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ジョン・ウィリアムズの映画音楽半生:フォースが彼と共にあらんことを

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Photo: Michael Kovac/Getty Images

“天才”という言葉は、その仲間であり幅広い解釈が可能な“アイコン”という言葉と共に、乱用され過ぎている。だがジョン・ウィリアムズに関しては、その両方が当てはまるだけでない。彼の才能の偉大さを言い表すには、それでは足りないほどなのだ。

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誰もが認める映画音楽の巨匠

ジョン・ウィリアムズは、サウンドトラックの作曲家というだけではなく、誰もが認める映画音楽の巨匠だ。ポスト=ロマン派風の現代クラシック音楽の創作者であると同時に、偉大な指揮者でありピアニスト、そしてジャズ愛好家でもあり、かつてゴスペル界を代表する歌手マヘリア・ジャクソンのためにピアノを弾いていたこともあった。91歳となった現在も、彼は自らの分野で驚異的な自然力を振るい続けている。

スティーヴン・スピルバーグとの長年に渡る関係は、ジョージ・ルーカスとの仕事同様、既知の事実だが、より最近ではハリー・ポッター映画でも人気を集めた。ジョン・ウィリアムズはこれまでに、5つのアカデミー賞と4つのゴールデン・グローブ賞を受賞。また英国アカデミー賞を7つ授与されているのに加え、グラミー賞は空前の22回獲得。映画音楽という専門分野において、数百万枚のアルバム・セールスを記録している。

キャリア初期

そういったきらびやかな活動とは別に、彼のレコーディング・キャリアの出発点は1950年代に遡り、彼は既にその頃にはコンチェルトや、オーケストラ、室内楽作品、そしてゴスペル音楽までを網羅していた。彼のディスコグラフィは実に広大で、無作為に選んでみても、例えばレナード・バースタインに捧げた曲「For New York」(1988年)では、ボストン交響楽団を指揮していて、当時のビル・クリントン大統領から依頼され、新ミレニアムを祝うアメリカ合衆国公式行事のために作曲した「American Journey」(1999年)も、彼が成し遂げてきた偉業のひとつに数えられる。

John Williams: American Journey (part 1 of 3) 1st & 2nd mvt

サウンドトラックの世界は、数々の偉大な作曲家と忘れらないテーマ曲で一杯だ。前述のレナード・バーンスタインの『ウェストサイド物語』を始め、バーナード・ハーマンの『市民ケーン』や『北北西に進路を取れ』や『サイコ』、モーリス・ジャールの『ドクトル・ジバゴ』、エンニオ・モリコーネの“ドル箱三部作”『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン』や『ウエスタン』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』、ヴァンゲリスの『ブレードランナー』や『炎のランナー』などなど、リストは膨大である。しかしこれら伝説のアーティスト達と共に、ジョン・ウィリアムズはその頂点を占めているのだ。

その生涯

米ニューヨーク州フローラル・パークで生まれたジョン・ウィリアムズは、1948年にロサンゼルスへ引っ越した後、ジュリアード音楽院で学ぶため再びニューヨークへと戻った。専攻はクラシック・ピアノと作曲。その後、西海岸に戻ると、ヘンリー・マンシーニとの親しい付き合いが始まり、映画音楽に必要なウィットや、簡潔さ、繊細さについて、彼から多くを学んだ。

チャイコフスキーやリヒャルト・ワーグナー風のライトモチーフの才を備えた、現代の新ロマン主義と評されることの多い我らがヒーロー、ジョン・ウィリアムズは、しかるべき時にしかるべき場所にいたと言える。ミュージシャンとしては、エルマー・バーンスタインや、ジェリー・ゴールドスミス、ヘンリー・マンシーニらの作品に参加し、成功を収めていたとはいえ、やがて後に史上最も高い売り上げを記録した映画音楽トップ20のうち8作品の作曲を手掛けることになるとは、彼自身、予想だにしていなかったことだろう。

