ブルーノートのアルバム・ジャケット20選:アートワークを革新した傑作たちを全解説

2月 13, 2019


ブルーノートのアルバム・ジャケット20選:アートワークを革新した傑作たちを全解説

フランシス・ウルフによるアイコニックな写真と、リード・マイルズによる画期的なタイポグラフィによって、ブルーノートの傑作アルバム・ジャケットは、グラフィック・デザインの主流に影響を与えた。

1950年代と60年代のジャズのアルバム・ジャケットにおいて、ブルーノートがトップランナーであったことは疑う余地がない。ブルーノートはあらゆる面で最高のレコードを作ろうと献身的な努力を惜しまず、魅力的なジャケット写真と、それに付随する裏ジャケットのライナーノーツに至るまで、パッケージにおいても決して音楽の質に引けを取ることはなかった。ブルーノートの共同創設者だったフランシス・ウルフが所属ミュージシャンの写真を撮っていたが、その写真を用いた人目を引くデザインを考案したのは、1955年にレーベルに加入したデザイナーのリード・マイルズである。そして今でも、ブルーノートで最高のアルバム・ジャケットはどれか、ファンの間ではよく議論となっている。

リード・マイルズは1967年までブルーノートに在籍。在職中の11年間、彼はさまざまなデザインを手掛けたが、その多くが、太字のタイポグラフィ(エクスクラメーション・マークも多用)と薄く色づけされた写真の斬新な組み合わせを特徴としていた。彼は写真を大胆にトリミングすることもあったため、フランシス・ウルフは自分の写真を傷つけられたと感じ、気分を害したこともあったようだ。しかし、リード・マイルズのデザインは、ブルーノート作品のジャケットにアヴァンギャルドなエッジを加え、レコード店の棚でひときわ目立つようになった。なにより大事なのは、こうしたジャケットによってジャズのマーケティングやプロモーション方法が変化し、さらにはアフリカン・アメリカンのミュージシャンのイメージをも変化させたことだった。

1950年代から60年代にかけて、リード・マイルズが手掛けた傑作アートワークの数を考えると、ベスト20を選ぶのは困難な作業である。最終的には、各々の好みの問題となるため、以下の20点のアートワーク(順不同)は、決定的なリストではなく、個人の観点から選ばれたものである。

もしこのチョイスに異議があるなら、コメント欄にて、あなたが選ぶ最高のブルーノート・アルバム・ジャケットを教えていただきたい。とはいえ、リード・マイルズとフランシス・ウルフのコラボレーションが唯一無二であることには異論がないはずだ。彼らの手によるアルバム・ジャケットは本来の脇役という枠を越えて、それ自体が独立した芸術作品と見なされている。

そしてジャケットを眺めながらブルーノートを聴こう。「1939年の創業以来、最高峰のジャズ・レーベル」のプレイリストは こちら 。そして画面をスクロールしていただきたい。ブルーノートの傑作アルバム・ジャケットは以下のとおりだ。

 

デクスター・ゴードン『Go』(1962年)

リード・マイルズはけっして多くの色を使うことなく、黒と白のコントラストを頻繁に用いた。だがここでは、オレンジと青を使って劇的な効果とアクセントを演出し、特に質の高いアルバム・ジャケットが完成した。ブルーノートのファンならば真っ先に頭に浮かぶ一枚だ。青で彩色されたデクスター・ゴードンの小さな写真が長方形の枠にぴたりと納められ、シンプルでありながらも非常に大きな効果を出している。テーマが見事に表現され、芸術となっている。

ドナルド・バード『A New Perspective』(1963年)

リード・マイルズが手掛けたジャケットの中で、写真がグラフィック・デザインよりも重要な役目を担っている数少ない作品のひとつである。ドナルド・バードは、ジャガーEタイプの後ろで小さく写っている。珍しい角度から撮影されたジャガーのヘッドライトが一際突出し、ヴィジュアル面でもアルバム・タイトルを象徴している。

