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メガデス『Rust In Peace』解説:生まれ変わったメタル・サウンドを披露した記念碑的作品

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『Rust In Peace』はメガデスに新たな時代が到来したことを印象付けるアルバムだった。それは、我々のよく知る現在のメタルが形作られた時代である。

このグループのキャリアは、頻繁に行われたメンバーの出入りがあるたびに新たなステージへと移り変わっていったが、このアルバムには脱退したチャック・ビーラーの後任として『So Far, So Good… So What!』のコンサート・ツアーの最中に加入したドラマーのニック・メンザと、ジェフ・ヤングの後任として加入したギタリストのマーティ・フリードマンが初めて参加したアルバムになった。

ここに長年グループを支えたベーシストのデヴィッド・エレフソン、ヴォーカルとギターのデイヴ・ムステインという4人が、1989年から1998年まで続いた“黄金期”のラインナップになった。

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新メンバーの加入

ギタリストのジェフ・ヤングの後任候補には当初、スラッシュの名前も挙がっていた。彼はガンズ・アンド・ローゼズのメンバーとして『Appetite For Destruction』をリリースする以前に、ムステイン、エレフソンの両名と実りあるジャム・セッションを重ねていたのだ。スラッシュは自伝の中でこのように綴っている。

「俺たちは遊び感覚で、最高にヘヴィなリフを考え出していた。滅茶苦茶にダークでヘヴィだったんだ」

だが結局のところ、スラッシュはガンズ・アンド・ローゼズを脱退することはなかった。同様にパンテラのダイムバッグ・ダレルもグループへの加入を打診されていたが、彼は兄でドラマーのヴィニー・ポールの同時加入を交換条件に提示した。ムステインは加入間もないニック・メンザへの義理からこの条件を呑むことができず、その後、マネジメント会社の勧めでマーティ・フリードマンと知り合うことになる。

プロデューサーが交代しなかったアルバム制作

バンドが直面した困難はこれだけではなかった。ムステインが、非番の警察官が乗る停車中の車に衝突する事故を起こしたのである。彼は薬物使用中の運転と薬物所持の容疑で有罪となり、裁判所から依存症の治療を命じられた。だがこの一件は、グループにとって結局はプラスになった。

ムステインはその10年で初めて薬物を絶つことに成功し、『Rust In Peace』のレコーディング・セッションは友好的な雰囲気の中で進んでいったのである。実際、プロデューサーのマイク・クリンクは制作開始から完成までを担当。アルバムの制作中にプロデューサーが交代することがなかったのは、メガデスにとってこれが初めてだった。

 

音楽史に残るスラッシュ・メタル・アルバムの内容

そうして完成したアルバム『Rust In Peace』は現在、音楽史に残るスラッシュ・メタル・アルバムと評価されている。アルバムは、それまでのメガデス作品の優れた点を集約し、極限まで強化したような作風になっていた。

オープニングを飾る「Holy Wars… The Punishment Due」は、解き放たれた暴れ馬が駆け出すような猛烈なリフが特徴の1曲。同曲は宗教戦争を題材としているが、アイルランドにおけるメンバーの経験が大きなヒントとなっている。同地では、フロントマンであるムステインの不用意な発言がカトリックとプロテスタントのファンの間での対立を生んでしまい、バンドが警護付きで会場を後にする事態となったのだ。この出来事を反映させた歌詞が次のように登場する。

Fools like me who cross the sea and come to foreign lands
ask the sheep for their beliefs
Do you kill on God’s command?
俺のような愚か者が海を越え
異国の地で弱き者に信仰を尋ねる
お前は神の命令なら人を殺すのか? 

Megadeth – Holy Wars…The Punishment Due

UFOに纏わる陰謀論を扱った「Hangar 18」では、ヘヴィなサウンドを一切損なうことなく、より洗練された曲作りを披露。後年のメガデスの音楽性を先駆けたともいえる1曲である。

Megadeth – Hangar 18

続く「Take No Prisoners」も、同じく戦争を題材にした猛烈なスピードのナンバーだ。2分間に及ぶインストゥルメンタルのイントロが印象的な「Five Magics」には、型破りな楽曲構成を巧みに取り入れるバンドのセンスが発揮されている。また、ムステインが薬物を絶ったことが奏功したのか、「Lucretia」や「Tornado of Souls」では一音/一打を正確かつはっきりと演奏するパートも見受けられるようになった。これはそれまでの作品に見られない新たな傾向だった。

シンプルなサウンドの「Dawn Patrol」や、一転して轟音が鳴り響く「Rust In Peace… Polaris」では、エレフソンとメンザがここぞとばかりに卓越した演奏スキルを披露。一方でフリードマンは全編に亘って見事なソロを聴かせており、これが『Rust In Peace』で顔を揃えた面々がメガデスの黄金期のラインナップとされる所以であろう。

Rust In Peace… Polaris (Remastered 2004)

『Rust In Peace』のリリースにより、メガデスは類稀なる演奏能力と先鋭的な奥深さをもったグループとして、メタル界における地位を確立した。「Holy Wars… The Punishment Due」と「Hangar 18」がシングル・カットされ、1990年9月24日に発表された同作はアメリカのアルバム・チャートで23位を記録し、全英チャートでは8位まで上昇した。1991年にはグラミー賞のベスト・メタル・パフォーマンス賞部門にノミネートされ、1994年12月にはプラチナ・ディスクの認定も受けている。

Written By Caren Gibson



メガデス『Rust In Peace』

1990年9月24日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music


最新アルバムメガデス『Rust In The Sick, The Dying…And The Dead!』
2022年9月2日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Amazon Music



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