『哀愁の花びら』から、スリラー作品『ロバート・アルトマンのイメージズ』まで、様々な映画作品で音楽を担当する中、ジョン・ウィリアムズは短期間で多くを習熟した。こういった事実について知ることは、ジョン・ウィリアムズにとってスティーヴン・スピルバーグとの初コラボレーションとなった『続・激突!/カージャック』(テレビ映画『激突!』に続く、劇場映画としてのスピルバーグ監督デビュー作)と併せ、ジョン・ウィリアムズの才能の進化を辿る上で何よりも重要である。

Main Title/John Williams/Jaws (From The "Jaws" Soundtrack)

“アメリカ映画史上最も記憶に残る映画音楽”

1975年、彼とスティーヴン・スピルバーグとの友情は、映画『ジョーズ』で確固たるものとなった。誰もが聴いてすぐにそれと分かる最も有名なテーマ曲が同作に含まれていることは、多くの人が認めるところだ。例えばスタッカートを巧みに再解釈した『サイコ』のシャワー・シーンで流れる曲は、今も尚、古典的サスペンスの究極であり、公開時には観客の身をすくませ、映画館の座席の後ろに身を隠した人も少なくなかった。

しかし、それよりも、ウィリアムズのオリジナル・サウンドトラック『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977年)は、米国映画協会から“アメリカ映画史上最も記憶に残る映画音楽”に挙げられており、更に高い称賛を受けて続けている。

John Williams – Fanfare and Prologue (From "Star Wars: The Rise of Skywalker"/Audio Only)

なぜ彼の音楽が人々の共感を呼ぶのか、その理由は音楽学者でなくとも容易に理解できるはずだ。ジョン・ウィリアムズのテーマ音楽は、アクション(演技)に付随する伴奏というだけではなく、アクションそのものであることがしばしばあり、重要な出来事に先立ち、聴き手を未知の世界へ、すなわち水中や深宇宙へと連れて行ってくれるからである。

『スター・ウォーズ』の直後から、彼は途方もないペースで曲を作り続けていた。驚くべきことにそれと同じ年、ジョン・ウィリアムズは『未知との遭遇』の音楽で、指揮及びプロデュースを担当。未知の生命体と接触する重要な瞬間に流れる例の“5音”のモチーフは、今聴いても我々の涙を誘い、これもまたポップ・カルチャーを象徴する存在として引用される一節となっている。

Close Encounters of the Third Kind • Soundtrack Suite • John Williams

多くの作品

70年代末には、ジョン・ウィリアムズは世界的な称賛を得るようになっており、映画ポスターに彼の名前が記載されているのを見れば、驚異の世界が待ち構えていることが確約されていた。『ジョーズ2』と『スーパーマン』で彼の果たした役割は、誰も足元に及ばない域に到達(前者は1作目よりも恐ろしい箇所すらあった)。

更に信じられないほどのペースで、最高の作品が定期的に発表され続けていく、『1941』『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』『レイダース/失われたアーク<聖櫃>』は、探検の徴候や、愛国心、危険を恐れない豪胆な行動に満ちているだけでなく、純粋な音楽性に溢れたテーマ曲を作る際において、この作曲家が人々の感情に訴え、思った通りの結果を得る方法を知っているということを示す重要な指標となっている。映画館に足を運んだ人々は、ウィリアムズの曲が耳にこびりついて離れないまま家路に着くのだ。

Raiders March (From "Indiana Jones and the Raiders of the Lost Ark")

『屋根の上のバイオリン弾き』や『ジョーズ』そして『スター・ウォーズ』は、当然のようにアカデミー賞を受賞。その一方で、ジョン・ウィリアムズの同輩達は、より一層の努力を余儀なくされた。しかし、多くの作曲家が過去の栄光に満足して精進を怠っている間もウィリアムズは邁進し続け、『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』や、インディ・ジョーンズ・シリーズの映画音楽で、新世代の映画ファンを魅了。70年代同様、80年代にも決して消えることのない足跡を刻みつけた。