エリック・ドルフィー『Out To Lunch』 (1964年)

ブルーノートを代表するこのジャケットから、リード・マイルズがいかにして日常のありふれた写真(店のドアを撮影したスナップ写真)を太字のタイポグラフィで囲み、かすかな青を加えることで、忘れがたいイメージへと作り変えることができるかが見て取れる。『Out To Lunch』のリリース時に、サックス奏者のエリック・ドルフィーはすでに亡くなっていた。故に、「戻る」(will be back)と書かれた札が哀切なアイロニーを感じさせる。

ハンク・モブレー『No Room For Squares』 (1964年)

リード・マイルズはヴィジュアルを使った洒落を好んだ。咥え煙草にサングラスという粋な風貌のハンク・モブレーが、スクエアな(堅苦しい)男ではない証として、その顔をスクエア(四角)ではなく円で囲んでいる。これは、写真を撮ってから加工したものではなく、もともとこの円は柵の一部で、その後ろにモブレーが立っていた。斬新なアングルから撮影したがるフランシス・ウルフの嗜好と、リード・マイルズの創意に富んだデザインにより、2人が手掛けたブルーノートのアルバム・ジャケットの中でも屈指の一枚となった。

ジョー・ヘンダーソン『In ’N Out』(1964年)

テナー・サックス奏者ジョー・ヘンダーソンがブルーノートからリリースした5枚のアルバム・ジャケットは、どれも記憶に残るが、これが間違いなくベストである。60年代初期のリード・マイルズとフランシス・ウルフによる典型的な作品であり、極小のアーティストの写真が(ここでは inの iの上の点となっている)、巨大なタイポグラフィに圧倒されている。なかでも、“in”の“n”が矢となって“out”の“u”と“t”に変形しているところに、比類なきリード・マイルズの独創性が表れている。まさに時代を先取りした作品であり、ブルーノートの革新が、デザインの主流となった例である。

アンドリュー・ヒル『Judgement!』(1964年)

フランシス・ウルフの撮影による荒涼とした写真の中で、作曲家兼ピアニストのアンドリュー・ヒルは、まるで逃走中の犯人であるかようにスポットライトに照らし出され、その背後には黒く不穏な影がのしかかっている。最小の演出で最大の劇的効果を生み出すシンプルな手本とも言える。リード・マイルズによる緑と青のレタリングは写真を引き立て、きわめて力強いデザインとなった。フランシス・ウルフはニューヨークのセントラルパークにある地下鉄の入口で、この写真を撮った。

ジャッキー・マクリーン『It’s Time!』(1965年)

リード・マイルズのエクスクラメーション・マークへの愛が露わになった、ブルーノートを代表する一枚。エクスクラメーション・マークは合計で244個あり、『ギネスブック』に申請しても認められるだろう。アルバム・タイトルの勢いと興奮が一段と強められている。「これがジャズの熱い最前線から掘り出したばかりの音楽だ、さあ聴くんだ」とリスナーに向けて大声で叫んでいるアートワークだ。写真が思いきり縮小されているところもおもしろい。右上の端にまるで切手のように、ジャッキー・マクリーンが小さく写っている。

ラリー・ヤング『Into Somethin’』(1964年)

ブルーノートからのファースト・アルバムで、ラリー・ヤングは単なるジミー・スミスのフォロワーではないことを証明した。ハモンド・オルガンをジャズの文脈で演奏し、これまでにない音楽を追求しているアーティストであることを世に知らしめたのだ。『Into Somethin’』のジャケットに採用されたこの素晴らしい写真では、ロシア風のコサック帽をかぶった冬仕様のラリー・ヤングが、巨大な建物の横で小さく写っている。フランシス・ウルフの写真の中でも、ことのほか雄弁な一枚だ(この写真んはヤングが1964年の終わりにパリに旅行した際に撮影された)。写真をオレンジに彩色しただけのリード・マイルズのシンプルなデザインが、写真を見事に引き立てている。

