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フレディ・マーキュリー『Mr. Bad Guy』の魅力とは? クイーン復帰へのカンフル剤となったソロ作品

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「色んなアイデアが溢れ出てきて、クイーンの一員としてはできなかった沢山の音楽領域を超えてみたいという強い思いがあった」

フレディ・マーキュリーは1985年にソロ・アルバム『Mr. Bad Guy』を発表することを決心した当時の思いについてこう明かしていた。


 

「彼は素晴らしいミュージシャンだった」

『Mr. Bad Guy』は、報酬目当てではなく、好きで作った作品だった。『Mr. Bad Guy』の制作は1983年に始まり、完璧主義のフレディ・マーキュリーは完成までに2年近くを費やした。フレディ自身が11曲すべてを作曲し、ヴォーカル、ピアノ、シンセ、オーケストレーションのアレンジも自ら手掛け、ミュンヘンにあるスタジオ、ミュージックランドのレコーディング・セッションでは彼が求めていたサウンドを得られるまでサウンドエンジニアたちと苦労を重ねながら作業を行った。さらにはプロデューサーのラインハルト・マックと共に共同プロデュースも担当している。

オープニングトラックはシンプルなダンストラック「Let’s Turn It On」で、次に4分間の「Made In Heaven」が収録されている。アルバム・タイトルが最終的に『Mr. Bad Guy』に落ち着くまでは、アルバムのタイトルは『Made In Heaven』になる予定だった。3曲目の「I Was Born To Love You」はファースト・シングルとして発売され、イギリスでは11位を記録した。

Freddie Mercury – I Was Born To Love You (Official Video Remastered)

 

当時のフレディ・マーキュリーは、クイーンと本気で決別する意思をバンドに示すため、メンバーにアルバムへの参加を依頼したい衝動を抑えており、“ある程度の自制心”が必要だったと明かしている。代わりに、彼は地元ミュンヘンの才能溢れるセッション・ミュージシャンたちを何人も雇った。

ドラマーのカート・クレス、ギタリストのポール・ヴィンセント・グニア、そしてベーシストのステファン・ウィスネットの他に、カナダ生まれのリズム・ギタリストでシンセサイザー奏者のフレッド・マンデルが参加した。「オフステージでのフレディは結構おとなしい人でしたが、驚くべきミュージシャンでした」とフレッド・マンデルは語っていた。

「Man Made Paradise」は元々1981年のクイーンのアルバム『Hot Space』に収録されるはずだった曲で、フレディ・マーキュリーのソロ・アルバムに収録されているヴァージョンには、ポール・ヴィンセント・グニアが演奏するブライアン・メイを彷彿とさせるギターと、ゲスト・ミュージシャンのジョー・バートが演奏するフレットレス・ベースがフィーチャリングされている。

Man Made Paradise (Special Edition)

 

「フレディはアルバムにとても満足していた」

『Mr. Bad Guy』に収録されている重要な楽曲のひとつに、フレディ・マーキュリーが“自らが書いた曲の中で最もメッセージ・ソングに近いトラックだ”と語る「There Must Be More To Life Than This」がある。「それは孤独な人について書いた曲です」と彼は解説する。

「基本的にはラヴソングですが、それ以外の要素やテーマも含まれているので、単純にそれだけとは言い難い。人々は何故色んな問題を抱えてしまうのかについて歌っている。それがメイン・テーマなんですが、それについてあれこれと考えを巡らすわけでもなく、とにかくしばらく温めてきた曲だった

タイトル・トラック「Mr. Bad Guy」は、アルバム収録曲の中で最も長く愛され続けている名曲である。2019年、アーティストのジャック・クールターは、このフレディ・マーキュリーの曲からインスピレーションを得て描いた絵画を、韓国・ソウルで行われた展覧会『Bohemian Rhapsody: The Queen Exhibition』で展示していた。

左が絵画『Mr. Bad Guy』、右はスタジオ:Photos courtesy of Jack Coulter

「フレディはあのアルバムにとても満足していた」とプロデューサーのラインホルト・マックは証言する。「彼は表題曲‘Mr. Bad Guy’で、それまでクイーンでは実現できていなかったものの、彼が一番やってみたかったことのひとつでもある、豪華なオーケストラとの共演を叶えることができました」。

Freddie Mercury – Mr Bad Guy (Official Lyric Video)

 

「それは非常にプライベートな曲」

アルバム『Mr. Bad Guy』は、全編を通して、ロック、ディスコ、ダンス、ポップ、そして少しだけのレゲエといった様々な音楽スタイルを興味深く融合している。自らの声をハスキーに保つために煙草を沢山吸っていたというフレディ・マーキュリーは、全11曲を力強く歌っている。

彼はまた、感動的なバラード曲を書けたことに満足し、中には“不真面目でふざけた”曲もあったことも認めている。そしてソロ作品の中で一番お気に入りの曲として、オーストリア人女優のバーバラ・バレンティンと付き合っていた頃に書いた「Love Me Like There’s No Tomorrow」を挙げており、フレディ・マーキュリーはこう語っていた。

「‘Love Me Like There’s No Tomorrow’の仕上がりには満足している。とてもプライベートな曲だけと、 5分で書き上げて、すべてが自然と具体化していったんです。とても感情的で印象的な瞬間でした。大好きな曲です」

Freddie Mercury – Love Me Like There’s No Tomorrow (Official Video)

 

彼がこのアルバムに愛情と魂をつぎ込んだことは明らかで、『Mr. Bad Guy』は彼の人柄の多様性を反映している。ライナーノーツには、この作品を猫のジェリー、トム、オスカー、ティファニーらと世界中の猫好きたちに作品を捧げるとある(そのあとには“それ以外はどうでもいい”と続く)。さらに、フレディ・マーキュリーは、クイーンのメンバーである、ブライアン、ロジャー、ジョンに、「邪魔しないでくれてありがとう」と、特別な感謝も述べている。

1985年4月29日に発売されゴールド・ディスクを獲得したソロ・アルバムは、“再びクイーンに戻った時にカンフル剤になるだろう”とフレディ・マーキュリーは信じていたが、実際その通りになった。ソロ・アルバム発売から3ヶ月も経たない内にクイーンは、ライヴエイドのパフォーマンスを通じてウェンブリー・スタジアムと世界を揺るがしたのだ。

Written By Martin Chilton



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Freddie Mercury – Never Boring (Trailer)

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[収録内容]
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