1996年に発売されたアルバム・ベスト51:30年前に生まれた名盤たち
1996年には、ポピュラー・ミュージック史において他のどの年にも劣らぬほど多くの名作が生まれた。例えば、ヒップホップ界を代表する4つの傑作や、ベックのキャリアを決定付けた1作、強い影響力を誇るウィーザーのアルバム、そしてスパイス・ガールズのデビュー作などだ。しかも、これはほんのごく一部に過ぎない。
突き詰めると、そうしたアルバムの多くに共通するのは”同時期の他の作品とは一線を画していた”という点だ。サブライムのようなやり方でいくつものジャンルを融合させたバンドは珍しかったし、トリッキーの『Pre-Millennium Tension』は彼にしか作り出せないような作品だった。それに、婦人科医に関するヒップホップのコンセプト・アルバムなど他に存在するとは思えない。
要するに、1996年は特別な1年だったのである。私たちと同じく、皆さんもこの中でお気に入りのアルバムを見つけられることを願っている。
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51位:16ホースパワー『Sackcloth ‘n’ Ashes』
オルタナティヴ・カントリー・バンドの16ホースパワーが1996年に発表したデビュー・アルバム。アパラチア地域の伝統音楽の精神を受け継ぎ、そこに現代的なアレンジを加えた1作だ。
50位:ディヴァイン・コメディ『Casanova』
ニール・ハノンが稀代のプレイボーイに着想を得て作り上げたこのアルバムでは、いくつものジャンルの要素を取り入れた可笑しくも洗練されたポップが展開される。そんな本作でディヴァイン・コメディは、商業面でも批評面でも高い評価を受けた。
49位:ジョージ・マイケル『Older』
ジョージ・マイケルの1996年作はそのタイトルが示唆する通り、ポップ界の天才である彼の成熟ぶりが感じられるアルバムだった。本作で彼はダンス向きのポップ・スタンダードから、力強くシリアスなバラードへと舵を切ったのである。
48位:クーラ・シェイカー『K』
名曲「Tattva」を含むクーラ・シェイカーのデビュー・アルバム。サイケデリアや東洋の精神性に傾倒した結果、美しいメロディーとノリの良いギター・サウンドが満載の作品に仕上がった。
47位:マニック・ストリート・プリーチャーズ『Everything Must Go』
リッチー・ジェームズの失踪を経て彼らが初めて制作したこのアルバムは、当時の状況を考えれば驚くほど希望に満ちた1作だった。彼らは、最悪の困難に直面しても美しい音楽を作り出せることを本作で証明したのである。
46位:ソーシャル・ディストーション『White Light, White Heat, White Trash』
カリフォルニア出身のパンク・バンドである彼らはこの1996年作でグループのルーツであるハードコアに回帰しつつ、サウンドの幅を広げてリスナーの層を拡大した。
45位:スーパー・ファーリー・アニマルズ『Fuzzy Logic』
ウェールズ出身のロック・バンドのデビュー・アルバム。ロック、ポップ、サイケデリアなど多種多様な要素を取り入れた、風変わりでユーモラスで驚くほど楽しい1作だ。
44位:スワンズ『Soundtracks For The Blind』
全編約2時間半に及ぶスワンズの長大な2枚組アルバム。人間のさまざまな感情を描き出した刺激的な作品である。
43位:トニー・トニー・トニー『House Of Music』
王道のソウルやR&Bの形式を取りながら、それらのジャンルへの影響力を増していたニュー・ジャック・スウィングやヒップホップの要素を巧みに組み込んだ1996年作。
42位:ストーン・テンプル・パイロッツ『Tiny Music… Songs From The Vatican Gift Shop』
「Big Bang Baby」のようなヒット・シングルからも明らかな通り、心踊るメロディーやフックが満載の3rdアルバム。もちろん、彼らの代名詞であるハード・ロック・サウンドも健在だ。
41位:ラス・カス『Soul On Ice』
アメリカ西海岸出身のラッパーによるデビュー・アルバム。セールス面では成功を収められなかったが、挑発的な歌詞や政治色の濃いテーマが評価されて現在ではカルト的人気を誇っている。
40位:ブラックストリート『Another Level』
ブラックストリートの1996年作(名曲「No Diggity」を収録)はプロデューサー/ソングライターとしてのテディー・ライリーの優れた才能を示す1作にして、この年を代表するR&Bアルバムだ。
39位:サウンドガーデン『Down On The Upside』
実に多様な彼らの作品群の中にあって、この1996年作はグループが純然たるヘヴィ・メタルから、より懐が深く親しみやすいロック・サウンドへと移行したことを示す傑作だ。特に、シングル曲である「Burden In My Hand」や「Pretty Noose」にはそんな彼らの変化がよく表れている。
38位:デ・ラ・ソウル『Stakes Is High』
デ・ラ・ソウルの面々が初めてプリンス・ポールの手を借りずに制作したアルバムにして、商業主義や内部対立からヒップホップを救い出そうと呼びかけた情熱的な1作。J・ディラ、モス・デフ、コモンら、その後のヒップホップ界を牽引することとなる名手たちも参加している。
