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ザ・ビートルズのカヴァー曲ベスト20:レイ・チャールズからオアシスまで

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今年公開された映画『イエスタデイ』を見てもわかるように、多彩なアーティストによるビートルズの作品の優れたカヴァー・ヴァージョンは、ビートルズの音楽の圧倒的なクオリティと多様性を改めて印象づける。


ビートルズジョン・レノンポール・マッカートニーの二人による比類なきソングライティング・パートナーシップはつとに有名だが、それに加え、年を追うごとに水準を高めていったジョージ・ハリソンの作曲能力やバンド解散間際のリンゴ・スターによるオリジナル曲の提供などもあった。

音楽全体の水準を高めていった彼ら4人による楽曲群は、彼らビートルズから影響を受けたアーティスト達によって実に多くのカヴァー作品を生み出すことになった。様々なスタイルを持った多くのアーティスト達によるビートルズ・カヴァーの中でもベストと呼べる作品群によって、改めてビートルズ作品のクオリティの高さや音楽的な幅の広さと深さを実感してもらいたい。特に注目すべきビートルズ・カヴァー10曲と、さらにもう10曲分の寸評を今から紹介しよう。

 

エスター・フィリップス「And I Love Him」

「ビートルズのカヴァー曲でお気に入りのものは?」と問われた時にポール・マッカートニーが常に挙げるのが、彼が1964年に作曲した「And I Love Her」のエスター・フィリップスによるヴァージョン(性別を逆にして歌っている)だ。1965年のTV番組「The Music of Lennon&McCartney」で彼女はこの曲を披露したが、以来ポールは現在に至るまで彼女の素晴らしさを称えている。

And I Love Him

 

レイ・チャールズ「Yesterday」

ビートルズはアメリカのR&Bの大ファンで、彼らが有名になる前のセットリストにはリトル・リチャード、チャック・ベリー、アーサー・アレクサンダーなど、実に多くのアメリカの黒人アーティストによる作品が含まれていた。そうしたアーティスト達によって自分達の楽曲がカヴァーされることは、60年代の彼らにはとって非常にスリリングなことだった。レイ・チャールズの偉業はビートルズのカヴァーの枠を超えていて、しかも彼の「Yesterday」と「Eleanor Rigby」とでどちらかを選ぶのは至難の業だったが、今回は大いに悩んだ末の前者とした。だが、どちらも全く甲乙つけがたい素晴らしさだ。

Yesterday

 

ウィルソン・ピケット「Hey Jude」

アメリカのR&Bからさらに続けよう。ウィルソン・ピケットによる1969年の「Hey Jude」は、既に完璧な作品に何ができるのかという意味でまさにまさかの選曲だった。この曲のギタリストにピケットが起用したのは、当時まだ無名の若者だった名手デュアン・オールマンだった。ブラス・セクションが効いたアレンジに乗せてピケットがシャウトするこの極上の逸品に、デュアンのギターは最高のトッピングになっていた。エリック・クラプトンはこのレコードを聞いてノックアウトされたという。彼は近年、「今に至るまで、R&Bのレコードでこれ以上素晴らしいロック・ギターは聞いたことがない。これがベストだと思う」と述べている。

Hey Jude

 

アル・グリーン「I Want To Hold Your Hand」

次なるアメリカのR&Bによるカヴァーはアル・グリーンの「I Want To Hold Your Hand」だ。グリーンがこの曲をレコーディングしたと当時のビートルズは終焉期を迎えており、エド・サリヴァンのテレビ番組出演の狂騒がまるで遠い過去に思える時代だった。しかし、かの牧師グリーンのこのファンキー・ソウルが炸裂するヴァージョンによって、かつてビートルズ旋風を巻き起こした1曲は新たな生命を吹き込まれたのだった。

Al Green – I Want To Hold Your Hand (Official Audio)

 

ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス「Sgt Pepper’s Lonely Hearts Club Band」

アーティストにとって、同時代の名士に称賛を受ける以上に光栄なことはそうあるものではない。1967年6月にジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスがロンドンのサヴィル・シアター(ビートルズのマネージャーであるブライアン・エプスタインが運営していた)で、当時リリースされたばかりのビートルズの『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』のタイトル・トラックを演奏してみせた時がまさにそれだった。