ジミー・スミス『Midnight Special』 (1961年)

スーツケースを片手に電車からぶら下がるジミー・スミスを見事に捉えたフランシス・ウルフによるカラー写真は、リード・マイルズのタイポグラフィをジャケットの一隅へと追いやった。普段のリード・マイルズは容赦なくフランシス・ウルフの写真をトリミングしたが、良質の写真の価値も理解していた。タイポグラフィではなく写真にストーリーを語らせることで、グラフィック・デザインの力にほとんど頼ることなく、ブルーノートの傑作アルバム・ジャケットが完成した。

フレディ・ローチ『Good Move!』(1963年)

ソウル・ジャズ・オルガン奏者、フレディ・ローチが実際にチェスの愛好家であったかどうかは不明だが、このジャケットにおいてはその役を巧みに演じ、リード・マイルズとフランシス・ウルフのコラボレーションの中でも特に目を引く作品となった。リード・マイルズ定番のスタイルで、色使いは最小限に抑えられているが、緑とベージュのレタリングの存在感により、青く彩色したローチの写真が際立ち、そこにもはやお約束とも言えるエクスクラメーション・マークが加えられている。

アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ『Moanin’』 (1958年)

ブルーノートの傑作アルバム・ジャケットは、他のレコードレーベルならば怖気づくほどの領域にまで足を踏み入れる。特にブラック・ミュージシャンの作品においてはその傾向が顕著だ。『Moanin’』には、ポール・ホエフラーが撮影したザ・ジャズ・メッセンジャーズのリーダーのポートレートが使われており、いくぶん無機質に思えるほどシンプルなものだが、リード・マイルズが緑がかった黄をうっすらと加えたことで、新たな一面が引き出されている。フォーマルな蝶ネクタイで正装したアート・ブレイキーは、いつもならドラムを叩いて汗をかいているか、あるいは口を開けて笑っているところを撮影されているが、ここでは物思いにふける瞬間を捉えられている。

ウェイン・ショーター『Speak No Evil』(1966年)

リード・マイルズはフランシス・ウルフが撮影した写真をトリミングしたことで名を馳せたが、この『Speak No Evil』のアートワークでトリミングしたのは、自らが撮った写真である。サックス奏者のウェイン・ショーターと、当時の妻テルコ・ナカガミの顔の部分を切り取っている。二人ともコバルトブルーに艶めき、その上部は白い水平線に縁どられ、そこに黒でアルバム・タイトルが書かれている。タイトルの上に刻印された、赤いキスマークが魅力の要だ。

ザ・スリー・サウンズ『Out Of This World』(1962年)

花に囲まれたアフリカン・アメリカンの少女のポートレートで鮮やかに彩られた『Out Of This World』のジャケットは、当時のブルーノートのジャケットの中でも異色を放つ存在だが、ゆえにブルーノートの傑作アルバム・ジャケットの傑出した1枚となった。こうして同レーベルは黒人モデルを起用しはじめる、60年代が進むにつれて、さらに黒人モデルの起用を増やしていった。上部の広い白地にレタリングが配置されているのは『Speak No Evil』で使った手法と同じで、フランシス・ウルフの写真が持つ魅力をより引き立てている。

ルー・ドナルドソン『Midnight Creeper』 (1968年)

1967年にリード・マイルズがレーベルを去った後(ブルーノートのメイン・プロデューサー兼共同創設者のアルフレッド・ライオンが、前年にレーベルをリバティーに売却して引退したすぐのことだった)、フォーレンザ・ヴェノサ・アソシエイツがブルーノートのアートワークの多くを手がけるようになった。ソウル・ジャズ・サックス奏者ルー・ドナルドソンによるこのアルバムも、彼の手によるものだ。リード・マイルズによる独特のタイポグラフィこそないものの、猫を乗せて黒のドレスに身を包んだ女の写真は魅惑的で、最高のブルーノート・アルバム・ジャケットに加える価値がある。また『Midnight Creeper』は、ブルーノートが二つ折りカヴァーを採用したごく初期の1枚であり、メインの写真が前面と背面にまたがっている。