37位:ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズ『Murder Ballads』
全編を通じて悲惨な殺人の物語を描いたニック・ケイヴの1996年作。その陰惨なテーマを幅広いサウンドとともに表現した名作である。
36位:チボ・マット『Viva! La Woman』
食品に因んだ遊び心溢れる曲名が並ぶチボ・マットのデビュー・アルバム。ファンキーなサンプリングや気の利いた歌詞が満載の魅力的なトリップ・ホップ作品だ。
35位:イールズ『Beautiful Freak』
1996年にリリースされたイールズのデビュー作は、風変わりで魅惑的なポップの形式を取りつつ作詞面ではダークな題材を扱った1作。トリップ感がありながらも聴く者の心に響くアルバムに仕上がっている。
34位:フォクシー・ブラウン『Ill Na Na』
ニューヨーク出身のラッパーによるデビュー・アルバム。セクシャリティを捨て去らずとも強力なリリックを書けることを示し、後進の女性ラッパーたちに影響を与えた作品である。
33位:ゴーストフェイス・キラー『Ironman』
ウータン・クランのメンバーによるソロ・デビュー・アルバム。ファンクの楽曲をサンプリングした素晴らしいトラックが、ひたむきで痛切な彼のリリックを引き立たせている。
32位:R.E.M.『New Adventures In Hi-Fi』
それまでとは違った制作手法を採用するとともに、さまざまなジャンルから着想を得たことでサウンドの幅が広がったR.E.M.の10thアルバム。彼らのディスコグラフィーの中でも特にユニークな作品である。
31位:スリーター・キニー『Call The Doctor』
パンク・バンドのスリーター・キニーによるこの2ndアルバムは、厚みのあるサウンドと痛烈な歌詞が特徴で、全体としてエネルギーに満ちている。要するに、最高のパンク・ミュージックが聴ける作品だ。
30位:ザ・ルーツ『Illadelph Halflife』
フィラデルフィア出身のグループによる3作目のスタジオ・アルバム。奥深さを増したブラック・ソートのライムと迫力のあるサウンドで、彼らをイースト・コースト・ヒップホップ界の重要グループへと押し上げた作品である。
29位:ステレオラブ『Emperor Tomato Ketchup』
ステレオラブの1996年作は、グループ史上屈指にポップかつ実験的な楽曲を含んだ野心的なアルバムだった。それでも難解ではなく、驚くほど奥深く纏まりのある1作に仕上がっている。
28位:カーディガンズ『First Band On The Moon』
映画にも使用されて人気を博したロマンティックな楽曲「Lovefool」を含むカーディガンズの1996年作。聴く者を驚かせる美しいアレンジとともに、恋愛における浮き沈みを描いたアルバムだ。
27位:トニ・ブラクストン『Secrets』
R&B界の女王による2作目のスタジオ・アルバム。驚異的な名曲「You’re Makin Me High」をはじめ、90年代R&Bの魅力が詰まった作品だ。
26位:キャット・パワー『What Would The Community Think』
ショーン・マーシャルが1996年に発表したのは、熱烈なパンク・ナンバーと非常に内省的で感情溢れるバラードがごく自然な形で共存する完璧な1作だった。
25位:オリヴィア・トレマー・コントロール『Music From The Unrealized Film Script: Dusk At Cubist Castle』
インディー・バンドである彼らのデビュー作にして、型破りで、予測不能で、クセになるサイケ・ポップ・アルバム。1996年当時から変わらず、いま聴いても斬新に思える作品だ。
24位:バスタ・ライムス『The Coming』
恐るべき名曲「Woo Hah!! Got You All In Check」を含むバスタ・ライムスのデビュー・アルバム。待ち望まれた末にリリースされた1作だったが、独創的なフロウやプロデュースの卓越した手腕により、その期待を裏切らない傑作となった。
23位:メタリカ『Load』
メタリカは1996年の本作でスラッシュ・メタル路線を離れ、ハード・ロックやブルース、さらにはカントリーまでさまざまな要素を取り入れることでグループとしての幅の広さを見せつけた。
22位:ナズ『It Was Written』
ナズによるこの2ndアルバムはリリース当初、ポップ・ミュージックに接近したことで嘲笑の的になった。しかし現在では、巧みなストーリーテリングと言葉遊びにより高く評価されている。
21位:レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン『Evil Empire』
グループの2ndアルバムにして、聴く者の五感を刺激する痛快作。「Bulls On Parade」のような楽曲では、資本主義や保守政治への抵抗が断固たる態度で表明されている。
20位:ウェストサイド・コネクション『Bow Down』
ウェスト・コースト・ヒップホップ界のスーパーグループ(アイス・キューブ、マック10、WC)によるデビュー・アルバム。ファンキーかつ痛烈なギャングスタ・ラップが展開される。
19位:トータス『Millions Now Living Will Never Die』