ビートルズのメンバー達が見ている中、シアトル出身のギタリストのなんとタイムリーで、そして自信に満ちていたことか。ポール・マッカートニーが後に回想して言っている。「幕が開いて前の方に出てきたジミがオープニングで“Sgt. Pepper~”をプレイしたんです。木曜日にリリースしたばかりなのに。あれほど光栄なことはなかった。僕は彼のことを本当にスゴイと思っていましたし、今になっても輝かしい思い出です。彼は見事に言うことなしでした」

Jimi Hendrix – Philadelphia 1970 – Sgt Peppers/Johnny B Goode

 

ジョー・コッカー「With A Little Help From My Friends」

シェフィールド出身のシンガー、ジョー・コッカーによるビートルズ1967年の作品のカヴァーは世に出るまでにやや時間を要した。しかし、それ以来最も記憶されているビートルズ・カヴァーの1つであり続けている。 コッカーの1968年リリースの「With A Little Help From My Friends」はイギリスのシングル・チャートで1位になり、歌唱時の彼のパフォーマンスは、翌年のあの伝説的なイベントであるウッドストック・コンサートのハイライトの1つだった。 80年代後半にヒットしたアメリカのドラマ「素晴らしき日々」のテーマ曲でも使用され、新しいリスナーを得ている。ポール・マッカートニーは、コッカーのヴァージョンを初めて耳にした際に「衝撃的」だと形容していた。

With A Little Help From My Friends

 

ブッカー・T&ザ・MG’s「Medley: Sun King/Mean Mr Mustard/Polythene Pam/She Came In Through The Bathroom Window/I Want You (She」s So Heavy)」

メンフィスのスタックス(オーティス・レディング、サム&デイヴ、そしてルーファス・トーマスなどが在籍していた)は、ビートルズが大層気に入っていたレーベルだったことから、マネージャーのブライアン・エプスタインが後に『Revolver』としてリリースされることになるアルバムのレコーディング候補地として考えた場所だ。そのアイデアが実現することはなかったが、スタックスへの彼らの愛は変わることはなかった。

多くの素晴らしいビートルズのカヴァーがこのレーベルからも生まれているが、ビートルズのアルバム『Abbey Road』に魅了されて1970年にアルバム丸ごとカヴァーしてしまったブッカー・T&ザ・MG’sの情熱を超えるものはないだろう。マクレモア・アヴェニュー沿いに建つスタックスのスタジオの前で道路を横断してアルバム・ジャケットまでも再現している。MG’sのこのアルバムのタイトルは『McLemore Avenue』だ。

Medley: Sun King / Mean Mr. Mustard / Polythene Pam / She Came In Through The Bathroom Window /…

 

スティーヴィー・ワンダー「We Can Work It Out」

1966年にロンドンのナイトクラブで初めて顔を合わせて意気投合したスティーヴィー・ワンダーとポール・マッカートニー。どちらも、二人の友情がその先どう育まれていくかは知る由もなかっただろう。16年後に彼らはシングル「Ebony And Ivory」で大西洋を挟んだ英米でNo.1を喜び合い、そして2010年には、ワンダーがホワイトハウスでポールとオバマ大統領を前にビートルズの「We Can Work It Out」を超ファンキーにカヴァーしてみせた。

We Can Work It Out

 

スージー・アンド・ザ・バンシーズ「Dear Prudence」

80年代初頭、ビートルズは新しいリスナーを獲得し始めていたが、同時に意外な方面からも注目されていた。筋金入りのパンク・バンド、 スージー・アンド・ザ・バンシーズだ。1978年にアルバム『The Scream』で既にビートルズの「Helter Skelter」をカヴァーしたことがあった彼らが、1983年に再びレノン=マッカートニー作品を採り上げたのだった。ザ・キュアーのロバート・スミスをギターに迎えてレコーディングされた、不気味なコード感を持った「Dear Prudence」は、イギリスのシングル・ヒットチャートで3位にまで上昇し、バンドにとって最大のヒットシングルになった。