スティーヴン・スピルバーグとジョン・ウィリアムズが協力し合っていた時代を生きることが出来たことは、映画ファンにとって幸運である。スティーヴン・スピルバーグ監督にとり、恐らく最も個人的かつ感動的な映画『シンドラーのリスト』(1993年)では、ジョン・ウィリアムズの中のクラシックの才能が再び前面に押し出された。彼の作った曲は、その多くを優れたヴァイオリニストであるイツァーク・パールマンが演奏しており、多角的な雰囲気を探求する彼の能力を見事に具現化。

その多才さこそ、スティーヴン・スピルバーグがそもそも彼に惹きつけられた要因である。「作曲家として、ジョンは遥かにカメレオン的なんだ」と、スティーヴン・スピルバーグは指摘していた。「新たな映画を手掛ける度に、彼は自己改革を行っているんだよ」。それに対し、ジョン・ウィリアムズは「私とスティーヴンとの関係は、両立可能な相違点が沢山あった結果、築かれたものなんだ」と認めている。

Theme From Schindler's List

ハリウッドで最も静かな部屋

2012年発行のロサンゼルス・タイムズ紙に掲載されていたプロフィールでは、彼の仕事のやり方について、洞察が深められている。「ハリウッドで最も静かな部屋とは、ジョン・ウィリアムズが作曲を行うオフィスかもしれない」と、同紙は述べていた。

「最も頻繁にコラボしてきたスティーヴン・スピルバーグ監督の製作会社から程近い、ユニバーサル・スタジオの敷地内にあるバンガロー式住宅で、90年前に製造されたスタインウェイのグランド・ピアノに向かい、ウィリアムズは独りで曲作りをする。傍らにあるのは、一掴みの鉛筆の束と五線紙。そしてコーヒーテーブルの上には、読み古されたロバート・フロストとウィリアム・ワーズワースの詩集が積み重ねられている」

シンセサイザーやコンピューターに頼ることを拒むジョン・ウィリアムズは、昔ながらのやり方で作曲し、総譜に書く。彼のメロディー探しは、機械の影響を受けることはない。

その結果、生まれた音楽——近現代映画史上、最も認知度の高いテーマ曲の数々——は、スティーヴン・スピルバーグ監督が手掛けた長編映画26作品のうち、25本で二人が密接に協力し合ったという事実によって、より強固な存在となっている。そして尚も、ジョン・ウィリアムズがペースを落とす兆しは見られない。

彼の知性的なスコアは、更に新たな世代を魅了。その作品には、ネオ・ノワールSFカルト映画の名作『マイノリティ・レポート』や、『宇宙戦争』、「ハリー・ポッター・シリーズ」や、『戦火の馬』がある他、『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』と『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』を通じて伝統的スタイルに回帰、絶賛を受けた。

Anderton's Great Escape (Minority Report Soundtrack)

またジョン・ウィリアムズは、大ヒット映画の作曲家とは異なる顔も持っており、クラシックやスタンダードの演奏、ジョージ・ガーシュウィンへの敬意へを込めた指揮、オペラ歌手ジェシー・ノーマンや、中国系アメリカ人チェロ奏者ヨーヨー・マ、ヴァイオリン奏者ギル・シャハムらとの嬉しい共演で尊敬を集めている。彼は誇らしくも、高名なボストン・ポップス・オーケストラの名誉指揮者の地位を保持。彼を形容する“天才”という語に、更に“博織家”と“ルネサンス的教養人”という言葉が加わった。

作品を特徴付ける映画音楽を、60年以上に渡って作り続けてきたジョン・ウィリアムズ。彼は大いに名声を博しながらも、それに左右されることなく、人前に出たがらないシャイな男であり続けている。しかしながら、先頃再びスティーヴン・スピルバーグとタッグを組んだ『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』(同作が2016年夏の大ヒット作になるだろうという賭けでは番狂わせが起きた)のおかげで、彼は再び注目を浴びている。