シカゴ出身のグループが音の質感とムードにこだわり、丹念なアレンジにより作り上げた1作。実験的で美しく、奥深いインディー・ロック・アルバムだ。
18位:トーリ・エイモス『Boys For Pele』
赤裸々な自身の弱さや、目を背けたくなる現実を歌にしてポップ・ミュージックに変革をもたらしたシンガー・ソングライター、トーリ・エイモスの代表作。
17位:トゥール『Ænima』
グループ2作目のスタジオ・アルバムにして、荘厳かつ知的なヘヴィ・メタル作品。90年代におけるトゥールの最高傑作といえるだろう。
16位:ニルヴァーナ『From The Muddy Banks Of The Wishkah』
5年間の怒涛の活動から選り抜きのパフォーマンスを集めたニルヴァーナの名ライヴ・アルバム。彼らの偉大さに疑問を持つようなことがあっても、このアルバムを聴けば考えが変わるはずだ。
15位:トリッキー『Pre-Millennium Tension』
トリッキーがジャマイカで制作し、病的な不安や憂鬱といったテーマに取り組んだ1996年作。斬新な形で用いられるリズムやサンプリングが、彼を飲み込む心の闇を見事に際立たせている。
14位:アンダーワールド『Second Toughest In The Infants(弐番目のタフガキ)』
電子音楽グループのアンダーワールドによるアンセム調のレイヴ・ミュージックを聴きたいなら、このアルバムが一番だ。実に印象的で記憶に残る作品である。
13位:マックスウェル『Maxwell’s Urban Hang Suite』
R&B界において崇拝される存在であるマックスウェルのデビュー・アルバム。リリース当時から名作と評価され、60年代や70年代のソウルに深く根差したR&Bサウンドが再注目されるきっかけとなった。
12位:ドクター・オクタゴン『Dr. Octagonecologyst』
クール・キースがドクター・オクタゴン名義で発表したソロ・デビュー・アルバム。独創的であると同時に不穏で、ユーモラスで、風変わりなアンダーグラウンド・ヒップホップの傑作だ。
11位:サブライム『Sublime』
カリフォルニア出身のスカ・パンク・バンドによる現時点でのラスト・アルバムにして、エネルギッシュなハードコア・ナンバーと官能的なレゲエ・ナンバーを自在に織り交ぜた1作。複数のジャンルを融合させたポップ・ミュージックもいまでは当たり前のものとなったが、本作はその先駆けといえる。
10位:フージーズ『The Score』
ワイクリフ・ジョン、ローリン・ヒル、プラーズから成る唯一無二のヒップホップ・トリオによるラスト・アルバム。社会意識の高いリリック、ソウルフルな歌声、多様な影響を取り入れたサウンドなど、彼らの魅力が凝縮された作品だ。
9位:フィオナ・アップル『Tidal』
赤裸々で想いのこもったフィオナ・アップルのデビュー・アルバム。若い女性の人生における絶望と希望を見事に描き切った1作である。
8位:ベル・アンド・セバスチャン『If You’re Feeling Sinister(天使のため息)』
素朴なポップ・ミュージックを繊細かつ美しいアレンジで仕上げたインディー界の傑作。彼らの代名詞ともいえるサウンドは本作で確立された。
7位:ウィーザー『Pinkerton』
オルタナティヴ・ロック・バンドのウィーザーによる2ndアルバム。「Good Life」や「El Scorcho」といった楽曲には、名声や性生活や愛に潜む負の側面が描かれている。リリース当時は賛否を巻き起こしたが、現在では名盤と評価されている。
6位:スパイス・ガールズ『Spice』
ガールズ・グループの代表格であるスパイス・ガールズのデビュー・アルバム。シングル「Wannabe」の大ヒットも手伝って、彼女たちが世界的な成功を手にするきっかけを作った。
5位:DJシャドウ『Endtroducing』
DJシャドウがサンプリングのみを駆使して作り上げたデビュー・アルバム。インストゥルメンタル・ヒップホップの基礎を築いた作品であり、新世代のプロデューサーたちにもれなく影響を与えた。
4位:2パック『All Eyez On Me』
卓越したラッパーである2パックがデス・ロウ・レコードから初めてリリースした作品。当時の彼は刑務所を出たばかりだった上、まだ数年前の暗殺未遂事件のショックを引きずっていた。結果として完成したのは怒りと不安に満ち、それでいて欠点のない完璧なアルバムだった。
3位:ベック『Odelay』
ベックの1996年作はヒップホップ、パーティー・ロック、カントリーなど幅広い音楽をサンプリングした極めて雑多なアルバムでありながら、全体としては驚くほど調和が取れていた。この作品の成功により、ベックはスーパースターの仲間入りを果たしたのである。
2位:アウトキャスト『ATLiens』
ヒップホップ界の大物デュオによる宇宙的なサウンドの1996年作。南部のヒップホップ・シーンの実力を証明しただけでなく、そのサウンドとリリックで同ジャンルの様相を一変させたアルバムだ。
1位:ジェイ・Z『Reasonable Doubt』
ジェイ・Zが1996年に発表したデビュー・アルバムにして、ヒップホップ史上屈指の完成度を誇る1作。メッセージを伝える手段の域を出なかったラップを様式化された芸術表現へと昇華させ、その可能性を押し広げたアルバムだ。
Written By Sam Armstrong
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