親密でありながらも威厳のあるメロディ・ガルドー初のフルライヴ盤『Live In Europe』

2月 12, 2019


親密でありながらも威厳のあるメロディ・ガルドー初のフルライヴ盤『Live In Europe』

ドアがひとつ閉まると、今まで知らなかった、もしくは求めてすらいなかった新しい道、新しいチャンスが明らかになるもうひとつのドアが開くときがある。そしてそれはメロディ・ガルドーにも起こった。2003年、フィラデルフィアで18歳だった彼女が自転車ごと車ではねられたとき、彼女の人生は終わったも同然だった。幸運にも命は助かったが、絶えず続く痛みが残り、人生を左右する頭部と脊椎の損傷と闘わなければいけなかった。

しかしチャンスはそこにあった。彼女が病院のベッドに横たわっている間、チャンスへの新しい扉が彼女のために開かれたのだ。メロディ・ガルドーは歌うこと、その後、曲を書くことを見つけたのだ。それは心の癒しやセラピーの一種というだけでなく、彼女の認識能力を回復する手助けとなる脳のリハビリテーションの一種にもなった。メロディ・ガルドーにとって音楽は、彼女が酸素として存在するために不可欠なものだ。そして彼女にとってその重要性は、彼女が歌う心からの音すべての中で感じられる。

メロディ・ガルドーの特徴は親密さとストーリーテリングにある。彼女は、パリの女性歌手エディット・ピアフのむきだしで熱のある感情に、ペギー・リーのクールでコケティッシュな手法を融合させ、震えるビブラートを完備した静かなトーチ・ソング風の歌唱法と定義される独特のサウンドを考えついた。彼女のアプローチは明らかに控えめだが、感情では非常にハイでもある。

2008年の『Worrisome Heart』、2009年の『My One & Only Thrill』、2012年の『The Absence』、そして2015年の『Currency Of Man』と4枚のスタジオ・アルバムをデッカ・レコードからリリースした間に、彼女はジャズ、ブルース、ワールド・ミュージック、ソウル、ゴスペルを探求し、シンガーとしてもパフォーマーとしても、他に存在しない独自の市場を切り開いた。そして彼女はこれまでに「Worriesome Heart」や「Who Will Comfort Me」、「Baby I’m A Fool」などのヒット・シングルを残し、幾つかのゴールドとプラチナ・アルバムを獲得したヨーロッパでも大きなファン層を獲得した。

彼女が大陸にまたがって楽しんだことに賞賛が与えられたのは、もしかすると適切なのかもしれない。2012年から2016年の間、バルセロナからリスボン、はたまたパリやユトレヒト、アムステルダム、ロンドンと多岐にわたるロケーションで、ツアー中にレコーディングした多数の曲は彼女の最新作品に収録された。フィラデルフィア育ちの彼女がライヴ音源をリリースしたのはこれが初めてではない。これまでに『Live In Soho』(2009年)、『Live In Paris』(2010年) と2枚のEPをリリースしているが、CD2枚組/LP3枚組コレクションの『Live In Europe』は17曲で構成され、彼女にとっては初のフル・ライブ・アルバムとなっている。

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このジャケットが暗示するように、『Live In Europe』はシンガーとして、そしてソングライターとして栄光に満ちたメロディ・ガルドーの姿を明らかにしている。このジャケットには、むき出しで、ありのまま、傷付きやすく、公の場で彼女の心と魂をあらわにされている。この写真はほぼ間違いなく、メロディ・ガルドーがステージを歩くときに感じることを象徴したものだろう。そして何よりシンガーをゾクゾクと感動させる彼女の観客との一体感も感じられる。約300の公演の中から、彼女自身がキュレートし、編集したこのライヴ・アルバムはすべての彼女のファンに対するギフト、そして感謝として作られた一枚であることを彼女はアルバムのライナー・ノーツに綴っている。結局のところ、最終的にアルバムの収録曲を選択する彼女の判断を動かしたのは、「単純に “フィーリング” に近い。郷愁や記憶。完璧さでもなく、エゴでもなく、デモンストレーションでもない。ただライヴの時に起こったこと。そこで起こったライヴだけが、唯一 “ハート” を無視できない要素だから」と彼女は書いている。

親密さを伝えるメロディ・ガルドーからのギフトは、彼女の堂々とした声が、か細いが意味ありげなアレンジメントに漂う哀愁的なオープニング曲「Our Love Is Easy」によって最も適切に表現されているであろう。さらに、メロディが頭に残る「Corners Of My Mind」や彼女の代表曲のひとつ「Baby I’m A Fool」(アルバムにはウィーンでレコーディングされたもの、そしてロンドンでレコーディングされたものとそれぞれ2つのバージョンが収録されている)は彼女の脆弱さと繊細さを最もうまくとらえている。なおかつ、ドラチックさは外側に表現されるのではない。むしろドラマチックさやロマンチックをテーマにした彼女の曲は幾つか脆弱性があるにも関わらず、『Live In Europe』は、自信がなく仲間はずれになっている彼女を感じてしまうかもしれない。しかしそんな予想は、メロディ・ガルドーによって粉々に打ち砕くのである。

『Live In Europe』で、メロディ・ガルドーは真の自分をさらけ出し、ダイナミックでアップテンポな曲を披露しながら居心地のいい領域も見つけ出した。彼女が “嫌なやつ” と呼ぶ彼女の元ボーイフレンドに捧げた曲「Tchao Baby」は、けたたましく鳴るホルンを前面に押し出し、ブルースとゴスペル要素が爆発的に混合された一曲である。胸がズキズキする「Bad News」は大きなサックスが鳴り響き、より芝居がかったボーカル・スタイルの中で感情を吐き出すメロディ・ガルドーを見ることができ、「Who Will Comfort Me」では物悲しい音を出すトランペットに、メロディ・ガルドーが加わるシャッフル・グルーブによって動かされる。

このライヴの中で最も独特の雰囲気があるパフォーマンスは、「The Rain」のシネマ風ライヴ・ヴァージョンという形で収録されている。次第に強くなるタムタムのドラムの音とともに始まりながら、ヴァイオリン、それからジャズ風のサクソフォンが入る前に、まるでノワール映画をほうふつさせる雰囲気となる。大荒れの天気が絶望的な恋愛関係の背景を作り上げるという緊迫したストーリーを彼女が伝え始め、「The rain came down in sheets that night… /あの夜は滝のように雨が降った」と歌い始める彼女の声を耳にするのはたっぷり4分間が過ぎたあとだ。

メロディ・ガルドーはまた官能的なタンゴ (「Goodbye」) や、フル・バンドのアレンジメントとともに、アンティーク・スタイルのジプシー・ジャズが盛りだくさんで刺激的な (「Les Etoiles」) も披露している。しかしながら、時には、シンプルな曲がより効果的でもある。ゾクゾクさせるという点では、ジュディ・ガーランドが歌った「Over The Rainbow」から余分なものを取り除いたサンバ・スタイルで、メロディ・ガルドーの明るい声にギターとパーカッションの伴奏がついただけの曲がそうだろう。それは彼女の声が私たちの心や魂と親密に気持ちを交わし合うと同時に、ステージを意のままにするメロディ・ガルドーがどのように確実なパフォーマーとして成長したかを見せてくれるアルバム『Live In Europe』の中で見られる多くの魅惑的瞬間のひとつでもある。

Written By Charles Waring / Photo By Franco Tettamanti


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メロディー・ガルドー『Live In Europe』

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