ソニー・クラーク『Cool Struttin’』(1958年)

リード・マイルズとフランシス・ウルフのコラボレーションを象徴するこのジャケットから、1950年代、性がどのように商品化されていたのかがよく分かる。モデルの下肢のみに着目して太腿から下を写真に収め、ペンシル・スカートと尖ったスティレット・ヒールの靴に焦点をあてている。さらに、ソニー・クラークのピアノがタイトル曲で奏でる、溌溂とした大都会の息吹もうかがえる。

スタンリー・タレンタイン『Joyride』(1965年)

「ミスター・T」としてお馴染みのソウル・ジャズ・サックス奏者は、車のヘッドライトのクロム・カウリングにぼんやりと映っているだけだ。この巧妙にレイアウトされたジャケットは、写真もデザインもリード・マイルズが手掛けている。よく見ると、スタンリー・タレンタインがテナー・サックスを抱えて、茂みにしゃがんでいるのがわかるだろう。曲名を列挙したリード・マイルズによるレタリングは、スタンリー・タレンタインを囲む茂みの色合いに調和している。

ケニー・ドーハム『Trompeta Toccata』 (1965年)

リード・マイルズは派手なカラー(ここでは赤、ピンク、紫、オレンジ)で彩られた大文字を並べてアルバムの曲名を強調し、それによって『Trompeta Toccata』はブルーノートの傑作アルバム・ジャケットの中でも抜群に目立つ1枚となった。トランペットを抱えたケニー・ドーハムの白黒写真は、縮小されて縦長の長方形に収まり、まるで人文字のエクスクラメーション・マークのようである。

リー・モーガン『The Rumproller』(1965年)

マイルスは白の背景に大きな黒と赤茶色のレタリングを配置して、シンプルながらもインパクトのあるコントラストを作り上げ、『The Rumproller』は革新的なジャケットとなった。最も印象に残るのは、レタリングがまるでローラーか何かで平らにされたように引き伸ばされている点だ。単純だが目新しく、極めて強い印象を与える。リード・マイルズのデザインの大半の例に漏れず、アーティストの写真(ここでは肩にホーンを置いたリー・モーガンの頭部のシルエット写真)は脇役にまわっている。

ボビー・ハッチャーソン『Stick-Up!』(1968年)

カリフォルニア州出身のヴィブラフォンの名手であるボビー・ハッチャーソンが、まるで武器のようにマレットを構えた瞬間をフランシス・ウルフが撮影したこの写真から、冗談めかしたアルバム・タイトルが生まれたことに疑いはない。他の多くのブルーノートの傑作アルバム・ジャケットと同様に、トリミングされた写真(ここではセピアに着色されている)と白の背景、そして原色の太字のレタリングの組み合わせが心を奪う。

フレディ・ハバード『Hub-Tones』(1962年)

何げなくアルバムに目を向けた相手に対して「俺を見ろ!」と叫んでいるかのようなジャケットだ。白地を背に、太くて長い黒の柱が9つ並んでいるだけという、極めてシンプルなデザインだが、思わず目を見はる1枚である。赤い光を浴びてホーンを吹くフレディ・ハバードは、1本だけ飛び出した柱の中に写っている。赤茶色に輝くハバードの名前以外はすべて黒というレタリングには、簡素でありながら、空間を優雅に表現する手法が採用されている。このアートワークがボブ・ディランのアルバム『Shadows In The Night』のジャケットに影響を与えたのは明らかだ。

Written By Charles Waring



高音質UHQ-CD仕様
オリジナルLPライナーノーツの日本語訳付
1枚組価格:1,944円(税込)で発売

購入はこちら

Share this story
Share

News
Features
uDiscover Playlists
Competitions
Stories
Artists
Quizzes
Join
日本版uDiscoverSNSをフォローして最新情報をGET!!

uDiscover store

, , , , , , , , ,

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です