To That)」は、アヴリル・ラヴィーン2002年のシングル「I’m with You」のヨーデルをサンプリングしたアンセミックロックで、切ないバラードが南国のシンガーに変身している。

Rihanna – Cheers (Drink To That)

『Loud』は全米アルバムチャートで3位を記録し、最優秀アルバム賞を含むグラミー賞3部門にノミネートされた。このアルバムのダンス中心のサウンドは、アメリカ以外の地域でも大成功を収め、ほぼすべての主要地域でチャート上位にランクインを記録。

リアーナがポップス界に復帰したことを示すこのアルバムは、新しい10年の始まりにチャートを席巻したEMDを使用したポップスの中で、彼女が独自の存在感を示すことができると証明したのだった。

Written By Da’Shan Smith



リアーナ『Loud』
2010年11月12日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music



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