Siouxsie And The Banshees – Dear Prudence (Official Music Video)

 

オアシス「I Am The Walrus」

90年代半ばのブリット・ポップは、栄光の60年代以来イギリスのギター・バンドにとって間違いなく最も輝かしい時代であり、その中でもマンチェスター出身のオアシスは群を抜く人気を得ていた。ビートルズへの溺愛を公言して憚らない彼らは、ジョン・レノン作になるサイケデリック・ロックの傑作「I Am The Walrus」を、その後の彼らのトレードマークになる太々しさ全開でパワーコードが炸裂するラウドなヴァージョンに変貌させてみせた。

I Am The Walrus (Live Glasgow Cathouse June '94) (Remastered)

 

惜しくも次点の10作品

私達の選ぶトップ10にご納得いただけただろうか。ならばということで更に10曲、ベスト・ビートルズ・カヴァー作品に推したい作品を挙げてみたい。

ニーナ・シモン「Here Comes the Sun」

ニーナ・シモンがこの曲名をタイトルにして1971年にリリースしたアルバムに収録されたカヴァーで、ジョージ・ハリスンのオリジナルよりもさらに明るくポジティブなムードがある。

Nina Simone – Here Comes the Sun (Audio)

 

ザ・ローリング・ストーンズ「I Wanna Be Your Man」

レノン=マッカートニーが1963年に友人のミック・ジャガーとキース・リチャーズに提供したこの曲はローリング・ストーンズのセカンド・シングルとしてリリースされ、イギリスのチャートで12位になっている。

I Wanna Be Your Man (Original Single Mono Version)

 

ザ・ビーチ・ボーイズ「I Should Have Known Better」

ビートルズと長年に渡って関わり合うことになった、このカリフォルニアを代表するハーモニー・グループは、1965年のアルバム『Party!』だけで3曲も彼らの作品を採り上げている。

I Should Have Known Better (Remastered 2001)

 

ザ・ジャム「And Your Bird Can Sing」

『Revolver』収録のオリジナル・ヴァージョンとの違いはあまりないが、ポール・ウェラー率いるバンドのパンキッシュなエネルギーが炸裂している。

And Your Bird Can Sing

 

アリソン・クラウス&トニー・ファータド「I Will」

ポール・マッカートニー1968年のオリジナルにカントリー色をつけ加えたジェントルなカヴァーだ。

I Will

 

ブリーダーズ「Happiness Is A Warm Gun」

ピクシーズとスローイング・ミュージズのメンバー達が集まって結成されたアメリカのオルタナ・ロック・バンドによる、ジョン・レノン1968年の楽曲にダークなエッジを効かせたカヴァー。

The Breeders – Happiness Is a Warm Gun

 

キャンディ・フリップ「Strawberry Fields Forever」

1990年のアンダーグラウンド・レイヴ・シーンから生まれたこのアシッドハウスなカヴァーは、UKシングル・チャートで3位を記録した。

Strawberry Fields Forever

 

デヴィッド・ボウイ「Across the Universe」

デヴィッド・ボウイが1975年にリリースしたアルバム『Young Americans』にはジョン・レノンが協力している。ジョンは「Fame」の共作者としてクレジットされており、またシン・ホワイト・デュークス版のこのビートルズ・ナンバーにも手を貸している。

Across the Universe (2016 Remaster)

 

U2「Helter Skelter」

アイルランドで最もビッグなバンドであるU2が1988年にリリースしたライヴ・アルバム『Rattle And Hum』。そこでオープニングを飾ったのが、『White Album』に収録されているポール作品の威圧感に満ちたカヴァー・ヴァージョンだった。

Helter Skelter (Live)

 

オーティス・レディング「Day Tripper」

ジョージア出身の偉大なるソウル・シンガーは、ビートルズが1965年にヒットさせたこの曲を心地良いホーンと性急なヴォーカルで料理してみせた

Day Tripper [London]

 

By Paul McGuinness


『イエスタデイ (オリジナル・サウンドトラック)』発売中

映画『イエスタデイ』
10月11日(金)より全国ロードショー
https://yesterdaymovie.jp

映画『イエスタデイ』予告

 



 

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