また、スティーヴン・スピルバーグの新作となるディストピアSF映画『レディ・プレイヤー1』の音楽にも着手(最終的にアラン・シルヴェストリが担当に)。ああ、そして次のスター・ウォーズ映画も……。

2016年6月9日、ジョン・ウィリアムズが米国映画協会(AFI)の永年功労賞を授与された際、プレゼンター役を務めたのはスティーヴン・スピルバーグだ。これは、40年を超える同賞の歴史の中で、初めて作曲家が受賞するという栄誉であった。AFI会長兼CEOのボブ・ガゼイルは、次のように完璧に総括している。

「彼の才能は、正に文字通り、世界中の人々全てに、世代を超えて響き渡っています。 この人の曲を聞いたことがない人、それを聞いて元気になったことのない人は、1人もいません。 それこそ、アーティストが与え得る究極の影響力なのです」

この稀有な天才と、フォースが共に長くあらんことを……。

Written by Max Bell



ジョン・ウィリアムズ指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏
『John Williams in Vienna(ジョン・ウィリアムズ ライヴ・イン・ウィーン)』
2020年8月14日発売
CD+ブルーレイ / CD
iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music

CD収録曲
01. ネヴァーランドへの飛行(『フック』から)
02. 『未知との遭遇』から抜粋
03. 悪魔のダンス(『イーストウィックの魔女たち』から)
04. 地上の冒険(『E.T.』から)
05. 『ジュラシック・パーク』のテーマ
06. ダートムア、1912年(『戦火の馬』から)
07. 『ジョーズ』から組曲
08. マリオンのテーマ(『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』から)
09. メイン・タイトル(『スター・ウォーズ/新たなる希望』から)
10. レベリオン・イズ・リボーン(『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』から)
11. ルークとレイア(『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』から)
12. 帝国のマーチ(『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』から)
13. レイダース・マーチ(『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』から)
演奏:ジョン・ウィリアムズ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン 03, 13)
録音:2020年1月 ウィーン〈ライヴ・レコーディング〉

ブルーレイ曲収録曲:CDに6曲追加(3-5, 15-17)
01. ネヴァーランドへの飛行(『フック』から)
02. 『未知との遭遇』から抜粋
03. ヘドウィグのテーマ(『ハリー・ポッターと賢者の石』から)
04. 『サブリナ』のテーマ
05. ドニーブルーク・フェア(『遥かなる大地へ』から)
06. 悪魔のダンス(『イーストウィックの魔女たち』から)
07. 地上の冒険(『E.T.』から)
08. 『ジュラシック・パーク』のテーマ
09. ダートムア、1912年(『戦火の馬』から)
10. 『ジョーズ』から組曲
11. マリオンのテーマ(『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』から)
12. レベリオン・イズ・リボーン(『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』から)
13. ルークとレイア(『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』から)
14. メイン・タイトル(『スター・ウォーズ/新たなる希望』から)
15. 『シンデレラ・リバティー/かぎりなき愛』のテーマ
16. 決闘(『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』から)
17. 追憶(『シンドラーのリスト』から)
18. 帝国のマーチ(『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』から)
19. レイダース・マーチ(『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』から)
演奏:ジョン・ウィリアムズ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン3-6, 15-18)

録音:2020年1月 ウィーン〈ライヴ・レコーディング〉
20. アンネ=ゾフィー・ムターとジョン・ウィリアムズの会話(インタビュー)
映像: 1080i HIGH DEFINITION 16:9 ・ 60i
音声: DOLBY ATMOS / DTS-HD MASTER AUDIO 2.0 / DTS-HD MASTER AUDIO 5.1
日本語字幕on/off
本編:128分/インタビュー:27分





 

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